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2009/10/30

グアテマラ:免責に対する国際委員会、活動家殺害事件の調査に乗り出す

 グアテマラの治安状況は相変わらずひどい状態が続いている。10月29日付けのペリオディコ紙の記事は3日間で4人の都市バス運転手が殺害されたというニュースを伝えている。今年だけで、バス運転手と助手で120人が殺害されているという。[1]更に、警察自体が襲撃の対象となる事件も相次いでいる。
また政治的背景があるのか、一般犯罪なのか定かではないが、社会運動のリーダーの殺害事件も相次いでいる。10月18日には、先住民族の集団的権利の擁護などに取り組んでいたカクチケル民族の若手弁護士が遺体で発見されている。前日に失踪した後、谷底で発見された遺体には拷問の後などが残されていたという。<追記 11/25:米国の人権団体であるHuman Rights First が真摯な調査と責任者の法的な処罰を求めるキャンペーンを展開中 http://actions.humanrightsfirst.org/p/dia/action/public/?action_KEY=404 >
この他にも24日にはマラカタンで、民営化による電気料金高騰の問題に取り組んでいた活動家の殺害、セメント工場反対運動に参加していた若者の殺害、農民組織の地域リーダーの殺害など、ここのところ、運動リーダーが殺害されたというニュースが相次いでいる。
 こうした中、10月29日付けのプレンサ・リブレ紙はCICIG(グアテマラの免責に対する国際委員会:International Commission against Impunity in Guatemala )が2004年から2009年に発生した農民リーダーや組合リーダーの殺害事件の調査に取り組むことなったという記事を伝えている。[2]
 CICIGは国連とグアテマラ政府の合意に基づいて設置された独立調査委員会であり、2007年9月から秘密治安部隊などによる犯罪調査と司法手続きを支援するための活動を続けており、国際社会からも高い評価を受けている。[3]

 また国連開発計画は中米人間開発報告書として、安全と人間開発をテーマにした報告書を刊行[4]

グアテマラの治安問題、司法制度確立は依然、大きな問題であり、注視が必要である。日本からもどのような支援が可能なのか検討を続けていきたい。

 開発と権利のための行動センター
 青西靖夫

[1]Cuatro pilotos urbanos han muerto en tres días
http://www.elperiodico.com.gt/es/20091029/pais/122158/
[2]La Cicig investigará atropellos a sindicalistas y dirigentes campesinos
http://www.prensalibre.com/pl/2009/octubre/29/352500.html
[3]国連総会に対して提出した活動報告書
A/64/370 Activities of the International Commission against Impunity in Guatemala (2009.9)
http://daccessdds.un.org/doc/UNDOC/GEN/N09/523/86/PDF/N0952386.pdf?OpenElement (英語)
その他の言語は次のサイトの上のボタンを押す
http://www.un.org/Docs/journal/asp/ws.asp?m=A/64/370

[5] Abrir espacios para la seguridad ciudadanay el desarrollo humano
Informe sobre Desarrollo Humano para América Central , 2009-2010
http://www.idhac-abrirespaciosalaseguridad.org/informe.php
直接ダウンロードしたい方はこちらへ
http://www.idhac-abrirespaciosalaseguridad.org/documentos/informe.pdf

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  食料への権利に関する国連特別報告者 種子に関する知的所有権の法的扱いの変更を求める

 国連の食料への権利に関する特別報告者、オリビエ・ド・シューテル(オリビエ・デ・シュッター/Olivier De Schutter)は、種子政策は、革新と食料保障そして、農業的な多様性を同時に促進するものでなくてはならず、現在の知的所有権制度は、今日の、食料安全保障を促進するためには不十分であると表明。

 国連総会に提出した報告書において、種子企業の支配的立場の悪用や農民には手の届かない不当な価格設定などを避けるためにも、独占禁止法の適用可能性を検討するように求めている。[1]

 またプレスリリースでは次のような内容について言及。 [2]
 「不安定化する気候の中で、種子政策は収量を増加させるだけではなく、難しい環境下で耕作している貧困農民の収入を増加させ、気候変動への対応力を高め、更に作物の遺伝的多様性の喪失を押さえるものでなければならない」。
 「現在の種子へのアクセスは地域的な交換などによるインフォーマルな種子取引と、公的機関に認証された改良種子市場に分かれているが、農業政策の中での軽視、また現行の知的所有権制度が後者を推し進めていることもあり、前者は消滅しつつある。しかしそれぞれの種子取引にはそれぞれの機能があり、異なるニーズに対応するものでり、農民による種子取引も促進されていかなければならない。」
 「過剰な知的所有権の保護が、技術革新のインセンティブどころか障害になりつつあるという懸念を日々聞かされている。公的な科学者にとって遺伝子材料へアクセスすることは日々難しくなり、研究は豊かな国のニーズに向けられている。」
 「小農民に向けた技術革新を進めるために二つの原則がある。一つは参加であり、小農民の経験と科学を結びつけること、そしてもう一つは農業技術改革を全体的なシステムとして改良していくこと。作物の改良だけではなく、生産的そして抵抗力のある農業システムを生み出していくこと。アグロフォレストリーや生物農薬、間作・混作などは大きなポテンシャルを持っている。」

また関連する国際的な運動としては次のサイトを参照ください。
STOP ‘MONSANTOSIZING’ FOOD, SEEDS AND ANIMALS!
 http://www.no-patents-on-seeds.org/index.php?option=com_content&task=view&id=93&Itemid=56
 NEW ALERT: STOPP MONSANTOSIZING !(10/21発信)
 http://www.no-patents-on-seeds.org/index.php?option=com_mkpostman&task=view&Itemid=52&id=27


[1] Report to the General Assembly (main focus: seed policies and the right to food) 2009 A/64/170
http://www2.ohchr.org/english/issues/food/annual.htm
[2] PRESS RELEASE “Current intellectual property rights regime suboptimal for global food security”, according to UN expert on food NEW YORK (21 October 2009)
http://www2.ohchr.org/english/issues/food/docs/GA_press_release_21102009.pdf

