« 2010年3月 | トップページ | 2010年5月 »

2010/04/28

パナマ:ボンジック川のダム開発に対して刑事告発

 ボンジックの住民がダム建設を進めようとしているテリベ・イドロエコロヒカ社に対して、環境破壊を引き起こしているとしてボカス・デル・トロ県の検察に刑事告発。
 これはダム建設プロジェクトで被害を受けている、ボンジック住民のウーゴ・サンチェス、エステバン・トレス、テオドゥロ・キンテーロ、アリシア・キンテーロなどが中心に告発したものである。
 「こうした告発をするのが危険なことはわかっているが、我々の権利であり、必要な手手続きを進めていくつもである」と述べている。
 「これは環境法制を破っているだけではなく、ナソ民族の土地を破壊し、我々の<薬局>と<スーパーマーケット>を破壊するものであり、我々の生命と民族の存続を脅かすものである。」
 
 フェリックス・サンチェス
  ナソ・ファンデーション


開発と権利のための行動センター
青西靖夫

パナマ関連記事はブログの次のサイトから
http://cade.cocolog-nifty.com/ao/cat20818000/index.html 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010/04/27

「責任ある国際農業投資」ガイドラインは是か非か II

 もう少し内容を検討してみようと思っていた矢先に、次のような声明文が送られてきました。「農民や市民社会組織は、ウィン・ウィンを語る土地収奪の世界銀行の提案を告発する」、「社会運動は農地収奪に関する世界銀行の戦略を告発する」というものです。

 ビア・カンペシーナやFIAN、ランド・リサーチ・アクション・ネットワーク、GRAINといった国際組織が、現在の農地収奪の動きを止めるための動きを展開しているものです。
 この動きは4月25日に開催された「責任ある農業投資に関するラウンドテーブル」とそれに引き続く、世界銀行による農地問題に関する国際会議に向けて行われています。
 
 私たちの政府が主催しているラウンドテーブルについて、他の国々の市民組織が反対の声を上げている。しかし私たちはラウンドテーブルについての情報を持ってもいなければ、反対している声を十分に聞くこともできていません。
 この状況は改善しなくてはならない、と思っています。

<とりあえずの現状分析>

1)日本の外務省のサイトにはこのラウンドテーブル開催についての情報は掲載されていないようである。
2)米国の国務省のサイトには、ラウンドテーブル開催情報が23日付で掲載されている。
Roundtable Discussion on Responsible Agricultural Investment (RAI)
http://www.state.gov/r/pa/prs/ps/2010/04/140749.htm
3)世界銀行のAnnual Conference on Land Policy and Administration
http://go.worldbank.org/IN4QDO1U10
4) 社会運動、農民組織のサイトではラウンドテーブル開催に触れている。
4月12日付け
GRAINによって運営されているサイト
Food crisis and the global land grab:Japan, US and AU to host “Roundtable on Responsible Agricultural Investment”

http://farmlandgrab.org/12065
(このサイトには外務省サイトに掲載されていない文書も外務省文書も掲載されている)
ビア・カンペシーナのサイト:Farmers and civil society groups denounce World Bank proposal for win-win land grabbing
http://viacampesina.org/en/index.php?option=com_content&view=article&id=912:farmers-and-civil-society-groups-denounce-world-bank-proposal-for-win-win-land-grabbing&catid=23:agrarian-reform&Itemid=36
Land Research Action Networkのサイト STOP LAND GRABBING NOW!!
Say NO to the principles of “responsible” agro-enterprise investment promoted by the World Bank

http://www.landaction.org/spip/spip.php?article499
FIAN のサイト:Farmers and civil society groups denounce World Bank proposal for win-win land grabbing
http://www.fian.org/news/press-releases/farmers-and-civil-society-groups-denounce-world-bank-proposal-for-win-win-land-grabbing

(いくつかのサイトではメーリングリストも運営しているので、関心のある方は登録すれば、情報を受け取ることができる)

<取り得る対応>
1)外務省に対して、より適切な情報開示を要求する。
2)日本で継続的に農地収奪の問題についてフォローしていく態勢を検討する。
現状では農業情報研究所 http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/
アフリカ日本協議会の奥の奥に隠れているアフリカの食料・農業問題のサイト  
http://www.arsvi.com/i/2-food.htm
この辺が現状では重要な情報源なのかと思います。
(他にも重要な情報源がありましたら教えてください。)
 その上で、ネットワークと発信基盤の強化が必要だと考えます。
3) その次に、ネットワークを基盤にアクションの検討



STOP LAND GRABBING NOW!!
Say NO to the principles of “responsible” agro-enterprise investment promoted by the World Bank La Via Campesina FIAN Land Research Action Network GRAIN
Monday 12 April 2010
http://www.landaction.org/spip/spip.php?article496&lang=es
(一部抜粋整理)

農地収奪は農村コミュニティや人々の食料への権利や食料主権への深刻な脅威である。世界銀行はこうした事態を前に、投資が成功するように7つの原則を定めようとしている。

問題点
-現在進みつつある、民間セクターによる土地の買い上げはリスキーである。世界銀行も開発途上国の農地が海外の投資家によって買い集められている大きな流れについて調査を終えたばかりである。しかし世界銀行は、これまで広がっていなかった地域における世界的なアグリビジネスの広がりと民間資本の流入は望ましいものであるとみなしている。
-こうした動きが土地私有化の大きな動きと、土地権の移行を伴うため、世界銀行は、社会的な反発のリスクを下げるためにいくつかの基準を設けようとしている。
-しかし農地収奪を正統化するものに過ぎない。企業がコミュニティの土地を支配していくプロセスであり、許されるものではない。
-規制緩和や貿易条約を通じて、ここ10-15年の間、農地収奪は進んできた。
-食料危機において、政府や投資家による農地収奪が進んだ。
-小農民の手から農地や森林が奪われ、貧困や飢餓が進んでいる。
-人々の自己決定権、食料主権を脅かしている。
-世界銀行は、土地、そして土地に対する権利を、資本が高い見返りを得るための基本的な財とみなしている。土地は作物を生産するだけではなく、新エネルギーの材料、そしてまた水を確保する方策でもある。
-世界銀行や企業は土地を経済的な側面からのみ評価して、生態的・社会的・文化的価値を認めていない。
-農地収奪は、コミュニティの土地への権利を否定し、生活様式を破壊する。
-生態系を破壊し、気候変動を深化させる。
-経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、国連の先住民族の権利宣言を侵害している。
-「農地改革と農村開発に関する国際会議」(the Internatiuonal Conference on Agrarian Reform and Rural Development、CIRADR)の最終宣言文及び「開発のための農業科学・技術国際アセスメント」(IAASTD)の勧告を無視している。

