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2010/05/27

アルゼンチン:多民族国家を求め行進

 5月20日、先住民族の大規模な行進は8日間かけて、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスに到着した。アルゼンチンの30以上の先住民族が国内各地から参集したのである。25日のアルゼンチンの独立200年祭の直前に、あらためて先住民族の存在とその声を国内外に強く伝えることとなった。
 
 12日に開始されたこの行進は、ネウケン・マプーチェ連盟やディアギータ民族連合、フォルモサ先住民族審議会、コヤマルカなどに組織されたものであり、「多民族国家を目指し、真実の道を」を合い言葉に首都を目指して行進を続けてきた。[1]

「200年祭を祝おうとしているが、この日は、アルゼンチン国の成立の前から存在する私たち民族にとって生命、文化、テリトリーに対する抑圧を意味するものである。通りに出て、私たちの存在を、国家に対して目に見えるものとして示さなければならない。国家は、この国が単一文化で民主的な国であるかのような幻想を維持し続けているのだ。」
「私たちはこの歴史的な行進を通じて、私たちの団結と連携を築く取り組みを、私たちの共通の敵に示していこう。私たちのテリトリーに石油や鉱物資源、森林、水を求めて侵略し、大豆の生産地を犯罪的に拡大してくる経済界に対して。」
「諦めや受動的な態度から訣別しなくてはならない。私たちは何千年という歴史と権利に支えられているのである。現在のシステムは、それ自体の矛盾から、不平等と不正義から生まれる暴力によって崩れつつある。私たちの母なる大地、パチャママ、ワフマプは、もうこれ以上の濫用と傷には耐えられない」[2]

「アルゼンチンは多民族・多文化であり、30以上の先住民族が存在し、その豊かな文化は、20以上の言語が存在や、何千年と続く自然との相互依存に基づく世界観などに現れている...私たちの知識・実践は、私たちの健康や生産、教育システムを維持し、倫理的、道徳的な原則に基づくアイデンティティを保持してきたのである。これは現在の暴力や消費、母なる大地の搾取に基づく社会に対するオータナティブになるものである。」
「しかし共和国としての200年間の間、私たちの文化的多様性は軽蔑され、見えないものとして、また恥ずべきものとして隠蔽されてきたのである。しかしこうした中でもアルゼンチンの先住民族は歴史的な記憶を守り、世界観を守るために努力してきた。」
「私たち先住民族は排除され、フォルクローレの祭りの時か、悲惨な病気の被害者としてしか公で伝えられることはなかった。しかし私たちはテリトリー、土地、自然資源に対する主権を持つ先住民族なのである。」[3]

先住民族は首都に結集した後、大統領府において、クリスティーナ・フェルナンデス大統領と会談を行い、多民族国家の創設を求める文書を手渡した。[2]
先住民族は、テリトリーの回復、テリトリーと生活を保全するための協議と同意の権利を定めた法律の整備、先住民族コミュニティのテリトリーの登記手続き、先住民族言語の公用語としての承認、通文化教育、先住民族の自治的な教育機関の設置、10月12日の祝日廃止、大豆生産の拡大やそれによる森林破壊の停止、鉱業法の廃止などを求めている。

[1] 写真はこのサイトに多く含まれています。
  http://confederacionmapuce.com.ar/index.php?option=com_content&view=article&id=186:fotogaleria-marcha-nacional-de-los-pueblos-originarios
[2]
MARCHA DE LAS NACIONES ORIGINARIAS A PLAZA DE MAYO
http://uniondiaguita.blogspot.com/2010/05/marcha-de-las-naciones-originarias.html
[3] "Caminando por la Verdad, hacia un Estado Plurinacional"
Pacto del Estado con los Pueblos Originarios para la creación de un Estado Plurinacional
http://www.azkintuwe.org/may147.htm


アルゼンチンの先住民族は現在でも土地から追われ続けている。大豆生産の拡大やインフラ整備など様々な形で土地を追われ、権利を侵害されているのである。


 最近の報告書では次のようなものがある。
New report launched on soy expansion in Northwest Argentina
"Soy and Agribusiness Expansion in Northwest Argentina"
http://lasojamata.iskra.net/en/node/398 (英語)
Expansión de los agronegocios en el Noroeste argentino(スペイン語)
http://www.chayar.com.ar/index.php?option=com_content&view=article&id=82:expansion-de-los-agronegocios-en-el-noroeste-argentino&catid=59:investigaciones-periodisticas&Itemid=112

