« 2010年5月 | トップページ | 2010年7月 »

2010/06/29

ペルー:ブラジルとのエネルギー協定に反発

1)ペルー・ブラジルのエネルギー協定に対する憤り [1]
(インターナショナル・リバーズのサイトに掲載されたプレス・リリースの抄訳)

 ブラジルのルラ大統領とペルーのガルシア大統領は16日、ペルー・アマゾン地域における6つの水力発電所建設計画を含むエネルギー協定に調印。
国家環境審議会の元長官、マリアノ・カストロ氏は「この協定は再生可能なクリーン・エネルギーを保証するものではなく、環境や社会にネガティブな影響を多数引き起こすも、のであり、ペルーの5県において、先住民族の移転と森林破壊を引き起こすものである」と告発している。
 エネ川のパキツァパンゴのダムは約17000人のアシャニンカ民族に影響を及ぼし、アシャニンカ民族の共有保護地も脅かすことになるという。アシャニンカ民族のリーダーであるルス・ブエンディア・メストキアリは「パキツァパンゴ・ダムは、影響を受ける民族との対話なしに政府が計画したものであり、エネ川は私たちの大地の魂であり、この川が私たちの森や生き物、植物、作物、そして私たちの子どもたちを育んでいるのだ」と語っている。
 マードレ・デ・ディオス川に計画されているイナンバリ・ダムも、この2国間の協定に含まれているが、このダムは46000ヘクタールを水没させ、15000人に影響を及ぼすとみられている。ペルーの環境団体のアルフレッド・ノボアは「ペルーは5万メガワットほどの再生可能エネルギーの開発可能性を有しており、こうしたダムを必要としていない。この2国間協定は、ブラジルの利益になるだけであり、こうした協定を許すことはできない」と語っている。
 
 しかしブラジルにおいてもこの協定には懸念が示されており、サン・パウロ大学のセリオ・ベルマン教授は、「ペルー・アマゾンの生態系に回復できない影響を引き起こすものである一方、利益はブラジル企業や国際的な鉱業会社や精錬企業に流れるばかりであり、一般の人々にとって役立つものではない」と警告している。

 またこの協定には、プロジェクトによって影響を受けるコミュニティへの利益やその権利、受益への参加などについては言及していない。

[1] Press Release:Indignacion ante el Acuerdo Peru - Brasil Sobre Energia(英語・ポルトガル語あり、協定全文にもアクセスできる
http://www.internationalrivers.org/en/2010-6-17/indignacion-ante-el-acuerdo-peru-brasil-sobre-energia

2)パキツァパンゴにおける水力発電所建設計画に対するエネ川流域のアシャニンカ民族の声明(抄訳)
 アシャニンカ民族のサイトでは、パキツァパンゴ・ダムに反対する声明を出している。またビデオのアップされている。

-我々の歴史は度重なる蹂躙に満ちている。ゴム景気の時代には奴隷とされ、テリトリーから追われ、1980年代の社会的暴力の時代には残虐な暴力を被り、真相究明委員会は6千人のアシャニンカ民族が殺害もしくは誘拐され、1万人のアシャニンカ民族が強制的に土地を追われたことを報告している。また自警団を組織し、我々の血と命を持って和平に貢献したのである。今、我々はこのテリトリーに戻り、平安の中で生活することを望んでいる。
- エネ川は我々のテリトリーの魂であり、森や生き物、植物、作物、そして我々の子どもたちを育んでいる。アシャニンカ民族にとって、「パキッサパンゴ(ワシの家)」は聖なるものであり、重要な文化的・精神的財産であり、我々の根幹をなすものである。
-アシャニンカ民族はオティシ自然公園の設立とアシャニンカ民族共有保護区の設置にも参加してきた。バッファーゾーンに位置する我々のコミュニティは、地球上でも豊かな生物多様性を維持する土地である。