要求
-農地収奪は早急に停止すること
-土地と自然資源への公平なアクセスを確保するために、コミュニティの手に土地を維持するとともに、農地改革を実施すること
-小農民による農業、小規模な漁業・放牧を強く支援すること
-食料主権とローカルな市場に向けて農業政策を転換すること
-コミュニティが土地や水、生物多様性をコントロールするような農業システムを促進すること
-企業や政府などの土地(放牧地、沿岸地、森林、湿地なども)へのアクセスを制限すること。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010/04/24

気候変動民衆会議・合意文書 全訳

ボリビアのコチャバンバで開催された「気候変動および母なる大地の権利に関する世界民衆会議(Conferencia Mundial de los Pueblos sobre Cambio Climático y los Derechos de la Madre Tierra)における最終文書

「民衆合意」4月22日ボリビア [1]

母なる大地は傷つき、人類の未来は危機に瀕しています。

「コペンハーゲン合意」と言われる文書が私たちに示しているのは、地球の気温上昇が2度以上になることによって、私たちの母なる大地に引き起こされる被害は取り返しのつかないものになる可能性が50パーセントあるということです。
 20パーセントから30パーセントの種は絶滅の危機にさらされるでしょうし、広範な森林が影響を受け、干魃や洪水が地球上の様々な地域を脅かすことでしょう。砂漠が拡大し、極地やアンデス、ヒマラヤの氷河の溶解が進むでしょう。多くの島嶼国が消滅し、アフリカでは3度以上の気温上昇を被ることになるでしょう。同時に世界の食糧生産は減少することで壊滅的な打撃を受け、地球上の広大な地域において人々の生存が危機に瀕し、既に10億2000万人を超える世界中の飢餓人口が急激に増加することなるのです。
 
 「先進国」と言われる諸国の政府や企業は、一部の科学者集団と共謀して、気候変動の原因である資本主義システムを問うことなく、単なる気温上昇の問題として議論させようとしています。 私たちは産業革命以来加速化された、人間と自然の従属と破壊に基づく、家父長的な文明モデルの終着的な危機に対峙しているのです。
 資本主義システムは、競争と進歩、際限なき成長という論理を私たちに押しつけてきました。生産と消費に基づくこの制度は、限りない利潤を求め、人間を自然から切り離し、自然に対する支配という論理を築き、すべてを商品へと転化してきたのです。水も大地も、人の遺伝子も、伝来の文化も、生物多様性も、正義も、倫理も、先住民族の権利も、死も、そして生命そのものも商品としてきたのです。
 資本主義のもとで、母なる大地は単に原材料の源と見なされ、また人間は生産手段あるいは消費者と見なされてきました。そこでは人は、人そのものとしてではなく、所有するもので値踏みされてきたのです。
 資本主義は、蓄積プロセスと、領域と自然資源の管理のために、強力な軍事産業を必要とし、人々の抵抗を抑圧し続けてきました。地球の植民地化のための帝国主義的システムなのです。

 人類は大きな選択を迫られています。資本主義の道を続け、略奪と死を選ぶのか、自然との調和と命の尊重という道へ踏み出すのでしょうか。
 人間と自然との間の調和、人々の間での調和を再び成り立たせる新しいシステムを、生み出すことが求められているのです。しかし人々の間の公正なしには、自然との調和もありえません。
 世界中の人々に対して、日々の生活と「善き生き方/Vivir bien」という提案の中で確認されてきた、先住民族の知識や知恵、伝統的な実践の、回復と再評価そして強化を提起します。母なる大地を生きるものと考え、私たちはその母なる大地と、不可分の、相互に依存した、補完的そして精神的な関係を保っているのです。

 気候変動に対峙するためには、母なる大地を生命の源と認め、次のような原則に基づく新しいシステムを生み出していく必要があります。
*すべてのものと、そしてまたすべてのものの間での調和と均衡
*補完性、連帯、公正
*集団としての幸福と、母なる大地との調和の上での基本的な必要性の享受
*母なる大地の権利と人権の尊重
*すべての形態での植民地主義、帝国主義、介入主義の排除
*すべての人々、そして母なる大地との間での平和

 私たちが支持するモデルは、破壊的な際限なき開発ではありません。それぞれの国々は、人々の基本的な必要を充足するために財やサービスを生産する必要があります。しかしそれはこれまでの豊かな国々が目指してきた開発の道を続けるものではありません。その道は地球が5つもなければならないものであり、地球の許容量を越えているのです。現在でも既に再生産可能な地球のキャパシティを30%以上も上回っています。こうした母なる大地からの過剰な搾取のリズムでは、2030年には地球が2つも必要となるのです。

 人間が一つの構成要素に過ぎない、相互に依存したシステムの中では、すべてのシステムの中での不均衡を引き起こすことなく、人間の権利だけを要求することは不可能です。人権を保障し、自然との調和を取り戻すためには、母なる大地の権利を認め、その権利を有効に適用していくことが必要とされます。
 そのために、私たちは「母なる大地の権利のための世界宣言」の制定を呼びかけます。
 その案では次のような権利を書き記しています。
*生命への権利、存在する権利
*尊重される権利
*人間による改変から自由に、そのサイクルと生命プロセスを続ける権利
*自律性と相互性を有する、異なるものとして、アイデンティティーと統合性を維持する権利
*生命の源としての水への権利
*清浄な空気への権利
*統合的な健康への権利
*汚染、毒性廃棄物、放射性物質からの自由の権利
*生命の統合性と健康的な機能を脅かすような、遺伝的改変を受けない権利
*この宣言に定められた権利が、人間の活動によって侵害された際に、早急かつ十全に回復される権利


 気候変動枠組条約の第2条、「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極的な目的とする。」という規定を有効なものとするためには、温室効果ガスの濃度を安定化させることが必要だというのが共有されている見方です。私たちの見方では、共通するが異なった歴史的な責任という原則に基づいて、先進諸国に対して、量的な目標について約束することを求めます。それは大気中の温室効果ガスの濃度を300ppmに、つまり地球の平均気温上昇を最大摂氏1度の範囲に収めることを求めるものです。
 条約の究極的な目標に基づく、地球の気候系の均衡のための私たちの見方を支持し、短期的に目標を実現できるような排出量削減の大きな目標を先進諸国が約束するためには、人々の支援、運動、そして様々な国々の支援による早急な行動が必要とされることを強く呼びかけます。 
 「長期協力行動」に関する共有された見方は、気候変動に関する交渉を、単に温度上昇や大気中の温室効果ガス濃度の限度設定に限定されるべきではないというものです。それは、資金調達、技術、適応策、能力開発、生産や消費様式、そして自然との調和を取り戻すための母なる大地の権利の承認などを含めた、統合的かつ均衡のとれたものとして理解されなくてはなりません。
 気候変動を引き起こしてきた主たる原因である先進諸国は、歴史的かつ現在における責任を担い、すべての範囲における気候債務を認め、また引き受けなければなりません。それが気候変動の正当で、有効かつ科学的な解決への基盤となるのです。この考え方から私たちは先進諸国に対して次のことを要求します。

