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2009/04/02

コロンビア:気候正義とローカルなオータナティブの再評価を訴える

 コロンビアの環境活動家、イレーネ・ベレス(Irene Velez)さんと語る
 南米コロンビアから、FoE Japanの招きで「途上国における温暖化対策~責任ある支援とは?」 というテーマのシンポジウムに参加するために来日したイレーネ・ベレスさんからコロンビアの状況について話を聞きました。イレーネさんはコロンビアのCENSAT-Agua Vivaという環境NGOに所属し、現在「気候正義:フスティーシア・クリマティカ」というキャンペーンを担当しています。今回はこの気候正義というキャンペーンに加えて、コロンビアの先住民族の動向やアグロ燃料政策についても話を聞きました。

Q:コロンビアの先住民族運動の動向について教えてもらえますか?
 昨年10月の蜂起、ミンガ(先住民族の共同運動)は非常に重要で、また象徴的なものでした。社会に先住民族のニーズに目を開いてもらうだけではなく、ほかの分野で活動する社会運動とつながっていく重要な機会となりました。この運動はコロンビアのカウカ地方の先住民族から始まり、他の地域の先住民族組織に広がっていきました。そして今年は、10月12日、コロンブスのアメリカ大陸「発見」の日、大陸レベルでのミンガが計画されています。ブラジルで開催されていた世界社会フォーラムでもこの方針が確認されています。 
 こうした環境団体と先住民族組織の連携の一環として、気候正義の構築に取り組んでいます。気候的な不正義が私たちに影響を与えています。特に貧困層、マージナルな層が気候変動の被害者となっています。そこに環境運動と先住民族運動を結びつける可能性があります。世界社会フォーラムにおける先住民族宣言も、気候正義の追求を目標として掲げています。
まず3月18日、19日にはコロンビアのポパヤンでボリビアやエクアドル、コロンビアなどのアンデス地域の先住民族を招いて、気候正義のための計画を作成する予定です。そのあとペルーにおいても先住民族組織の集まりがあります。こうした集まりを通じて、様々な社会運動を結びつけ、10月12日に向けて、母なる大地を守るための世界的な動きを作っていきたいと考えています。

Q:気候変動対策の一つとしてもてはやされているオイル・パーム生産はコロンビアではどのような影響を引き起こしているのですか?
オイル・パームはパナマから続くチョコ地方からカウカ、ナリーニョへと積極的に拡大が進められています。これらの地域は熱帯雨林地域で、アフリカ系民族が多く居住する地域です。しかし問題は非常に複雑で、国内における暴力の問題と深く結びついています。背後には軍事的な目的もあります。この地域には強力なパラ・ミリタリーの存在がありますし、地政的なコントロールという目的もあります。麻薬組織にとっても海への出口を確保するという点で重要な位置にあります。こうしたことがオイル・パームの拡大に伴い、この地域では暴力が広がり、同時に大量の国内避難民が生み出されるという問題があるのです。チョコ地方からはカリに多くの避難民が流出しています。
 違法な暴力的なプロセスに加えて、合法的な手段を通じてもオイル・パーム生産は拡大されつつあります。気候変動対策ということで、アグロ燃料生産に政府から植林インセンティブの補助金が出され、またバイオ・ディーゼルの混合を義務化する法律も定められました。
 パラ・ミリタリーとの和平協定もオイル・パームの広がりと関係しています。武装解除に応じたパラ・ミリタリーに対して土地へのアクセスが認められました。しかし紛争の中で土地は既にパラ・ミリタリーに押さえられていたのです。暴力によって既に人々は逃げ出し、残った人たちも恐怖の中で口を開くことはありません。こうした土地でオイル・パームが生産され、この取引はパラ・ミリタリーによってコントロールされています。この地域では人権の問題が、環境への権利と深く結びついているのです。
 またこの地域の人々はオイル・パーム生産に追われているだけではなく、今、気候変動によると思われる洪水にも苦しめられています。人々は気候変動によって2重に苦しめられているのです。

Q:パラ・ミリタリーが土地を得ているのですか?
 パラ・ミリタリーは、市民社会に再統合されるというプロセスを経て、現在は「一般の市民」として土地を得ることができます。その上でオイル・パームへの補助金などを背景に、大地主=元パラ・ミリタリーが土地を拡大するという動きが進んでいます。
 例えばリオ・ミラ地域では、パラ・ミリタリーがコミュニティに土地を売るように要求するというケースがありました。コミュニティの人にとっては、聞かなければ殺害されるわけで、土地を渡しています。こうして大地主は以前よりも大きな土地を所有しています。法的には彼の土地ですが、その背後に暴力的な土地からの排除が存在しているのです。
 また次のようなケースもあります。企業が、(元)パラ・ミリタリーを伴って土地の購入交渉にやってくるのです。今は農園のガードマンだとしても、コミュニティの人たちはそれが誰だか知っています。ですから、命を危険にさらすより、土地を引き渡すことを選ぶのです。

