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2009/11/18

「持続可能なパーム・オイルのための円卓会議」を考える

「持続可能なパーム・オイルのための円卓会議(RSPO)」の年次総会が11月2日から4日にかけてマレーシアのクアラルンプールで開催された。しかしこのニュースはほとんど日本では伝えられていない。それどころか、RSPOの公式サイトでも2週間が経過するが、そのニュースを読むこともできない。[1]

 しかしこの会議の前に、RSPOとその推進役である国際的な環境保護団体WWFに対して、「オイル・パーム・プランテーションは持続可能にはなり得ない」という抗議のレターが公開され、世界中の多数の環境団体が名を連ねた。[2] この公開レターではRSPOがプランテーション拡大の正当化に使われており、地域コミュニティーの生活を破壊し、生態系を破壊しているプランテーションに認証が与えられていることなどを指摘している。
 一方、RSPOへの関与を非難されているWWFは6月9日付けの資料で認証されたパームオイルの取引が非常に限られており、企業からの需要が少ないままではRSPOの成果は無駄になり、森林破壊は進んで行くであろう、と述べている。[3]

 RSPOをどう考えるべきなのか、少し検討してみたい。

現状の問題は次のように整理できるであろう。
-パーム・オイル・プランテーションの拡大そしてそこから派生する自然破壊、地域住民への人権侵害などは続いている。[4]
-その一方で、RSPO、そしてそれを通じての認証制度の確立の取り組みなども行われている。
-しかしRSPOの成果も限られている。

その上で、二つの点からRSPOについて検討してみた。 

1)RSPOや認証制度は、現実的なオイル・パームの需要拡大に対処できない。
 パーム・オイル生産量について [5]

 世界的に植物油の生産量は増え続けており、パーム・オイルも例外ではない。また植物油のうち約31%がパーム・オイルであり、この比率も増加しつつある。生産国はインドネシアとマレーシアに集中しており、インドネシアが44%、マレーシアが41%のシェアを占めている(2007/08)
仮にRSPOが有効に機能しうるものとしても、これまでに認証された生産量が130万トンでは、総生産量の3%、2006/07から2007/08の一年間の生産量の増加分の27%に過ぎない。
 つまりRSPOが有効かどうかなどと議論している間に、オイル・パーム農園は拡大し続けていると考えられるのである。

 消費からみると、日本の年間消費量は55万トンであり、中国614万トン、インド590万トンなどの巨大市場が存在している。
 パーム・オイルの消費も拡大しつつあり、かつ中国やインドなどの巨大市場なども存在している。更にパームオイルは嗜好品でもニッチ市場でもなく、食品用・非食品用の原材料として広範に利用されている。
 果たしてこのような商品に認証制度による差別化が実現可能かということをあらためて考えてみる必要がある。原料の一つに過ぎないパーム・オイルでは、最終商品としての差別化も難しく、また認証などなくても、世界中に市場は存在しているのである。

2)信頼を欠くRSPOの認証制度
 RSPO認証制度は、完全分離、混合管理、登録・証書方式の3種類が認められている。特に登録・証書方式をグリーン電力証書や排出権クレジットの仕組みと同様と考え、肯定的に捉える声もある。企業にとっては認証と実際の商品の動きを切り離す事ができる、画期的な仕組みであり、コスト削減に役立つことは間違いない[6 ]
 しかしこれは、認証し、差別化することを諦めた架空の認証制度である。パーム・オイルという、実際には分離しての流通管理が難しく、かつ最終商品の差別化も難しいという現実に妥協するために生み出された認証制度であり、この仕組み自体がRSPOの息の根を止めるものにほかならない。
 簡単に言えば、優良農園だけを見せて認証を取り、あとはどのように生産されたものであるかを問わず(量は等量となるが)、認証を貼り付けることができるという仕組みであり、「社会的な責任」を金で買うことを選んだ仕組みに過ぎない。
 このようなトレーサビリティを放棄した認証制度は、消費者への欺瞞に他ならない。認証などなくてもトレーサビリティさえ確立できれば、消費者にはその製品の是非を検討する可能性は残されているが、それすら存在しないのである。
 どこから購入したかわからないパーム・オイルに単に認証を貼り付けて正当化するぐらいなら、認証などなくとも、生産農園を限定して、トレーサビリティを保証する企業の方が、より社会的な責任を全うしていると言えるであろう。

3)まとめ
 このように考えるならば、RSPOに囚われることなく、地域社会や先住民族の生活を脅かし、生態系を破壊する恐れのある農園拡大には、国内・国際法を盾に抵抗をしていくことが優先課題と言えるであろう。またRSPOが正当化の口実に使われないようにすべきであろう。
 消費者としては、認証や国際的な名声や仕組みによって、想像力に蓋をすることなく、現実の声に耳を澄ましていくこと、そしてその上で自分の振る舞いを考えていくことが重要であろう。


