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2008/03/27

食料価格高騰と政治的対立の深化(ボリビア/アルゼンチン)

 食料価格の高騰に伴う対応が、政治的対立を激化させる事件が南米で続いています。

 ボリビアでは食用油の値上がりが続く中で、3月19日、政府は食用油の一時的な輸出禁止措置を取りました。食用油は昨年は77%、今年に入っても39%も価格が上昇したとのことです。しかしボリビアは植物性食用油の材料となる大豆等の生産国であり、食用油は国内消費量が7万トンであるのに対し、輸出量は35万トンに上ります。*1)
 ボリビアの大豆生産はサンタ・クルス県を中心に行われており、既に新憲法や地方自治の問題を巡ってサンタ・クルス県と政府の対立が続く中で、この輸出禁止令はまさに火に油を注ぐこととなっています。更に、食用油生産は少数の企業の手に握られており、その一つは現政権への最大の反対勢力であるサンタ・クルスのコミッテ・シビコ(地域の自治政治運動体)の代表の兄弟が所有する会社であり、政府の規制が反政府勢力をねらい打ちにしたものだという反発もあります。
 この輸出禁止措置に対して、サンタ・クルスの大豆生産業界は反発を強め、関連産業の操業を停止するとともに、「自治」を口実に、政府の規制を無視して輸出するという態度を示しています。*2)

1)http://www.laprensa.com.bo/noticias/20-03-08/20_03_08_nego1.php
2)http://www.laprensa.com.bo/noticias/26-03-08/26_03_08_poli4.php
 http://www.laprensa.com.bo/noticias/26-03-08/26_03_08_poli5.php
             
  一方、アルゼンチンではクリスティナ・フェルナンデス政権が、大豆、ひまわりの輸出税を引き上げ、トウモロコシ、小麦に対しては引き下げる方針を打ち出したことから、農村部で反発が広がり、2週間近くもストライキが続いています。政府側は農村部の雇用を縮小させる過度な大豆生産の拡大を抑制し、自給用の農産物など、バランスのある農業生産を目指しているとのことです。
 しかしこの政策に対して農業団体が反発し、ストライキを続けています。これに富裕層を中心として支持を表明するデモが行われる一方で、貧困層のデモ隊と対立するという状態も招いているようです。また都市部の食料品の供給も不足してきているとのことで、今後の階級間の対立の深化が懸念されています。
 アルゼンチンは農産物輸出大国でありながら、輸出向け大豆生産の過度の拡大などにより、国内消費向け農産物生産が圧迫を受け、十分な供給がないという事態になっているとのことです。

 参考資料
 Anunciaron modificaciones en las retenciones a la exportación de granos  http://www.casarosada.gov.ar/index.php?option=com_content&task=view&id=1772&Itemid=66
  BBC:Argentina: escasez de alimentos   http://news.bbc.co.uk/hi/spanish/business/newsid_7291000/7291979.stm
  BBC:Argentina: campo desafía a Cristina    http://news.bbc.co.uk/hi/spanish/latin_america/newsid_7303000/7303470.stm
  Jornada:Rechaza Cristina Fernández paro de productores rurales http://www.jornada.unam.mx/2008/03/26/index.php?section=mundo&article=031n1mun

 農産物価格高騰の中で、経済的に大きな力を持つ輸出向けの大規模農業生産者が更に力を強め、政府の介入を弱め、自由に富の追求を行うことを目指しています。単に利益を求める農業は、極論すれば、国内で飢え死にする人がいても、売れるものを作り、高い値で買ってくれる業者に売り渡すものと言えるでしょう。
  しかし農産物輸出国でありながら、国内での食料価格高騰や食料の不足が顕在化する中で、適切に市場をコントロールして、人々に食料を安定的に供給することは不可欠となっています。ボリビアとアルゼンチンでは、そうした政策に対し、力のある経済セクターが対立していくという構図が共通しています。サンタ・クルスで主張される「自治」も、言ってみれば、貧困層への配分を逃れられる「資本主義特区」を作ろうとする「自治」に過ぎないと言えるでしょう。
 一国内での食料問題を解決するとともに、高騰する世界の農産物価格を軟着陸させ、より安定的な世界農業のあり方を打ち出すことこそ、サミットの最大の課題ではないでしょうか。
  
 開発と権利のための行動センター
 青西靖夫

 追記:3/30 アルゼンチン関連情報など
1) Comunicados de prensa del  Movimiento Campesino de Santiago del Estero (MOCASE Vía Campesina) y luego el Movimiento Campesino de Córdoba (MCC)
http://www.ecoportal.net/content/view/full/77224
2)  El kirchnerismo con la soja al cuello http://www.adital.com.br/site/noticia.asp?lang=ES&cod=32308 
3)  No al modelo de agronegocios actual(el Movimiento Nacional Campesino Indígena (MNCI) http://www.adital.com.br/site/noticia.asp?lang=ES&cod=32308
4) A no confundir “el campo” con “los campesinos” http://www.ecoportal.net/content/view/full/77238 
5) EL GRR FRENTE AL PARO AGRARIO
http://www.grr.org.ar/documentos/paro%20agrario%202.htm
5)http://www.grr.org.ar/documentos/paro%20agrario%202.htm
6) BBCのサイトのParticipe でアルゼンチンの問題について様々な意見がかわされています。関心のある方はどうぞ。(スペイン語) http://newsforums.bbc.co.uk/ws/thread.jspa?sortBy=1&forumID=5791&start=30&tstart=0#paginator

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