Q:国内避難民(デスプラサードス)の問題は?
 これはコロンビアでも最も難しい課題だと思います。領域の支配と資源の管理をめぐる国内外の様々な思惑、利害から生み出されたものと言えるでしょう。人権問題であり、パラ・ミリタリーとゲリラ双方による暴力の問題であり、領域支配の問題でもあります。鉱業やアグロ燃料生産、コカの生産と輸送など、様々な利害を背景に人々が土地から排除されているのです。
 避難民は増加を続けており、大きな社会問題となっています。避難民は町に流れ込み続けています。政府の支援は当初の3ヶ月間のみで不十分なものです。一部屋の住居を提供し、食糧を援助し、月に120ドルほどの補助金を提供するだけです。しかし3ヶ月が過ぎると、無防備なまま町に投げ出されるのです。こうした状況下で暴力も増加しています。それでも少数の人は仕事を得ることができますが、非常に不安定な状況です。多くの避難民が街角で飴を売るといったインフォーマル・セクターに流れ込んでいるのです。
 こうした事態は出身地での土地を巡る利害によって引き起こされているのです。

Q:どれぐらいの人数の国内避難民がいるのですか?
 政府は昨年、約2百万人の避難民がいるという報告を出しています。しかしCODHESという人権団体の報告は4百万人という数字を示しています。しかしこの数字は大都市への流入数だけで、地方の中小都市にどの程度流入しているのかという正確な数字はありません。この問題は公式数字が示しているよりももっと大きな問題なのです。

Q:避難民としての登録は?
 避難民は、政府に報告することとなっています。しかし誰がちゃんと報告するか、またできるのかという問題があります。多くの人々が脅迫を受けて土地を離れているのです。ですから報告をすれば再び自分を危険にさらすことになります。ですので、多くの人たちが報告をしません。また報告するにしても、どこから来たのか、ということが問題になります。内戦中にあるとされた地域からの避難民だけが正式に認められます。しかし政府がパラ・ミリタリーと和平協定を結んで以来、パラ・ミリタリーの支配地域は法的には「平和」だ、ということにされています。そこで、こうした地域からの避難民は、避難民としては認められないのです。
 更に、避難民に対して十分な情報の提供が行われていないという問題もあります。町のバス・ターミナルに到着しても、そこからどこに行っていいかわからないのです。運よく関係機関の人と出会うことがなければ、そのまま忘れ去られてしまいます。
 しかし登録がなされないと、避難民の子どもたちは教育を受ける機会を奪われたままとなります。さらに学校側が違う環境で育ってきた避難民の子どもたちを差別し、学校に受け入れないということもあります。

Q:元の地域に戻ることはできませんか?
 まだ地域に戻れる状況にはありません。政府はそうした状況が回復されてきているといい、昨年15家族が帰還しました。しかしこれは宣伝にすぎません。何百万人という中で15家族というのはどうやって選ばれたのでしょうか、元パラ・ミリタリーだと考えた方がいいでしょう。また政府は「ファミリア・グアルダボスケ」というプログラムも行っていますが、実際にはオイル・パーム農園のガードマンに過ぎないと考えられます。

Q:シンポジウムの中で「土地の解放が必要だ」と発言されていましたが、どのようなことを考えているのですか?
 これは先住民族やアフリカ系民族とともに取り組みつつある課題です。環境紛争や、社会紛争の多くが、資源の悪質なコントロールに起因しています。こうした流れに対抗するには、自然資源だけではなく、文化、伝統的な財産などを含む「土地の解放」を求める必要があると考えています。土地、テリトリーそしてそこに生きる人々を含む、土地を解放することです。資本主義の欲望を、テリトリーから排除し、人間が再び存在できるようにすることが必要です。コミュニティにおける「良き生き方=Buen Vivir」の実現は、土地が資本主義の欲望から解放されてはじめて実現できるのです。

Q:日本の市民社会へのメッセージをお願いします
 北の国々がこれまでのような大量消費型の社会を続けている限り、社会が変わることは難しいでしょう。南の国々は環境正義も社会正義も実現することはできず、持続的な社会を実現することは南の国々にとっても北の国々にとっても不可能でしょう。生産と消費という現行のシステムを変えなければなりません。鉱物や石油の開発を止めなくてはなりません。地下資源の開発が続く限り、これまで支配され、排除されてきた人たちが、排除され続けることは変わらないでしょう。
オータナティブを考えるときには、新しいものを考えるのではなく、これまでに生み出されてきたものを振り返ることが重要でしょう。何世紀にもわたって、持続的な資源の管理を実現し、平和と尊厳を維持してきた、先住民族や農民のコミュニティの経験が存在するのです。これまでの生き方を振り返ることの中に、危機に対処するオータナティブは存在するのです。こうしたローカルなオータナティブを支援していくことが重要です。
 環境紛争や社会紛争を考える時には構造的な問題、歴史的な不平等や現在の不平等の根本的な原因に目を向けることが必要です。持続的な社会のためには、消費を減らし、ローカルなオータナティブを認めていくことが必要です。
(インタビュー 3月12日)

まとめ 青西靖夫

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