-こうしたことにも関わらず、政府は我々を再度脅かしている。聖なるパキツァパンゴにダムを建設するためのコンセッションを行ったのである。このダムは強制的な移転と我々のテリトリー及び自然保護区に重大な影響を引き起こしかねないものである。
-我々のテリトリーに対するこうした蹂躙は、我々の生命と民族としての存在を直接に脅かす暴力である。
-我々、アシャニンカ民族はILO169号条約や国連の先住民族の権利宣言に定められている権利を有しており、国家は事前の協議を行わなくてはならない。しかし政府は我々の権利を無視し続けている。
-政府はエネルギ-鉱業省の省令N°546-2008-MEM/DMによって「パキツァパンゴ・エネルギー社」にダム建設の実現可能性調査のコンセッションを与えている。このコンセッションは我々の10のコミュニティに被さるものであるが、情報を提供することも、協議を行うこともなく与えられたものである。我々のテリトリーを保護する対策も定められず、我々が開発の独自の優先度を定めることもできないままに、計画に参加することもなく。
-ペルー政府が我々の生活と権利を尊重していないことをあらためて明らかにした。またペルーとブラジルのエネルギー協定におけるダム建設について交渉していることに憤慨している。

 こうしたことから、エネ川のアシャニンカ民族は次のように宣言する
1. 上記省令及びパキツァパンゴダムの建設を拒否する。これはアシャニンカ民族のコミュニティに情報を提供したものでも、協議を行ったものでもない
2. このプロジェクトにアシャニンカ民族の言葉であるパキツァパンゴを用いることを拒否する。この言葉はアシャニンカ民族の精神と文化的意味を持っている。
3. ペルー政府に対して、ILO169号条約、国連の先住民族の権利宣言に定められている先住民族の権利の尊重を求める
4.. 先住民族に対する、事前の情報を提供した上での自由な協議の実施を要求する
5. 国内移転法の改悪をやめること
6. ペルー国家に対して、エネルギ-自給を確保するためのエネルギー計画の策定を求める
7.ブラジル国がペルーの先住民族のテリトリーに関わる交渉を行っていることに疑念を表明する。
 我々が平和に生きる権利を防衛する。
 2010年5月8日

PRONUNCIAMIENTO DE LAS COMUNIDADES ASHANINKA DE LA CUENCA DEL RIO ENE FRENTE AL PROYECTO DE REPRESA HIDROELECTRICA EN EL LUGAR DE PAKITZAPANGO
http://ashanincare.org/Documenti/PronCARE2010.pdf

3) ペルーのジャングルにブラジルに供給するためのブラジルのダム[2]
IPSに6月17日に掲載された記事は、エネルギー供給という点に焦点を当てている。この協定では、ブラジルに対して30年間にわたって一定量の電力を供給することとなっており、更に15年間は見直しもできないこととなっているという。
「国内需要も検討しないままにこのような協定を結ぶなどと言うことは考えられない」と現地NGO、DARのセサル・ガンボア弁護士は語る。
 
Brazilian Dams in Peru's Jungle, to Supply Brazil By Milagros Salazar
http://ipsnews.net/news.asp?idnews=51866 

4)次のサイトにも情報がまとめられているので紹介する。
Sociedad Peruana de Derecho Ambiental (SPDA)
http://www.actualidadambiental.pe/
まとめ、訳
開発と権利のための行動センター
青西

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010/06/27

グアテマラ:マルリン鉱山の操業停止は実現するのか?

 グアテマラ政府は6月23日、米州人権委員会の勧告に従って、サン・マルコス県のマルリン鉱山の操業停止を決定。またコミュニティ成員の安全の保証するための必要な措置を講ずるとのこと。しかし鉱業開発による水質汚染、健康被害などに関しては、被害は認定できないと表明。[1]
 また25日の副大統領の記者会見では、操業停止までの法的な手続きを踏んでいると3ヶ月はかかるであろうと発言。[2]政府側が健康被害などを否定していることと7月にCIDHの調査団が派遣される予定であることを考えると、CIDHの調査結果を見て実際の動きを決めるつもりではないかと思われる。
 
[1]Gobierno de Guatemala suspende actividades de mina Marlin
 http://www.guatemala.gob.gt/noticia4.php?codigo=8421&titulo2=Nacionales
[2]Gobierno dice que cierre de mina podría demorarse tres meses http://www.prensalibre.com/noticias/politica/Cierre-canadiense-tardara-Gobierno-Guatemala_0_286771571.html


追記:ブログ記事「グアテマラ:先住民族の権利に関する特別報告者、新たな鉱業ライセンスの認可停止を求める」に、「グアテマラ訪問に関する暫定報告書」からのまとめを追記しました。

http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2010/06/post-8b04.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010/06/23

