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2008/03/14

大豆生産と南米ーパラグアイにおける農村部での人権侵害

 大豆生産と南米ーパラグアイにおける農村部での人権侵害
   
 先日紹介した文書の抄訳をつけます。パラグアイでは大豆生産の拡大に伴って、農園主側の暴力の行使、土地を求める農民運動との対立が激化しているようです。また農薬散布による被害も出ている。
 今回紹介した文書5)以外にもいくつか関連サイトなどの情報を紹介します。

1)A SEED Europe (Action for Solidarity, Equality, Environment, and Diversity Europe) のサイト
-Soy expansion triggers more violence in Paraguay (2006/08/22)
http://www.aseed.net/index.php?option=com_content&task=view&id=276&Itemid=107
Thesis: “The impact of soy expansion: migration and resistance” (本文はまだドイツ語版だけのようですが)
http://www.aseed.net/index.php?option=com_content&task=blogcategory&id=60&Itemid=107
2)la Coordinadora de Derechos Humanos Paraguay (CODEHUPY)の人権状況報告書はこちらのサイト   
  http://www.codehupy.org/www/index.php?option=com_content&task=category§ionid=3&id=10&Itemid=10
下の5)文書で言及しているInforme Chokokueはこちら
http://www.conectasur.org/arquivos/Resumen%20Ejecutivo%20Informe%20Chokokue_2007_07_03_09_01_57_982.pdf
3)Via campesina
  La soja vale más que la vida de las comunidades campesinas e indígenas
(2006/06/06)
 http://www.viacampesina.org/main_sp/index.php?option=com_content&task=view&id=107&Itemid=36
4)FIAN
La Reforma Agraria en Paraguay, Informe de la Misión Investigadora sobre el Estado de la realización de la Reforma Agraria en tanto obligación de Derechos Humanos
 http://www.fian.org/recursos/publicaciones/documentos/la-reforma-agaria-en-paraguay/pdf
 FIANのサイトでは国ごとの情報にアクセスできます。http://www.fian.org/

5)Paraguay: la paramilitarización del campo con la expansión de la soya
 パラグアイ:大豆生産に伴う農村部での準軍事組織の拡大
 (Javiera Rulli、2008/2/25)
 http://www.biodiversidadla.org/content/view/full/39113
 <抄訳>
パラグアイの農村部において、輸出向け大豆生産の拡大に伴って、先住民族や農民に対する暴力事件の増加が報告されている。こうした傾向は南米全体に見られるものであるが、パラグアイの農企業体は特に残酷な顔をもっており、農村部の人々を暴力的に排除しつつあり、また法的にも全く処罰されていない。農村部の軍事化、準軍事組織の拡大は大豆生産の拡大と結びついている。
 2006年に公表されたFIANと VíaCampesinaの視察団の報告書は「節度なき大豆生産の拡大は、警察や準警察組織、民間武装グループなどによる農民リーダに対する攻撃、殺人などを引き起こしている」と結論づけている。また人権組織などは、国家警察の中に処刑部隊が存在しており、これらが18人の農民リーダー暗殺の責任者であると告発している。こうした組織が、農地紛争が激化する中で、抑圧と社会コントロールの装置として違法活動、強制排除、押し入り、拷問、殺人、表現や信仰の自由への侵害などを引き起こしている。
 パラグアイにおける大豆生産拡大の第二期は、遺伝子組み換え大豆の導入とともに2000年頃に始まり、これは近年の土地なし農民の急速な拡大に直接的に反映している。また大豆のモノカルチャーに囲まれて生きているコミュニティは日々脅かされている。大農園の「武装ガードマン」は農村部の「パラミリタリゼーション」を引き起こし、警察力の腐敗と農村部の組織へを脅かしている。
 そして大豆生産は、農薬中毒、「合法」な土地からの排除、国家領域の外部への移転、食糧主権、そして領域への主権の喪失など異なる暴力も引き起こしている。
 パラグアイの大土地所有(ラティフンディオ)が享受してきた歴史的な免責が、農企業体の急速な拡大に良好な環境を提供してきたことは疑いの余地がない。これが外国投資を引きつけるのに不可欠な性格である。資本を得るためだけに来た土地においては、法もなければ、従うべきモラルも持たない。免責状態で活動できる確証と、マフィア的なやり方で事業が立ち上げられればいい。
 1989年に独裁政権が終わりを告げたあとにも、100人以上の農民リーダーが殺害されているが、調査がなされ、犯罪者が処罰されたのは一件だけである。また抗議行動を犯罪と見なすやり方も顕著である。2004年だけで1156人もが拘束されている。それもたった230万人の農村人口の国でである。ブラジルは農村人口が3200万人もいるが、同じ年に拘束されたのは421人に過ぎない。
 
