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2008/02/29

自然保護区と農民 /歪められた現地報道

 自然保護区と農民 /歪められた現地報道 
 グアテマラのイサバル県で、農民リーダーが逮捕された事に反発して、農民グループが一時的に警察官を人質にとって村に立てこもるという事件が起きました。誰によるものであれ、暴力行為や人質を取るという行為を肯定するものではありませんが、現地プレンサ・リブレ紙の報道にも大きな問題があります。
 プレンサ・リブレ紙の報道は、農民グループが自然保護区を破壊し、土地占拠をしているとみなし、更には地域にすむケクチ農民と他の人々との対立を煽るものになっています。

 2月28日付けの記事をインターネットで見ると、「(土地の)不法利用が保護区に深刻な被害」と見出しをつけ、次に「○○に率いられた(土地の)不法利用がチョコン・マチャカ保護区とリオ・デュルセ国立公園に大きな被害を引き起こしてきた」と書いています。
 しかし実際にはこの記事では異なる内容が報道されています。
1)「国家自然保護区審議会の文書によると、この地域には1万5千から2万人が居住しており、およそ30年前からこの保護区を不法利用している」
グアテマラで自然保護区に関する法律が制定されたのは1989年であり、保護区の監督機関の文書自体が、「この地域の農民が保護区の制定に先立って居住していた」ことを明らかにしている事になります。この点については囲み記事として掲載されている農民の声もそれを裏付けています。
2)「別の情報によると、安全のために身元を明かさないように頼まれたが、この二つの地域における森林破壊の主たる責任者は、牧場主、製材業者が主たる責任者であるとのことである。」
「安全のために身元を明かせない」・・・これがイサバル県の、グアテマラの現実と言えるでしょう。そして保護区の破壊や森林破壊の元凶はいくらでも存在しています。ちなみに牧場主も「不法利用/不法占拠」である可能性は高いので、大見出し自体は正しいとも言えるわけですが・・・

 このように、自らの記事の内容すら歪めつつ、プレンサ・リブレ紙は農民運動をつぶすためのキャンペーンを展開しているのです。更には、リビングストンの街を襲撃するといった話を広げ、観光業の障害になっていると喧伝しています。27日付の社説では、「告発されているのはみなケクチ(民族)の名字ではないか」と先住民族組織に突きつけています。こうした姿勢は民族間の対立を強める危険性も孕んでいます。
 
 イサバル県に行けば広大な大農園が広がっている姿を目にすることができるでしょう。こうした農園がどのようにしてその土地を入手し、森林を伐採し、農園を拡大してきたのか、本当に正当な土地所有権を持っているのか。リオ・デュルセ(デュルセ川)の川縁に沿って建設されているコテージなどが適切な許認可の上で建設されているのか・・・こうした事実を洗い出していく作業は本当に命をかける作業になることでしょう。
 
 プレンサ・リブレ紙は27日の社説では「ここ何年にも渡ってイサバル県は、土地占拠、違法伐採、私的所有地や国有地の破壊の舞台になってきた。これらは地域の農民をだましてきた一団によるものである」と書いていますが、イサバル県で生起している問題、農民の声の背景にあるのは「ここ何十年にもわたって、イサバル県は、軍人や政治家、経済的エリートによる、土地の不法占拠、違法伐採、先住民族の占有地の破壊といった違法行為の舞台となってきた」ということなのです。

2/28 Usurpaciones causan severos daños en reservas
http://www.prensalibre.com/pl/2008/febrero/28/223209.html
2/27 Nefastos engaños a los campesinos
http://www.prensalibre.com/pl/2008/febrero/27/opinion.html

 参考情報
1)先住民族に占有してきた土地への権利を認めること:これはグアテマラが批准しているILO169号条約の理事会でも、イサバル県内の別の地域の事例について勧告している。http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2007/12/post_66f9.html
2)環境保護団体自体が不透明なプロセスで国有地を譲渡されたケースも存在している。
http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2007/10/3_54a2.html
3)地域住民の同意なき環境保護区の設置がグアテマラを始め、各地で問題を引き起こしている。
 http://cade.cocolog-nifty.com/ao/cat7897564/index.html (この中でいくつかの事例を紹介している)
4)グアテマラ政府の代表も参加していた、国際自然保護連合(IUCN)による2003年の世界公園会議において採択されたダーバン行動計画では
重要達成目標10として「2010 年までに、自由やインフォームドコンセントなしで保護地域に組み込まれた先住民の伝統的な土地や領域の返還への参加メカニズムが確立し、実行される」ことを定めている。
 http://www.iucn.jp/protection/reserve/pdf/action_plan.pdf

 開発と権利のための行動センター
 青西 

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