ペルー:先住民族との協議に関する法は公布されず

 アラン・ガルシア大統領と閣僚評議会議長のハビエル・ベラスケス・ケスケンは議会で承認されていた先住民族との協議に関する法案に関して、意見書をつけて国会に差し戻した。この法案は再び議会で審議されることとなる。
 この法案は、第三条<目的>において、「協議の目的は、国家の意思決定への先住民族の参加と、集団的な権利を尊重した施策の適用を保証するために、通文化的な対話を通じて、国家と先住民族が、先住民族に直接影響しうる法的・行政措置に関して、合意に達すること」と定めていた。これは、先住民族との対話を通じて、新しい国家のあり方を模索していく可能性を秘めていた。
 しかし意見書では、法案の革新的な部分が否定されて、「合意が得られない場合には、主管する国家機関が決定する」ということを明記することを求めている。
 また法案の第15条で「合意が得られない場合には、国家機関は先住民族の集団的権利を保障するために必要とされうるすべての手段を取る」とされていた部分に関しても、「国家の利益、一般の利益を優先しつつ、受益者の参加の上で、国家が施策の実施を決定し、必要な場合には被りうる損害に対する補償を行う」と修正すべきとしている。
 こうして協議は国家の決定における一つのプロセスに押し戻されてしまった。

 これに対して、CONACAMI(鉱業被害コミュニティ連盟)の代表であるマリオ・パラシンは、「先住民族の権利をないがしろにするだけではなく、先住民族の存在自体を無視しようとするもの」だと非難し、このような政府の態度は、国内の先住民族の反発をひきおこすだろうと断言している。

 開発と権利のための行動センター
 青西

参考サイト
'GRAVE Y URGENTE: Peru Comete Fraude'
http://clavero.derechosindigenas.org/?p=6564
Perú: Observación a Ley de Consulta demuestra “autoritarismo, racismo y discriminación” de Alan
http://www.servindi.org/actualidad/27294
Perú: Autógrafa de la Ley de Consulta: ¿Defenderla o combatirla?
http://www.servindi.org/actualidad/26186
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010/06/19

グアテマラ:先住民族の権利に関する特別報告者、新たな鉱業ライセンスの認可停止を求める

 14日から18日にかけてのグアテマラ訪問を終えるに当たって、先住民族の権利に関する特別報告者であるジェームズ・アナヤ氏は、先住民族との協議について定めた国内法が制定されていないことから、先住民族の権利が侵害されていることを指摘し、国内法が整備されるまで、新しい鉱業開発・探査ライセンスを認可しないように要請。
 アナヤ氏は協議に関する国内法が整備されていないことが混乱を引き起こし、社会紛争の原因となっていることを指摘している。
 また先日出された米州人権委員会の勧告に従い、マルリン鉱山の操業を停止するように要請した。[1]

<6/27 追記 グアテマラ訪問に関する暫定報告書からまとめ>

国連の先住民族の権利に関する特別報告者、ジェームズ・アナヤ氏の暫定報告書のまとめです。[2]

1.自然資源の開発と投資プロジェクトの影響
 グアテマラの先住民族の伝統的テリトリーにおける企業の経済活動に関連して、非常に不安定な状況と社会紛争が存在する。これは先住民族だけではなく、政府そして企業自体にも共有されている認識であり、早急にかつ確固たる対応をしなければ、政府による統治すら危機に陥りかねない。
 問題の背景には次の二点がある
1)プロジェクトを実施するにあたっての協議の有効性の問題
協議に関する法制度の欠如
協議が行われてこなかったことは、先住民族コミュニティにとって、世代を超えた侵略、排除、剥奪の経験と結びついている。
2)先住民族の土地やテリトリー、自然資源に対する権利の承認と保護の問題
  先住民族の土地所有権、特に集団的な所有権の不安定さ

-資源開発プロジェクトは、川や井戸の汚染、リーダーへの脅迫、殺害、土地からの排除、家屋の破壊、性的暴力などを引き起こしている。更にプロジェクトは社会的な平和を破壊し、コミュニティの内部、果ては家族内で深刻な対立を引き起こしている。
-抗議行動などに対して、先住民族コミュニティの成員に対する告発が行われている。しかしコミュニティからの訴えに対して回答がないことから引き起こされたものである。
-(開発)プロジェクトは、ネガティブな影響だけではなく、利益をもたらすものでなければならないはずだ・・・特別報告者としての職務の限界もあるが・・・問題があること、非常に深刻な問題があることは断言できる。
-伝統的なテリトリーにおけるプロジェクトの影響について、人権に関して国際法に定められた義務に基づくだけではなく、人道的な見地から見ても、先住民族の正当な要求を否定することはできない。

