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2006/04/10

ニカラグアにおける先住民族の権利

ニカラグアにおける先住民族テリトリーの権利

 2006年3月13日から15日にかけてグアテマラで、ニカラグア大西洋岸で先住民族の権利の確立のために活動しているロティ・カニンガムさんを招いてのセミナーが開催されました。開発と権利のための行動センターではこの会議の設定のための調整と開催経費の一部を支援しました。

 このセミナーではニカラグア大西洋岸地域において、地域コミュニティの同意なく行われた森林伐採権の譲渡に対して、地域のマヤグナ民族のコミュニティであるアワス・ティングニが米州人権裁判に訴え、勝訴したケースの紹介を通じて、グアテマラにおいて先住民族のテリトリーそして自然資源への権利を確立するための取り組みをどのように展開することが可能なのかを考え、グアテマラ国内の関係者が意見交換を行うことを目的に実施しました。
 主催組織はCONIC(グアテマラ先住民族農民全国調整委員会)、)WAQIB’ KEJ-
(マヤ全国連合)、MTC de San Marcos(サンマルコス農民労働者運動)で、13日は内部関係者向けのセミナー、2日目は公開で行われ全国の先住民族組織リーダーなど約200人が参加、3日目はテーマについてより深く議論するためのセミナーで政府の人権擁護委員会、土地紛争解決委員会の弁護士、人権組織の弁護士などを含めての意見交換が行われました。
  
 講師のロティ・カニンガムさんは現在「ニカラグア大西洋岸人権正義センター」の代表で米州人権裁判所によって先住民族コミュニティとニカラグア国の間の裁判で先住民族コミュニティのために活動を行ってきた弁護士です。

<報告要旨>
1.ニカラグア概要

 ニカラグアは人口約500万人の国で、先住民族人口は約8%で少数派である。大西洋岸自治地域には人口の約11%が居住し、先住民族であるミスキート、マヤグナ(スム、ラマ、さらにアフロ系住民とガリフナ(逃亡黒人と先住民の混血)が居住している。)

2,アワス・ティングニ裁判の経緯
 1994年(1993年?)にMADENSAという企業に対し、43000ヘクタールの森林伐採権が譲渡される。その後韓国系の企業であるSOL DEL CARIBE -SORCARSA- に対して近接する地域63000ヘクタールの伐採権が譲渡される。ニカラグア国の憲法では、開発権の譲渡にには自治地域政府の承認が必要であるが、それを受けてはいないまま、この伐採権の譲渡が進められようとしていた。
 国内ではこの問題を訴えても聞き届けられないまま、1995年米州人権委員会へ提訴するが、1996年に60000ヘクタールの伐採権譲渡が政府によって正式に行われてしまう。政府側は対象の土地が国有地であるとの主張を繰り返すばかりであった。しかしニカラグアの最高裁判所は1997年にはこの権利譲渡が憲法に違反しているという判決を下す。
 ニカラグア政府が先住民族のコミュニティの土地を登記するようにという米州人権委員会の勧告に従わない中で、1998年このケースは米州人権裁判所へ持ち込まれることとなった。米州人権裁判所の判決は2001年に下される。

3.裁判結果とその意味 (当日の報告及びLottie Cunningham,2003, EL CASO AWAS TINGNI: QUINCE MESES DESPUÉS -Los retos del proceso de implementación de la Sentencia de la Corte Interamericana de Derechos Humanosより作成)

 この裁判で米州裁判所は、伝統的共有地にある森林資源の開発に伴う伐採権の譲渡をマヤグナのコミュニティーの同意なしに行ったこと、またアワス・ティングニがそのテリトリーの確定を継続的に要求したにも関わらず放置したことはコミュニティの権利の侵害であるとの判決を下す。
 ここのアワス・ティングニのケースは国際法廷が先住民族のテリトリーに対する権利を認めた最初のものであり、先住民族コミュニティの集団的所有権(Propiedad Colectiva)を認める判例を作ったことにある。米州人権条約は、個人所有の権利にのみ言及しており、共有地の権利に言及しているわけではないが、この裁判ではさらに踏み込んだ解釈をすることで、この判決にいたった。
 裁判所は、「先住民族のテリトリーに関する権利は政府によって与えられた公的な土地証書の有無によるのではなく、その慣習的権利、価値、使用、習慣に基づくコミュニティによる土地の占有に基づくものであると宣言している」また先住民族と土地の関係について「先住民族はそのその独自の存在に基づき、その独自のテリトリーにおいて自由に生活する権利を有し、土地との間に維持されている緊密な関係は、その文化、精神生活、統合性また経済的生存のための根源的な基盤であることが承認されまた理解されねばならないと指摘している。 また判例の重要な側面として、米州人権宣言に認められている権利を実効的なものにするため、先住民族コミュニティの土地の領域確定を行い、権利証書を発行することは政府の責務であると宣言したことにある。
 裁判所は、先住民族テリトリーの領域確定を行わないことは、その先住民族がその土地と資源を自由に利用また享受することを現実的に妨げるものであると解釈している。そこで領域確定のための有効な法的メカニズムの欠如は、法的保護及び条約によって保証されている先住民族のテリトリーへの権利の侵害と見なされる。
 