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2009/10/29

パプア・ニューギニアのツナ(マグロ)加工工場建設への抗議運動

 マグロの話といえば、世界一の消費国である日本とは切っても切れないはずだ、と思い込んでいる所がありますので、こういうニュースがスペイン語圏を経由して回ってくることにはどうも納得がいかないところがあるのですが。

 さて、この「パプア・ニューギニア:エコシステムを脅かすマグロ加工業」というニュースは次のような状況を伝えています。[1]
1:パプア・ニューギニアのマダン地域に計画されている大規模なマグロ加工工場が地域住民の反発を受け、抗議行動が行われていること。
2:この水産加工団地プロジェクトは世界銀行の支援も受けているとのことで、「開発」のために行われる外国企業による工・鉱業プロジェクトによって、地域の先住民族の生活は大きく影響を受けていること。
3:既にパプア・ニューギニアで操業しているフィリピン系の企業であるRDツナ社は、これまでも健康被害などで非難を浴び、操業中止に追い込まれた加工場もあること。
4:今回マダン地区に水産加工団地PMIZ(Pacific Marine Industrial Zone, PMIZ)が計画されていますが、この工場で、人びとは漁業では生活できなくなるだろうと考えられていること。また数年のうちに水産資源も枯渇してしまうのではないかという恐れを抱いていること。
5:既にこの水産団地プロジェクトPMIZは6月に開始されたとのことですが、10月15日から地域住民による建設への抗議行動が行われているとのこと。
6:RDツナ社のツナ缶は欧州連合との経済協力協定に基づき、ほとんどが欧州連合諸国へ輸出されるとのこと。


 この水産団地の計画については、太平洋諸島ニュースというのが2006年に次のように伝えています。[2]
 <マダンで「世界のマグロ基地」を目指し、水産団地を建設(パプア・ニューギニア)
マダンの北方海岸にあるヴィダル農園周辺で、産業センター開発公社(Industrial Centres Development Corporation)の支援を受け、マダン州政府、国家漁業庁、アールディ・ツナの三社が総合的な水産業団地を造成する。完成すれば、直接、間接的に多くの関連事業が集積し数千人の雇用が創出されると期待されている。政府はこの事業化計画に200万キナ(692,700万米ドル)を拠出する。関係者は、マダンが将来「世界のマグロ基地」となり、内外の投資家による水産関連企業が集まることにより、複合産業が発展することを期待し、雇用創出ばかりでなく、輸入代替品の生産、諸税収入増、農業や牧畜業など他産業へのプラス効果、地元住民への利益還元、技術移転、漁業振興など多方面への波及効果が期待されるとしている。
(Post Courier Online/ Pacific Islands Report/ June 8, 2006)


 確かに目の前に漁場を抱えるパプア・ニューギニアなど南の島嶼国の漁獲高は急速に増えていて、ここに水産加工団地ができれば、マグロ資源に大きな影響を与えるのは間違いありません。[3]更に、日本ではいつも刺身用マグロばかりが話題に上りますが、世界的にはツナ缶の需要も拡大し続けているとのこと、確かに「世界のマグロ基地」というのもありそうな話です。
 また河北新報の記事は、既存のRD社の工場を紹介し、今後の缶詰生産の可能性、現地加工という方向性へのシフトについて取り上げています。[4]

 このような背景のもとで、今回のPMIZへの抗議運動が展開され、国際的な環境NGOのネットワークで情報が発信されているようです。

 しかしパプア・ニューギニアに行ったこともなければ、ふだん動きを見聞きしているわけではないので、少し現地のニュースにアクセスできないだろうかと探してみたのが、ブログにあった次の記事です。”Global warming and the twilight of democracy in PNG”[5]この記事の中に、15日の抗議行動のあとの州政府知事のコメントに対する抗議レターが転載されています。
 この中で、プロジェクトがもたらす利益ばかりが語られ、人びとの意見は無視されてきたこと、住民に協議をすることもなくプロジェクトが進められ、それを推し進めてきたのは中央政府の役人たちであり・・・。NGOに操られているというが、私たちにわからない状況を教えてもらうなど、NGOの支援をなぜ受けてはいけない。しかしここで反対の意志を表明しているのはNGOではなく、村人たちなのだ、というような内容が記されています。

とりあえず、今回調べられたのはこの辺までです。日本でももう少し世界の水産・海洋生態系関連の情報を、収集発信できるような仕組みというのがあってもいいのかな、と思います。きっとものすごく詳しい方々が山ほどいるのだろうと思うのですが、結節点がないという感じなのでしょうか。あるいは書籍やニュースレターという形で事業化しないと、収入を確保できないという経営戦略的な問題なのでしょうか。

 青西


[1]Papua Nueva Guinea: pesca industrial del atún amenaza ecosistemas(10/26)
http://www.biodiversidadla.org/content/view/full/52691
[2]太平洋諸島ニュース2006年6月NO.1  http://www.pic.or.jp/news/060601.htm
[3] 2009「平成20年度国際漁業資源の現況」水産庁・水産総合研究センター 
  まぐろ・かつお類の漁業と資源調査(総説)他参照
[4]河北新報「漁場が消える-三陸マグロ危機-」 
 第8部 締め出し
(2)成長戦略/産業雇用の創出描く
http://blog.kahoku.co.jp/maguro/2009/05/post-56.html
(3)現地加工/「貢献」求める沿岸国
http://blog.kahoku.co.jp/maguro/2009/05/post-57.html
(4)野望/ツナ缶世界一目指す
http://blog.kahoku.co.jp/maguro/2009/05/post-58.html
[5]Global warming and the twilight of democracy in PNG(10/22)
http://nancysullivan.typepad.com/my_weblog/2009/10/global-warming-and-the-twilight-of-democracy-in-png.html


