グアテマラ:バイオ燃料と土地問題
内戦の終結に際して結ばれた和平協定は次のことを定めている。「入植地域、特にペテンや北部横断帯(フランハ・トランスベルサル・デル・ノルテ:FTN)において不正規に引き渡された国有地を政府は法的な対応によって回復することを約束する」。そしてこの土地は小農民への土地分配の対象となるはずであった。[社会経済及び農業に関する協定 III.B.34.(c)]
ウエウエテナンゴ県からキチェ県、アルタ・ベラパス県、イサバル県をまたがる北部横断帯は開発地区とされたが、内戦期において、多数の政治家や軍人がFTNに違法に土地を入手したと言われている。しかし内戦の終結後もこの協定は守られることもなく、誰も土地の回復には取り組んでこなかった。
しかし、今この土地にバイオ燃料生産のためのアフリカ・ヤシ・プランテーションが触手を伸ばしつつある。インフォプレス紙によると、パルマ・デル・イシュカン社はアルタ・ベラパス県を中心に、2万5千ヘクタールのプランテーションを経営するための土地購入を進めているという。[1] この記事によると、70年代、80年代に土地を入手した軍人も、正式な土地権利書がないままに、企業に土地を売却しているという。また10コミュニティが土地を売却したという報告もなされている。。土地売却には、高額な価格の提示から、脅迫まで様々な手段が用いられているという。
同時に農民側が「土地基金」を通じて入手した正式な権利書のある土地を、即座に売却するというケースもあるという。
アルタ・ベラパス県のパンソスにおいては、エタノール向けのサトウキビ生産を拡大する農園と伝統的にその土地でトウモロコシを生産してきたケクチ農民との土地紛争が勃発し、農民が暴力的に土地から排除されるという事件も報告されている。[2]
また環境団体の報告書によると、アフリカ・ヤシプランテーションに土地を売却した農民によるペテン県内の保護区への侵入が指摘されている。[3]
既にこのブログでも指摘しているが、バイオ燃料原料の生産によって土地の集中/再集中が進み、土地なし農民化が進んでいくこととなる。農村部で雇用が創出されれば、そこに吸収される可能性もあるが、実際には土地なし農民は農業フロンティアに向かって移動していくこととなるであろう。そこで森林や自然保護区の土地への耕作圧力が高まることとなる。
また農村部の土地なし農民あるいは土地なし農業労働者の増加は、土地-トウモロコシという自給基盤の喪失という点で脆弱なグループを形成することとなる。国内他地域の穀物生産量、国際価格などにも影響されるのでバイオ燃料原料への作付け転換がどの程度グアテマラ国内の穀物価格に影響を与えるのかを推測することは難しいが、食糧価格の高騰に対して、より脆弱がグループが生み出されることについて、深く検討される必要がある。
正式な土地登記がなされていない点については、大農園主にとっても、小農民にとっても障害となるはずであるが、不当に国有地を占拠してきた農園主などにとっては、このバイオ燃料ブームが、土地を売り逃げるいい機会となっているように思われる。その一方で土地権の脆弱な小農民の土地は二束三文で買いたたかれるか、さもなくば、不法占拠者として排除される危険に晒される。
また資本や情報へのアクセスが限られている小(中)農民が、バイオ燃料ブームの中で、自営商品作物生産者として確立していく可能性も限られている。土地を登記し、融資を受け、作付けのために土地を整備し、収穫時期まで待つことができる余力のある農民は非常に限られているであろう。大企業が精製工場を整備し、採算にあうだけの直接の生産量を確保し、その上で近隣の生産者との契約栽培を広げていくというケース以外には、大規模プランテーションが優越していくこととなるであろう。
このように考えてきたときに、グアテマラにおけるバイオ燃料生産が直接的に小農民の利益になる可能性は極めて低い一方で、既存の経済構造を再強化し、不公正な開発を推し進める危険がある。
<以上>
ほとんど繰り返しのような内容ですが・・・バイオ燃料よりも「土地の再集中」という問題を見ていく必要があるのだろうと思っています。
[1] Inforpress centroamericano No.1767、2008/08/29
[2] Rigths Accion (080710) http://www.rightsaction.org/urgent_com/CUC_attack_071008.html
[3] Laura Hurtado,Informe de Consultoría ¿Hacia dónde va la Reserva de Biosfera Maya? Instituto de Incidencia Ambiental,2005/07