*これまでに排出されてきた温室効果ガスによって占められている大気中の空間を、開発途上国に対して解放すること。これは排出されてきたガスの吸収と削減による大気の脱植民地化を意味する。
*制約された大気空間で生きることによって生じる開発機会の喪失に対して、開発途上国への技術移転の必要とその費用を負担すること
*気候変動によって引き起こされてきた何百万という移民の責任を受け止め、移民に対する制約的な政策を排除し、移民に対して尊厳ある生活を保障し、またその国におけるすべての権利を認めること
*気候変動の影響による適応のための債務を引き受けること。過剰な排出によって引き起こされる被害を予防し、最小化し、また対応するための手段を提供すること
*こうした気候債務が、母なる大地へのより大きな債務の一部であることを認め、国連において「母なる大地のための世界宣言」を採択し、またそれを適用すること

 経済的な補償のみに焦点を与えるのではなく、修復的司法の適用、この地球の生命共同体を構成する人々や仲間の統合性を回復することが必要とされます。

 先進諸国の温室効果ガス削減に関し法的拘束力を持つ唯一の取り決めである京都議定書を廃止しようとする一部の国の取り組みを残念に思います。
 先進諸国は、法的に義務づけられているにもかかわらず、排出を削減するどころか、1990年から2007年の間に11.2%も排出量を増加させてきたことを世界に向けて指摘します。
 米国は、その見境なき消費によって、温室効果ガスの排出量を同じ期間に16.8%も増加させてきました。それは年間一人当たり20~23トンの二酸化炭素を排出したことになり、第三世界の一人当たり排出量の9倍に当たり、サハラ以南のアフリカの住民と較べれば20倍にもなります。
 「コペンハーゲン合意」は、一部の自発的な約束に基づくもので、先進諸国に不十分な削減を認めるものです。この正統性を欠く「コペンハーゲン合意」を断固拒否します。これは母なる大地の統合的な環境を脅かし、摂氏4度近くの気温上昇につながるものです。
 年末にメキシコで開催される気候変動会議において、2013年から2017年の第二期間の約束として、京都議定書の改定案が採択されなければなりません。そこでは先進諸国は、国内排出量を1990年比で少なくとも50%削減することを約束すべきです。そこには温室効果ガスの実質的な削減の不履行をごまかすような、炭素市場やその他のシステムを含めずにです。
 温室効果ガス削減のために、京都議定書のシステムを維持しつつ、まず先進諸国全体としての目標を定め、その次にそれぞれの国での取り組みを比較検討の上で、個別に差し向けていくことが必要です。
 米国は、京都議定書を批准しなかった唯一の附属書I国として、世界の人々に対して大きな責任を持っています。京都議定書を批准するとともに、その経済規模に応じた排出量削減を履行すべきです。
 人々は気候変動の影響を前に、等しく防衛する権利を有します。気候変動に対する「適応」という概念を拒否します。それは先進諸国の歴史的な排出によって引き起こされた影響を忍従させるものと理解できますが、そもそも地球の危機を前にその生活スタイルや消費スタイルを適合させるべきは先進諸国なのです。私たちは気候変動の影響に立ち向かっていくことを強いられていますが、適応はプロセスであり、押しつけられるものではありません。適応は、異なる生活のモデルのもとで、調和的に生きていくことが可能であることを示しながら、気候変動の影響に対峙していくためのツールでもあるのです。
 気候変動に立ち向かっていくための資金メカニズムの一つとして、私たちの国家の主権のもとで、透明かつ公正に管理される、「適応のための基金」を設置することが必要です。この基金のもとで、開発途上国における影響とコストを評価し、その影響から生じる必要性を明らかにし、また先進諸国による支援が登録され、モニタリングされなくてはなりません。これに加え補償メカニズムも必要です。引き起こされた、また引き起こされる被害による損失、極端なあるいは漸進的な気象現象による機会の喪失や回復、生態容量を超えた場合や、「善く生きる」権利を差し止めることによる影響から生じるであろう追加的なコストを補償するものです。
 いくつかの国家によって開発途上国に対して押しつけられた「コペンハーゲン合意」は十分な資金を提供しないだけではなく、人々を分断し、対立させるものです。緩和策をもって、適応への資金へのアクセスを条件づけようというものです。更に国際的な交渉の場において、開発途上国を気候変動への脆弱性をもって分類し、論争を引き起こし、分裂や不公平を生み出すものなのです。

 地球温暖化を止める、地球を冷やすという、人類にとって大きな課題は、農業を根幹から変換することを通じてのみ実現されるでしょう。農民や先住民族による持続的な生産モデル、あるいはエコロジカルな伝統的実践やモデルに基づく農業に移行することによって、気候変動問題の解決に貢献し、また食料主権を確立することができます。食料主権は、人々が自分たちの独自の種子、大地、水、食料の生産をコントロールする権利であり、母なる大地との調和に基づく生産を通じて、十分かつ多様で栄養的な食料へのアクセスを、地域的文化的に適切な形で保証するものであり、またそれぞれの国や民族のもとので自立的な(参加的・共同体・分かち合いに基づく)生産を深化させるものです。
 気候変動は既に農業や世界の先住民族や農民の生活様式に大きな影響を引き起こしつつあり、またその影響は今後更に深刻なものになっていくでしょう。

 アグリ・ビジネスは、グローバル化した資本主義的生産の社会・経済・文化的様式と、食料への権利を実現するためではなく、市場向けに食料を生産するという論理から、気候変動の主要な原因の一つとなっています。その技術や流通、政治面での手法は、気候危機を深化させ、地球上の飢餓を増加させるだけです。ですから、私たちは自由貿易協定や連携協定を拒否するとともに、生命に関連する知的所有権の適用、農薬や遺伝子組み換えといった現在の技術パッケージ、その他の誤った解決策(バイオ燃料やジオ・エンジニアリング、ナノテク、自殺遺伝子)などを拒否するのです。これらは現在の危機を深化させるに過ぎません。

 また資本主義のモデルが、インフラなどの巨大プロジェクトを押しつけていることを告発します。搾取的なプロジェクトをもってテリトリーを侵略し、水を民営化し、商品化し、先住民族や農民を排除した土地を軍事化し、食料主権を侵害し、社会・環境的な危機を深化させているのです。

 すべての民族、生物、そして母なる大地の、水へのアクセスを享受する権利を尊重することを要求し、また水への権利を基本的な人権と認めるボリビア政府の提案を支持します。

 気候変動枠組み条約の交渉において利用されている森林の定義が、プランテーションを含んでいることを受け入れることはできません。モノカルチャーは森林ではありません。ですから、交渉のために、自然林、ジャングル、地球の多様な生態系を認めた定義を求めます。