*付記
 どんな感じで情報が流通しているのかわからないので、いくつか検索して調べてみました。
 スペイン語の元サイトはSelva la Selva(10/23)
http://www.salvalaselva.org/protestaktion.php?id=475
英語では
 mongabay.com のサイトに10/21  Protests over tuna industry development plans in Papua New Guinea
http://news.mongabay.com/2009/1021-hance_pmiz.html
Eco Earth Infoというサイトに10/20
 EI RELEASE: Papua New Guineans Protest World Bank's Ill-Conceived Expansion of Pacific Tuna Fish Harvest
 http://www.ecoearth.info/blog/2009/10/ei_release_papua_new_guineans.asp
Stop Massive World Bank (IFC) Supported Expansion of PNG Industrial Tuna Fish Harvest(10/19)
http://tunaseiners.com/blog/2009/10/stop-massive-world-bank-ifc-supported-expansion-of-png-industrial-tuna-fish-harvest/
Over-fishing comes to Madang, Papua New Guinea, as local peoples prepare to resist 10 tuna canneries. Support thousands of indigenous South Pacific coastal peoples as they are peacefully protesting right now!(10/15)
 By Asples PNG (People of Papua New Guinea), a project of Ecological Internet - October 15, 2009
http://www.ecoearth.info/shared/alerts/send.aspx?id=png_tuna

 関連記事など 
Chinese mega tuna plant plans in PNG draw lively protests (10/21)
http://pacific.scoop.co.nz/2009/10/mega-tuna-plant-plans-in-png-draw-lively-protests/
Expanding tuna cannery in Papua New Guinea threatens local communities(5/05)
 RD社の問題などについて報告している記事です
 http://indymedia.org.au/2009/05/05/expanding-tuna-cannery-in-papua-new-guinea-threatens-local-communities

 

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2009/10/27

グアテマラへようこそ第57号からの抜粋

 行動センターでも発行協力しているメールマガジン、「グアテマラへようこそ」からグアテマラ関連情報の抜粋です。購読は左の関係リンクからどうぞ。

1-1 アティトラン湖でシアノ・バクテリアが増加

 シアノ・バクテリア(藍藻)がアティトラン湖で増加しつつあるという報道がありました。日本ではアオコ(青粉)と呼ばれる、湖に緑の粉を撒いたような状態が発生しつつあるということなのだと思いますが、どの程度の広がりを持って発生しているのかは記事だけではよくわかりません。
“Atitlan tiene un grave problema ecologico”
http://www.prensalibre.com/pl/2009/octubre/24/351340.html

 流域からの窒素やリンの流入によって湖水の富栄養化が進んでいるのだと思われます。シアノ・バクテリアは悪臭を引き起こしたり、酸欠状態を引き起こしたりするだけではなく、毒素を生成する種も存在しており、現在その点については分析中であるとのことです。
 スタン台風以来、パナハッチェルの下水処理施設が不備なままであったり、野菜生産地となっている周辺農地からの肥料分が流入したりと、富栄養化の危険は昨日今日にはじまった話ではありません。しかし直接湖の水を飲料にしている地域もあり、早急な対策が必要であることは間違いがありません。
 誰もがアティトラン湖を見放してしまったら、更に急速に汚染が進むことでしょう。実際にグアテマラの多くの河川で下水が垂れ流され、ゴミ捨て場になっている現状を振り返るならば、皆が使っている間に、出口を探すことが不可欠です。

注:10月25日付けの記事によると、アティトラン湖で発生しているのは、アオコの仲間の藍藻ではなく、リングビアといわれる、スポンジのようなマットを形成する種のようです。この種には毒素を生成する物が含まれているとのことです。

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1-2 各地で禁酒条例

 ウエウエテナンゴ県のサンティアゴ・チマルテナンゴの自治体で、酒類の販売・消費の禁止され、酔っぱらいは収監され、罰金もしくはコミュニティの共同作業に従事すること、とする規則が採択されたとのことです。
 これは地域の女性組織の声から生まれたとのことで、「男たちは酔っぱらって、女に暴力を振るう、酒を買うために勝手に収穫物を売り払う、そのあげくに、道で酔いつぶれ・・・」という現状に、女性たちが立ち上がったとのことです。
 既にこうした動きは、トドス・サントス・クチュマタン、サンマルコス県のコミタンシージョなどでも進んでいるとのことです。「慣習法」という枠組みで、地域の人たちが、自分たちでルールを定めていく・・・大きな変化が進みつつあるように思います。

“Aqui no queremos guaro ni bolos” 
http://www.elperiodico.com.gt/es/20091025/portada/121384/

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1-3 「忘れられたゲリラ戦士」

 正直、この記事は何なのだろうか、というのが第一印象です。1960年代のゲリラ蜂起の拠点となったシエラ・デ・ラス・ミナスに、ゲリラ兵のグループが、武装解除も戦後補償も受けぬまま、集団生活を続けていた・・・
 40年以上前にその拠点を開いたのは、セサル・モンテスというゲリラのリーダーであったという。
 セサル・モンテスは数年前にこのグループに会い、驚き、「平和のゲリラ」と名付け、支援しているということらしいのだが・・・土地分配のための農園確保を巡って、二つの元ゲリラ系財団の間での綱引きをしているようでもある。
 自然保護区、鉱山開発、オイルパーム拡大など、様々な利権がうごめくこの地域で、元々仲の悪い(元)ゲリラ勢力同士が、地域の運動を混乱させなければいいけれども・・・そんな危惧を抱かせるのでした。

El Periodico 2009/10/17  La guerrilla olvidada
http://www.elperiodico.com.gt/es/20091018/portada/120435/
SigloXX1 Cesar Montes
CON LA MOCHILA AL HOMBRO ”EL 20 DE OCTUBRE DE TODOS ”
http://www.sigloxxi.com/opinion/6713
NO HAY GUERRILLAS OLVIDADAS EN LA SIERRA DE LAS MINAS, Si HAY COMUNIDADES DESPOJADAS DE SUS DERECHOS 
http://www.fgtoriello.org.gt/
追記:既にセサルモンテスと農民組織間でもめ事は起きていました・・・
CESAR MONTES Y LA CAMPANA NEGRA EN CONTRA DE LAS
COMUNIDADES Q'EQCHIS DE LIVINGTON (2009/4/27)   
http://www.waqib-kej.org/html/comunicados.asp?id=35

