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2009/04/22

コロンビアにおける土地からの排除と国内難民化

 コロンビアにおける土地からの排除(Desplazamiento)と国内難民化(Desplazados)について、いくつかの記事を紹介し、現状を知る手立てとしたい。
 コロンビア:増え続ける国内難民
 4月22日、コロンビアの人権組織CODHESから”Víctimas emergentes: desplazamiento, derechos humanos y conflicto armado"と題する報告書が公表された。この報告書によると国内難民は増え続けており、昨年一年間で380863人、76172家族が土地を追われ、国内難民化したという。これは2007年と較べて24%の増加を示している。
 2006年以降強制的な土地からの排除/国内難民化は増加する傾向にあり、非合法武装グループが支配を確立し、農民が軍事的な目標となり、その土地や財産が戦利品とみなされるようになってきたという。
 また2008年には13500人の先住民族が土地を追われている。これは国内難民の3.5%を占めている。こうした事態が、先住民族コミュニティの消滅や分断に拍車をかけている。
 女性に対する性的な暴力も、国内難民化を引き起こしている。2100人への調査結果によると17%の女性が国内難民化の原因に性的な暴力をあげているという。
 こうした土地から強制的な排除されるという事態は、領域への支配を巡って引き起こされるだけではなく、合法・非合法、また国内外の経済集団の利害、巨大プロジェクトや自然資源の採掘、紛争地帯におけるアグロ燃料生産のためのモノカルチャーの振興などとも関係しているのである。暴力に支配された状況が、経済的なモデルを押しつける絶好の機会となり、その中で先住民族やアフリカ系民族のコミュニティの存在などが邪魔になっているのである。

  Crece número de desplazados por conflicto armado(Aditalに掲載された記事)にほぼ依拠している。
 http://www.adital.com.br/site/noticia.asp?boletim=1&lang=ES&cod=38351
 報告書原文はこちら:Víctimas emergentes: desplazamiento, derechos humanos y conflicto armado
  http://www.codhes.org/images/stories/pdf/codhes%20informa%2075.pdf

 ”La tierra, una fuente de poder político y militar ”(土地:政治的・軍事的権力の源泉)カウカ大学の法・政治・社会学部のハイロ・エルナン・オルティス・オカンポ氏は、テリトリーへのコントロールを巡って土地からの排除が進みつつあると指摘している。

 国内難民は2006年の約24万人から2007年に約18万人に減少した。(注:上に紹介した情報とは異なっている)現在多いのは太平洋岸地域、アルト・パティア、そしてピエデモンテであり、これらの地域は武装ゲリラ組織(FARC,ELN)の活動地域であり、また Organización Nueva Generación、 Los Rastrojos、 Los Machosと言った新しいパラ・ミリタリーが現れつつある地域でもある。
 CODHESのデータによれば、32の県から毎日743人が移住を強いられているという状況である。 2002年から2007年にかけて、約131万人が国内難民となり、1997年からの10年間で285万人が土地を追われたこととなる。
 国内難民の75%が農村部から生み出されており、ここ15年間に武装グループ及び麻薬組織によって農民から5百万ヘクタールの土地が奪われたのである。これはコロンビアの国土面積の3分の1に相当する。国内難民の54%が土地所有者であったが、そのうち72%は土地を放棄し、13%のみが微々たる金額にせよ売却することができた。

 コロンビアにおける紛争は領域支配を巡る闘争という共通の性格を有する。コロンビアの政治に暴力は常につきまとっていたが、歴史的にも土地集中と結びついてきた。歴史的な農地問題について考えることで、暴力という現象についても理解することができる。暴力は国内各地に広がっており、それらは土地に対してそれぞれ異なる役割を与えてきた。しかし共通することは土地が政治的、軍事的な権力の源となってきたということである。今日では単なる土地所有を巡るだけではなく、戦略的な価値を持った領域のコントロールが目されている。住民の排除は土地の独占、すなわちその土地の資源や巨大な開発プロジェクトに隣接すると言ったことから生じる利益による戦略的な領域管理と関係している。土地からの強制的な排除が国の特定の地域で進んでいるのは偶然ではない。土地集中の高い地域で進んでいるのである。

