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2009/07/18

排除のために使われる『開発』と主体的な開発を目指す取り組み 

 1980年代初頭、キチェ県イシル地域は政府軍による徹底的な掃討作戦の対象とされました。ゲリラ勢力の活動地域であったこの地域の人々はすべてゲリラと見なされ、村を焼き払われ、虐殺が繰り広げられたのです。多くの人々が山に逃げ、生き延びるために「抵抗の共同体(CPR)」を組織して、山中での生活を続けました。

 内戦も終わり、「抵抗の共同体」を組織していた人たちも山を下り、村の生活に戻りました。しかし歴史を取り戻すための運動を続けている人たちがいます。そうした運動に参加するガブリエルさんは次のように語ってくれました。

「暴力の前から私たちは長老たちを中心に組織されていました。以前は、長老が集まり、何をすべきか、何をしなくてはいけないか、話し合いをしてきたのです。以前はプロジェクトなどありませんでしたが、村の産品を馬で街に出すために必要な道の整備などいついて村の中の話し合いで決めてきたのです。」

「しかし内戦の中で私たちの伝統や文化、私たち自身の開発のあり方は中断されてしまったのです。村人のつながりはずたずたにされてしまいました。多くの村人がゲリラだと言われ、協力しない者は殺されました。」

「でもそうした過去は現在まで続いています。以前は軍を前に、出頭しない者は敵だとみなされました。今は、開発計画を受け入れない者が排除されるのです。政府は私たちを貧困のままに留めたあげくに、私たちの貧困を利用するのです。私たちの自然の富を取り上げるために、あれこれ出してきます。そうした『開発』を受け入れない者は排除され、市民ではないかのごとくに扱われるのです。」

「私たちからの提案は無視され、よそで計画された『開発』が押しつけられ、外からやってきて、申請書を埋め、サインをして、計画に同意することが求められるのです。政府関係機関や政党は、自分たちの仲間になったらトタンや肥料や食糧を渡すというのです。時には村の中で解決できる、不必要なものまで押しつけていくのです。私はこういうやり方には納得できません。」

 一方で、グアテマラの各地で進みつつあるのが住民による「協議」です。これは村人の総会で、学校建設や道路整備、水道整備など、村の開発について総意で決めてきた経験をもとに、鉱山開発や水力発電ダムなどの巨大プロジェクトに対抗する仕組みとして各地で組織されつつあります。自分たちの地域の開発の方向を自分たちで決定していく、そのために村での総会の仕組みが「協議」として使われていっているのです。

 鉱山開発などの巨大プロジェクトは、村人の分断を図るために各地で金をまき散らし、買収や汚職を繰り広げ、村の中での分裂を深めています。その一方で、「協議」に取り組むところでは、地域住民の参加に基づく、民主主義の新しい形が生まれつつあります。これは先住民族による自己決定権行使の一つの形でもあります。グアテマラで制度化されているコミュニティ開発審議会や地方自治体開発審議会などの動きも含め、政党による利益誘導型のこれまでのような地方政治のあり方を見直し、住民の参加に基づく直接民主主義の新しい可能性が秘められているように思います。

 開発と権利のための行動センター
 青西

 

 

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鉱山開発に立ち向かうグアテマラ先住民族

 6月27日、グアテマラ西部のサン・マルコス県、サン・クリストバル・エル・クーチョにおいて、地域住民の総意として鉱山開発に反対の意思を表明する住民集会が開催された。

サン・マルコス県では、カナダのゴールド・コープ社の子会社であるモンタナ社によって、北部のサン・ミゲル・イシュタウアカンで強引に金鉱山開発が進められたことを発端に、各地で鉱山開発への反対運動が広がっている。

 反対運動の中で積極的に展開されているのが、「住民による協議」である。これはコミュニティが伝統的に住民集会の場で様々な課題への取り組みについて決定してきた経験に加えて、グアテマラ国が批准している国際労働機関の第169号条約において「開発に先立つ先住民族への協議」が定められていることを法的裏付けとして、先住民族の積極的な意思表明の手段として広がっているものである。既に西部のウエウエテナンゴ県やサン・マルコス県などで30以上の「協議」が行われている。

 エル・クーチョにおいては、住民からの要請に基づいて、地方自治体が主導して6つのコミュニティで「協議」-住民集会を行ってきたという。その結果を正式文書にした上で、27日にあらためて役所前の広場において住民集会が開催されたのである。首長や自治体の審議会の役員も出席しての集会において、改めて鉱山開発へ反対する意思が表明された。

