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2008/05/02

5月4日を前に懸念されるサンタ・クルスの状況

   追記 5/6 「住民投票」の結果
 既に日本のメディアでも報道されているが、出口調査の結果では自治憲章への賛成票が85%という数字が出されている。しかし反対派が棄権を呼びかけているので出口調査で賛成の比率が高くなるのは当然と思われる。現政権支持派の多い農村部での棄権が多いと思われるので、最終的な投票率は相当下がることが想定される。(しかしマスメディアでは既に85%の数字が踊っている)
 都市周辺部や農村部からは、衝突や投票妨害、不正投票などもあったようである。
 この投票を通じて、国内での亀裂、サンタ・クルス県の住民間の亀裂が更に深まったことには間違いがないであろう。

 Bolpressのサイトに、サンタ・クルスの新聞社であるEl Deberに掲載を拒否されたという、市民セクターからの声明文が掲載されています。ちょっと訳す時間がないのですが参考までに
Pronunciamiento de la sociedad civil al pueblo de Santa Cruz y a todo el paíshttp://www.bolpress.com/art.php?Cod=2008050420

 
 懸念されるサンタ・クルスの状況

 日本から遠いボリビアの話はいまだ日本のメディアではほとんど伝えられていないようだが、1年ほど生活したことがあるボリビアのサンタ・クルスの動きが気にかかっている。サンタ・クルスで進められている自治の動きは、様々な形での暴力を発現させる危険がある。既にサンタ・クルスでは、5月4日の自治憲章承認のための「住民投票」にNOを言えない雰囲気が広がっているという。
  (一部削除/2008/07/09 日本政府は4月9日懸念を示す談話を発出)

 米州機構も、この「自治」の動きが暴力的対立を引き起こし、地域を不安定にするものであると憂慮し、政府と「自治」推進派の仲介の努力を行っているが、時は刻々と過ぎていく。
 
 サンタ・クルス県の自治の推進に対して肯定的な人々の中にも、現在の「自治」推進派のやり方に疑問を持っている人たちがいる。自治は進めたい、しかし現在の自治憲章を認めることはできない、ボリビアの憲法の枠組み、つまり憲法改正を踏まえて、正統性のあるプロセスとして自治を進めたい、そうした声が存在する。もともと2006年の住民投票で支持されたのは、憲法改正に基づく自治であったにもかかわらず、憲法改正案に不満を持つ野党右派勢力を中心として現在の「自治」の動きが進められている。そして今回の自治憲章制定プロセスには、正統な手続きを踏んだ代表選出は行われていない。つまり誰かの考えた「自治」が、あたかも自治であるかのごとくに推進されている。さらには85%のサンタ・クルス県住民がこの内容を知らないという。1)

 また「自治」の背後に、土地問題への利害があることが指摘されている。「自治」推進派の中で大土地所有者、アグリ・ビジネス関係者などサンタ・クルス県の経済エリート層が重要な役割を占めている。サンタ・クルスの大土地所有は、軍政期に違法な土地分配などをもとに強化されたものであるが、民政下においても、サンタ・クルスなどの東部出身者が農業大臣を歴任するなど、経済・政治的権力を維持している。サンタ・クルス県に本部を置き、農業政策や土地政策に関する分析を行っている「フンダシオン・ティエラ」のミゲル・ウリオステ所長は、自治憲章は、県政府、実際には県知事に土地所有の規定に関する権限を集中させるものになっていることを指摘し、「自治憲章の目的は、現在の土地所有構造と非生産的なラティフンディオを擁護することにある」と断言している。また農地法を履行し土地を分配しようとしている現政権の政治的意志が、不要に対立を煽っているような点もあるが、現在の政治的対立の主たる要因となっていると分析している。2)
  土地問題は既に自治推進派と政府機関の衝突を引き起こしており、自治憲章の承認後にも、通常業務として土地政策の遂行をしようとする政府機関と「自治」派が衝突する危険がある。農地改革推進を目指す政権と反動勢力が衝突するという、20世紀の中頃のような対立が、クーデターの代わりに「自治」の姿を取って現れている。
 さらに複雑なのは民族的な対立が懸念されることにある。自治憲章は161条で「メスティーソ」であることを持ち上げ、その後に県出身の先住民族としてチキタノ、グアラニ、グアラヨ、アヨレオ、モヘニョだけに言及している。巧妙に高地からの移民である先住民族を排除し、先住民族間を分断している。しかし自治憲章の文言以前に憂慮されるのは、暴力的な傾向を持ち、人種差別的な発言を繰り広げるサンタ・クルスの若年層のグループの振る舞いであろう。
   
  5月4日の「住民投票」を強行することで、法的な根拠を欠き、国際社会から承認される道筋もない「自治」の独走が、行き場を失って暴力的な反動を強めることになるのではないか、危惧される。

 開発と権利のための行動センターでは、将来的にボリビアで活動を展開する可能性も念頭に起きつつ、現状の注視を続けている。

 開発と権利のための行動センター
 青西
1) Nuestra AUTONOMIA soñada NO ESTA en el proyecto de ESTATUTO, Santa Cruz SOMOS TODOS
(次のサイトより)
http://ftierra.org/sitio/index.php?option=com_content&task=view&id=149&Itemid=130
2) http://www.laprensa.com.bo/noticias/30-04-08/30_04_08_poli1.php
  その他ボリビア関連記事はこちら
 http://cade.cocolog-nifty.com/ao/cat1516757/index.html 

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