 土地からの強制的な排除は、軍事紛争の結果ではなく、戦略的な資源のある領域から人を排除するために武装グループによって取られている戦略なのである。戦争があるから国内難民が生み出されているのではなく、住民を排除するために戦争が行われているのである。そこで軍事的な要衝以外でも住民の排除が進んでいるのである。
 
 麻薬密売は一部地域においては、土地集中の最大の要因である。「ナルコ大農園」は国内の優良農地うちの4百万ヘクタールを確保している。違法な経済活動を展開するために行われる領域コントロールのための闘争が強制的な土地からの排除の主要な原因である。

 「テリトリーの剥奪」。先住民族組織ONICによると17の先住民族が、土地からの排除などによって絶滅の危機にある。文化、自然資源、テリトリーと深い結びつきを保ってきた先住民族にとって、テリトリーを奪われるあるいは放棄せざる得ないことによる影響は更に深刻である。社会的な結びつきをずたずたにされるのである。 

 土地からの排除はそれぞれ異なる条件で進み、また異なる結果を引き起こしている。違法な(コカ)栽培に対する無差別な農薬散布政策、社会的紛争、労働者への需要、権利要求のための闘争、公的なスペースのコントロールなどの文脈の元でうみだされている。またそれは経済・政治・文化的なグローバリゼーションの中で現れているものでもある。巨大プロジェクトの実施、特定の地域や人への地政的な目的の賦与が、テリトリーの剥奪を引き起こしている。つまりテリトリー、文化、生物多様性、資源に対するコントロールを意味しているのである。

La tierra, una fuente de poder político y militar (2009.4.19)から構成
 http://www.elliberal.com.co/index.php/Primera/Politica/La-tierra-una-fuente-de-poder-politico-y-militar.html

 チョコ地方で2千人近くの先住民族が土地から追われる。
 3月19日付けのVERDADABIERTA.COMのニュースは、最近2週間で約2千人の先住民族が土地から排除されたというニュースを伝えている。チョコ県の太平洋岸では、エンベラ民族がRastrojosとゲリラ勢力であるELNとの対立や脅迫によって土地から追われているとのことである。
 15コミュニティの先住民族は、Rastrojosの約2百人のメンバーがテリトリーに侵入し、脅迫すると共に、ELNの逃亡グループとの抗争への協力を強いていると訴えている。さらにこの地域では、FARCのアウレリーノ・ロドリゲス戦線の存在があるが、Rastrojosと麻薬密売の取引を分け合う協定を結んでいるとのことである。
 バホ・バウドにおいても千人ほどのエンベラ民族の居住する9つのコミュニティが、二つの非合法武装グループの対立で荒廃させられてしまったとのことである。またメディオ・バウドでも35のコミュニティが複数の非合法武装グループによって避難を強いられているとのことである。
 先住民族は武装グループからの絶え間ない圧力にさらされており、そのテリトリーで狩猟や漁労に従事することが難しくなってきている。先住民族リーダーの一人は、「全ての非合法グループから脅迫を受け続けている。彼らは子どもたちをリクルートしようともしている。」と語っている。
 ACNURのコロンビア代表は、先住民族の保護に取り組む必要を強く主張している。
 この地域ではÁguilas Negras とlos Rastrojosというパラミリタリーまたゲリラ勢力であるFARC-EPとELNが先住民族テリトリーのコントロールを巡って対立を続けており、先住民族が土地から追われている。
 コロンビアでは27の先住民族グループが絶滅の危機に瀕しているが、内戦と強制的な土地からの排除の結果である。人々の生存は伝統的なテリトリーに居住しつつけることができるかどうかに大きく委ねられている。しかし不幸なことに多くの先住民族が土地を追われ、国のあちこちに散らばってしまったのである。
Cerca de 2 mil indígenas desplazados en las dos últimas semanas en Chocó  
http://www.verdadabierta.com/web3/conflicto-hoy/50-rearmados/1048-cerca-de-2-mil-indigenas-huyen-de-amenazas-y-violencia-en-colombia-