 先住民族の権利に関する国連宣言は、気候変動に関する交渉の中で、全面的に承認され、包括的に適用されなければなりません。森林破壊を防ぎ、自然林やジャングルの劣化を防ぎ、守っていくためには、土地やテリトリーに対する集団的権利を認めることが重要な戦略と行動となります。大半の森林やジャングルは先住民族や伝統的な農民コミュニティの領域に位置しているのです。

 REDD(森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減)やREDD+、あるいは++といったバージョン、このような市場メカニズムの利用を非難します。これらは先住民族の主権を侵害し、事前の十分な情報に基づく自由な合意に対する権利を侵害しています。更に国家の主権を侵害し、先住民族の諸権利、使用や慣習、また自然の権利を侵害するものです。
 汚染している国々は、森林の維持や回復のために必要な経済的資源や技術を直接移転することが義務づけられています。またそれらは先住民族や、先住民族や農民の伝統的な組織構造の利益になるようになされなければなりません。これらは、先進諸国からの直接的かつな追加的な補償であるべきであり、炭素市場の外に置かれるべきであり、炭素のオフセットとして利用されるべきではありません。市場メカニズムに基づく、地域的な森林イニシアティブの中止を要求します。これらは、存在しない、条件づけられた結果を提案するものにすぎません。自然林やジャングルの回復には、在来の種子や果樹、植物を用い、住民によって管理・実施される世界的なプログラムが必要です。諸政府が森林コンセッションを廃止し、石油を地面の下に残すという方針を支援すること、また森林地帯における石油開発を早急に中止することを求めます。

 各国政府に対して、気候変動に対する交渉や政策、解決策の中で、先住民族の権利に関する国連宣言、ILO169号条約など、人権と先住民族の権利に関する国際的基準の承認、尊重、実効的な適用を保証することを要求します。特に諸国家に対して、テリトリーや土地、自然資源への権利が先行して存在することを法的に認め、伝統的な生活形態を可能にするとともに、それを強化し、気候変動の解決のために貢献することを要求します。
 気候変動に関連する対策の実施や計画、交渉プロセスにおいて、先住民族の権利、協議、参加、事前の情報に基づく自由な同意の権利の実効的な適用を求めます。

 現在の環境の悪化と気候変動は、危機的なレベルに達していて、その結果の一つが国内外への移民です。1995年には気候移民は2500万人だったという推計がありますが、現在では5000万人と推測され、2050年には気候変動によって引き起こされる状況によって、2億から10億人が移動を強いられると見られています。先進諸国はこの気候移民に対する責任を負うべきであり、すべての国家が気候移民という定義を定めた国際的な条約の調印に基づいて、その領域に迎え入れ、その基本的な権利を承認すべきです。

 国家や企業などの責任によって出身国や途中国、目的とした国から追い出された移民や避難民の権利の侵害に関して、明らかにし、文書化し、裁判を行い、処罰する良心に基づく国際法廷を設立すること。

 気候変動のために開発途上国の差し向けられている資金や「コペンハーゲン合意」の提案は不当に安いものであり、政府開発援助に加えて、先進諸国は新しい資金の提供を約束しなければなりません。公的な資金から少なくとも国内総生産の6%を開発途上国が気候変動に立ち向かうために提供すべきです。国防にも同等の金額を使っていますし、世界の優先度と政治的意思に深い疑念を持たせることともなった、破綻危機の投資家や銀行を救うために5倍もの資金を投入したことを考えれば、これは可能な金額です。これらの資金供与は直接に、条件なして行われるべきで、国家の主権や、影響を受けるコミュニティやグループの自己決定を妨げないものでなければなりません。
 現在のメカニズムの非効率性を鑑みますと、メキシコの会議では、気候変動枠組み条約締結国会議の権能の下で機能する、新しい資金供与のメカニズムが定められなければなりません。そこには付属書I国の資金供与の約束履行を保障するために開発途上国の代表がいなければなりませんし、締結国会議に報告を出さなければなりません。

 先進諸国は1990年から2007年の間に温室効果ガスの排出量を増加させてきましたが、市場メカニズムに助けられて、実質的に減少させてきたように見せてきました。
 炭素市場は、私たちの母なる大地を商品として、うまみのある取引となってきましたが、大地や水、そして生命そのものを略奪し、荒廃させるものであっても、気候変動に対するオータナティブとはなってはいません。
 最近の金融危機が示すように、市場は金融システムを規制する能力を持たず、投機家の動向や仲介業者の出現で、脆弱かつ不安定なものとなっています。このような市場に、母なる大地と人類の存続の委ねるというのは非常に無責任なあり方です。
 既存の炭素取引のメカニズムは気候変動問題を解決することができず、温室効果ガスの排出を削減させるための直接かつ現実のアクションにもならないのですから、今後、炭素市場を拡大し、促進させるための新しいメカニズムを構築しようという交渉は容認できるものではありません。

 気候変動枠組み条約の中で、技術開発と移転のために先進諸国が担ってきた約束の履行要求することは不可欠です。先進諸国から提案されている「技術ショーケース」は単に技術を取引させるもので受け入れがたいものです。技術交流に関して、参加型の管理と執行、評価のための多国籍間かつ学際的なメカニズムを構築することが重要です。こうした技術は有効かつ、クリーンで、また社会的にも適正でなければなりません。また知的所有権から解放された適正技術の台帳と融資基金の設置も重要です。特に特許は、民間による独占から、公的な所有と低コストでの自由なアクセスとされるべきです。

 知識は普遍のもので、技術という形での利用も含め、知識は私的所有権の対象とも、私的な利用の対象ともされるべきではありません。先進諸国の責任は、開発途上国と技術を共有すること、独自の技術開発や革新のために研究機関を設置すること、また、「善き生き方」のための開発や適用を促進し擁護することにあります。世界は、地球の破壊を止めるために、先住民族の原則や見方を回復し、そこから学ばなければなりません。母なる大地との善き生き方を取り戻すために、伝統的な知識や実践の回復、精神性を回復しなければなりません。


 先進諸国が気候変動枠組み条約と京都議定書の約束を遂行する政治的意思を欠くのことを鑑み、また母なる大地や人間の権利を侵害している気候や環境と関連した犯罪を予防しまた処罰するための国際的な法的機関が欠如していることを前に、国家、企業、個人が、意図的あるいは過失から、気候変動を引き起こしたり、汚染したりするのを予防し、裁き、処罰するための法的な拘束力を持つ「環境と気候正義のための国際法廷」の設置を要求します。
 