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1-4 間近に迫るイシュカンの陸軍基地再開

 内戦期に軍の駐屯地が置かれ、政府軍によって100以上の虐殺事件が行われたキチェ県のイシュカン。2004年になってやっと駐屯地が廃止されたにも関わらず、基地が再開され、1000人の兵隊が駐屯することになるとのことです。
 住民の中には基地の再開に反対する声も根強いとのことですが、コロム大統領が率先して、麻薬対策や組織犯罪対策のために軍の展開を進めています。
 組織犯罪を前に警察が無力であるとしても、軍の再展開と国内治安維持への動員は、和平協定の精神に逆行するものなのですが。
Ixcan reabre sus heridas con la presencia militar
http://www.prensalibre.com/pl/2009/octubre/10/347820.html

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2009/10/21

協議に関する報告:先住民族の権利に関する国連特別報告者

  今年の国連人権理事会に提出された、「先住民族の人権状況と基本的自由に関する国連特別報告者」であるジェームズ・アナヤ(James Anaya)氏の報告書は、主要テーマとして「協議を行う義務」について取り上げている。[1]
 「協議」はグアテマラをはじめとして、中南米の先住民族運動においても非常に大きな課題となってきているので、ここでこの報告書の内容について少し整理する。
 報告書の全57項のうち、第36項から第57項までがこのテーマに費やされている。
36.国家は、先住民族に影響を与える決定について、先住民族に協議を行わなくてはならないという義務を適切に履行していない。適切な協議の欠如が先住民族との対立的な状況を引き起こしている。
<法的基盤>
38.「先住民族の権利に関する国際連合宣言」では次のように記されている。
「国家は先住民族に影響を及ぼし得る立法的または行政的措置を採択し、実施する前に、彼/女らの自由で事前の情報に基づく合意を得るため、その代表機関を通じて、当該の先住民族と誠実に協議し、協力する」
39.同様に国際労働機関の第169号条約においても、先住民族に影響を及ぼしうる計画やプロジェクトに際して、合意を得るために、誠実な協議を行うことを求めている。
40.国連の人種差別撤廃委員会も各国の政府に、先住民族に対する協議を行うように要請している。この他、米州人権裁判所も、米州人権条約に基づいて、協議を行う義務を明確にしている。
41.協議を行うという義務は、先住民族の自己決定権という根源的な権利、また民主主義そして人民主権に関連する原則から派生するものである。自己決定の権利は、先住民族が自らの権利を全的に行使するためには不可欠のものである。
 先住民族に影響を与える恐れのある決定のプロセスに際して、先住民族と協議を行うという国家の義務は、決定プロセスから排除されてきた歴史的なパターンに幕を引くものである。またこの先、先住民族に対して重要な決定が押しつけられないようにするものであり、先住民族の人びとが、その文化とともにこれまで根付いてきた土地での、異なる民族としての生活を繁栄させていくことを可能にするものである。
42.国家の決定が、先住民族の特有の利益に影響を与える場合には、先住民族の異なる文化的・歴史的特質に基づき、特別の、様々に異なる協議の手続きが必要とされる。政治的な舞台から阻害されてきた先住民族にとって、通常の民主的手続きや代表制は、先住民族特有の関心に対応するためには不十分である。

<協議を行う義務を適用する状況>
43.協議は、国家のある決定が、社会の他の個人には感じられないような形で、先住民族に影響を及ぼす恐れがあるときに、適用されなくてはならない。例えば土地や資源に関する法律は、一般にも影響を及ぼすが、先住民族の伝統的な土地所有形態や関連する文化に対しては、特別な形で影響を及ぼすものである。そこでこうした場合には協議を行わなくてはならない。
44.協議は、既に認められている権利や法的な権限がおびやかされる時に限られるわけではない。ダム開発や自然資源の採掘などによって影響を受ける先住民族の土地が、既に国内法によって認められている時に限って協議が必要だ、と考える国家があるが、そうではない。先住民族の特別な利益がおびやかされる時に、協議が必要とされるのであって、その権利、土地への権利などが法的に承認されているかどうかは問われるものではない。(ここではグアテマラにおけるILO169条約に関する裁定を引用している)
45.テリトリーにおける自然資源の採掘など、特定の先住民族や先住民族コミュニティに影響を及ぼす事業に際しては、影響を受けるグループの積極的な参加を保証し、また人びとの関心への特別に配慮した協議プロセスが必要である。

<合意に達するための、あるいは同意を得るための、誠実な協議の実施に必要とされるもの>
46.協議とは合意を得るために行うものであり、影響を与える決定に対する「拒否権」ではない。ある決定の前に、相互に受け入れられる合意に至るための交渉であり、既に行われた決定、あるいは決定されつつある事項に関して、情報を提供するためのものではない。
47.先住民族に対して、直接的に、かなりの影響がある場合には、協議だけではなく、合意を得なくてはならない。宣言においても、二つのケース(強制移住と有害物質の貯蔵・廃棄)において合意を得ることを義務としている。米州人権裁判所でも、スリナムのサラマカ民族のケースにおいて、民族のテリトリーに大きな影響を及ぼす開発計画に際して、協議を行うだけではなく、事前の、情報に基づく自由な合意を得なければならないという判断を下している。
48.先住民族が、開発プロジェクトに対して拒否権を持つのかどうか、という議論ではなく、全ての利害関係者の合意を得るために、可能な全てのことを行うための協議手続きを策定する必要がある。
49.国家の協議を行う義務というのは、これまで先住民族に決定を押しつけてきた歴史的なモデルと、先住民族の生存の危機を終わらせることにある。協議と合意の原則は、それぞれが自分の意志を相手に押しつけるのではなく、相互に理解することに努め、合意によって決定を下すことにある。