このような「協議」の広がりは、既存の政党政治の枠を超えて、コミュニティの伝統に基づく民主的な政治のあり方を地方自治体のレベルまで広げていく、新しい政治的な取り組みとして注目される。(09/06/27 青西靖夫) 

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グアテマラでのプロジェクト調整作業

 現在グアテマラでは自然資源に対する先住民族コミュニティの権利確立というテーマでのプロジェクトを二つ動かしています。それに加えて去年開始したキチェ県のコッツアルにおける若者グループ支援のフォローアップ、さらに新しい活動として、先住民族法の必要性に関する理解喚起というプロジェクトも始めることとなりました。
 とは言っても、総額200万円にもいたらないような金額のプロジェクトたちです。その上、先住民族の自然資源への権利、なんていうーマは日本では余り受けないのか、ほとんど寄附金も集まりません。しかし欧米系のNGOなどでは結構関心を持ってやっているところもあるようです。
 
 さて、実際に何をしているかといいますと。
 先住民族の自然資源への権利というテーマではイサバル県とキチェ県で活動しています。厳密に言うと今年の4月~9月は見直し期間としてちょっとプロジェクトをお休みして、今後の展開を再検討しているところです。

 イサバル県では自然保護区(及び計画地区)における、保護区管理への地域住民の主体的参加を支援するプロジェクトを行っています。特に地域のケクチ民族コミュニティが集まって組織したイロル・キチェ・アソシエーション(AIK)の組織強化を支援しています。
 この保護区では、首都に事務所を置くある環境NGOが海外のドナーや政府機関の窓口になってしまっているのですが、住民参加は謳いつつもほとんど何もできていません。相変わらず自分たちだけでプロジェクトを計画し、ドナーから資金を取り、プロジェクトを実施しています。地域の人たちはいつまで経っても「受益者」のままです。
 確かに植林補助金を取ってきたりで、コミュニティの収入が増加したという成果もありますが、先の道筋が見えません。将来的にはAIKや他の住民組織と合弁体を形成して共同で保護区の管理に取り組むというのですが、AIKがどうしたら対等のパートナーになれるのかを真剣には考えているとは思えません。このままでは、住民参加を謳い文句にドナーから資金を確保する一方で、住民組織と環境NGOが合弁体に対等な立場で参加することは難しいだろうと思います。
 既に同じ環境NGOが設置した類似の合弁体では、地域のアソシエーションは理事会も開催できないほど弱体化し、合弁体は空洞化しています。ドナーはどうかというと、現場の状況は環境NGOを通じての情報だけで、現場の状況を把握することも、地域住民の声を聞くこともないようです。
 
 今回の訪問ではドナーや環境NGO含めあちこち訪問し、上に書いたような話を聞いて回り、今後の展開について考えるということをやっています。AIKとの活動については理事会の自主的運営のための支援を行っていく予定ですが、それに加えて、地域の住民組織の意見交換・連携・ドナーとの交渉会議の設定などを行っていく必要があると考えています。

 キチェ県のイシル地域(ネバ、コッツアル、チャフル)でも活動を行っているのですが、ここは難しいところです。30以上にも及ぶという水力発電計画があるのですが、どこでも住民は蚊帳の外に置かれ、あるいは買収され、脅され、「開発」が押しつけられています。こうした中で人々は情報提供、地域住民との協議、意思決定への参加を求めています。
 行動センターでは、このような課題に取り組む地域の人々の動きを踏まえ、域内の連携や協力関係の形成を支援していこうと考えています。しかしなかなかこれが難しい。あちこちで話を聞き、あちこちで対立、不仲の話を聞かされ、という状況で少々行き詰まり気味です。
 しかしそれでも真摯に取り組むグループの話を聞き、そうした人たちと詳細の詰めを行うというのがキチェ県での作業でした。

 ケクチの人たちにしても、イシルの人たちにしても、日々の生活も大変だし、豊かな生活をしているわけでもありません。それでも何かしていかなくてはと、取り組んでいる人たちがいるのです。
 行動センターでは「貧しい人たちへの支援」や「植林への支援」をお願いすることはやっていません。地域の人たちが自分たちで政府の植林補助金にアクセスする力をつけること、そういう制度がなければ、制度を作るように働きかける力をつけること、そういうことが重要だと考えています。

 また活動実施のための寄付金もお願いしておりますのでよろしく
お願いします。
郵便振替口座 00230-5-131472
口座名 :開発と権利のための行動センター

 開発と権利のための行動センター
 青西靖夫(代表理事) 

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