 3月13日付けのVERDADABIERTA.COMのニュースも同様にRastrojosによる先住民族の土地からの排除について伝えている。
 この記事ではRastrojosが麻薬搬出ルートを確保するためにドゥバサ川とカトゥル川の流域を押さえようとしていると伝えている。更にELNと麻薬ルートを押さえるために対立しているとのことである。Rastrojosはエンベラ民族をゲリラ勢力の支持者とみなし、暗殺対象者のリストを持って村に侵入してくるという。
 更に、Rastrojosは川岸に検問を設置し、通行する農民や先住民族から金品を取り上げ、銃床で殴りつけているという。こうした圧力で近隣のカトゥルの町に900人ほどの先住民族が避難しているという。
 更にこの記事は “Los Rastrojos”についても説明をしている。記事によるとRastrojosは麻薬密売組織の私兵集団としてはじまったとのことであり、現在1200人ほどのメンバーを有するとのことである。 
"Rastrojos" desplazan 500 indígenas embera en el Chocó
http://www.verdadabierta.com/web3/conflicto-hoy/50-rearmados/1018-rastrojos-desplazan-500-indigenas-emberas-en-el-choco

 チョコ地方の土地を奪った者たち
 セマーナ誌に3月14日に掲載されたこの記事も同じくチョコ地方における土地問題を扱っている。この地域では1997年に発生した軍とゲリラの戦争の中で、大規模な難民が発生し、バホ・アトラト地方で1万5千人あまりが土地を離れることになったという。またパラミリタリーもやってきては脅迫をし、殺害事件を引き起こした。
 その後10年近くたって、状況も落ち着いたらしいということで元の村に戻る人が出てきたが、村は破壊され、かわりにオイルパームの農園が広がっていたという。村の墓地にまでオイルパームが植えられていた。2万9千ヘクタールがもともと村の土地であるが、7000ヘクタールにわたって違法にオイルパームが植栽されている。更にこうした農園は政府の補助金を受け、警察に守られ、またパラミリタリーとも関係があるという。
 こうした問題に対して立ち上がったリーダー達は暗殺され、また脅迫を受け続けている。
 Los usurpados del Chocó
  http://www.semana.com/noticias-nacion/usurpados-del-choco/121717.aspx

 Asesinan campesinos que buscan sus tierras  
 自分の土地を回復しようとする農民の殺害-土地を取り戻そうとする農民たちが、殺され、拷問を受け、脅迫されている。補償政策は失敗し、血なまぐさい形で反農地改革が強化されつつある。
 この記事は農民から土地が奪われるプロセスを報告するとともに、土地補償の政策、法制度がうまく機能していないことを伝えている。
 土地に対して、パラミリタリーは長期的な計画を持っている。ピストルを手に、もう20年近くにわたって、農民を土地から排除し、土地を奪い、あるいは土地を安い価格で買いたたくといったことを続けているのである。政府機関や司法制度を悪用して、すべて正規の手続きにしようとしている。農地改革を逆行させ、地域を政治的に支配し、経済エリートとして君臨するために血が流れることを厭いもしない。
 
  国全体で38万5千家族が土地を追われ、550万ヘクタールの土地が放棄され、奪われててきた。今、土地を取り戻そう、村に戻ろうという人が脅迫され、家を焼かれ、殺されている。ウラバ地方だけで既に4人のリーダーが殺害された。コルドバでは多くの人がコカの違法栽培から土地を取り戻すことを諦め、またバージェでは麻薬組織は政府から土地を受け取った農民の土地が再び銃を持って奪われている。

 土地をめぐる新しい紛争は脆弱な平定地区を再び危機にさらしている、更に農業大臣のアドバイザイザーはこの問題は法治国家をも揺るがせるものであると指摘している。また「金を払って土地を得るかわりに、弁護士に金を払っているのである。土地から追放しておいて、合法的なものに見せかけるために洗練された手法を利用しているのだ」と告発している。

 麻薬組織、パラミリタリー、大土地所有者が農民を土地から排除するために次のような手を使っている。
-頭に銃口を突きつけ、価格交渉をするというものである。
-正式な土地所有権を持つにもかかわらず、武装グループなどに占拠されていて戻れないケース
-難民や農民間での土地所有権の重複:5年以上放棄した場合には、他の人が所有権を得ることができる。これによって重複が発生するケース(2007以前の法による)
-帰還を可能とする条件が整っていないため放棄されたままの状態にあるケース。モンテス・デ・マリアでは地域の企業主がこうした土地を大量に買い集めるケースがあった。

 http://www.semana.com/noticias-nacion/estan-matando/121735.aspx
http://www.verdadabierta.com/web3/conflicto-hoy/50-rearmados/1028-los-estan-matando-semana

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