<合意に向かうための信頼醸成のための要素>
50.国家にとって、合意による決定のための誠実なる取り組みは、「手続きについて、合意を得るために努力をし、またそれについて幅広く情報を提供し、信頼感を構築することである」。更に、国家や企業などと比べ、先住民族は一般的に、政治的影響力や資金、情報へのアクセス、教育などの点で不利益を有している。
51.信頼感を醸成するためには、協議のプロセスもまた合意の結果でなくてはならない。また国家は、先住民族に対して、資金や技術的な支援を提供することを通じて、権力の不均衡を乗り越えなくてはならないが、同時に、そうした支援を通じて、先住民族の協議に対する立場に影響力を行使しようとしてはならない。
52.先住民族の独自の代表制度とその決定を尊重しなくてはならない。また先住民族も独自の制度を改善し、協議のプロセスを容易にするような代表制度を整備する必要があるであろう。
53.先住民族の土地に影響を与えるような開発プロジェクトや自然資源の採掘などの場合に、先住民族が情報に基づく、自由な決定を下すためには、プロジェクトが引き起こす影響なども含め、客観的かつ完全な情報を受け取る必要がある。どのような結果が予想されるのかを知ることができるよう、国家が社会・環境影響調査を行う必要がある。影響を受ける先住民族グループは、協議の最初の段階でこの調査結果を知る必要があり、またその結果を理解し、意見を表明し、憂慮される点について情報を得るための十分な時間がなくてはならない。またこうした事業における、合意のための協議プロセスにおいては、被害による補償や緩和策だけではなく、利益の公正な配分についても検討されなくてはならない。

<協議を行う義務と企業の責任>
54.民間企業などによって自然資源の採掘などが行われる場合も、協議を保障し、それを実施する責任は国家にある。国家こそが、協議の実施を含め、先住民族の人権を保障する義務を負うのである。よって民間企業やその他の機関にその義務を委ねることはできない。また協議はできる限り早い段階から行われなければならず、民間企業にコンセッションを与える前に実施されねばならない。  
55.実際には民間企業に協議の実施を行わせるというケースが多々存在している。
56.企業のポリシーとして、先住民族、特に協議に関する国際的な規範に、その活動を適合させるべく努めるべきである。
57.多くの企業が、先住民族の権利に関する国際法について適切な理解を欠いている。また企業は、国家の怠慢による、協議の不履行など、先住民族の権利への侵害などに荷担しないようにすべきである。また国家も企業活動が、先住民族の権利を完全に尊重するよう、常に監視しなくてはならない。

[1] PROMOCION Y PROTECCION DE TODOS LOS DERECHOS HUMANOS, CIVILES, POLITICOS, ECONOMICOS, SOCIALES Y CULTURALES, INCLUIDO EL DERECHO AL DESARROLLO
Informe del Relator Especial sobre la situacion de los derechos humanos y las libertades fundamentales de los indigenas, James Anaya

A/HRC/12/34 
http://daccessdds.un.org/doc/UNDOC/GEN/G09/145/85/PDF/G0914585.pdf?OpenElement
英語 
http://daccessdds.un.org/doc/UNDOC/GEN/G09/145/82/PDF/G0914582.pdf?OpenElement

 グアテマラだと、「協議」は、拒否権の発動というよりは、とりあえず「拒否」のアピールとして行われている感じがあります。法的には拘束力がないと憲法裁判所で裁定が下されても、とりあえず、協議に関する国内法の整備は進まない中で、意思表明をしておかなければ何が起こるかわからないという、という中で、コミュニティが主体的に「協議」を行っています。
 
 グアテマラでは、「環境影響調査」にしても、住民がアクセスできるような状況にはなく、それこそ専門家でなければ読んでもわからないような中身で、かつ意見書提出の期限は限られ・・・という状況です。
 それでもコナビグアの集団的権利プロジェクトの担当者は、そういうのも見て行かなくては・・・と真摯な発言をしていましたが、
 村にいても、ちゃんと地域の言葉で説明を受けられ、じっくり考え、村の中で意見交換をできるような状況+時間が提供されるのが本来の姿だろうと思います。
 
 19世紀にベラパスの土地が首都で公示にかけられ、持ち主が現れなければ大農園主に売ってしまいますよ・・・という手続きが行われたころと現在は大差ありません。

 開発と権利のための行動センター
 青西

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2009/10/20

グアテマラ:村の平和を取り戻すために

 グアテマラ北部のキチェ県のサン・フアン・コッツアルではここ数年、マラスと呼ばれる若者の暴力集団が大きな問題となっていました。敵対する二つのグループが村の中で銃撃戦を展開するだけではなく、村民の殺害事件、教員への恐喝、強盗事件など日常生活は暴力に脅かされていたのです。
 しかし昨年の7月(あるいは8月)に発生した強盗事件をきっかけに、一つの村で犯人を捕まえるために山狩りが組織され、捕まった犯人の一人に激しい暴行が加えられました。この事件をきっかけに村々で「市民治安委員会」の結成が始まりました。ある村では15人ほどが捕まり、「Justicia Maya」という名目でむち打ちなどを受けたということです。
 別の村では体罰を用いず、一週間の免責期間を定め、その間に武器を引き渡し、グループを抜けることを呼びかけたところ、8名ほどが出頭したとのことです。
 サン・フアン・コッツアルの街では周辺村落の人びとの圧力で「市民治安委員会」が組織され、またマラスの解体が進んだと言うことです。

 現在、コッツアルの村々では「市民治安委員会」が組織され、村の治安維持を行っています。警察は汚職にまみれ、人々から見放され、司法制度も信頼されていないこの国で、人々は自分たちの生活を守っていくために、コッツアルの人びとは自分たちの手で社会を守っていく道を選んだと言えるでしょう。