 気候変動枠組み条約及び京都議定書における温室効果ガス削減目標を遂行していない先進諸国を国際司法裁判所に告発するしようとする国家を支持します。
 
 参加国家が「気候変動と環境に関する国際法廷」の決定を遵守するように、国連の根幹からの改革を提案し、促進することを、人々に対して強く求めます。
 
 人類の未来が危機に瀕していている時に、コペンハーゲンで不毛にも目指されたような、先進諸国の一部の政府がすべての国のことを決定しようとするのを認めるわけにはいきません。決定はすべての人々の手にあるべきです。そこで気候変動に対する世界的な国民投票、住民投票の実施が必要とされています。その国民投票で、先進諸国や多国籍企業が行うべき排出量の削減レベル、先進諸国が提供すべき資金、気候正義のための国際法廷の設置、「母なる大地のための世界宣言」の必要性、資本主義システムの変更の必要性について、私たち皆が問われるべきなのです。

 世界的な国民投票のプロセスは、その成功に向けた準備プロセスの成果となるでしょう。

 この「民衆合意」の結果を実現し、国際的な活動を調整していくために、補完性の原則と、それぞれの起源や構成員の見方の多様性を尊重した、「母なる大地のための世界運動」を立ち上げ、世界レベルでの広範かつ民主的なコーディネーションと連携のスペースを築いていきたいと思います。

 メキシコにおいて、附属書第I国の先進諸国が現行の法的枠組みを尊重し、温室効果ガスの排出を50%削減すること、またこの合意に含まれる諸提案を取り入れるように世界に対して働きかけていくための行動計画を採択するものです。

 最後に、「母なる大地のための世界運動」の確立の一環として、2011年に、第2回の「気候変動と母なる大地のための民衆会議」を開催することに合意し、また年末にメキシコのカンクンで開催される気候変動条約国会議の結果に対応していきます。

[1]
Conferencia Mundial de los Pueblos sobre el Cambio Climático y los Derechos de la Madre Tierra、22 de Abril Cochabamba, Bolivia、ACUERDO DE LOS PUEBLOS
http://cmpcc.org/acuerdo-de-los-pueblos/

開発と権利のための行動センター
青西訳

| | コメント (0) | トラックバック (1)

気候変動と母なる大地:モラレス大統領

 ボリビアのコチャバンバで開催された「気候変動および母なる大地の権利に関する世界民衆会議(Conferencia Mundial de los Pueblos sobre Cambio Climático y los Derechos de la Madre Tierra)では、ボリビアのエボ・モラレス大統領が20日の開会式に際して演説を行いました。

 モラレス大統領は

「人々の声が聞き入れられなかったからこそ、この場に集まる必要があったこと」、「コペンハーゲンの会議は失敗であり、そのために今コチャバンバに集まっている」ことを述べるとともに、「気候変動の原因は資本主義であり、資本主義は母なる大地の敵であり、母なる大地を尊重すること。資本主義を変えない限りは、(気候変動に対して)どのような対策を取っても、それは不十分になるだろう」と語っています。

「人類はいま、資本主義つまり死への道を続けるのか、自然との調和と生命の尊重という人類が生き残るための道を選ぶのか、その選択を迫られています。新しいシステムは自然との調和を取り戻し、また人類の間の調和を取り戻すものです。人々の間に公正があってこそ、自然との調和も実現します...新しいシステムは補完と連帯、公正、母なる大地の尊重を基盤にするのです」。

「西洋では人類は大地を支配し、従属させようとしますが、私たち先住民族の世界では、私たち、男性も女性も母なる大地の一部であり、そこから生まれ、そこに戻っていきます。だから土地を売るなどと言うことはできないのです。資本主義は母なる大地を略奪し、その子どもたちを略奪してきました。資本主義は飢餓と不平等、地球の破壊と同じ意味をもつのです。地球を救うために、集まり、再考し、そして組織し、行動しましょう」
 
 日本語での関連情報は
ジュビリー関西ネットワークなどを参照ください。
http://d.hatena.ne.jp/Jubilee_Kansai/
会議のオフィシャルサイトはこちら
http://cmpcc.org/
モラレス大統領の演説の音声ファイルはこちら
Se hicieron cargo
http://www.radiomundoreal.fm/Se-hicieron-cargo?lang=es 

 青西

| | コメント (0) | トラックバック (0)

REDDと先住民族

気候変動に関するラテンアメリカ先住民族フォーラムの声明

 2010年3月29日から31日にかけて、コスタリカのサン・ホセにおいて、ラテンアメリカの先住民族によって「気候変動に関するラテンアメリカ先住民族フォーラム」が開催された。ここには次のような組織が参加。el Consejo Indígena de Centro América CICA, el Consejo Indígena Mesoamericano CIMA, la Alianza Mundial de los Pueblos Indígenas y Tribales de los Bosques Tropicales, la Coordinadora de Organizaciones Indígenas de la Cuenca Amazónica COICA, la Red de Mujeres Indígenas sobre Biodiversidad, el Enlace Continental de Mujeres Indígena Región Sud América, la Cátedra Indígena itinerante y el Foro Internacional de Mujeres Indígenas,
 気候変動に対する諸政府の提案を分析し、COP16に向けて先住民族諸組織として次のような声明を発表している。

1.諸政府や国際的NGOによって提案されている市場メカニズムに基づく解決策、クリーン開発メカニズム、REDDの提案などは、国際法によって保障されている先住民族の権利を脅かす、新しい地政・経済的な様式である。
 これらのイニシアティブの名の下で、国家や多国籍企業はダム建設、アグロ燃料の推進、石油開発、植林プランテーション、モノカルチャーなどを進みつつあり、これらは私たちのテリトリーを奪い、また破壊するものである。更に、テリトリーを守ろうとする先住民族諸の兄弟・姉妹たちが犯罪者とされ、果ては殺害されている。
2.気候変動に立ち向かう解決策は、全体的、調和的かつ人権と母なる大地の権利を尊重するものでなくてはならない。また西洋社会の科学的知識のみに限定されるのではなく、伝統的な知識や先住民族の創意工夫、実践を取り入れなくてはならない。私たちは歴史的にも私たちのテリトリーにある生態系と生物多様性の保全に取り組んできたのである。
3.諸政府やいくつかのNGOがREDDに向けて提案している地域の大半は先住民族のテリトリーに位置している。私たちのテリトリーには保全されている森林地帯の大半が集中していることからも、諸政府やNGOが提案するREDDは国連の先住民族の権利宣言に記されている私たちの権利、特に、テリトリーへの権利、自己決定、事前の自由な情報に基づく合意といった私たちの権利の行使を全面的に保障するものでなければならない。
4.先住民族は気候変動の直接の責任者ではないにも関わらず、影響を受けている人類集団の一つである。気候変動によって砂漠化や強制的な移住、生物多様性の喪失、アイデンティティーの喪失、飢餓などの影響を受けている。このことからも、私たちは私たちのテリトリーにおける物的・人的な被害への補償を要求するための行動を取る必要があると考えている。それは同情からではなく、補償であり、社会的・環境的な正義の要求である。
5.人権特に先住民族の権利、また母なる大地の健康に寄与することを目指す多国籍機関、二カ国間機関、NGOなどに対し、気候変動に対するラテンアメリカ先住民族フォーラムへの支援をその戦略的な優先課題として据えることを求めたい。
3.先住民族の地域的なネットワーク(Enlace Continental de Mujeres, COICA, CAI, CIMA, CICA, Red Latinoamericana de Mujeres sobre Biodiversidad, Alianza Mundial de Bosques Tropicales) は気候変動に対する国際的、国内的あるいは地域での働きかけまた政治的・技術的な提案のために、あらためて協力して活動していくことを確認する。これらのネットワークは、気候変動に関連する課題の中で先住民族の権利の行使が全的に保障されることを求めて、その能力、経験、資源を持ち寄って活動することを約束するものである。

