« ブラジルアマゾンとセラードにおける気候変動、バイオ燃料と環境-社会インパクト | トップページ | 食糧価格高騰と食糧暴動 ・食糧危機(追記版) »

2008/03/15

大豆生産と南米ーアルゼンチンにおける大豆生産拡大の影響

大豆生産と南米ーアルゼンチンにおける大豆生産拡大の影響

いくつか目についた報告から抜粋してまとめてみました。もう少し体系的に調べないとわからないことも多いのですが・・・
日本にも入ってきている大豆生産の背景にアルゼンチンの農村部の崩壊と農薬による健康被害があるという事は言えると思います。

1)República Argentina: impacto social, ambiental y productivo de la expansión sojera
 26-02-08, Por Renee Isabel Mengo
 http://www.ecoportal.net/layout/set/print/content/view/full/76397/(printversion)/1
「大豆モノカルチャーの拡大によって、アルゼンチンの農業生産は大きな増加を遂げた。しかしこれは環境劣化と経済の集中、社会的排除を伴うものであった。マクロ及びミクロ経済の会計の中に含まれているべきであった自然資源の過小評価と過剰利用は、国際的、国内的な『近代的』農業生産モデルの効率性と有効性に疑問を投げかける」

<プロセス>
・1990年代後半、米国と並んでアルゼンチンは早い段階で遺伝子組み換え大豆の栽培を許可した。これはアルゼンチン農業が・1980年代より抱えていた土壌流亡の問題への解決策として受け入れられた。ラウンドアップ耐性の大豆が「不耕起栽培」を可能としたのである。また特許権が認められていなかったため、ロイヤリティーを払うことなく栽培できたのも受け入れられた背景にはあった。
・この新しい生産様式は、長期的な構造的危機への対応としての脱工業化の結果として生み出されたものであり、また国家経済を、限られた農作物の一次産品生産国家へ引き込むものとなった。
・このプロセスは、地域の環境に適合した種子という遺伝子資源を農民から奪っていくものであった。長年にわたって開発されてきた、小麦やトウモロコシ、エン麦、レンズ豆などの種子が消えていった。
・60年代よりゆっくりと拡大を続けていた大豆生産は、遺伝子組み換え大豆が認可された1994年以降急速に拡大し、アルゼンチンの穀物生産の半分以上を占めるようになる。

<遺伝子組み換え大豆栽培による問題>
・不耕起での連作が続けられている、ラウンドアップ耐性の大豆のモノカルチャー・システムが土壌の肥沃度と構造にどのような引き起こすのかわかっていない。
・アルゼンチン土壌の生物的な「砂漠化」が進行しつつある。土壌の硬化、未分解な有機物の過剰滞留、土壌温度の低下、土壌生態系の変化が引き起こされている。
・生態系の変化、農薬汚染などにより、野ウサギ、鳥類、チョウ類などの減少、消滅。
・ラウンドアップ耐性雑草の発生
・「Royo de Soja」といった新しい病害が発生してきている

<社会経済的影響>
・大豆の作付面積だけは拡大し、他の農産物の作付面積は減少している
・平均耕作面積は1988年の470haから538haに拡大
・35万ヘクタールの超巨大企業も存在する。
・経営面積の拡大、集中と並行して農村からの農業労働者の排除が進んでいる。
・1991年には農村部に427万人が居住していたが、2001年には260万人まで減少している。
・農村部、内陸の中小都市での失業率増加
・1988年から2002年にかけて10万の経営体(24.5%)が減少。
・生産性の高さは「自然による補助金」によるものであった。これが失われつつある。
・大豆生産によって世界的にも重要な生産物であった、小麦、肉といった食糧生産が衰退しつつある。
・富は集中し、また生産地域外へ運び出され、農村部の開発につながっていない
結論部では大豆依存、多国籍企業への従属を避け、食糧主権と国内市場向け生産の見直し、農村部の社会的つながりの再強化などが提言されている。 

2)Argentina: sojización, toxicidad y contaminación ambiental por agrotóxicos      (2007/09/03)
  http://www.infoalternativa.com.ar/hoy/index.php?option=com_content&task=view&id=5176&Itemid=59
 
ラウンドアップ耐性大豆と不耕起直播というシステムはグリホサート(ラウンドアップという農薬の成分)の無害性に依拠してきた。しかし「大豆化」に伴う農薬パッケージの影響、生態系全体への影響についてはほとんど研究がなされていない。

