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2006/12/07

ボリビア 土地問題

 ボリビア:不透明な土地分配の実態が明らかにされつつある

 11月28日夜、「農地改革法(INRA法)」の改正法、「農地改革の共同的再編法: Ley de Reconducción Comunitaria de la Reforma Agraria 」が上院を通過し、翌29日モラーレス大統領によって公布された。
 大統領は「この法律の承認で、ボリビアのラティフンディオは終わった。我々は大地主を終わらせる手段を手にしたが、これは共に歩み、動くことによってのみ前進することができる」、「農地革命は、単なる土地分配ではなく、機械化および市場とともになくてはならない。」、「この闘争は権力と、テリトリーのための闘争であり、先祖たちからの闘争なのだ。トゥパク・カタリ、バルトリーナ・シサそして命を失った多くのリーダーの闘争なのだ」と語ったという。(政府広報 ABI 11/29)
 
 政府広報(ABI)は11月27日に次のようなニュースも発信している。

「INRA法の改正に反対するものは、強い理由を持っている。重複した不法な土地受け取り、非生産的大農園、そして土地取引。ここ10年間INRAが機能する中で築かれた政治-犯罪の輪の一部である。」
 またこのニュースは土地副大臣の発言として、「ボリビアでは政治階級と土地の集中は強い関連性があり、ギテーラス(Guiteras)、ヘッカー(Hecker)、モナステリオス(Monasterios)などの家族が政治に深く関わり、国の未来を決めていたのは、土地を持つことに由来するものである。」と述べている。

 このほか政府広報はいくつかの大土地所有者の状況を列記している。
●ベニ県のブルックナー家は国家農地改革審議会(CNRA)から無償で126,.554 haを受け取る。しかし所有権登記がなされたのは5,714haのみである。INRAの職員が所有権確定手続きを行おうとしたが、武器を持って脅されたということである。
●Sonnenshein家:21,771haを受け取り、481haのみ測量している。
●Hecher 家:12,498haを無償で受け取り、290,000haの所有権確定を求める。
 Hercher 家はパンド県のアマゾン森林地帯およびそこに存在するコミュニティを含め、占有していることとなっている。しかし所有権が確定された面積は1,562 haに過ぎない。
●サンタクルス県、 Saavedra Bruno 家:5054haを農地改革で受け取るが、倍近い9845haの所有権確定を求める。結果として1544haのみ認められる。
 Luís Saavedra Bruno は農地改革で11074haを受け取るが、所有権確定で測量した面積は73000haに上る。そのうち確定したのは15941haである。
●Oswaldo Monastarios:違法な重複受け取りで13,333haの土地を受け取り、56445haの所有権確定を求め、48,000haが認められる。モナステリオス家は8万ha近くを占有している。

 また同じ問題はボリビアの日刊紙プレンサの12月3日の記事でも告発されている。

 この記事によると、INRA(農地改革局)のデータによるとベニ県では10家族に534,795haの土地が分配されたという。パンド県では同じく10家族が59,151haを、そしてサンタクルス県では15家族が512,085haを受け取ったという。INRA所長のフアン・カルロス・ロハスは、これらのケースが少数者の手に土地が集中していることを示しており、INRAはこれらの土地が利用されているかどうかを検証するという役割を持っている、と述べている。土地の集中はこの3県だけではなく、タリハ県やチュキサカ県でも見られるという。
 記事ではそれぞれの地域でどのような家族に土地が集中しているかを書き出しているが、そこには当然のことながら東部の政治的、経済的な有力者の名字をみることができる。サンタクルスでは次の家族(名字)が記載されている。Saavedra Bruno y Saavedra Tardí o (hijos), los Nieme Monasterio, Justiniano Ruiz, Roig Pacheco, Rapp Martínez, Antelo Urdininea, Keller Ramos, Candia Mejía, Castro Villazón, Ovando Candia, Roberto Fracaro, Agropecuaria OB S.R.L., Sánchez Peña, Larsen Nielsen Zurita y Bauer Elsner.

 INRAではこれらの土地が遊休地となっていないか、社会・経済的機能を果たしているかを、新土地法に基づいて検証することとなる、とのことである。
 既に新政権になり、INRAではパンド県で不法に土地を入手していたブラジル人から28,000haが回復されるケース、国有地を不法に占拠していた 所有者から16,000haが回復されるケースなども出てきている。またこのように所有権確定手続きのなかで回復された土地が既に農民グループに分配されているとのことである。
(ここまで、Prensa 2006年12月3日の記事のまとめ)

 土地分配の面積や土地登記のあり方など、狭い日本に住んでいる感覚からは理解しきれないところがあります。しかし独裁政権期などに土地を受け取り、更に周辺の土地を囲い込んでいく、あるいは違法な土地取引を通じて土地を拡大する、あるいは贈与された土地を転がして利益を上げる、そのようなことが繰り返されてきたのだろうと想像されます。その一方で土地なし農民や、農奴のような農民がいることも現実のボリビアの姿なのです。

土地法の承認プロセスや今後の立憲議会の決議方法などをめぐってモラーレス政権と強く対立しているのは、東部低地の大土地所有者、経済的有力者であり、そこを基盤とするPODEMOSなどの議員です。ボリビア東部低地においては、政治権力、経済的実権、そして国政とのパイプはこうした有力者の手に集中しています。
 一方、政府は既にこうした大土地所有を基盤とする議員や有力者の土地所有状況を明らかにしつつ、対抗していく姿勢を強く示しています。

 今回、議会で承認された新土地法とその履行をめぐって、今後先住民族農民の支持を受けるエボ・モラーレス政権と東部低地を基盤とする有力経済者層との対立が深化していくことも想定されます。また今後、この新土地法の履行の上で政治の場でのコンフリクトから、地域での暴力を伴うコンフリクトが高まることも予想されます。

 ボリビアの農地改革の問題はINRAのデータなどをもとにまたあらためて整理したいと考えています。

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 青西

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