Resultados del Foro Indígena Latinoamericano sobre cambio climático
http://www.ecoportal.net/content/view/full/92087
http://www.redd-monitor.org/2010/04/08/latin-american-indigenous-forum-rejects-carbon-trading/?utm_source=feedburner&utm_medium=email&utm_campaign=Feed%3A+Redd-monitor+%28REDD-Monitor%29

-REDDは、開発途上国における森林の破壊や劣化を回避することで温室効果ガス(二酸化炭素)の排出を削減しようとする取り組み
  Reduced Emissions from Deforestation and forest Degradation
 Sign on to the Durban statement: “No REDD! No REDD Plus!”
http://www.redd-monitor.org/2010/04/14/sign-on-to-the-durban-statement-on-redd/
 REDDに対して、気候変動に対する解決策として有効ではないとして、反対の声が上げられている。
 上記の声明文から短く整理する。
 大きくは京都メカニズムも含めた排出量取引が有効なのか、という問題意識と、REDDの実施時に、その地に居住する人々、特に先住民族の権利が侵害されるのではないかという問題意識がある。
 排出量取引への疑念は、REDDを認定することにより、先進工業諸国がクレジットを買いあさり、自国の削減努力を怠り、根本的な化石燃料依存社会からの脱却が遅れるだけではないかと考えることによる。京都議定書で定められたクリーン開発メカニズムにしても、化石燃料依存社会からの脱却をはかるのではなく、そこへの変化を先送りにするインセンティブとなっており、温暖化に拍車をかけるもの見なしている。京都議定書がどの程度実際に温室効果ガスの削減に役立ったのか?より安価な方法はなかったのか?検討されなければいけない課題であろう。
 REDD実施メカニズムの問題としては、保護手段を講じたとしても、REDDが地域住民の権利を侵害し、土地や森林管理の権利が海外企業の手に移行される危険性があるという指摘である。先住民族が土地から排除される危険もあると考えている。既に自発的排出量取引の中で行われている類似プロジェクトでは、土地簒奪、暴力的な土地からの排除、軍事化、土地へのアクセスの排除、汚職など様々な問題が発生していることを根拠としている。

開発と権利のための行動センター
青西

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010/04/20

「責任ある国際農業投資」ガイドラインは是か非か

 日本政府も積極的に関与する「責任ある国際農業投資」のための自発的ガイドラインに対して、国際的な農民組織であるビア・カンペシーナ、また食料への権利の確立を求める国際的人権組織FIANが土地集積を進めるものであるとして抗議行動を展開中
 FIANなどはこのガイドラインは、農地争奪、そして外国資本による土地集積を正当化するものに過ぎず、農民の手から土地を奪っていくものであると拒絶する姿勢を取っている。
 日本の市民組織・農民組織はどのような声を上げていくのか?!

 背景
「責任ある国際農業投資」のためのガイドライン制定の動きには日本政府も強く関わっている。2009年9月26日に日本国政府及び世界銀行、国連食糧農業機関(FAO)、国際農業開発基金(IFAD)及び国連貿易開発会議(UNCTAD)共催により、「責任ある国際農業投資の促進に関する高級実務者会合」(Roundtable on Responsible International Investment in Agriculture)が開催されたところに端を発するからである。[1]
 日本政府はこの会議において外国による農地取得が引き起こす可能性がある負の影響を踏まえ、「国際農業投資によって生じ得る負の影響を緩和しつつ、投資の増大によって世界全体の農業開発を推し進めるという包括的なアプローチだと考える。つまり、投資受入国の政府、現地の人々、そして投資家という3者の利益を調和し最大化する、『責任ある国際農業投資』を促進すること」を打ち出してきた。
 この会議の場で世界銀行から提案された「責任ある国際農業投資を促進するための原則」が、今後の共同作業のベースとなることとされたのである。
 それは次のような原則を含んでいる。[3]
土地地及び資源に関する権利:既存の土地及び天然資源に関する権利は認識・尊重されるべき。
 食料安全保障:投資は食料安全保障を脅かすものではなく、むしろ強化するものであるべき。
 透明性、グッド・ガバナンス及び投資を促進する環境:土地の評価と関連投資の実施過程は透明で、監視され、説明責任が確保されたものであるべき。
 協議と参加:著しく影響を被る人々とは協議を行い、合意事項は記録し実行されるべき。
 経済的実行可能性及び責任ある農業企業投資:投資事業は経済的に実行可能で、法律を尊重し、業界のベスト・プラクティスを反映し、永続的な共通の価値をもたらすも
のであるべき。
 社会的持続可能性:投資は望ましい社会的・分配的な影響を生むべきであり、脆弱性を増すものであってはならない。
 環境持続可能性:環境面の影響は計量化され、負の影響を最小化・緩和して持続可能な資源利用を促進する方策が採られるべき。

[1]外務省:責任ある国際農業投資の促進に関する高級実務者会合
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/food_security/090926_gh.html
[2]上記サイト の「平松審議官挨拶のポイント」
[3]上記サイト議長サマリー仮訳より
  世界銀行のプレゼンテーションに英文での詳細がある。

 こうした動きに対して、国際的な農民組織であるビア・カンペシーナ、また食料への権利の確立を求める国際的人権組織FIANが土地集積を進め、その問題を隠蔽するものであるとして抗議行動を展開しているのである。[4]
 
