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2008/10/21

「持続可能なオイル・パーム」とコロンビアの農民リーダー暗殺

 10月14日、コロンビアのクルバラドの農民リーダーであるバルベルト・オヨ・リベラ(WALBERTO HOYOS RIVAS)が、パラ・ミリタリーに暗殺されました。オヨ・リベラはバホ・アトラト地方において、パラ・ミリタリーによって、オイル・パーム拡大のために共有地が略取されている事実を明らかにしていました。またオヨ・リベラは、パラ・ミリタリーによる2005年の別の農民リーダー殺害の証人でもあり、昨年も襲われており、今回の事件は、オヨ・リベラが米州人権裁判所の暫定処置により、内務・法務省当局による保護下にある中で起きた事件です。
 コロンビアのカトリック教会の正義と平和協議会の声明は「パームの植栽と粗放的牧畜が広がる中で、犯罪が続いています。唯一進まないのはクルバラドで引き起こされた犯罪の調査だけです。その一方で犯罪組織と企業は全ての違法行為を省みることなく、活動を続けているのです」と訴えています。[1]

 こうした中で、この10月16日、17日にかけて、コロンビアで 「持続可能なオイル・パームのためのラウンド・テーブル(RSPO)」が開催されたのです。正義と平和協議会のヘンリ・ラミレスは「この会議の開催は、生産国のコミュニティの現状について知らないことが多い世論に対して混乱したメッセージを送ることになるものです。例えばコロンビアのクルバラドでは、パームオイル事業によって、アフリカ系コロンビア人のコミュニティ共有地が暴力的に略奪され、また13の企業がパラミリタリーと結びついています。(昨日のオヨ・リベラの死で)これまでに140の犯罪が引き起こされ、13の強制排除がなされたのです」と語っています。[2]

 この「持続可能なオイル・パームのためのラウンド・テーブル(RSPO)」は「持続的な」オイル・パームの生産と利用を促進するために、国際的な自然保護団体であるWWF(世界自然保護基金)の積極的な関与の元に2004年に組織されたもので、現在256の団体が正式に参加しています。うち20団体がNGO、残りが生産者他、業界団体であり、日本の商社、企業なども複数参加しています。[3]
 今回、このRSPOの会議がはじめてラテン・アメリカで開催されることとなりましたが、数多くの環境団体がRSPOは、アグロ燃料生産に対する社会的な反発とネガティブな報道の前に、「グリーン・ウォッシュ」、見かけを取り繕うものに過ぎないとみなし、反対の声明を発表しています。
 声明ではRSPOは地域のコミュニティの権利を侵害する事業を正当化しようとするものに過ぎず、テリトリーと自然に大きな影響をおよぼす一方で、引き起こされた紛争の解決には何ら役には立たないと宣言しています。続けてこの宣言文では、オイル・パーム生産が引き起こす森林破壊、先住民族の権利の侵害、土地紛争の激化、農民の土地からの排除、食糧への権利の侵害といった問題を訴えています。[4]
 WWFはオイルパームだけではなく、大豆生産においてもラウンド・テーブルの設置に積極的に関与し、それぞれ認証制度を確立しようとしています。[5]こうした動きは温暖化対策としてEUにおいて進められつつある混合燃料政策と密接に結びつくものであり、また「企業の社会的責任」という流れとも合致することから広範な企業の支持を得られているのでしょう。しかしその一方でどちらの動きも地域の環境団体などから反発を受けているのです。
 日本では、こうしたバイオ燃料に関連するラウンド・テーブルの話もほとんど伝えられていませんが、グローバリゼーションの中で、市民社会や消費者が「認証」や「企業の社会的責任」を適切に評価するためには、市民社会のネットワークもグローバルに広がり、情報を共有することが求められています。
(2008/10/22)
 開発と権利のための行動センター
 青西

[1]Asesinado WALBERTO HOYOS -PARAMILITARES ASESINARON A LIDER DE CURVARADO
 http://justiciaypazencolombia.org/spip.php?article182
[2] Paramilitares asesinan en Colombia líder de una comunidad campesina opuesta a los monocultivos de palma aceitera
http://justiciaypazencolombia.org/spip.php?article183
[3]http://www.rspo.org/members_list.aspx?catid=37&ddlID=39&membercat=13
[4]Declaración Internacional contra la Mesa Redonda de Aceite de Palma Sostenible
http://www.biodiversidadla.org/content/view/full/44506
  下に宣言の一部整理をつけます。
[5]「責任ある大豆生産」のまやかしを拒絶する 開発と権利のための行動センター
http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2008/04/post_0aea.html