-大豆生産は1990年代の政治的・経済的・社会的混乱の中で急速に進み、このことに対する十分な社会的議論はなかった。
-しかし大豆生産地域における深刻な健康被害の前に議論が始まろうとしている。
-歴史的に体験したことがない、膨大な量の農薬が散布されているという事態がある。年間に2億リットル以上のグリホサートと2千から2千5百リットルの2-4-D、6百万リットルのエンドスルファン、6百万リットルのアトラジンが散布されている。
-大豆の問題ではなく、他の作物でもあり得る、利用されている生産技術モデルの問題である。またその影響が広範に広がっていることにある。

<健康被害>
-大豆生産地域(Pampa sojera)を訪問すると、ガン、障害児の出産、アレルギーなどが急速に増えているという告発がある。
-農村部での肝臓ガン他、消化器系のガンなどが都市部と較べ増えている。以前は都市部で多かった。
(白血病、ガンなどの増加した地域の事例が紹介されているが、ここでは省略する。原文を参照のこと)
-農薬散布飛行機が、湖や川の上でタンクを空にして、その後大量の魚が死亡するという事件も起きた。
-農薬単体としての毒性ではなく、一緒に用いられた際の毒性については調査がない。
-グリホサートの残留調査はアルゼンチンでは行われていない。
-アトラジンはアルゼンチンでは毒性が低いとされ、規制されていない。
-Barrio ItuzaingoとColonia Lomas Sanesの事例が紹介されている。

3)Argentina: lo que la soya se llevó...Desnutrición y   hambre en el país de los alimentos  (2007/09/07)Por Mariela Zunino 
   http://www.ecoportal. net/layout/set/print/layout/set/print/content/view/full/72703

「大豆生産が急速に拡大しているアルゼンチン北部は40%が貧困線以下にいる」
-チャコ地方で7月から9月までに14人の先住民族が栄養失調や病気で死んでいった。
-チャコ地方には10年ほど前から農業フロンティアが拡大し、大豆生産が広がってきている。「パンパ化」これは輸出向け農業開発モデルが押しつけられてきていることとなる。
-1990年に5万ヘクタールだった大豆の作付面積が2000年に41万ヘクタールに。2006/07年の作付け期には70万ヘクタールにまで広がっている。
-大豆生産の拡大の中で、小規模な農家は必要な投入資材などを揃えられず消えていった。また雇用も減少。大豆は5分の1の雇用しか生み出さない。地域の所得は増加しない。
-綿花から大豆に転換が進み、農村部の雇用が縮小
-土地の集中が進む。7%の土地所有者が70%の土地を有する。1995年に4百万ヘクタール存在した公有地が66万ヘクタールに。大半は大豆生産者の手に渡った。
-土地が囲い込まれ、家畜の放牧に利用していた道が閉ざされた。
-先住民族や農民に対して体系的な暴力が行使されている。排除や脅迫、意図的な水源汚染など。大豆生産者が地域から住民を排除するために行っている。
-急速に森林破壊が進んだ。
-農民組織の抵抗運動、排除への抵抗運動なども組織されている。新しい交易手法の模索や種子交換なども行われている。

「アルゼンチンで支配的な現在の大豆モデルは、人々を、特に先住民族の人々を、人々の食糧主権や土地、森を打ちのめしてきた。何世代にも渡って生活し、生命の源であった土地は、略奪され、侵略され、今では柵と有刺鉄線がその道を閉ざしている」
「チャコにおける先住民族の死は、第一には政府の無関心や政府機関の機能不全、汚職、政府内に根付く差別などによると言えるであろう。しかしその根底には少数の者の利益に執着し、空腹や貧困、離村を脇に置いてきたことにある」
「大豆のモノカルチャーは多国籍企業による独裁を進めるものである」

開発と権利のための行動センター
青西

|

« ブラジルアマゾンとセラードにおける気候変動、バイオ燃料と環境-社会インパクト | トップページ | 食糧価格高騰と食糧暴動 ・食糧危機(追記版) »

アルゼンチン」カテゴリの記事

経済・政治・国際」カテゴリの記事

食糧・農業・大豆」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/50657/40503462

この記事へのトラックバック一覧です: 大豆生産と南米ーアルゼンチンにおける大豆生産拡大の影響:

« ブラジルアマゾンとセラードにおける気候変動、バイオ燃料と環境-社会インパクト | トップページ | 食糧価格高騰と食糧暴動 ・食糧危機(追記版) »