排除のために使われる『開発』と主体的な開発を目指す取り組み
1980年代初頭、キチェ県イシル地域は政府軍による徹底的な掃討作戦の対象とされました。ゲリラ勢力の活動地域であったこの地域の人々はすべてゲリラと見なされ、村を焼き払われ、虐殺が繰り広げられたのです。多くの人々が山に逃げ、生き延びるために「抵抗の共同体(CPR)」を組織して、山中での生活を続けました。
内戦も終わり、「抵抗の共同体」を組織していた人たちも山を下り、村の生活に戻りました。しかし歴史を取り戻すための運動を続けている人たちがいます。そうした運動に参加するガブリエルさんは次のように語ってくれました。
「暴力の前から私たちは長老たちを中心に組織されていました。以前は、長老が集まり、何をすべきか、何をしなくてはいけないか、話し合いをしてきたのです。以前はプロジェクトなどありませんでしたが、村の産品を馬で街に出すために必要な道の整備などいついて村の中の話し合いで決めてきたのです。」
「しかし内戦の中で私たちの伝統や文化、私たち自身の開発のあり方は中断されてしまったのです。村人のつながりはずたずたにされてしまいました。多くの村人がゲリラだと言われ、協力しない者は殺されました。」
「でもそうした過去は現在まで続いています。以前は軍を前に、出頭しない者は敵だとみなされました。今は、開発計画を受け入れない者が排除されるのです。政府は私たちを貧困のままに留めたあげくに、私たちの貧困を利用するのです。私たちの自然の富を取り上げるために、あれこれ出してきます。そうした『開発』を受け入れない者は排除され、市民ではないかのごとくに扱われるのです。」
「私たちからの提案は無視され、よそで計画された『開発』が押しつけられ、外からやってきて、申請書を埋め、サインをして、計画に同意することが求められるのです。政府関係機関や政党は、自分たちの仲間になったらトタンや肥料や食糧を渡すというのです。時には村の中で解決できる、不必要なものまで押しつけていくのです。私はこういうやり方には納得できません。」
一方で、グアテマラの各地で進みつつあるのが住民による「協議」です。これは村人の総会で、学校建設や道路整備、水道整備など、村の開発について総意で決めてきた経験をもとに、鉱山開発や水力発電ダムなどの巨大プロジェクトに対抗する仕組みとして各地で組織されつつあります。自分たちの地域の開発の方向を自分たちで決定していく、そのために村での総会の仕組みが「協議」として使われていっているのです。
鉱山開発などの巨大プロジェクトは、村人の分断を図るために各地で金をまき散らし、買収や汚職を繰り広げ、村の中での分裂を深めています。その一方で、「協議」に取り組むところでは、地域住民の参加に基づく、民主主義の新しい形が生まれつつあります。これは先住民族による自己決定権行使の一つの形でもあります。グアテマラで制度化されているコミュニティ開発審議会や地方自治体開発審議会などの動きも含め、政党による利益誘導型のこれまでのような地方政治のあり方を見直し、住民の参加に基づく直接民主主義の新しい可能性が秘められているように思います。
開発と権利のための行動センター青西
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