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2010/04/20

アルゼンチン:新しい「エルドラード」-大豆共和国

スペインのエル・パイス紙に4月4日に掲載された記事 REPORTAJE: EL NUEVO "EL DORADO" La República de la Soja[1]を翻訳していたのですが、7千字近くとあまりに長くなったので、一部要点のみお伝えします。アルゼンチンの大豆生産による農薬散布や土地問題などを考える背景情報としてお読みください。
[1] http://www.elpais.com/articulo/reportajes/Republica/Soja/elpepusocdmg/20100404elpdmgrep_2/Tes
 
アルゼンチンのパンパ地域で大豆生産が拡大している
-「2003年に700万ヘクタールだった大豆は、今では2000万ヘクタールに達している」
-「2009年の1750万ヘクタールから、2010年には2000万ヘクタールになってしまった」
-アルゼンチン全体では、3100万ヘクタールの農地があるが、そのうちの64%が大豆になってしまった。

すべてを食べ尽くす大豆
-大豆はすべてを、牛や村々、森、伝統、そして農村労働者をも食べ尽くしてきた。農地の集中を背景とする大豆生産はわずかな労働力しか必要としていなかった。
-2009年のデータによると、全国で276581人の農業者が存在しているが、その数は大豆が初めて生産された1969年の半分でしかない。何千という農村の家々が消滅し、所有者たちは、近隣の町や都市に移住していった。サンタ・フェ州の352の自治体のうち、60以上が消滅の危機にあるという。

何千という農業生産者の生活と労働スタイルそして何百という農村コミュニティに変化を引き起こした
-「単に土地を貸して、それ相応の金額を受け取っている。50ヘクタールを貸すと、年間9万ペソの収入になる」という。1万8千ユーロ相当の金額である。この金額はアルゼンチンでは少ないものではない。首都で働く若い専門職、医師や大学の教員、新聞記者の年間の所得は7千から7千5百ユーロぐらいのものである。しかしこの農村部に住む農業者たちは、ほとんど何もすることなしにその倍の収入を得ているのである。

投資家グループ
-「裕福な大地主たちは牛を持ち続ける一方で、保有する資金を大豆投資グループや、中小の大豆生産者の土地を借り入れている投資信託基金に投入している」
-大きな投資グループの一つがグスタボ・グロボコパテルに率いられるものであり、エンジニアでもあるグロボコパテルは農業企業家の新しいモデルを自認し、25万ヘクタールをコントロールしていることを認めている。しかし何人かの環境活動家は、実際には、彼はブラジルやパラグアイにも借地を有し、倍以上の面積をコントロールしていると明らかにしている。
(ちなみに日本の耕地面積は約400万ヘクタール)

政治との結びつき
-「(大豆生産の)問題が大きな政治的な議論を引き起こすことはない。例えばサンタ・フェ州の19人の上院議員のうち14人が大豆で生きているのです」

河川運輸
 大豆はパラナ川の景観も大きく変えていった。10年もしないうちに、(パラナ川沿いの)ロサリオ市の周辺には穀物・製粉・油脂などの輸出基地が成長し、アルゼンチンの穀物生産の80%が、川縁に隣接する15の港湾から搬出されるようになったのである。

直播とグリフォサート(ラウンドアップ)
「直播とグリフォサートなしにはアルゼンチン大豆の奇跡はない。大豆の直播が、収穫残渣を残したままの無耕起栽培を可能とし、高収量を実現した。これに対し環境活動家は、土壌の呼吸を妨げ、養分を吸い尽くしていると見なし、一方、無耕起栽培の擁護者は土壌の劣化を防ぎ、雨水の有効利用を可能にしていると評価する。アルゼンチンではモンサント社の商品名であるラウンドアップとして知られるグリフォサートは、遺伝子組み換え大豆の畑で散布され、この強力な大豆を除いたすべての植物を枯らしてしまう。専門家はヘクタール当たり10リットルあまりのグリフォサート、つまり2009年に1億7500万リットルが散布されたと指摘している。ラウンドアップを利用しているのはアルゼンチンだけではない。サンタ・フェ州の農畜産衛生会議所は、FAOにも承認されている毒性の低い農薬だと主張する。」

大豆は万能薬か?
-大豆が農村の貧困を終わらせる万能薬ではないことを統計は明らかにしている。それどころか、新しいフロンティアでは、農村の貧困は増加し、農民には問題が広がっている。北東のチャコ地域では、大豆生産の拡大により農民の生活を支えていた森林や放牧地が失われている。大豆はすべてを食い尽くし、時に何も残さない。

農薬散布(ペラルタ家の話-農薬散布によって子どもが病気に)
-「私たちの村では、大豆が道のすぐそばまで植えられ、モスキートと呼ばれる農薬散布機が庭先で働いているというのが当たり前の姿になっていました」
-サンタ・フェ州の民事法廷で、農村部の居住地域から800メートル以内でのグリフォサートの散布を禁止する判決が初めて下された。また州政府とリトラル国立大学に対して6ヶ月以内に、この除草剤が人の健康に影響がないことを示すように要求した。環境活動家はこの判決を高く評価している。裁判官は立証責任を、貧しい被害者に対してではなく、巨大な農薬会社に対して要求したのである。[2]
-「重要なことは、裁判官が行政機関に対して、本当に安全なのかどうか、証明することを命じたことです。それこそが私たちが求めていることなのです」。

[2]この判決は2010年3月に下されたようである。
 関連記事はこちら
Un freno a los agroquímicos
http://www.pagina12.com.ar/diario/elpais/1-142032-2010-03-15.html
Confirman prohibición de uso de agroquímicos en Santa Fe
http://www.cij.gov.ar/nota-3604-Confirman-prohibicion-de-uso-de-agroquimicos-en-Santa-Fe.html  

まとめ 青西

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