 FIANとビア・カンペシーナは次のように訴えている。
「農地の収奪/囲い込みは、農村コミュニティに対して土地へのアクセスを否定するものであり、コミュニティの生活基盤を破壊し、農民を対象とした農業政策の幅を狭め、市場と国際取引を歪め、アグロ・インダストリーの手に利益を集中させるものである。地域内や国内市場に向けた、そしてまた未来の世代に向けた小農民による持続的な農業への支援とはならない。また生態系の破壊・気候変動を加速するものでもある」
 このように農地の囲い込みは人権侵害を引き起こすものであるが、世界銀行は農業投資に関する自発的原則を定めることによって破壊的な結果を避けることができるという幻想を振りまき、農地の囲い込みを禁止するために必要な手段を講ずることを避けようとしているのである」
 その上で、世界銀行の提案する農業投資への自発的原則ではなく、農地改革と農村開発に関する国際会議」(the Internatiuonal Conference on Agrarian Reform and Rural Development、CIRADR)の最終宣言文及び「開発のための農業科学・技術国際アセスメント」(IAASTD)の勧告を履行を進めることを求めている。
 FIANなどは、世銀などが定めようとしている自発的原則は、外国資本による土地収奪を「社会的に受け入れられる」ものにしようとしているに過ぎず、投資ビジネスを通じて、地域住民の土地への権利が奪われていることに懸念を表明している。自発的原則ではなく、世界的な金融、食料、気候危機を前に、厳格な投資規制が必要とされるという事実をごまかすものだと見なしている。

[4]Stop Land Grabbing Immediately! 
http://www.fian.org/cases/letter-campaigns/stop-land-grabbing-immediately



IAASTDの勧告は多様な生態系のもとでの小農民の重要性、持続的農業の重要性などを取り上げていますが、もう少し整理してお伝えしたいと思います。

 日本政府も積極的に進める「責任ある国際農業投資のガイドライン」に対して、国際社会から反発の声も上がる状況を前に、日本の市民社会に流れる情報は少なすぎるように思います。
 (続く)

開発と権利のための行動センター
青西靖夫

| | コメント (0) | トラックバック (0)

アルゼンチン:新しい「エルドラード」-大豆共和国

スペインのエル・パイス紙に4月4日に掲載された記事 REPORTAJE: EL NUEVO "EL DORADO" La República de la Soja[1]を翻訳していたのですが、7千字近くとあまりに長くなったので、一部要点のみお伝えします。アルゼンチンの大豆生産による農薬散布や土地問題などを考える背景情報としてお読みください。
[1] http://www.elpais.com/articulo/reportajes/Republica/Soja/elpepusocdmg/20100404elpdmgrep_2/Tes
 
アルゼンチンのパンパ地域で大豆生産が拡大している
-「2003年に700万ヘクタールだった大豆は、今では2000万ヘクタールに達している」
-「2009年の1750万ヘクタールから、2010年には2000万ヘクタールになってしまった」
-アルゼンチン全体では、3100万ヘクタールの農地があるが、そのうちの64%が大豆になってしまった。

すべてを食べ尽くす大豆
-大豆はすべてを、牛や村々、森、伝統、そして農村労働者をも食べ尽くしてきた。農地の集中を背景とする大豆生産はわずかな労働力しか必要としていなかった。
-2009年のデータによると、全国で276581人の農業者が存在しているが、その数は大豆が初めて生産された1969年の半分でしかない。何千という農村の家々が消滅し、所有者たちは、近隣の町や都市に移住していった。サンタ・フェ州の352の自治体のうち、60以上が消滅の危機にあるという。

何千という農業生産者の生活と労働スタイルそして何百という農村コミュニティに変化を引き起こした
-「単に土地を貸して、それ相応の金額を受け取っている。50ヘクタールを貸すと、年間9万ペソの収入になる」という。1万8千ユーロ相当の金額である。この金額はアルゼンチンでは少ないものではない。首都で働く若い専門職、医師や大学の教員、新聞記者の年間の所得は7千から7千5百ユーロぐらいのものである。しかしこの農村部に住む農業者たちは、ほとんど何もすることなしにその倍の収入を得ているのである。

投資家グループ
-「裕福な大地主たちは牛を持ち続ける一方で、保有する資金を大豆投資グループや、中小の大豆生産者の土地を借り入れている投資信託基金に投入している」
-大きな投資グループの一つがグスタボ・グロボコパテルに率いられるものであり、エンジニアでもあるグロボコパテルは農業企業家の新しいモデルを自認し、25万ヘクタールをコントロールしていることを認めている。しかし何人かの環境活動家は、実際には、彼はブラジルやパラグアイにも借地を有し、倍以上の面積をコントロールしていると明らかにしている。
(ちなみに日本の耕地面積は約400万ヘクタール)

政治との結びつき
-「(大豆生産の)問題が大きな政治的な議論を引き起こすことはない。例えばサンタ・フェ州の19人の上院議員のうち14人が大豆で生きているのです」

河川運輸
 大豆はパラナ川の景観も大きく変えていった。10年もしないうちに、(パラナ川沿いの)ロサリオ市の周辺には穀物・製粉・油脂などの輸出基地が成長し、アルゼンチンの穀物生産の80%が、川縁に隣接する15の港湾から搬出されるようになったのである。

直播とグリフォサート(ラウンドアップ)
「直播とグリフォサートなしにはアルゼンチン大豆の奇跡はない。大豆の直播が、収穫残渣を残したままの無耕起栽培を可能とし、高収量を実現した。これに対し環境活動家は、土壌の呼吸を妨げ、養分を吸い尽くしていると見なし、一方、無耕起栽培の擁護者は土壌の劣化を防ぎ、雨水の有効利用を可能にしていると評価する。アルゼンチンではモンサント社の商品名であるラウンドアップとして知られるグリフォサートは、遺伝子組み換え大豆の畑で散布され、この強力な大豆を除いたすべての植物を枯らしてしまう。専門家はヘクタール当たり10リットルあまりのグリフォサート、つまり2009年に1億7500万リットルが散布されたと指摘している。ラウンドアップを利用しているのはアルゼンチンだけではない。サンタ・フェ州の農畜産衛生会議所は、FAOにも承認されている毒性の低い農薬だと主張する。」

大豆は万能薬か?
-大豆が農村の貧困を終わらせる万能薬ではないことを統計は明らかにしている。それどころか、新しいフロンティアでは、農村の貧困は増加し、農民には問題が広がっている。北東のチャコ地域では、大豆生産の拡大により農民の生活を支えていた森林や放牧地が失われている。大豆はすべてを食い尽くし、時に何も残さない。

農薬散布(ペラルタ家の話-農薬散布によって子どもが病気に)
-「私たちの村では、大豆が道のすぐそばまで植えられ、モスキートと呼ばれる農薬散布機が庭先で働いているというのが当たり前の姿になっていました」
-サンタ・フェ州の民事法廷で、農村部の居住地域から800メートル以内でのグリフォサートの散布を禁止する判決が初めて下された。また州政府とリトラル国立大学に対して6ヶ月以内に、この除草剤が人の健康に影響がないことを示すように要求した。環境活動家はこの判決を高く評価している。裁判官は立証責任を、貧しい被害者に対してではなく、巨大な農薬会社に対して要求したのである。[2]
-「重要なことは、裁判官が行政機関に対して、本当に安全なのかどうか、証明することを命じたことです。それこそが私たちが求めていることなのです」。