Amnistía Internacional presentó su informe sobre las violaciones a los derechos humanos de pueblos indígenas en la Argentina
http://www.amnesty.org.ar/destacamos/amnistia-internacional-presentara-su-informe-sobre-las-violaciones-los-ddhh2

 開発と権利のための行動センター
 青西
 

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2010/05/26

グアテマラ:マルリン鉱山開発を巡る動き 米州人権委員会が操業停止を要求

 米州人権委員会は、5月20日、サン・マルコス県のシパカパとサン・ミゲル・イシュタウワカンで操業しているマルリン鉱山の操業を停止するようグアテマラ政府に要請。この鉱山の周辺の18のマヤ民族コミュニティの住民の生命及び環境が脅かされているという訴えに対し、予防措置を取ることを求めたものである。
地域住民は、唯一の飲用水の水源が汚染され、健康への被害が引き起こされていることを訴えていた。これに対して米州人権委員は、グアテマラ政府に対して、操業の中止、環境汚染を避けるために有効な手段を取ること、汚染の除去、飲料水へのアクセスの確保、健康被害への対処など、18コミュニティの成員の生命を保障するために必要な措置を要求している。[1]

[1]米州人権委員会 http://www.cidh.org/medidas/2010.sp.htm

 政府側はこのCIDHの勧告に対して、環境省、鉱業・エネルギー省、保健省は鉱業開発による重金属汚染などについて調査を実施する方針を打ち出している。[2]

[2]Efectuarán estudio de la salud de pobladores vecinos de la mina Marlin http://www.prensalibre.com/noticias/politica/marlin-estudio-metales-ministerios_0_267573464.html

またこの要請の数日前には、人権のための医師団:Physicians for Human Rightsが、マルリン鉱山付近の住民の健康状態についての調査報告書を公表し、健康被害に対して懸念を示し、更なる調査の必要性を訴えていた。[3]
[3]Scientists Find Elevated Levels of Potentially Toxic Metals in Some Guatemalans Living Near Canadian-owned Mine, Recommend Further Studies
http://physiciansforhumanrights.org/library/news-2010-05-18-english.html

青西

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2010/05/08

エクアドル:先住民族組織の抵抗で水法案の採択は見送り

 <5/14>
 協議を実施する議長提案は否決、しかし議長は水法案採決も拒否。

 エクアドル各地で道路封鎖など、先住民族による抗議行動が続いていたが、こうした中13日、国会では、先住民族組織との合意点を模索していた国会議長によって、水法案の採択の5ヶ月の延期と協議の実施という提案がなされた。しかしこの議長動議は否決された。これに対し国会議長は、協議が実施されない限り採択を行わないして審議を打ち切った。[1]
 これを受けて、先住民族組織側は抗議行動を中止した。[2]

 先住民族組織であるCONAIEのWEBサイトのビデオによると、先住民族側は、この「協議」の提案が、憲法やILO169号条約に定められた「適切な時期」と「誠実に」という点を満たしていないと反発していた。この時点で協議を行っても、議会での審議が終了しており、意見が反映される確証がないと見なしている。[3]協議は拘束力を持たなければならないと述べていた[4]
 
 一方の国会議長は、先に出された鉱業法に対する憲法裁判所の判決に則るものとして、協議の実施の必要性を訴えて、審議を打ち切ったものである。憲法裁判所は、鉱業法自体を違憲とはしなかったが、法律に影響を受ける先住民族に対して、協議を行わなかったことは憲法に違反するという判決を出していた。

 今後、どのように協議を実施していくのかが大きなテーマとなっていくこととなる。

 開発と権利のための行動センター
 青西靖夫

[1] Cordero: “La Ley de Aguas no se votará mientras no haya consulta”
http://andes.info.ec/actualidad/ley-de-aguas-mocion-de-cordero-es-rechazada-por-el-pleno-de-la-asamble-14745.html
[2]Movimiento indígena levanta movilización
http://andes.info.ec/portada/movimiento-indigena-levanta-movilizacion-14788.html
[3]Lourdes Tibán habla sobre la Ley de Recursos Hídricos, 13 de Mayo
http://www.conaie.org/
[4]Indígenas piden que la Ley de Aguas incorpore los resultados de la consulta prelegislativa
http://www.elcomercio.com/2010-05-13/Noticias/Politica/Relacionadas/consulta-prelegislativa.aspx


 <5/13>
 新しい報道によると、水法案の採決に入らずに、憲法に定められている、先住民族への事前の協議を実施する方向が国会議長から打ち出されているようです。
 実現すれば、非常に重要なプロセスになると思います。
Asamblea abrira' una consulta previa sobre la ley de aguas
http://www.eluniverso.com/2010/05/12/1/1355/asamblea-abrira-consulta-previa-sobre-ley-aguas.html?p=1354&m=638