 <選択的殺害>
 2007年のパラグアイ人権委員会la Coordinadora de Derechos Humanos Paraguay (CODEHUPY)の報告書によると、1989年から2005年にかけて75の恣意的な処刑を把握しているとのことである。こうした殺害事件の被害者は土地回復運動に関与した若者や地域のリーダーである。こうした恣意的な処刑は、コミュニティに恐怖を植え付け、抵抗する精神を奪い、組織ベースのリーダーを排除するために行われているという。またこうした犯罪の大半はモノカルチャーの拡大と結びつけることができる。大豆生産は土地へのアクセスを妨げ、さらに組織されている農民への暴力を引き起こしているのである。大豆生産の拡大が著しくなった94年以降、69の恣意的な処刑が記録されている。2ヶ月に一人の割合である。こうした地域は機械化農業のフロンティアのある地域とも一致している。準警察機関、暗殺グループが53の事件の加害者であり、22が警察によるものである。 
 2000年のサンタ・フェ・パラナでは土地なし運動のリーダーであったフランシスコ・エスピノーラがブラジル人が借地をした大農園の武装グループに暗殺されている。2005年にも別のリーダーが殺害されている。これらの事件は、違法に土地を借地している大豆農家の土地の収用を求めて闘っていたパラグアイ農民運動のメンバーが被害者となっている。2002年のブラジル系の企業の土地をめぐっての土地占拠の際にもリーダーの殺害事件が起きている。また2007年にはサン・ビセンテにおいて4人の農民が殺害されている。これは93000ヘクタールを有する大農園の土地に囲い込まれている森に猟に行った際に殺害されたものである。大豆生産の拡大で森林も伐採された上に、自然資源へのアクセスも制限されている。
 
 <土地占拠と暴力>
  強制排除の際にも、農民組織に対して暴行がなされている。パラグアイでは土地占拠闘争によって作られた多くの農民コロニーが存在するが、こうした活動を犯罪とみなすプロセスも継続している。大豆のモノカルチャーの拡大によって土地が枯渇し、また不動産への投機による価格上昇で土地にアクセスできなくなる事態が生じている。このことが土地なし住民に対する強制排除における暴力へつながっている。また刑法の改定によって、不動産への侵入は5年までの収監と定められた。30%の農村人口が土地を持たない国で、土地を持たないが故に、それを求めることで、刑務所に入れようというのである。
 FIANはこうした強制排除は、食糧への権利、住居への権利、また市民としての身体的統合性や自由への権利を侵害するものであると指摘している。 
 (ここから土地占拠に対する弾圧、暴行事件の事例が紹介される。国有地を囲い込んで森林伐採を行って大豆生産をしていた農企業体の土地占拠に対する弾圧、自給用作物の焼き払いなど。本来土地が収用されて然るべきところでも弾圧されている。また強制排除の執行命令がないにもかかわらず検察、軍、警察、武装ガードマンなどが参加した排除も行われている。また銃撃を行い、6名を死傷させた強制排除の後、農民側の勝訴となったケースもある。しかし農園主は逃亡し、法的な追求がなされていない、など)

 <農薬散布に関わる暴力>
 農薬はコミュニティーの生活を悪化させ、作物や家畜そして人間に対して被害を与える、隠された武器となっている。これは人々が耐えきれず、生き延びるために逃げ出すまで続けられるのである。
  (近隣への影響を無視して行われる、大農園による農薬散布の被害が広がっているとのこと。これらによる入院、死者も出ている。結論部では、パラグアイの領域に年間2000万リットルの農薬が散布され、2004年には400人の急性中毒が報告されていると述べている)

 <結論>
 農企業体の押しつけや世界市場への参入がパラグアイ社会の裂け目を深化させている。このような資本の流入が統治できない力へと変化し、汚職や農民への暴力を増やしている。パラグアイ政府はこうした動きの共犯者であり、さらには貧困を犯罪化し、都市への人口流出に寄与しているのである。
 大豆生産による社会的、環境的な影響は技術面のみでは解決できない。既に紛争は環境問題を超えているのである。これは農民に対する戦争の一つである。こうした暴力の背景には、領域を空にして、その後に新しい権力に従順な人々で再入植化しようという戦略がある。新しい住民は融資と市場への従属によって縛り付けられるのである。静かに、隠された戦争である。

 以上、訳・整理は開発と権利のための行動センター  青西
 

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