« バイオ燃料関連記事のリスト | トップページ | 自然保護区と先住民族の取り組み(グアテマラ)2 »

2007/10/05

自然保護区と先住民族の取り組み(グアテマラ)1

 自然保護区と先住民族(グアテマラ)

 9月にグアテマラを訪問し、開発と権利のための行動センターの活動地域また関連する取り組みの視察などを行ってきました。
 グアテマラにおける「自然保護区と先住民族の取り組み」というテーマで3回に分けて報告を掲載していきます。

 開発と権利のための行動センター
 青西靖夫


自然保護区をめぐる先住民族の取り組み 1

<サルストゥン流域自然保護区>
イサバル県北東部を流れるサルストゥン川の流域に保護区(正式名は「サルストゥン川多目的利用保護区」)が設定されたのは2005年3月のことである。グアテマラ国内の環境NGOである「FUNDAECO(フンダエコ)」が積極的に設立に向ける準備を推し進め、「技術報告書」を作成し、保護区管理にかかわる法案を作成し、国会での審議に持ち込んだ。地域住民がこの事実を知った時には、法案は採択される寸前であつた。
 このことに驚いたのは、地域に住むケクチ民族のコミュニティの人々であり、また地域のコミュニティの土地登記を支援してきたカトリック教会の土地司牧会である。この地域に住むケクチ民族のコミュニティは、生活してきた土地の所有権を確定するために、30年以上にわたって手続きを続け、あと少しで土地登記の手続きが終了するところまでたどり着いていた。数年前に活動を始めたリビングストン教区の土地司牧会は、土地の測量、土地基金との交渉など、この土地登記のための手続きを支援してきていたのである。
 しかし自然保護区に設定されると土地登記の手続きを進めることはできない。「自分たちの土地」であり、「自分たちで守ってきた土地」を、自分たちのコミュニティのものとして登記することができなくなるのである。
 また地域住民の意向を聞くこともなく、協議を行うこともなく作成された法律に書き込まれた保護区内のゾーニングは、地域住民の生活を反映したものとはなっていない。いくつかのコミュニティはその土地の半分以上を、立ち入ることもできない「不可侵ゾーン」に指定されてしまったのである。

 地域コミュニティの連合体である「Asociación Amantes de la Tierra(土地を愛する者アソシエーション」では、まず法の採択の延期、改正を求めて運動を開始した。しかし保護区設置法は国会で採択されてしまう。そこで次にこの保護区制定にかかわる法12-2005を違憲として憲法裁判所に提訴した。コミュニティの反対運動に直面する保護区は、その設置法に書き込まれた3名のコミュニティ代表を含む地域の関係者を含んだ管理委員会を立ち上げることもできないまま頓挫している。
 このアソシエーションでは、保護区の制定そのものに反対の姿勢をとるのではなく、まず土地の登記手続きを終わらせること、地域住民が計画そして決定のプロセスに参加すること、そして自然保護区の設定による利益を享受できるようにすること、この3点を強く求めている。
 また 硬直した状況の中で、地域のアソシエーションと環境NGOが連合体を結成して、今後の保護区を実現しようという動きも検討されつつある。連合体の中で同等の権利を持って参加することを通じて、保護区における活動や資金の動きを管理していこうというものである。この動きは重要な一歩となりうるであろう。しかしこの動きを現実のものとするためには、新しいリズムが必要とされる。コミュニティにケクチ語で報告すること、法案や関係文書をケクチ語に翻訳していくこと、コミュニティの参加に基づく決定を可能とする時間を確保すること。これまでのドナーとの関係に目がいったプロジェクト管理の時間の流れにこだわれば、結局は一部リーダーしか分かっていない表面的な参加にとどまることであろう。
 また地域住民が保護区の管理に入っていくことも必要とされている。この地域には石油開発や鉱山開発の利権も存在している。法案にもともと石油開発の抜け道を用意していた、という批判受けているような環境NGOのみに任せておけば、地域内に石油開発の認可が与えられてしまう可能性すらある。
 このことは土地所有権を確立することとの重要性にもつながっている。保護区内といえ国有地のままに置かれたままであれば、「多目的利用ゾーン」において地下資源の開発権が政府によって認可されてしまえば、その動きを止めることは難しい。地域全体の開発のあり方に関与していくためにも保護区の管理に参加することが重要となるのである。

 今回のように環境NGOは必ずしも地域住民と密接な関係を持つわけではなく、一方的に「環境保全」を押し付けるケースが少なくない。しかしそのような環境NGOにも国際的な大型環境NGOや諸外国政府から資金が流れ込み、そうした資金を利用して地域での活動を進めていく。
そうした中で地域コミュニティは「受益者」として従属していくのである。自分たちの生活改善、自分たちの自然保全のために、いくらの資金が流れ込み、どれだけの技術者が雇われ、どれだけの給与が支払われているか、知らされないままに、単に水道の改善や植林やその他の生活改善プロジェクトの「受益者」に留め置かれるのである。もちろん「コミュニティの強化」や「組織強化」という名目での活動もないわけではない。しかしその資金は限られている。
 また国際協力機関などの資金供給者と、そうした資金供給者の資金を無難に消化し報告を上げてくれる環境NGOは共存関係にある。その一方で、お金の管理の仕方から、一つ一つ積み上げて学んでいかなければならない地域住民のアソシエーションに届く資金は限られている。しかし彼らがこうした外部のNGOに対抗する力を持つためには、一つずつ積み上げ、その経験を通して力をつけていく必要がある。

<1 終わり>

|

« バイオ燃料関連記事のリスト | トップページ | 自然保護区と先住民族の取り組み(グアテマラ)2 »

グアテマラ」カテゴリの記事

先住民族」カテゴリの記事

環境」カテゴリの記事

自然保護区」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/50657/16665165

この記事へのトラックバック一覧です: 自然保護区と先住民族の取り組み(グアテマラ)1:

« バイオ燃料関連記事のリスト | トップページ | 自然保護区と先住民族の取り組み(グアテマラ)2 »