 5/12続報 エクアドル:続く水法案への抗議行動

水法案に対する抗議行動は続き、13日木曜日に行われるとみられる国会での採択に向けて緊張が高まっている。

 先住民族組織と国会議長との間で見直すことで合意されていると見られていた水法案に関する最終報告が、期待されていた変更を受けぬままに、主管の食料主権委員会の委員長ハイメ・アブリルから国会に提出されたとのことである。これによって木曜日には本会議での採択が求められることとなった。
 一方で報告が提出されたことを知らずに、国会議長は先住民族組織と会談を持っていたということであり、パチャクティ党のロウルデ・ティバンは「大統領に任命されたハイメ・アブリルと国会議長との間の権力闘争が存在する」と見なしている。また先住民族組織であるFENOCINの代表、ルイス・アンドランゴはこれまでの国会での審議が全く反映されていないと非難している。しかし政策調整大臣であるドリス・ソリスは、先住民族組織であるCONAIEの提案は憲法に反するものであり、取り入れることはできないと述べている。[1]

 CONAIEはそのWEBサイトで、「法案の最終文面は諸民族が行ってきた提案が全く反映されていない」と非難し、抗議行動を続けていくとしている。更にエクアルナリのデルフィン・テネサカは「嘘と偽り、愚弄によって統治されるなど受け入れることはできない。この国は相変わらず主人の手にあり、排他的なままである・・・法があろうとなかろうと、我々の自然資源が奪われることを許す訳にはいかない。」と語っている。[2]また法案について「大統領自らが作ったものだから、彼は完全だと信じているのだろう。しかし法は議会で審議されて生み出されたものではないのだ」と告発している。[3]

 コレア大統領は「先住民族組織の圧力を前に譲ることはできない。先住民族組織のリーダーは民主主義というが、国会議員もいながら結局少数派のために民主的に意見を通すことができないだけである。そうなると今度は意見を押しつけようとするのである」と語っているとのことである。[4」また先住民族組織による抗議行動を非難するとともに、組織基盤に浸透したものではなく、失敗していると見なしている。[3]
 またコレア大統領が、コルタの首長が抗議行動を支援しているとして、解職請求を起こすべきだと発言したことが反発を引き起こしている。[5][6]
 
 コレア大統領は抗議行動が広がる度に、CONAIEなどの先住民族組織の正統性に疑念を投げかけ、一方で市民社会は国家への権力の集中、コレア大統領への権力の集中に懸念を深めるということが繰り返されている。

[1]Informe de ley de aguas sin cambios
 http://www.lahora.com.ec/frontEnd/main.php?idSeccion=1033536
[2]LA VERDAD SOBRE LEY AGUAS EN ECUADOR:MOVIMIENTO INDÍGENA RADICALIZA RECHAZO POR LEY DEL AGUA MARCHARÁN AL PALACIO DE GOBIERNO
http://www.conaie.org/index.php?option=com_content&view=article&id=147%3Amovimiento-indigena-radicaliza-rechazo-por-ley-del-agua-macharan-al-palacio-de-gobierno&catid=1%3Alatest-news&Itemid=50&lang=en
[3]Presidente reprocha a indígenas que alistan marcha hacia Quito
http://www.eltiempo.com.ec/noticias-cuenca/40718-presidente-reprocha-a-inda-genas-que-alistan-marcha-hacia-quito/ 
[4]Presidente Correa asegura que no va a ceder ante presión de grupos indígenas
http://andes.info.ec/politica/presidente-correa-asegura-que-no-va-a-ceder-ante-presion-de-grupos-indigenas-14529.html
[5]Rafael Correa amenaza al alcalde de Colta
http://www.hoy.com.ec/noticias-ecuador/r-correa-amenazaal-alcalde-de-colta-406622.html
[6]'Correa ha estado en mi vivienda'
http://www.hoy.com.ec/noticias-ecuador/correa-ha-esta%C2%85en-mi-viviendacorrea-ha-estado-en-mi-vivienda-407251.html


 <5/9> 再び先住民族組織との対立を引き起こす水法案

 議会での承認が目前とされていた水法案に対して、エクアドル各地で、先住民族組織による抗議行動が繰り広げられた。議会へ向かった先住民族組織のグループと警官隊との衝突では先住民族組織の複数のリーダーが一時拘束された。
 議会では法案の第二審議が終了し、承認のための投票を待つばかりという状況とのことであるが、ここで先住民族組織の意見を取り入れつつ、改訂を行うという話もある。

