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2010/03/01

大豆生産や鉱業に土地を奪われるアルゼンチンの農民や先住民族

 1990年代後半から、輸出向けのモノカルチャー農業の拡大や鉱業の広がりによって、アルゼンチン北東部では、土地紛争や土地を追われる農民が増えているとのことである。[1] 
 それに対抗する形で農村部への企業の展開に抵抗する小農民やコミュニティの組織も増加しつつある。アルゼンチン北部の6州におけるテリトリーを巡る紛争や環境紛争の数はこの状況の深刻さを浮き彫りにするものである。現在およそ500万ヘクタールの土地が係争中で、60万人が巻き込まれているという。この中で民間セクターや国家が農民や先住民族と対峙している。これが主要な農企業による連合体であるMesa de Enlaceの対極にある農村部の影である。
 カタルーニャ大学他の調査[2]は、大半の紛争は90年代に開始され、これはアルゼンチン北部への大豆の拡大に平行すると述べている。
 また<アルゼンチン・チャコ地方アグロフォレストリーネットワーク:REDAF>の報告書は120の紛争を確認しており、これまでに52のケースを調査してきた結果として、北部6州(サルタ、フォルモサ、サンティアゴ・デル・エステーロ、チャコ、コロドバ、及びサンタ・フェ北部)においておよそ60万人が土地あるいは環境紛争に巻き込まれているという。[3]
 「フフイ州の面積と人口に相応する人たちと面積が、このチャコ地方で土地紛争や環境紛争に巻き込まれているのである。」更にこれらの紛争の63%が2000年以降、北部への農業フロンティアの拡大と軌を一にして進んできた。
 アルゼンチン北部から、パラグアイ、ボリビアと広がるチャコ地域はアマゾンの次に生物多様性に富む地域である一方で、貧困指数も最も高い地域である。
 紛争に巻き込まれている家族やコミュニティの70%はその責任が国にあると考えている。特に土地登記の欠如が問題となっているが、この問題に対する政治的な意志の欠如、怠慢が問題とされている。また司法も偏っており、登記書を持つものを、それが怪しいものでも優遇し、占有してきた者の権利を軽視している。

「近年、北東部、北西部において油糧作物、特に大豆生産が拡大しているが、それと同時に、何千ヘクタールという森林が破壊され、伝統的な耕作物は失われ、放牧に使われてきた土地は改変され、土地所有構造も変化した」。そして「<近代的農業>が生態系の劣化と生活条件の悪化を引き起こし、小農民の移民に拍車をかけてきた」と報告書は指摘している。
 またREDAFの調査は農民や先住民族コミュニティの開発を妨げてきた政策として、土地所有権の脆弱さと農業フロンティアの拡大にともなう環境問題の二つをあげている。またアルゼンチンの人口の8割が人口10万人以上の都市に居住していることから、農村人口がその土地に居住し続けることを考慮するような政治的な意志、あるいは公共政策が欠如していると見なしている。
 
 また「土地簒奪」の記事は2008年9月5日に発生した暴力事件から始まっている。[4]
 ゴンサレス家は、突然20人もの警官と多数のガードマンに囲まれ、サントス・ラモン・ゴンサレスは殴る蹴るの暴行を受け、髪を捕まれて20メートルあまり引きずられ、お金や農具を奪われたという。更に、キミリの警察署に連れて行かれ、二日間にわたって拷問を受け・・・最後に村を離れるようにという脅しを受けて解放されたという。
 [2]の報告書は、20万家族以上が、90年代に始まる新自由主義の熱病の中で土地を奪われ、大都市の周縁に追いやられた、ここ25年間で土地集中は深化し、農村部の社会的不平等は拡大したと述べている。
 コルドバの農民組織によると、州北部では、60%の農家が正式な土地書類を有していないという。その土地を20年以上占拠してきたことから、国内法において保護されているはずであるにもかかわらず、農業フロンティアの拡大と政策が欠如から問題が深刻化している。更に司法も放置あるいは敵意すら持っている。こうして農村に住む家族は、土地から追われた後、全く保護のない状況に、政府による保護策のない状況に置かれている。

 サンティアゴ・デル・エステーロでは300人以上の農民が、何十年も生活してきた土地からの排除に抵抗している。警察や司法は私的所有地の横領だ、執行命令への不服従だ、森林を破壊しているなどといった<罪状>をつけてくるが、それは全て、人々が以前から生活してきた自分たちの土地の上での話なのである。
「農業エリートは、とても先進的な農業モデルだと言って振興してくるが、環境を汚染し、土地を劣化させ、外部からの投入財に深く依存したモデルであり、大きな社会的な負荷を背負っている... このモデルは、この国の食糧不足の主要な原因であり、未来を担保にかけているのである。森も、地下水も、土壌も失われつつある」