開発と権利のための行動センター
青西
ウエウエテナンゴ県からキチェ県、アルタ・ベラパス県、イサバル県をまたがる北部横断帯は開発地区とされたが、内戦期において、多数の政治家や軍人がFTNに違法に土地を入手したと言われている。しかし内戦の終結後もこの協定は守られることもなく、誰も土地の回復には取り組んでこなかった。
しかし、今この土地にバイオ燃料生産のためのアフリカ・ヤシ・プランテーションが触手を伸ばしつつある。インフォプレス紙によると、パルマ・デル・イシュカン社はアルタ・ベラパス県を中心に、2万5千ヘクタールのプランテーションを経営するための土地購入を進めているという。[1] この記事によると、70年代、80年代に土地を入手した軍人も、正式な土地権利書がないままに、企業に土地を売却しているという。また10コミュニティが土地を売却したという報告もなされている。。土地売却には、高額な価格の提示から、脅迫まで様々な手段が用いられているという。
同時に農民側が「土地基金」を通じて入手した正式な権利書のある土地を、即座に売却するというケースもあるという。
アルタ・ベラパス県のパンソスにおいては、エタノール向けのサトウキビ生産を拡大する農園と伝統的にその土地でトウモロコシを生産してきたケクチ農民との土地紛争が勃発し、農民が暴力的に土地から排除されるという事件も報告されている。[2]
また環境団体の報告書によると、アフリカ・ヤシプランテーションに土地を売却した農民によるペテン県内の保護区への侵入が指摘されている。[3]
既にこのブログでも指摘しているが、バイオ燃料原料の生産によって土地の集中/再集中が進み、土地なし農民化が進んでいくこととなる。農村部で雇用が創出されれば、そこに吸収される可能性もあるが、実際には土地なし農民は農業フロンティアに向かって移動していくこととなるであろう。そこで森林や自然保護区の土地への耕作圧力が高まることとなる。
また農村部の土地なし農民あるいは土地なし農業労働者の増加は、土地-トウモロコシという自給基盤の喪失という点で脆弱なグループを形成することとなる。国内他地域の穀物生産量、国際価格などにも影響されるのでバイオ燃料原料への作付け転換がどの程度グアテマラ国内の穀物価格に影響を与えるのかを推測することは難しいが、食糧価格の高騰に対して、より脆弱がグループが生み出されることについて、深く検討される必要がある。
正式な土地登記がなされていない点については、大農園主にとっても、小農民にとっても障害となるはずであるが、不当に国有地を占拠してきた農園主などにとっては、このバイオ燃料ブームが、土地を売り逃げるいい機会となっているように思われる。その一方で土地権の脆弱な小農民の土地は二束三文で買いたたかれるか、さもなくば、不法占拠者として排除される危険に晒される。
また資本や情報へのアクセスが限られている小(中)農民が、バイオ燃料ブームの中で、自営商品作物生産者として確立していく可能性も限られている。土地を登記し、融資を受け、作付けのために土地を整備し、収穫時期まで待つことができる余力のある農民は非常に限られているであろう。大企業が精製工場を整備し、採算にあうだけの直接の生産量を確保し、その上で近隣の生産者との契約栽培を広げていくというケース以外には、大規模プランテーションが優越していくこととなるであろう。
このように考えてきたときに、グアテマラにおけるバイオ燃料生産が直接的に小農民の利益になる可能性は極めて低い一方で、既存の経済構造を再強化し、不公正な開発を推し進める危険がある。
<以上>
ほとんど繰り返しのような内容ですが・・・バイオ燃料よりも「土地の再集中」という問題を見ていく必要があるのだろうと思っています。
[1] Inforpress centroamericano No.1767、2008/08/29
[2] Rigths Accion (080710) http://www.rightsaction.org/urgent_com/CUC_attack_071008.html
[3] Laura Hurtado,Informe de Consultoría ¿Hacia dónde va la Reserva de Biosfera Maya? Instituto de Incidencia Ambiental,2005/07
開発と権利のための行動センター
青西
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