 地域によってはむち打ちという暴力的な手段を選んだところもあり、また共同体への労働奉仕を強いたところもあります。
 更に関連するまた殺人事件に対して、村の会議で裁いたケースもありました。コミュニティのリーダーが連夜、会議を行い、事件への対応を協議しました。最終的に、検察には訴えないことを文書で書き記し、死者への補償金を支払うことで問題の解決を図ったということです。
 
 「市民治安委員会」の組織化に対しても、内戦期の「自警団」による弾圧を振り返って、否定的な思いを持つ人も多々いるようですし、過去の歴史の中で暴力的な振る舞いに慣れてしまっている人びとが、「市民治安委員会」の中で暴力的な行為を振るうということもあり、問題は続いています。
 しかし住民は警察より自分たちの方が信頼できると述べています。あるリーダーは「理想的ではありませんが、(「市民治安委員会」を組織するのは)仕方がないのです。今後、非暴力による紛争の解決、平和的な対話や交渉という文化を育てていかなければなりません」と語っていました。

 ちなみに犯罪組織を抜けた若者たちは、今村で農業に従事しているといいます。何人かは出頭せずに都市に逃げ出したとのことですが、出頭した若者たちは、今度は都市に出ていけば裏切り者として殺される危険があるということです。
 
 内戦の歴史を背負うイシル地域には、コミュニティも家族もずたずたにされた中で生まれてきた、育ってきた子どもたち、そして若者たちがたくさんいます。戦争孤児、片親を知らぬ子ども、親から認知されないなど、差別を受けてきた子どもたちも数多いといいます。そうした子どもたちがまた親になり、子どもを育てる年代に入っています。
 暴力グループが解体されても、貧困は続き、若者には自分たちの開発の機会も十分に存在していません。未来に向けて若者たちが、様々な機会を得て、社会に参加していくこと、平和的な文化を育むことがとても大切です。

 *今年7月に行った複数のインタビューの話をまとめたものです。

注)現行法では、コミュニティで犯罪者を裁くと言ったことは認められてはいません。しかし現実には上のような事態は進みつつあり、警察や司法当局がコミュニティの判断に介入することもないのです。
 先住民族の慣習法の採用などを含め、早急な司法制度改革が不可欠です。
 

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2009/10/16

ニカラグア:第2回先住民族女性フォーラム

 第2回先住民族女性フォーラムが10月1日から4日にかけてニカラグア大西洋岸のワスパンで開催されました。
 メキシコや中米などからも参加者があったようですが、ニカラグアの先住民
族女性の声としていくつか興味深い点がありますので、声明文から一部抜粋し
ます。
DECLARACION DE WASPAM
Segundo Foro de Mujeres Indigenas del Wangki: unidas construimos
nuevos caminos, dignas, fortalecidas y felices para vivir bien

 

1)家族やコミュニティにおける「良い生活」を可能とするような法・公共政策を
2NGOの開発プロジェクトにも事前協議を
 政府や国際機関だけではなく、NGOに対しても、開発プロジェクトに際して、国際法に定められた事前の情報に基づく協議を要求しています。
3)暴力のない生活を送る権利があることを伝えよう。
女の子も、男の子も、若者たちも、女性も男性も、暴力のない生活を送る権利を持っているのです。

 1993年に国連で採択されている「女性に対する暴力の撤廃に関する宣言」の流れを引くものなのかもしれませんが、中米やメキシコにおける最近の若者たちの暴力や地方にまで広がる暴力の問題を考えると、より広範に「暴力から自由な生活/VIDA LIBRE DE VIOLENCIA 」というのが求められているのではないかと思います。

 「良い生活/Buen Vivir」=「まっとうな生活」を求める声や、暴力のない生活を求める声は、いろいろな垣根を越えて共有されるべき課題となっているように思います。
 私たちにとっての良い生活とはいったいどういうものなのか。経済成長とそこからの分配に依存し続けるのではない、安定的・静態的かつ生態的な生活のあり方を提示しないといけないのかと思います。

Nicaragua: Mujeres indigenas acuerdan movilizarse para una vida libre
de violencia

http://www.fondoindigena.org/notiteca_nota.shtml?x=17964 
スペイン語/英語ですがこのサイトも訪問してみてください。
http://es.madre.org/index.php?s=4&news=219
さて、話は全く変わりますが、
UNA VIDA LIBRE DE VIOLENCIA Y DISCRIMINACIÓN で検索をかけたところ、今年3月に公表された米州人権委員会の「EL DERECHO DE LAS MUJERES A UNA VIDA LIBRE DE VIOLENCIA Y DISCRIMINACIÓN EN HAITÍ」という報告書が引っかかってきました。今度ちらちらと眺めてみようと思います。
http://www.cidh.oas.org/countryrep/Haitimujer2009sp/Haitimujerindice.sp.htm

THE RIGHT OF WOMEN IN HAITI TO BE FREE FROM VIOLENCE AND DISCRIMINATION
http://www.cidh.oas.org/countryrep/Haitimujer2009eng/HaitiWomen09.toc.htm

開発と権利のための行動センター
青西

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先住民族の抵抗の日

 先住民族の抵抗の日:10月12日、中南米各地で先住民族の権利回復を求める運動が展開されました。
 それぞれの地域での動きの詳細をお伝えするには情報量が多いので、いくつかサイトなどを紹介します。

1º reporte de las Jornadas de Movilización Continental - 12 de octubre 2009
GRITO MESOAMERICANO
こちらのBoletim 85号です。
http://www.gritodelosexcluidos.org/index.php?option=com_docman&Itemid=4

Grito de los Excluidosのサイトはこちら
http://www.gritodelosexcluidos.org/index.php

La Minga Global por la Madre Tierra
 コロンビアの先住民族組織などを中心に計画されたもの。
http://movimientos.org/defensamadretierra/