 この記事以外にもアルゼンチンにおける先住民族の土地からの排除については、昨年アムネスティ・インターナショナルも2度にわたって声明を発表している。またここで取り上げられているREDAFのサイトでも大豆生産の拡大が引き起こす土地問題などのニュースや映像を伝えている。[5]

 開発と権利のための行動センター
 青西 

[1] CINCO MILLONES DE HECTAREAS EN DISPUTA Y 600 MIL PERSONAS AFECTADAS EN EL NOROESTE DEL PAIS : Los desplazados por la soja y la mineri'a(pagina / 12, 2010/02/22) http://www.pagina12.com.ar/diario/elpais/index-2010-02-22.html
このブログ記事は、このPagina 12の記事を抄訳に、記事が引用している報告書などを参照しつつまとめたものである。
[2] 1o INFORME RESUMEN EJECUTIVO "Conflictos de Tierra y Medioambiente en la region del Chaco Argentino"
http://redaf.org.ar/noticias/wp-content/uploads/2010/02/resumen-ejecutivo_completo_final_091209.pdf
...[2]報告書によると、この地域では近代的な農業の拡大の中で、土地の集中、小農民や先住民族の土地からの排除、生態系の劣化が進んでいるという。特に北東部、北西部において、大豆生産が拡大し、森林伐採が進んでいる。不在地主が関心を持ってもいなかった土地があらためて価値を持ち、そこの土地利用者も森林も全て踏みにじって<きれいに>しつつある。このことが農村からの移民の増加を引き起こしている。こうした土地紛争というのは決して新しいものではないが、この調査で扱っているケースのの63%は2000年以降に始まったものである。
 先住民族の土地に関しては、6割が登記されていないことから、不安定な状況に置かれている。特に土地紛争の影響を受けている人の76%は先住民族である。
[3] INFORME Situación de los derechos humanos en el Noroeste argentino en 2008
<Cátedra UNESCO de Sostenibilidad de la Universidad Politécnica de Cataluña,Asociación Catalana de Ingeniería Sin Fronteras (ISF Cataluña), Educación para la Acción Crítica (EdPAC) y el Grupo de Cooperación del Campus de Terrassa (GCCT)>
http://investigaccionddhh.wordpress.com/articulos-y-documentos/
...[3]報告書によるとアルゼンチンでは大豆生産が拡大し、耕作面積の5割に達しているが、その一方で100ヘクタール以下の農家の減少が続き、逆に1000ヘクタール以上の農業者(農業経営体)への土地集中が進んでいる。
 こうした中で長年にわたって土地を占有してきた農民たちと新しい企業的な農業者との土地を巡る対立が深まり、農民が排除されるケースが相次いでいる。また農薬散布による健康被害もでている。北東部のこれまで見向きもされなかった土地で、小農民は、正式な土地登記書類を持ってはいないものの、長年にわたって土地を占有し耕作してきた。しかしこうした土地が買い集められ、農民が追い出されるという事件が相次いでる。アルゼンチンにおいては、20年間継続して占有することで、所有権が発生すると法律で定められているが、実際には所有権を確定する手続きのコストが高く、小農民にとってその権利が十分に保証されていない。
「紙の上で大面積の土地が取引されていくものの、政府の誰もそれをコントロールしていない。誰が土地を売ったのかも、実際に土地引きされた面積も確認されず、また買われた土地の中に何があるのか、小学校なのか、病院なのか、川なのか、湖なのか、それもわからないままに、ただ書類が売り買いされていく」
 更に、トラクターが来て、私財もろとも、家を踏み倒していくという暴力的な排除のケースも報告されている。
 この報告書では、農地問題だけではなく、鉱山開発による環境破壊、コミュニティとの紛争、またそれぞれの事例なども報告されている。
[4]Usrpación de Tierra (pagina / 12, 2010/02/22)
http://www.pagina12.com.ar/diario/elpais/index-2010-02-22.html
[5] アムネスティ・インターナショナル
Argentina: nueva amenaza de desalojo de una comunidad indígena ...(26 November 2009)AMNISTIA INTERNACIONAL.
DECLARACION PÚBLICA. Índice AI: AMR 13/002/2009. 26 de noviembre de 2009. Document AMR 13/002/2009
Argentina: COMUNIDAD INDÍGENA BAJO AMENAZA DE DESALOJO ILEGAL (16 October 2009)
AU: 282/09, Índice AI: AMR 13/001/2009 Argentina Fecha: 16 de octubre de 2009. Urgent Action AMR 13/001/2009
http://www.amnesty.org/es/region/argentina

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