ラテンアメリカの環境団体他は、WWFが積極的に進めている「持続可能なオイル・パームのためのラウンド・テーブル(RSPO)」に反対する声明を発表。
Declaración Internacional contra la Mesa Redonda de Aceite de Palma Sostenible

 この声明では次のような点を訴えています。
 <問題点>
-RSPOが持続性の定義に、大規模プランテーションを含めていること。
-オイルパームの継続的な拡大を正当化するためにデザインされていること。
-大規模なモノカルチャーへの転換を含んでいる、いかなるモデルも持続的とは言えないこと。
-RSPOは経済成長とパーム・オイルの市場拡大に関心を持っているが、社会・環境の持続性には関心を持っていないこと。
-RSPOは産業界に支配されており、影響を受けるコミュニティは正当に協議を受けていないこと。。
-NGOの参加はこの受け入れがたいプロセスを正当化するだけである。WWFといった巨大なNGOはこのプロセスを進めているが、これは人々の真の問題を解決するどころか悪化させるだけであること。
-RSPOの形式は、個別のプランテーションを認証することを可能とするが、このことが生産全体の総合的な評価を回避することになること。社会・環境に対して無責任な活動をしていたとしても、抜きんでたプランテーションによって「環境に責任ある」と顕示することを可能とする。こうしたことは既に森林認証でも起きていたことである。
-これは「緑の化粧」を行うだけであり、現実を偽り、否定するものである。破壊的であり、社会的にも環境にとっても持続不可能な生産様式を「責任ある」ものと見せかけるだけである。

 EUやその他の機関は、アグロ燃料のための原料生産を持続的なものとする公式の基準の策定に取り組んでいるが、オイル・パームを含め、全てのアグロ・インダストリーによるモノカルチャーは持続的なものではないし、決して持続的にはなりえない。

 熱帯諸国において、これまでにオイル・パーム産業によって引き起こされた損害は既に修復不能であるが、それにもかかわらず、この宣言において次の点を要求する。
-オイル・パームによる新たな森林破壊と土地利用の変化を停止すること。
-森林や泥炭地を破壊している生産者から供給されるパーム・オイルを買い付けている企業との商取引を中止すること。
-大規模なモノカルチャーによって被害を受けている先住民族、アフリカ系住民、コミュニティ住民の人権を擁護すること。
-大規模なモノカルチャーの押しつけによって生み出された人的、また環境への被害へ、国家や企業による人権侵害への補償を保証すること。被害者のために真相を明らかにし、法的な処罰を行い、また補償をすること。
-パームのモノカルチャーに起因するすべての土地紛争を解決し、影響を受けた先住民族コミュニティ、アフリカ系コロンビア人コミュニティの伝来の土地を即刻返還し、またILO169号条約を執行すること。
-地域のコミュニティの土地とテリトリーへの権利を尊重すること。
-被害を受けたコミュニティによる告発等に対して耳を傾け、対応し、法的な措置をとること。
-オイル・パーム生産の無差別な拡大を正当化することになる、アグロ・インダストリーのロビー、RSPOのようなケースを受け入れないこと。未来の民族、地球を犠牲に大企業の利益を保証するようなことはしないこと。
-EUその他のアグロ燃料に対するインセンティブを即刻モラトリアムに入れること。義務的混合率や免税措置また排出権取引を利用した資金提供を停止すること。

 私たちは農産物、畜産物の生産、加工、流通、消費のあり方を大胆に変換すべき時期にいる。そのために次のようなことに取り組まなくてはならない。
-小規模な農村コミュニティの破壊や気候変動につながる工業的な食糧生産の停止。
-自然資源の私有化を終えること。
-アグリビジネスを解体し、第一次産品の投機、また食糧危機に対して責任ある経済・通商政策の中止。
-真の農地改革プログラムによって、工業的農業を小農民農業、持続的な家族農業に代替すること。
-持続的なエネルギー政策の促進。エネルギー消費を押さえ、大規模なアグロ燃料に代わり、ソーラーエネルギーや風力またバイオガスによって地域的にエネルギーを生産すること。
-農民の持続的な農業を進め、また地域の食品、エコロジカルな食品の消費を進めるような政策を、地域、国、国際的なレベルで進めること。このことは補助金を受けている食糧との歪んだ競争を引き起こす補助金の全面的な廃止も含むものである。

 2008年9月28日 Udine, Italia

 この声明文は、イタリアで開催された”El Encuentro de la Red de Alternativas a la Impunidad y a la Globalización del Mercadoにおいて、コロンビアの組織からの告発を受け止めて、採択されたものとのことである。

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