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2008/03/03

国際的環境NGO:遺伝子組み換え作物についての報告書刊行

遺伝子組み換え作物について

 穀物価格高騰の中で、遺伝子組み換え作物拡大への戦略が広がっています。メキシコでもトルティージャ価格高騰に際して、遺伝子組み換えトウモロコシの導入を進めようという動きがありました。また数日前には「韓国が初めて遺伝子組み換えトウモロコシ輸入へ」というニュースも報道されました。 http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-30529220080227
 またビジネス・ウィークの2007年12月17日号は「遺伝子組み換え作物、事実上の勝利-安全性への懸念をよそに栽培農家は世界中で急増」という記事を掲載したようです。 http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20071214/143127/
  しかし遺伝子組み換え作物の広がりに疑問を呈する動きも続いています。フランスでは遺伝子組み換えトウモロコシの栽培を禁止しました。毎日新聞(2/10)「フランス:遺伝子組み換えトウモロコシを栽培禁止」 
 http://mainichi.jp/select/science/news/20080211k0000m030041000c.html
 農業情報研究所 「フランス政府 新たな科学的事実でGMトウモロコシ栽培禁止へ 長期的影響の一層の評価も必要」 http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/gmo/news/08011401.htm 
 
 こうした中で国際的環境NGOであるFriends of the Earthは2008年2月に「誰がGM作物で利益を得ているのか?」“Who Benefits from GM Crops?”という報告書を刊行しました。(英語・スペイン語・フランス語) http://www.foe.co.uk/campaigns/real_food/news/2008/february/who_benefits.html

 報告書では主として次のような点を取り上げています。
1:世界的なGM作物の栽培に関する概要
2:米国及び南米における農薬利用量の増加及び耐性雑草について
3:インドに焦点をあてた遺伝子組み換え綿花栽培について

 そこでこの報告書の内容を、補足情報も含め紹介します。
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 この報告書では遺伝子組み換え作物は「環境にも、社会的にも、また経済的にも利益をもたらしていない」という評価を下しているが、以下、この報告書がどのような点を指摘しているかを補足情報も含め紹介する。

1)農薬使用量の減少につながっていない
 報告書によると、米国において、2005年の大豆、綿花、トウモロコシ生産におけるグリホサート使用量は119,017百万ポンドとなっており、これは1994年の7933百万ポンドから15倍という数字になっている。
 また米国農務省のAgricultural Chemical Usage - Field Cropsのデータを利用しつつ、単位面積あたりのグリホサート使用量が増加していることも指摘しており、1994年から2006年において大豆で2.5倍、トウモロコシで2002年から2005年で35%近く増加したことを指摘している。
 このような単一の農薬に依存した農業の危険性の一つが次のような除草剤への抵抗性を持った雑草の出現である。

注)遺伝子組み換え作物の中では「除草剤耐性作物」が広く使われているが、これは、主としてモンサント社が開発した除草剤グリホサート(商品名:ラウンドアップ)という非選択性(多種の雑草に有効)の除草剤に対する耐性を組み込んだ作物となっている。このような遺伝子組み換え作物の利用で「除草剤をまくコストや労力が削減され」「環境にやさしい農業を行うことができます」というのが遺伝子組み換え作物の種子を売り込んでいるモンサント社の宣伝文句である。

注)圃場における使用量の変化については次のサイトからAgricultural Chemical Usage - Field Cropsの元データにアクセスできるので関心のある方はこちらにて確認頂きたい。(英語)
 http://usda.mannlib.cornell.edu/MannUsda/viewDocumentInfo.do?documentID=1560

2) 除草剤-グリホサートへの耐性を持った雑草の広がり
 「除草剤耐性作物」として特定の除草剤に耐性のある遺伝子組み換え作物を栽培し続け、作物には効かないが、雑草には効くという除草剤を散布し続けていることにより、その除草剤では枯れない雑草が増えつつある。
 報告書によると、1976年にグリホサートが導入された後、20年間はグリホサート耐性雑草の報告はなかったという。しかし「ラウンドアップ耐性・遺伝子組み換え作物」の導入以後、急速にグリホサート耐性雑草の報告が増えており、米国では既に8種が報告されているとのことである。
 
注)報告書が引用しているのはWeed Science Society のサイトであるが、ここには除草剤耐性品種のリストが掲載されており、グリホサート耐性の雑草は世界で13種が報告されている。(英語)
  http://www.weedscience.org/summary/MOASummary.asp
注)こうしたグリホサート耐性雑草の拡大については既に農業情報研究所のサイトでも既に報告されている。(日本語)
グリフォサート過剰依存で増える除草剤耐性雑草農業多様化が解決策と豪学者(2005/02)
 http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/gmo/news/05022301.htm
GM大豆はラテンアメリカの”新植民者”ーGM作物導入の影響の包括的新研究(2006/01)
  http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/gmo/news/06031701.htm
-独立行政法人農業環境技術研究所の”GMO情報: 除草剤耐性作物商業栽培10年を振り返る”、農業と環境 No.90 (2007.10)でも取り上げられている。
http://www.niaes.affrc.go.jp/magazine/090/mgzn09008.html
 
3)遺伝子組み換え作物を使っても収量は増加しない。
 これは「遺伝子組み換え作物」の利用が収量の増加を保証するものではないので、ここでは紹介を省略する。

4)種子供給の独占化
 報告書では種子価格の高騰、種子産業の集中、モンサント社による農民への訴訟問題などを取り上げている。

 この報告書ではこの点について十分に掘り下げられていないように思われるが、この点も遺伝子組み換え作物の大きな問題である。農業生産の現場から流通・加工に至まで、独占化、そして画一化が進み、多様性が失われていくプロセスが進行している。
 農業企業体が遺伝子組み換え作物を導入することで、あるいは農民が導入を強いられることで、地域が持っていた種子の遺伝的多様性が失われるとともに、圃場の管理技術も規格化され、在来の農業技術も失われていく。これは世界的な規模で「モノカルチャー」が進行していくことを意味している。既に問題となっている除草剤抵抗性の雑草の拡大もこうした「モノカルチャー」の結果の一つである。世界的な規模で、グリホサート耐性という同じ遺伝子を組み込まれた大豆が栽培され、同じ農薬が散布され続けた時にどのような事態が起こるのか、これは今だかって誰も経験をしたことがない状況である。そして明らかなのは、そうした世界はあまりにリスクが高い世界だということであろう。
 「グリホサート寡占状態は新たな除草剤の研究開発に対するメーカーの投資意欲にも影響するのではないかという指摘もある」、と上記の農業環境技術研究所の報告は触れているが、遺伝子組み換え作物の拡大、それと並行する独占化あるいは寡占化の進行は、種子・技術開発・生産資材・流通といった全ての側面で、市場メカニズムの機能不全を招くとともに、支配とリスクに対抗するための地域社会の人的・社会的な資本も蝕んでいくのである。
 
注)報告書の最初に遺伝子組み換え作物の動向が簡単にまとめられている。また遺伝子組み換え作物の動向については国際アグリバイオ事業団のサイトに世界の遺伝子組み換え作物の商業栽培に関する状況:2007 年という報告書のサマリーが日本語で掲載されている。(この組織は遺伝子組み換え作物の普及を目的としていることを前提として読む必要がある。)(日本語)
 http://www.isaaa.org/Resources/publications/briefs/37/executivesummary/pdf/Brief%2037%20-%20Executive%20Summary%20-%20Japanese.pdf

開発と権利のための行動センター
青西

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