グアテマラにおける鉱山開発は「先住民族の権利条約」を履行せず
グアテマラにおける鉱山開発は「先住民族の権利条約」を履行せず
2005年3月にグアテマラの都市・農村労働者連盟(FTCC)はグアテマラ政府は、国際労働機関(ILO)の第169号条約、「独立国における原住民及び種族民に関する条約」注1を履行していないとして、ILOに対して申し立てを行っていましたが、これに対するILOの審査委員会の報告が理事会にて採択され、グアテマラ政府は、土地への権利を認めていない点、協議の未実施という点で当条約を履行していないとの判断を下しています。注2
今後、条約を適切に履行し、先住民族の権利の土地への権利が保障され、協議のメカニズムが確立されるよう、国際社会からの働きかけも重要です。またグアテマラ国における鉱山開発の進展には国際社会からの強い監視が必要です。
次に、イサバル県におけるこの申し立てまでのプロセスと政府への勧告を整理してみました。
<経緯>
1965年にグアテマラ政府は、グアテマラ東部のイサバル県でのニッケル鉱山開発を目指していたエクスミバル社に対して、40年間の採掘免許を認可しましたが、鉱山開発事業は1981年以降は放棄されたままとなっていました。しかし2004年に免許が失効する直前に、3年間の新たな探査免許が供与されたのです。この直後、エクスミバル社はスカイリソース社に買収され、現地子会社はグアテマラニッケル社(CGN)と命名されています。*注3
この事態に対して、グアテマラの都市・農村労働者連盟(FTCC)は、2004年12月に鉱山エネルギー省が行った、イサバル県のエストールのマヤ・ケクチ先住民族のテリトリーにおけるエクスミバル社(現CGN:グアテマラニッケル社)に対するニッケル他の鉱物資源に関する探査免許の認可が、関係する先住民族の事前の協議を経たものではなかったとしてILOに対して告発したのです。またこの地域には19の先住民族コミュニティが存在しているものの、そうしたコミュニティの社会的・文化的アイデンティティー、慣習、伝統、制度に対する配慮も、また権利を擁護するための活動も行われないまま、この探査免許が与えられたこと、更に、この探査権の与えられた地域は、土地登記の手続を進めているところであり、この探査権認可がこの手続に影響を及ぼしていることも指摘しました。
また先住民族コミュニティーは「政府は、この探査免許について、一度も事前に情報を提供していないし、マヤ・ケクチ住民との協議も行っていない」、「先住民族はエストールの土地と歴史的につながりを持ち続けている上に、民族の持続的な存在の基盤として、保全し、開発し、また未来の世代に引き渡していくつもりである」と訴えていました。
<政府の反論>
この申し立てに対してグアテマラ政府は、これまでこの条約履行に向けて、重要な対応をしてきたこと、探査免許認可した土地は「私有地もしくは国有地であり、申し立てている19コミュニティの土地は含まれていない。これらのコミュニティは私有地もしくは国有地、あるいは国有とされうる荒蕪地(未登記地)に存在しており、またコミュニティによっては耕作地を有するのみである」、そこで「この申し立てに関係するコミュニティは土地所有者ではない以上、条約の15条は適用されない」と述べていたとのことです。政府はコミュニティが「不法に土地を占有している」と見なし、協議の対象と見なしていないという態度を取っているのです。
<審査委員会の結論と政府に対する勧告>
-先住民族コミュニティが伝統的に占有してきた土地が、土地証書を持たないことで違法と見なすことは条約の考えとは一致しない。条約の14条は先住民族が伝統的に占有してきた土地に対する権利を承認している。
-条約の14条が定めるところの土地に対する先住民族の所有及び占有の権利を保障するために、先住民族と協議の上で、適切な対策を取ること。
-土地管理のプロセスには時間がかかるが、その過程において先住民族が不利益を得ないように、先住民族の土地への権利を保護するための移行手段を適用すること
-2004年の探査ライセンス認可に際しては、条約が定めるところの協議は実施されなかったと考える。そこで2007年12月に失効する探査ライセンスに替わる開発ライセンスを認可する際には、関係するすべてのコミュニティの参加に基づく協議が実地されなくてはならないし、開発が引き起こす可能性がある損害に対しては補償がなされなければならない。
-先住民族コミュニティに影響を及ぼす自然資源の探査、開発に際して、政府は条約の15条を完全に履行し、事前の協議を実施すること。また環境影響調査、環境対策計画など異なる諸過程においても当該先住民族の参加を確保すること。
-条約の15条で定めるところの、自然資源の探査・開発に関わる先住民族との協議を定めた法及び細則の制定を進めること。*注1 独立国における原住民及び種族民に関する条約 (日本語)
主として関係するのは13条、14条、15条です。
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/standards/c169.htm
*注2 ILOの審査委員会報告書はこちら http://www.ilo.org/ilolex/cgi-lex/pdconvs2.pl?host=status01&textbase=ilospa&document=87&chapter=16&query=Guatemala%40ref&highlight=&querytype=bool&context=0
(英語) http://www.ilo.org/ilolex/cgi-lex/pdconv.pl?host=status01&textbase=iloeng&document=87&chapter=16&query=%28Guatemala%29+%40ref&highlight=&querytype=bool&context=0 *注3 これまでの経緯などについてこちらも参照ください。
http://homepage3.nifty.com/CADE/guatemala/Guatemala%20indigena%20y%20medio%20ambiente.htm##San%20Marcos%202
ベルシェ政権の一年と先住民族運動
イサバル県エル・エストールにおけるニッケル採掘と先住民族
開発と権利のための行動センター
青西靖夫
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