 開発と権利のための行動センター
 青西

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2009/10/07

エクアドルの水法案について(10/19追記・修正)

新しい水法案を少し読んでみました。水関連はあまり触れたことがないので、間違っていればご指摘ください。

 2008年10月に公布されたエクアドル憲法の第12条は、「水への人権が本源的なものであり、放棄することはできないこと。水は公共の利用のための国家の戦略的な財産であり、生命のために不可分、不可侵、差し押さえのできない、かつ必須のものである」と定めています。
 更に、第314条において、「国家が飲料水や灌漑用水といった公共サービスの供給に関する責任主体であること」、第318条において、「全ての形式におけるプリバティサシオン(Privatización私有化・民営化)を禁止」しています。またこの条項において、水に関する業務は、公的(pública)あるいは共同体(comunitaria)によってのみ行われると定められ、浄化、飲料水や灌漑の供給という公共サービスは国家あるいはコミュニティ法人によってのみ行われるとされています。
 また国家は水資源の計画と利用の直接かつ唯一の責任機関を通じて、人の利用、食料主権を保障するための灌漑、生態系保全のための流水、生産的活動という優先度に基づいて利用されると定められています。

 水へのアクセスの権利を定めているだけではなく、民営化の禁止や共同体による管理を定めているといった点でこの憲法における水に関する規定は注目されますが、更に、水の利用の優先度の中で、生産的活動を最下位に定めていること、その上に生態系を保全するための流量(生態流量:caudal ecologico)が定められていることも重要な点です。[1]  

 この新憲法に基づいて、行政府から新しい水法案、正式には水資源と水の利用と活用に関する組織法”LEY ORGÁNICA DE RECURSOS HÍDRICOS, USO Y APROVECHAMIENTO DEL AGUA "が提出され、現在議会にて審議が行われています。[2]
 この法案は憲法に則って水への公正なアクセスを保障することを大きな目的としていますが、更に利用者の水管理への参加を促すこと、水系ごとの管理をすすめることなども目指しています。また水分野の政策責任者を大統領と定め、水分野の政策の唯一の担当機関として「水専任機関」を設けることを定めています。なおこの法案が扱う水資源には河川などの表面水だけではなく、地下水、水源、河床も含まれています。[3]

 水法案の第1条、第2条では、「水は国家の戦略的な財産」であることが定められ、中央政府の排他的な管理のもとに置かれるとされています。[4]第3条では水のプリバティサシオンの禁止が定められ、「水はいかなる商業的な合意の対象ともならないこと」また全ての形の水の私有化が禁止されています。また第7条で水管理業務は公的機関あるいはコミュニティ、共同体的組織によることが定められています。
 第21条からは「水への人権」が定められています。清浄で十分な水にアクセスする権利を定め、この権利を基本的かつ不可分なものと定めています。更にこの権利は未来の世代によっても行使されるものだと明記しています。[5]第28条は、水への権利は、日常生活のために地下水や表面水を手動で利用することの自由を含むものとされています。
 第31条から第35条では、コミュニティや先住民族の「集団的権利と慣習的な利用」について定められています。しかし「この法律の定めるところに従ってその権利を行使できる」とされており、また第34条では「認可された流量」に関しての分配については、その慣習を尊重すると書かれています。第69条から第75条において、水力発電や鉱業向け用水などについて、国家開発計画に従って水の使用認可を与えるという部分とあわせて考えた時に、先住民族コミュニティがどこまで自分たちのテリトリーにおける水利用について決定できるのか、曖昧な点が残っています。憲法で優先度を高く定められている分の流量(生活用水等)を、「合理的」に算定して、確保した後は、国家開発計画に従って配分されてしまう可能性もありそうです。
 第36条から第41条は「利用者の参加」について定められています。利用者が水系の水利用計画などに参加できるとされていますが、どこまで決定権があるのかは明記されていません。これは別の市民参加について定めた法に基づくということです。また流域審議会や市民監査機関の設置などを通じても市民参加を促していくとされています。
 第50条では、協議について定めています。水量・水質・環境への影響などを引き起こす恐れのあるプロジェクトについては、協議を行うこととされています。その先の詳細は、別に定める市民参加に関連する諸法に基づくとされています。
 第64条からは水の経済的活用について記されている。「水担当機関」が、自然人もしくは法人、公的セクターあるいは民間セクターの機関などに対して、水の経済的活用を認可できると定めている。続けて水力発電、鉱業などについて定めています。
 第90条から第100条にかけてはコミュニティによる水管理について定めています。生活用水や自給用及び食料主権確保ののための灌漑用水に関して、共同体的な管理の重要性を認めるとともに、促進するものとしています。またこのコミュニティによる水管理が民主的に運営され、かつ水の私有化の隠蔽に使われないようにという規定もなされています。更に、第93条ではその成員が経済的な目的のために水を利用している場合には、コミュニティによる管理は認めないとされています。
 経済的な水利用に関しては、全て国家の「水専任機関」の管理下に置かれることになるようですが、これがコミュニティによる管理とどのように整理されていくのか、ちょっとわかりません。
 この点で第179条以下に定められている「流域審議会」の設置とそこでの調整作業というのが重要な役割を果たしていくことになるのかもしれません。

 さて、この法案に関する批判点は次のようなものです。
1)私有化・民営化を禁止しているにもかかわらず、水力発電や鉱業などにおいて民間に対する利用権設定が認められていること。
2)水利用の優先度が憲法で定められているにもかかわらず、国家開発計画に従ってその優先度を変更することができるという規定が存在すること。
3)先住民族の権利が十分に認められていないこと。

 こうした中で10月5日の合意では、議会の特別委員会がコミュニティと、水法などの重要法案について、慎重を期すべき点について意見交換を行うという方向が合意されており、これは重要な点だと思われます。

 新しい水法案は水への権利を定めるなど非常に興味深いものですが、一方で「合理的な開発計画」の元に、コミュニティの声が封殺されてしまうのではないかという危機感を覚えます。そうした中で、この法律でも定めている市民参加のあり方が重要になるのではないかと思います。この点について定める市民参加関連法の動向にも注目する必要がありそうです。