 この水法案(Ley Orgánica de los Recursos Hídricos, Uso Y Aprovechamiento del Agua)に対しては、2009年9月末から10月にかけても抗議行動が繰り広げられ、その結果として10月5日に合意がなされ、その後、先住民族組織と政府との間で対話が持たれたはずであった。[1]
 しかし水法案は水の民営化につながるものとして、先住民族諸組織は反対行動を続けている。一方、コレア大統領は水法案に対する反対運動を、先住民族リーダーがコミュニティをだましているものであり、外国の財団から資金を得ているものだ、また先住民族のためにここまで働いている政府は存在しないのにばかげた形で政府に反対している、と非難しているとのことである。[2]

 水法案に対しては、先住民族組織というだけではなくコミュニティのレベルでも反発があるようである。地域で管理していた水道が、コミュニティの手を離れ有料化されるのではないか、国家の管理に移された後に、管理委託という形で民間の手に委ねられるのではないかという危機感があるようである。[3]

 法案の問題点としては、大統領によって長官が任命される「水専任機関(Autoridad Unica del Agua)」が大きな権限を持ち、このことから時の政権によって大きく施策が変わる可能性を持つものであることが指摘されている。[4]また地域社会にとっては水への権利を脅かす危険を秘めるものである。

 先住民族組織であるCONAIEでは水法案に対して次のように提起している。[5]
1)環境サービスという形式を禁止すること。これは水(水源、高原、森林、湿地、湿原)の民営化に道を開くものとなる。
2)憲法第318条に定められた水の優先度を尊重すること。水の生産的な利用に関しては、憲法第15条においてエネルギー主権は、水に対する権利、食料主権を損なって達成されるものではない、と定められていることを尊重すること。
3)自然の権利を尊重すること。いかなる生産活動も、存在、維持、再生を危険にさらしてはならない。水とその水源を汚染しないことを保障すること。
4)すべての人に対する水への権利を保障すること。
 -すべての人に対して、無料の生活用水を保障すること
 -食料主権のための水利用を保障すること
 -先住民族の集団的権利に基づき、水の利用に関する文化様式を保障すること。
 -健康への権利の行使を保証するものとして、水、食料、教育への権利を保障すること。
5)水への権利を保障するために、水専任機関の予算に、コミュニティレベルでの水事業を実施するための「水基金」を設置すること。
6)憲法第318条、及び第85条に定められているように、水に関する業務を公的あるいはコミュニティによって行うこと。また住民やコミュニティの参加を保障すること。
7)民営化の禁止、そのためのメカニズムを定めること。INTERAGUA 、AMAGUAへのコンセッションを取り下げること。
8)先住民族が事前の協議を受ける権利を保障すること。
9)先住民族が関連する法律制定に先立って協議を受ける権利を保障すること。

 開発と権利のための行動センター
 青西

[1]Ecuador: CONAIE logra acuerdo con Ejecutivo
http://www.servindi.org/actualidad/17335
開発と権利のための行動センターブログの過去の記事から
エクアドルで先住民族と警官隊の衝突
http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2009/10/post-dad3.html
エクアドルの水法案について(10/19追記・修正)
http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2009/10/post-0e31.html
[2]Presidente Correa: dirigentes indígenas "mienten a sus comunidades"
http://www.ecuadorinmediato.com/Noticias/news_user_view/presidente_correa_dirigentes_indigenas_quotmienten_a_sus_comunidades_quot--126107
[3]Indígenas dicen que temen tener que pagar por el agua que cuidan
http://expreso.ec/ediciones/2010/05/07/nacional/actualidad/indigenas-dicen-que-temen-tener-que-pagar-por-el-agua-que-cuidan/
[4]informe de minoria para segunda debate sobre el proyecto de Ley de Recursos Hidricos, Uso y Aprovechamiento del Agua
下記サイトのLey de Recursos Hidricos のSegundo debate の法案に含まれる。
http://www.asambleanacional.gov.ec/tramite-de-las-leyes.html
これ以外にも法案に関する懸念が上記報告書にて検討されている。
[5] Derecho Humano al Agua:Nueve Aspectos Que Debe Contemplar la Nueva Ley de Recursos Hidricos (Nudos Criticos) (2010/4/30)
http://www.conaie.org/index.php?option=com_content&view=article&id=134%3Anueve-aspectos-que-debe-contempa-la-nueva-ley-de-recursos-hidricos-nudos-criticos&catid=1%3Alatest-news&Itemid=50&lang=en

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