[2]この判決は2010年3月に下されたようである。
 関連記事はこちら
Un freno a los agroquímicos
http://www.pagina12.com.ar/diario/elpais/1-142032-2010-03-15.html
Confirman prohibición de uso de agroquímicos en Santa Fe
http://www.cij.gov.ar/nota-3604-Confirman-prohibicion-de-uso-de-agroquimicos-en-Santa-Fe.html  

まとめ 青西

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010/04/16

決定は覆される:アマゾン巨大水力発電所差し止め命令

 百一姓ブログの方で詳細に情報がフォローされていますが、差し止め命令が無効とされ、工事入札が実施される方向とのことです。

http://hyakuishou.exblog.jp/

<以下、4月16日>

 百一姓ブログの情報によるとベロ・モンチ水力発電所計画が、連邦裁判所によってさしとめられたとのこと。
 環境アセスメント承認の取り消しが命じられたとのことです。
「ブラジル憲法176条には「先住民居住地域における開発行為には先住民の同意
が必要」などの厳しい規定がありますが、環境アセス報告書にはそれをめぐる
真っ当な記載がない、というのが、この司法判断の理由です。このことは、発
電所建設計画見直しを訴えて来た研究者グループやNGOたち、そして先住民た
ちが指摘し続けてきたことでもあります。」
 詳細は次のサイトへ ---
速報】アマゾン巨大水力発電所:連邦裁判所が差し止め命令
http://hyakuishou.exblog.jp/13425582/

その他関連サイト
Belo Monte Dam: The Pressure is Rising 
http://www.internationalrivers.org/en/node/5288
Justicia suspende licitación de Belo Monte y AGU se prepara para apelar decisión
http://www.adital.com.br/site/noticia.asp?lang=ES&cat=7&cod=46979

青西

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010/04/03

不透明なヤスニ-ITT・イニシアティブの行方

ご案内:ジュビリー関西のサイトに次のキャンペーンが掲載されています。

【国際署名】ヤスニを救え!-ヤスニを生き続けさせるために私たちを支援してください‏
 http://d.hatena.ne.jp/Jubilee_Kansai/20100409/1270806137

 エクアドルのアマゾン地域における石油メジャーシェブロンによる環境汚染とそれに対する訴訟プロセスを追った「CRUDE」が東京MXテレビで上映されます。
(4月16日&23日)
 http://www.matsumachi.com/

 青西
 
 

1月13日にこのブログに掲載した「エクアドル:アマゾンの森を守る取り組みは頓挫するのか」の続報です。
http://cade.cocolog-nifty.com/ao/cat20817967/index.html

 ここのところ、エクアドルのコレア大統領は石油採掘を放棄するのではなく、「プランB」に入るのではないかという報道が見受けられる。「利用したいと思っているわけではないが、エクアドル国民のために使う必要があれば、それを使っていく・・・ペトロ・アマゾナス社はこの点について調査を継続しており、ヤスニ-ITT・イニシアティブが失敗した場合には、ITTではなくヤスニ国立公園外のTTを利用していくことを考えている」と発言している。[1]
 ITTの三つの採掘区(イシピンゴ・ティプティニ・タンボコチャ)の採掘区のうち、ヤスニ国立公園にかからない二つの採掘区(ティプティニとタンボコチャ)から採掘を始める可能性を示唆しているのである。またイシピンゴについても、石油会社から保護区の境界の見直しの要請が出ているとのことである。[2]
また採掘にむけての環境ライセンスの手続きも進められているとのことである。[3]
 その一方で、4月にボリビアのコチャバンバで開催される気候変動に関する民衆会議[4]の場で、ヤスニ・プロジェクトの信託基金の立ち上げを実現したいという報道もなされている。[5] 更に先日は、総務副大臣の内藤正光氏のエクアドル訪問に際して、パティーニョ外務大臣は日本政府に対してヤスニ-ITT・イニシアティブへの協力を求めてもいる。[6]

 こうした状況を前に、このイニシアティブの発案者である元エネルギー・鉱業・石油大臣のアルベルト・アコスタ氏は「ヤスニ-ITT・イニシアティブの可能性も、問題もコレア大統領にある[2」」と述べているとのことであるが、まさにその通りという様相である。
「自分の計画は正しい・・・しかし支援しない国際社会が悪いのだ」、こういう論理で開発が進められていくのではないかと懸念される。本来はまずエクアドル憲法の理念だと思われるが・・・

 開発と権利のための行動センター
 青西

[1]El plan B de Rafael Correa
コレア大統領が3月6日にラジオで発言したようである。
http://www.amazoniaporlavida.org/es/Noticias/El-plan-B-de-Rafael-Correa.html
[2] Solicitud para cambio de coordenadas de ITT
http://www.hoy.com.ec/noticias-ecuador/carlos-pareja-pidio-cambiar-coordenadas-del-yasuni-400244.html
[3] La licencia ambiental para el ITT, en proceso
http://ww1.elcomercio.com/noticiaEC.asp?id_noticia=343688&id_seccion=8
Se pide licencia ambiental para campos del ITT
ティプティニとタンボコチャに関しても国立公園の境界変更を狙っているという見方もされている。
http://www.hoy.com.ec/noticias-ecuador/se-pide-licencia-ambiental-para-campos-del-itt-399944.html
ITT: Aguiñaga confirma avances en plan extractivo
http://www.hoy.com.ec/noticias-ecuador/itt-aguinaga-confirma-avances-en-plan-extractivo-400589.html#comment-70122
[4] Derechos de la Madre Tierra 4/19-4/22 
http://cmpcc.org/
[5]Ecuador desea concretar el fideicomiso de Yasuni
http://www.eltiempo.com.ec/noticias-cuenca/37511-ecuador-desea-concretar-el-fideicomiso-de-yasuna/
[6]Canciller solicita apoyo de Japon para proyecto Yasuni-ITT
http://www.elciudadano.gov.ec/index.php?option=com_content&view=article&id=11204:canciller-solicita-apoyo-de-japon-para-proyecto-yasuni-itt&catid=1:actualidad&Itemid=42
 ちなみに訪問した内藤氏のブログにはエクアドルでの地デジ日本方式採用の報告はあっても、ヤスニ-ITTイニシアティブについては一言も触れられていない。
http://www.mnaito.com/blog/ms.cgi?t=sketch&blogid=&ShowDiary_file=/nikki/1270103454

| | コメント (1) | トラックバック (0)

« 2010年3月 | トップページ | 2010年5月 »