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2008/10/30

パナマの先住民族、集団的土地所有の権利を求めて米州人権委員会に提訴

 10月28日、パナマの先住民族の代表は、国が先住民族の土地への権利を脅かしているとして、米州人権委員会に対して申し立てを行った。
 28日の公聴会にはパナマの7つの先住民族、ノベ民族、ブグレ民族、クナ民族、ナソ民族、ブリブリ民族、エンベラ民族、ウォウナン民族を代表して、ナソ民族からフェリクス・サンチェス、ウーゴ・サンチェス、ノベ民族からはフェリシアーノ・サントス、エルネスト・ロペス、そしてウォウナン民族からレオニデス・キロスが参加した。
 
 公聴会において、先住民族の代表は、パナマには人口の12%の先住民族が居住しており、5つのコマルカ(先住民族テリトリー)が認められているが、残りの民族及びコマルカ外に住む先住民族に対して集団的な土地所有、コマルカが認められていない問題を訴えた。
 先住民族は土地への権利が侵害されていることに加えて、先住民族の土地におけるコンセッションの問題、政府による先住民族の政治組織への介入、警察の専横といった問題を取り上げた。
レオニデス・キロスは土地権侵害の問題として次のように訴えた
1)憲法127条において集団的土地所有が認められているにもかかわらず、その権利が十分に保証されていない。
 クナ、ノベ、ブグレ、エンベラ民族、ウォウナン民族に対して5つのコマルカがあるが、ナソ民族、ブリブリ民族は先住民族はコマルカを認められていないこと。また多くの先住民族がコマルカの外に置かれ、こうしたコミュニティに対しては集団的な土地所有が認められていないこと。ウォウナン民族のケースであれば16コミュニティのうち4つのみがエンベラ-ウォウナン・コマルカ内に位置するが残りは外にあること。
2)土地所有権確定の担当機関として農地改革局が指定されているが、これは個人所有地を確定してきた機関であり、先住民族の集団的な土地所有を確定するにはふさわしくない。
3)入植者による先住民族の土地への侵入
 非先住民である入植者が、国の中央地域からやってきて、土地に侵入し、森林を破壊し牧草地にして、大地主に売却している。政府はこうした入植者の権利を認めても、先住民族の権利を認めていないのである。 
4)先住民族は、自分たちの土地を守ろうとするだけで、テロリスト、ゲリラと言われてきた。
 パナマの先住民族は、権利の尊重を求めてきたが、政府は何もせず、その間にも暴力の被害を受けてきた。

ナソ民族の代表である、フェリックス・サンチェスは、土地のコンセッション、先住民族の文化の侵害、政治機構への介入、警察による暴力といった問題を訴えた。
1)水力発電、鉱山開発、観光にはコンセッションが必要であるが、これらが、先住民族の同意なく与えられ、開発が進められている。ノベ民族、ナソ民族などテリトリーにおいて多国籍企業に対して水力発電開発のコンセッションが与えられた。
2)鉱山開発、健康被害や生命への危険性
3)ボカス・デル・トロの島嶼部における観光開発による土地からの先住民族の排除
4)先住民族の土地権利の保全が急務である。
5)国家は、先住民族の政治機構に介入し、影響力を行使している。例えばナソ民族の伝統的なプロセスを無視して代表を押しつけようとしている。
6)水力発電ダム建設会社が先住民族の自由な通行の妨害
7)警察による弾圧。また開発側のみの擁護をし、先住民族を弾圧している。
 
 更に先住民族を代表して次の点を要請した。
1)現地において権利を侵害されている先住民族の状況について早急に調査を行うこと
2)パナマの先住民族の状況について調査を行い、報告書を作成すること
3)先住民族の土地権を尊重し、保証すること
4)チャン75ダムに脅かされるノベの状況に対して予防措置を取ること。

 パナマ政府はこれに対して、パナマ政府は先住民族の権利を尊重し、コマルカを設置するとともに、現在集団的土地所有を認めるための法案411について審議をしているところであり、先住民族の代表である議員も参加していると反論。
 更に人口で10%でしかない先住民族に対して既に22%の土地がコマルカとして登記されているのだと述べている。
 またダム開発に関しては、県レベルではなく、国の電力供給の15%を担えるものであること、現在の住民は1968年頃にその土地に生活しはじめたのであり、伝統的に居住していたわけではないと反論。また森林保護区として設定されているのであり、このダム計画地域の土地は、集団的土地所有地とも個人所有地とも登記はできないとしている。手続き的にも法に定められた環境影響評価等の活動を、住民の参加に基づいて実施してきているし、移転に関しても住民の合意を得て、近隣地に行っていると述べている。
しかし先住民族側は、コロンブスによる侵略以前からこの土地に住んでいたことをあらためて表明。1983年に設定された森林保護区についても、先住民族の同意なく押しつけられたものであり、法案411も先住民族との協議なく作成されたと反論している。またナソ民族は32年前からコマルカを要求していることをあらためて主張している。
<この公聴会の音声はは米州人権委員会の次のサイトよりダウンロードできる> http://www.cidh.org/Audiencias/seleccionar.aspx
 
 今回のCIDHへの申し立てに関しては、現在次のように考えている。
1)法案411については現在の法案の正確な文面がつかめていないのではっきりしないが、先住民族組織側としては、土地だけではなく、政治的な自治権の確立という点で法案411の問題を捉えているようである。その点でコマルカとして設定するのとは大きな違いが出てくるものと思われる。
2)この法案はこれまでのナソ民族によるコマルカの要求を妨げる、封印するものとなりえるものであり、先住民族の自治権を侵害している。
3)森林保護区としての制定が集団的土地所有も制約するということになると、ナソ民族のテリトリー確立はほぼ不可能となり、ダム開発だけではなく、自然保護区と先住民族の権利という問題も提起されることとなる。
4)警察による暴力的な弾圧、協議のあり方の問題についてはパナマ政府からは正確な反論はなされていない。

 CIDHによる調査が行われることを期待するとともに、先住民族のテリトリーの承認と自治権の確立が必要とされている。

 開発と権利のための行動センター
 青西

 開発と権利のための行動センターでもナソ民族の動きを支援するとともに、パナマの先住民族組織の動きとも連携をはじめています。こちらのサイトもご覧ください。
http://homepage3.nifty.com/CADE/campaign/panama/naso.htm
http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2008/07/post_4f31.html

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