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2008/10/13

9月11日の農民虐殺事件から一ヶ月

 これまでの記事の内容も利用しつつ、最近の動向を整理します。

 9月11日、ボリビアの北東部、ブラジルと国境を接するパンド県で、現モラレス政権を支持する農民組織の集会を阻止しようとしたパンド県知事支持者グループが、農民グループを待ち伏せ、襲撃するという事件が発生。18人が死亡。更にいまだ68名の行方不明者がいるとのことである。[1]この事件では県知事の支持者や雇われた殺し屋が農民を銃撃したとのことであり、さらには川を泳いで逃げる人々へ銃撃を加えている映像が、政府公報のインターネット・サイトにおいて掲載されている。[2] この事件の後、パンド県には戒厳令が敷かれ、軍が展開。数日間を経て、治安を回復。また16日にはレオポルド・フェルナンデス県知事も軍に拘束され、首都ラパスに移送の後収監された。

 この事件をきっかけに、現政権への反対勢力による実力行使は終結。政府と紛争の原因となってきた諸問題を解決するための対話の再開に合意し、炭化水素直接税の配分、県の自治憲章と新憲法案について協議を行うこととなった。[3]
 また「南米諸国連合(Unasur)」の緊急首脳会議が9月15日に開催され、ボリビア政府を全面的に支持する宣言が採択された。宣言は、暴力行為の停止を求めるとともに、政府関連機関の返還、パンドにおける虐殺事件を強く非難するとともに調査のための委員会設置、ボリビア国家の統一、領土の不可分、対話の再開と法の尊重に基づく解決、対話に同伴する委員会の設置などの条項を含んでいる。[4]
 
 なお国連の先住民族の権利に関する特別報告者であるジェームズ・アナヤ氏は、9月18日、ボリビアのベニ県、パンド県、サンタクルス県、タリハ県など東部諸県における暴力が、先住民族とその権利の擁護のために活動している機関を危険にさらしていると非難する声明を発表。特に11日にパンド県で発生した、準軍事組織による農民組合に対する待ち伏せ攻撃による殺害事件、また頻発している先住民族組織や支援NGOの事務所への襲撃事件を告発した。9月にはボリビア東部先住民族連盟(CIDOB)、サンタクルス先住民族調整機関(CPESC)といった先住民族組織に加え、支援組織である法的研究・社会調査センター(CEJIS)や農民支援調査センター(CIPCA)といったNGOの事務所が襲撃、破壊された。それだけではなく、暴動の中で、政府の農地改革庁の出先事務所も各地で占拠され、文書が焼失している。[5] 

 9月17日に国際機関の仲介を受けて開始されたモラレス政権と「自治」推進派の県知事との対話において、炭化水素直接税の配分と自治のあり方について協議が行われた。しかし9月末になって「自治」推進派の諸知事は自治以外の点に関しても新憲法案を見直すことを要求、それ以降対話は頓挫した。一方、双方の代表を含めた専門家会議は、炭化水素税の扱い及び自治に関して合意文書。しかし「自治」推進派は最終的に政府と合意を結ぶことを拒否。政府側はこの専門家会議の結果を新憲法案修正に盛り込んでいくことを表明。オブザーバーとして参加していた国連や米州機構の代表も、この結果を取り入れていくことを要請した。

 この対話の終了を受け、議論は国会の場に移されることとなった。11日より与党及び野党3党の代表によって組織された委員会が新憲法案の見直し点について議論を進めており、この成果が議会での審議に取り込まれるものと思われる。その後の国会審議においては、新憲法案承認のための国民投票法案についての審議に際して新憲法案の修正がなされるものと思われるが、制憲議会で定められた新憲法案をどのような手続きにおいて修正するのかなど不透明な点も残されている。

 また13日以降は、新憲法制定を支持する先住民族組織による大規模なデモ行進も計画されており、21日には5000人のデモ隊が首都ラ・パスに結集する予定とのことである。

[1] Jefe policial afirma que siguen desaparecidas 68 personas en Pando
 http://www.bolpress.com/art.php?Cod=2008101005&PHPSESSID=a879bfc371657094abd303e9dd24eb7b
[2]AgenciaBoliviana de Información
   http://www.abi.bo/index.php   
[3]ボリビア:凄惨な虐殺事件を経て遂に対話再開(080917改) 開発と権利のための行動センター
  http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2008/09/post-99eb.html
[4] http://www.abi.bo/index.php?i=noticias_texto_paleta&j=20080915233826&l=200809150031_Bachelet_y_Morales_en_la_reunión_de_Unasur_(Presidencia_de_Chile/ABI).
[5]先住民族の権利に関する特別報告者:ボリビアにおける先住民族に対する暴力を強く非難 開発と権利のための行動センター http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2008/09/post-87de.html
  
 なお、日本ラテンアメリカ協力ネットワーク のニュースレーター『そんりさ』に2回にわたってモラーレス政権の改革と「自治」についての記事を掲載しました。後日、整理して公開する計画です。

  開発と権利のための行動センター
  青西

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