 開発と権利のための行動センター
 青西

*今後時間をみて、追記修正する予定です。 

[1]生態流量:caudal ecologico
 日本でどのように定義されているのかはっきりわかりませんが、「流域生態系を維持するのに必要最低限の流量」と言えるかと思います。水力発電や工業用水など産業用の利用よりも生態系の保全が重視されているというのは重要な点であろうと思われます。水法案では第17条で、全ての流域で不可侵であり、必要とされる流量を守ることとされています。この規定でダムの存在自体が否定されるのではないかと私は考えています。

[2]法案についてはSecretaria Nacional del Aguaのサイトを参照のこと
  http://www.senagua.gov.ec/
 Usoは人間の消費などの、生命の維持や食料主権の保障に必要な水利用(第54条)、Aprovechamientoは産業的な水利用に対応している。(第64条)

[3]日本では水については憲法上の規定はなく、法律上も多数の法律で規定され、所管する省庁も複数にわたっているのとは大きな違いです。河川の管理は、河川法に基づいて国土交通省が、飲料水については水道法に基づき厚生労働省が、水質汚濁については環境省、また農業用水は農林水産省、工業用水は経済産業省の所管となっています。
 例えば次のサイトを参考に http://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/b_about_us/about_us01.html
 また「地下水関連法制度とこれまでの地下水政策」についてはこちら
http://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/chikasui/seisaku.html

[4]水法を巡ってしばしば紛争の生じるグアテマラでは(憲法上の規定では、水は全て国家に帰属するとしても)中央政府に水管理の権限を集中するということ自体が、先住民族コミュニティの強い反発を招く規定となりうる。エクアドルの水法案では第2章に先住民族の集団的な権利が規定されている。

[5]第47条でも未来の世代に対する国家の義務が明記され、国家とその機関は未来の世代に十分かつ健康的な水を確保するための戦略や統合的なプログラムを適用していく義務があるとされています。

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2009/10/04

グアテマラ:エル・エストールで、鉱山会社と衝突

 9月27日、グアテマラ東部のイサバル県のエル・エストールにおいて、チポン、ラ・ウニオン、ラス・ヌベスのコミュニティの住民に対する強制的な排除が行われ、衝突の中で47才の教員アドルフォ・イチ・チャマン(Adolfo Ich Chaman)が銃撃を受けて死亡するという事件が起きました。
 住民はグアテマラ・ニッケル会社CGNが違法に土地を占拠しているとして、土地占拠を行っていましたが、これに対する強制排除が行われ、更にその後エル・エストール各地で警察署への襲撃などの衝突が起きたようです。事件の詳細についてははっきりしたことはわかりませんが、機に乗じて、地域の暴力集団が行ったものであるという報道もなされています。また強制排除も警察ではなく、CGNのガードマンによって違法に行われたといわれています。
 また29日、エル・エストールの住民2千人あまりが、イチ・チャマンの埋葬とデモ行進に参加し、CGNの警備担当者の逮捕、地域からのCGNの撤退を要求しました。イチ・チャマンは衝突の中で暴力を受けていた子どもを、危険を省みず助けに行って殺害されたとのことです。(2009/10/04 青西)

 

 この事件に対して,アムネスティ・インターナショナルも13日にプレス・リリースを発表。殺人事件の徹底的な調査を要請しています。
 Guatemala: Los homicidios no deben quedar impunes(2009/10/13)
http://www.amnesty.org/es/for-media/press-releases/guatemala-homicidios-no-deben-quedar-impunes-20091013
 
 このリリースによると、カナダのハッド・ベイ鉱業(HudBay Minerals Inc)の子会社であるCGNのガードマンによって農民が殺された、という証言がなされているとのことである。アドルフォ・イチ・チャマンはマチェーテで斬りつけられた上に、銃撃されたとのことである。更に、7人が銃弾によって負傷したと伝えている。
 一方で、ハッド・ベイ社は関与を否定するとともに、強制的な排除も行われず、デモ隊が政府の車両や警察署を襲撃したのだと発言しているとのことである。
 アムネスティ・インターナショナルの特別アドバイザーであるハビエル・ツニーガ(Javier Zúñiga)は「暴力行為は調査されなくてはならないし、責任者は免責されてはならない」と表明しており、アムネスティ・インターナショナルは関係当局に対して、調査を進め、責任を明らかにするように求めている。 (2009/10/16)

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2009/10/03

エクアドルで先住民族と警官隊の衝突

 9月28日よりエクアドル先住民族は、議会で審議中の水法に対して抗議行動を開始していたが、水曜日30日、アマゾン地域のモローナ・サンティアゴ州のアラピコス近郊で警官隊と衝突。シュアル民族出身のボスコ・ウィルマ (Bosco Wizuma)が死亡したほか、他2名も死亡したと伝えられている。また40人ほどの警官が負傷したとのことである。
 シュアル民族は仲間の死を受けて、態度を硬化させ、道路封鎖を継続し、コレア大統領自ら対話のために現地を訪問することを要求しているとのことである。
大統領は金曜日に先住民族組織と対話を開始するとしていたが、来週に持ち越された。
 エクアドルのコレア大統領は、蜂起当初から水法は水管理の民営化に向かうものではなく、先住民族の蜂起は右派に操られたものだというコメントを繰り返している。(2009/10/03 青西)

 声明文等へのリンクはこちらに数多くあります。
http://ecuador.indymedia.org/

 水法の法案等
 Ley Orgánica de los Recursos Hídricos, Uso y aprovechamiento del agua
 http://www.senagua.gov.ec/index.php?option=com_content&view=article&id=104&Itemid=138

 批判http://www.biodiversidadla.org/Principal/Contenido/Documentos/Ecuador_los_10_pecados_capitales_de_la_Ley_de_Agua

 

 

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