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2009/11/27

パームオイルでつながっているコロンビアでの農民排除と日本

 2009年7月14日に、ボリバル県の南、エル・ペニョンのラス・パバスにおいて、120家族が警察と機動隊によって土地から排除されるという事件が発生した。
 この事件に対して、いくつかの国際NGOが緊急行動を展開しているので、紹介する。[1]

 排除された農民は1997年に、ラス・パバスといわれるこの土地での生活を始めたという。この土地は元々ヘスス・エミリオ・エスコバル・フェルナンデスの土地であったが、1992年より放棄されていた。農民はブエノス・アイレス農民アソシエーション(ASOCAB)を組織するとともに、耕作を続けてきた。
 しかし2003年にパラミリタリー組織であるブロケ・セントラル・ボリバルがやってきて、住民への脅迫、暗殺、失踪、家屋の焼き払い、家畜の殺害などを行い始めた。しかしこれに対して国家は何をすることもなく、人びとは2004年から2006年にかけては土地を離れざるを得なかった。しかしほかに生計の手段もなく、人びとは危険を顧みず、土地に戻ることを選択した。またASOCABとしても2006年からコロンビア農村開発庁に対して、法160、第52条に基づいて、1235ヘクタールの土地に関する所有権消滅手続きを求めてきた。2006年にコロンビア農村開発庁の職員も現地調査を行い、ASOCABが安定した経済的な利用を行っていることを確認していた。
 しかし2006年末に、農民が手続きを行っていることを知った「土地所有者」が、武装グループを連れて土地に押し入り、土地を明け渡さなければ殺害すると脅したのである。更に、数日後にはパラミリタリー組織がやってきて、いくつもの家屋を焼き払い、家畜を殺し、人びとは土地を離れざるを得なくなる。
 この事件の後、エスコバル・フェルナンデスは、問題となっている土地を、テケンダマ社 (C.I. Tequendama S.A)[2] とアポルテス・サン・イシードロ社(Aportes San Isidro S.A.) に売却した、この二つの企業はオイル・パーム生産に従事しており、コロンビア・オイル・パーム耕作者連合に加入している。またテケンダマ社は、米国やイギリス、ドイツ、日本そして韓国などにバナナや砂糖、コーヒーなどを輸出しているダーボン・オーガニック・グループの会社である。[3]
 2008年11月に国家土地局は、それまでの調査に基づき、所有権消滅の有無に関する行政審査を開始することを裁決。このことを踏まえ、123家族は再度、土地に戻った。
 しかし2009年1月に入り、テケンダマ社とアポルテス・サン・イシードロ社は退去を求める訴えを起こし、ペニョンの自治体警察は2009年2月25日に、退去命令を発布。一度は弁護士の介入で、中止となったが、2009年7月14日に強制排除が執行されたものである。しかしこの退去命令は不正なものである。コロンビアの法令747号の第5条において、所有権消滅の行政手続きにある土地から農民を排除することは禁止されているのである。
 現在、農民は土地を奪われ、たまに受け取る人道支援で生活を続けている。現在ASOCABの弁護士は排除命令を無効にすべく取り組んでいる。

緊急行動の目的
-コロンビアは国際人権規約である、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」及び「市民的及び政治的権利に関する国際規約」の締結国であり、国家はこれらの権利を尊重、保護、保障しなくてはならない。
-土地から排除された保護するための適切な処置をとらなかった。
-実質的に排除を指示したのは、企業側の弁護士であったと報告されている。
-食料へのアクセスを保障するという義務を履行していない。

[1]<緊急行動を行っているサイト>
http://www.redcolombia.org/index.php?option=com_content&task=view&id=706&Itemid=34
http://www.landaction.org/spip/spip.php?article472
http://www.fian.org/cases/letter-campaigns/colombia-displacement-of-rural-families-bolivar-region
事件からは数ヶ月が経っているが、下に述べるボディ・ショップの動きとも関
連して、あらためてキャンペーンが行われているのだろうと思われる。
<最新の声明文>
Las Pavas: Comunicado a la Opinión Pública Nacional e Internacional (09/11/20)
http://www.censat.org/noticias/2009/11/20/Las-Pavas-Comunicado-a-la-Opinion-Publica-Nacional-e-Internacional/
<関連記事>
Las Pavas, crónica de un desalojo (09/08/01)
http://www.elespectador.com/node/153956/print
この記事においてテケンダマ社は土地は正当な手続きで購入したものと主張している。
[2] テケンダマ社の概要については、ダーボン・オーガニック・ジャパンのWEBサイトにも掲載されている。
http://www.daabonorganic.com/producers.html
[3] RSPO(持続可能なパーム・オイルのための円卓会議)にも参加しているダーボン・オーガニック社はボディ・ショップの90%パーム・オイルを供給している。(現在、ボディ・ショップの日本語サイトでは、ダーボン社から購入しているという明確な記述を見つけることはできなかった) 一方グローバル・サイトではコロンビアの供給先であるダーボン社の子会社が土地問題を抱えていることに言及し、調査団を派遣することについて言及している。
http://www.thebodyshop.com/_en/_ww/services/pdfs/AboutUs/Sourcing_Palm_Oil.pdf

また関連記事としては
ガーディアン紙のBody Shop ethics under fire after Colombian peasant evictions
http://www.guardian.co.uk/world/2009/sep/13/body-shop-colombia-evictions

最後に
 このようにコロンビアにおける農民排除の問題を見てくる中で、ボディ・ショップで利用されているオイルパームという点で、日本とコロンビアの土地問題がつながっていることが明確に見えてきた。偶然つながったわけではなく、グローバル化が進む中で、世界中の様々な問題や動きと、私たちは既にどこかでつながっているのだと考える方が自然なのであろう。
 つながっている可能性がある以上、トレーサビリティが確立していることは重要であり、また私たちはそのつながりがどうなっているのか、自覚的であろうとする努力を放棄することはできないだろう。それがグローバル化された社会が、私たちに要求する責任ではないだろうか。
 しかし欧米では、NGOやマスメディアを通じて、コロンビアの農民の土地排除の事件が伝えられ、現地を訪問している使節団(NGOや欧州の国会議員など)が存在しているが、同じくボディ・ショップやダーボン社の商品を利用している日本においては、そうした情報がほとんど流れていないという大きな違いがある。ボディ・ショップ自体も、消費者への説明責任という点ではグローバルサイトでのみしか対応していない。
 企業の社会的責任は、企業が喧伝するだけではなく、生産者や生産地の状況を含めて、市民社会の側がチェックする力を持たなければ有効に機能しないのではないだろうか。

開発と権利のための行動センター
青西

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コメント

realiser.org(レアリゼ)の三沢と申します。いつも貴重な情報を有難うございます。

7月30日にラス・パバス事件に関するザ・ボディショップとクリスチャンエイドの調査報告が出ました。
http://www.thebodyshop.com/_en/_ww/services/pdfs/AboutUs/LasPavasReview.pdf

ザ・ボディショップはダーボンの顧客ですが、クリスチャンエイドは第三者であり、当初ダーボンを厳しく批判していたと聞いていますので、信憑性のある報告書だろうと思っています。

大変複雑なケースのようですね。現地NGOの反応は、どんな感じなのか全然分りませんが、農民側とコンソーシウム側が今度どのような対話を続けていくのか、大変興味深いテーマです。

残念ながら私たちにはフォローする力がないので、定期的にこの地域をウォッチして頂けると大変に有難いです。
今後ともよろしくお願い致します。

投稿: 三沢健直 | 2010/08/03 17:26

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