[1]RSPOについて
 RSPO(持続可能なパーム・オイルのための円卓会議)は2004年に「世界的な信頼に足る基準と、広範な関係者の関与に基づいて、持続的なオイル・パーム生産の利用と成長を促すために」設立されたラウンド・テーブルであり、非営利の組織である。ここには生産者、加工業者、流通業界、消費財製造業者、銀行や投資家、また自然保護あるいは開発NGOなども参加している。
RSPOでは持続可能なパーム・オイル生産のための8 原則を定めるとともに、認証制度の確立に取り組んできた。
 持続可能なパーム油生産のための8 原則
1.透明性へのコミットメント
2. 適用法令と規則の遵守
3. 長期的な経済的・財務的な実現可能性へのコミットメント
4. 生産者及び加工業者による適応可能なベスト・プラクティティスの活用
5. 環境に関する責任と自然資源及び生物多様性の保全
6. 生産者や加工業者によって影響を受ける従業員及び個人やコミュニティに関する責任ある配慮
7. 新規プランテーションの責任ある開発
8. 主要な活動分野における継続的な改善へのコミットメント
*http://www.rspo.org/
日本語では
「発展途上地域における原材料調達グリーン化支援事業 サプライチェーンを遡ってみれば」(財団法人地球・人間環境フォーラム、平成18年3月)の第2章「2.植物油~パーム油を例に」がオイル・パーム・プランテーションの問題なども指摘しつつ、RSPO原則を遵守することの重要性を指摘している。
http://www.gef.or.jp/report/GreenSourcing2006/
[2]部分訳及び原文へのリンクはこちらから
http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2009/11/post-54b4.html
また昨年の国際宣言は次のブログ記事の後半に訳してある。
http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2008/10/post-a9a3.html
[3]生物多様性を守るパームオイルの利用はわずか1% ~WWF、企業に需要を喚起~
http://www.wwf.or.jp/activities/2009/06/741009.html
RSPOの動向についての説明も含まれている。
[4]開発と権利のための行動センターでも中南米を中心に、地域で生起している問題をいくつか伝えている。
<カテゴリ-:バイオ燃料>
http://cade.cocolog-nifty.com/ao/cat7897562/index.html
[5]元の統計まで確認する手間を省き、日本植物油協会のデータを利用している
http://www.oil.or.jp/
[6] 認証制度/サラヤが認証パーム油を目指す
http://eco.nikkeibp.co.jp/style/eco/special/080418_kankyo-kachi06/index.html
Roundtable on Sustainable Palm Oil/Promoting The Growth And Use Of Sustainable Palm Oil
http://www.rspo.org/resource_centre/RSPO_Fact_sheets_Extended.pdf

開発と権利のための行動センター
青西
  

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コメント

 泊様 
 はじめまして
 RSPOに関する文書などが、海外のNGOからも届くので、それらをどう考えるべきか、日本ではどのように伝えられているのか、少し整理してみようと考えて文章を書き始めてみました。
 で、思うところはRSPOがあってもオイル・パーム・プランテーションに関する問題はあちこちで続いているし、今後も続いていくであろう、ということです。

 その時にRSPOへの参加を呼びかけ、そこの規範で企業行動に縛りをかけようと取り組むより、地域のNGOが個別具体的なケースに、国内法・国際法を持って対応していく方が優先課題なのではないかと、私は思っています。ただその際に関係企業がRSPOに参加していれば、その規範を遵守するようにというのは一つの圧力のかけ方にはなると思いますし、実際にはそういう形での抗議も行われています。(裏返せばRSPOに参加している企業も問題を引き起こしているということです)
  
 RSPOのように間口を広げ、広範な企業を巻き込もうとすれば、ある程度緩やかな規範を設定せざるえないわけで、そこに抜け道ができたり、矛盾が発生したりと言うことは、あり得る話だと思います。だからこそ「RSPOで全て解決する」というのではなく、個別のケースでのアクションが並行して行われていなくてはならないと思います。そういう時にWWFが他の環境NGOから指弾されざる得ないのは、内部にどっぷり浸かっていると、「RSPOだけではだめなんだ」とは明確に言えない立場に入ってしまうからではないでしょうか。(この辺、WWFの動きをちゃんと追っているわけではないので、誤解があるかもしれませんが)
 
 ただ、マレーシアやインドネシアの国内状況はよくわかりませんが、2大生産国の中で、少なくともRSPOに入っていない企業は「いかがわしい」という空気を作っていくことは重要なのかもしれません。ただ、RSPOが免罪符とされることなく、個別の企業活動はチェックされていかなくてはならないと思います。
 また、個別の企業活動のチェックという際には、証書による「認証」よりも、トレーサビリティが確立されている方が、企業行動をチェックしやすいと思います。

 あと商品として差別化して流通される木材認証とパームオイルの認証はまた問題が異なってくるかと思います。REDDのように、温暖化対策として、クレジット化されると新しい状況が生まれてくると思いますが。

 なんにしても、現状がもっと伝えられていく必要があるのだろうと思っています。

 青西

投稿: 行動センターの青西です | 2009/11/19 08:35

いつも貴重な情報をありがとうございます。

RSPOに問題があることは、私も聞いています。
ただ、RSPOを否定し、なくすことが、イコール今後の社会にとってよりよいことなのかどうかは、もっとよく検討してもよいのではないでしょうか?
RSPOの欠陥と、認証制度そのものの問題は、分けるべきではないでしょうか。

木材認証のFSCも始まって16年になりますが、他の認証を合わせても世界の木材取引量の数%にしかなりません。大部分の木材は、認証なしで取引されています。一報、そうした欠陥をおぎなおうと、いくつかの国は違法伐採対策に力を入れています。
認証はいくつかの方策の一つだと思いますが、私はやり方によっては一定の有効性をもつのではないかと考えています。

制度がより適切なものとなり実効性をもつには、おそらく時間と忍耐強い努力が必要でしょう。
RSPO(の改善)以外の方法でもよいのですが、どうすればオイルパームプランテーションをめぐる事態をよりよくできるのか、具体策を考えていきたいと思います。

投稿: 泊みゆき | 2009/11/18 22:27

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