4.裁判プロセスにおける教訓

*法的プロセスを進める以前に、コミュニティ組織の強化が重要。法的プロセスと同時に、コミュニティの政治的影響力を強化することが重要。
*コミュニティが主役。コミュニティが先頭に立って歩みを進める。弁護士グループはこれを後ろから支える。
*コミュニティ全体による意思決定に基づいて道を選ぶ。法的サポーターは、コミュニティに対して説明を繰り返して十分な情報を提供し、3つの解決策のオルターナティブを提示し、コミュニティが選ぶ。コミュニティがそのどれにも納得しなければ、別の3つのオルターナティブを提示しなければならない。
*裁判プロセスでもっとも重要なのは、コミュニティの統一。コミュニティの最高決定機関はAsamblea comunitaria/territorial。リーダーは弱いことや間違えを犯すことなどもある。コミュニティが統一して、全体で納得した意思決定に基づいて動かしていくことが不可欠。外部からの支援者は、その決定のプロセスもリズムも内容もすべてを真に尊重しなければならない。
*利用・占有地図(Mapeo de uso y ocupacion)と集団的記録(Memoria Colectiva)をコミュニティ住民と専門家の協力で作成した。これはコミュニティがこの地のもともとの主であること、先住民族として正当な権利を有することを証明するものである。- *外国からのマスメディアや支援者他を、どんどん現地視察に連れて行った。コミュニティの貧困の現状や国のサービスが届かず小学校さえない状態なども、コミュニティの法的闘争とともに知らせる。国家にとっては恥をかくことに。
*さまざまな委員会を設けた。渉外委員会は、先住民族の権利を侵害するニカラグア国家に援助を出さないよう、世銀に働きかけたりということを行った。
*判決後の領域確定法(Ley de Demarcacion)の法案作成に当たっては、あちこちからバラバラと提案が出ないよう、多様なアクターの中で統一した法案を作成。簡単なことではなかったが、それにより議会を通すことができた。議員や政党へのロビー活動も活発に行った。
*国内の法的手段を尽くさなくとも、CIDHにケースを持ち込むことはできる。しかし、国内で解決しようとしたことを証明し、さらなる人権侵害を防ぐためにCIDHへ持ち込む形が望ましい。
*第445法(自治地域法)は、地下資源もコミュニティのものとして認める。
*大西洋岸自治地域では、軍がベースを持つにも借料を取る。払わないなら入れさせない。
*アワス・ティングニのケースは、アリゾナ大学のIndigenous Laws Resource Center, 他の法的、経済的な支援を受けてきた。このプロセスにニカラグア及び米国の弁護士、人類学、社会学、民俗学、その他の専門家などたくさんのアクターがかかわった。また米国から多額の資金が投入され、コミュニティをPaternanalismoに陥れたともいえる。

5.グアテマラにおける現状と問題点
 グアテマラからはサンマルコスにおける鉱山開発の問題、チチカステナンゴでの土地問題、エストールにおける鉱山開発問題、先住民族の土地問題全般などが発表され、意見交換がなされた。
 グアテマラにおいては、ILO169号条約に批准していることがメリットの一つであり、既にエストールの問題はILOに提訴されている。
また先住民族コミュニティがもともとその土地の主で、現在まで継続してその地に暮らしてきていることを証明するための集団的記録と利用・占有図を作成することは重要であろう。先住民族コミュニティにとって、母なる大地、自然との、物理的だけでない精神的な関係性をも証明することが必要。
 
 以上のような議論がなされた。

 アワスティングニに関する参考資料など

 関連情報・サイト
アリゾナ大学 indigenous peoples law policy programe
http://www.law.arizona.edu/depts/iplp/advocacy_clinical/awas_tingni/default.htm

Indian Law Resource center
http://www.indianlaw.org/

THE AWAS TINGNI CASE:The Inter-American Court of Human Rights and Indigenous Peoples'Collective Right to their Lands and Natural Resources
http://www.indianlaw.org/AT_Canada_Bar_2002-05-01.pdf

Corte IDH. Caso de la Comunidad Mayagna (Sumo) Awas Tingni Vs. Nicaragua. Excepciones Preliminares. Sentencia de 1 de febrero de 2000.
http://www.corteidh.or.cr/seriecpdf/seriec_66_esp.pdf
Corte IDH. Caso de la Comunidad Mayagna (Sumo) Awas Tingni Vs. Nicaragua. Sentencia de 31 de agosto de 2001.
http://www.corteidh.or.cr/seriecpdf/seriec_79_esp.pdf 
 そのほかCultural Survival のサイトにもAwas Tingni に関するレポートがあり。
http://209.200.101.189/home.cfm

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