-多数の人々が参加して行われた集会で、数多くの横断幕が掲げられていた。「鉱山はいらない、平和がほしい」、「すべての鉱山は汚染するだけだ」。参加していた男性や女性が動員されていたとは思わない。ネガティブな影響だけをもたらし、生きてきた土地を脅かし、自分のコミュニティに紛争を引き起こし、その一方でなんら生活を改善しないような資源開発プロジェクトを前にしたら、私だって「鉱業には反対だ」と言うであろう。

2.協議を行う義務
-「国家は、先住民族に影響を及ぼす可能性がある法的・行政的措置、またそのテリトリーにおける自然資源の開発やインフラ等の投資プロジェクトに関して先住民族への協議を行う義務がある」
-協議は、国家と先住民族の間で誠意を持って行う対話のプロセスであり、国家は合意を得るために最大限の努力をしなければならない。
 協議は単に情報を提供するとか、サインを集めるものではない。また単に、賛成か反対かを表明する投票でもない。
-協議は、関係する当事者のそれぞれが立場を譲り、また正当な利益を擁護する意図で行う交渉である。必要性や均衡、民主的な社会における正当な目的の追求といった観点から、国家には相異なる権利や利害を、バランスさせる責任がある。国家にとっての正当な目的には、先住民族の権利の擁護、特に伝統的なテリトリーと自然資源への権利の擁護、不可分な文化を構成するテリトリーや土地との先住民族の関係の擁護、また多民族社会の促進が含まれなければならない。
-現時点において、グアテマラの法制度の中に、協議手続きを定めた法律は存在しない。
-企業はこうした協議プロセスを実施することもできなければ、実施すべきでもない
-コミュニティによって行われている協議は、国内法に基づいて拘束力を持つかどうか、という議論にとどめられるべきではない。こうした(コミュニティで協議を行う)イニシアティブは正当なものであり、かれらのテリトリーにおいて影響を引き起こしうるプロジェクトについて、先住民族の声を聞くべきであるという正当な願いの反映である。こうした協議が行われたほとんどのコミュニティで表明された否定的な意思表示は、同意の欠如と適切な協議プロセスの欠如を映し出している。
-しかしこうした協議の存在が、(今後)国際法に基づく適切な手続きによる協議の実施を妨げるものではないと考える。
-早急に協議に関する法の承認を求める。
-これまでにコミュニティによる協議で拒否の意思を表明した自治体において新しい鉱業開発ライセンスを認可しないという政府の方針に満足している。協議に関する法律が整備されるまで、モラトリアムを続けるという方針を公的なものにしてもらいたい。

3.マルリン鉱山について
-米州人権委員会の勧告に従い、マルリン鉱山の操業を一時中断し、環境汚染を防ぐための対策を取ること。
-数週間以内に行われるであろう米州人権委員会の調査団の現地調査の結果に従うこと
-鉱山開発に影響を受けているコミュニティにおいて同意が存在していないことは明らかであり、それどころか、シパカパとサン・ミゲル・イシュタウアカンにおいては、鉱業開発によって分断と紛争が引き起こされている。
-マルリン鉱山のように先住民族の権利に大きな影響を引き起こすプロジェクトは、先住民族の同意なしに実施すべきではない。
-合意なきプロジェクトはこのケースのように紛争を引き起こし、コミュニティだけではなく、プロジェクトの実施自体にもネガティブな影響を引き起こす。
-新たに協議を行った上で、合意に基づいて操業すべき。
-当面、先住民族が客観的かつ完全な情報を手に入れることができる、制度化された対話スペースを創設すること。政府はこのスペースにおいて、コミュニティの声に対して誠実に対応し、プロジェクトによる被害に対して補償し、緩和策を実施すること。

* * *
 グアテマラは国連の先住民族宣言の起草および採択に重要な役割を果たした。先住民族の人権の履行に関しても、揺らぐことなく歩みを進めてもらいたい。


[1] Relator de ONU recomienda moratoria a nuevas minas en Guatemala
http://www.prensalibre.com/noticias/Relator-ONU-Guatemala-consultas-indigenas_0_282571984.html?print=1
Relator de ONU exhorta a Gobierno a acatar resolución de la CIDH
http://www.lahora.com.gt/notas.php?key=68808&fch=2010-06-18

[2] 

Observaciones preliminares del Relator Especial de Naciones Unidas sobre la situación de los derechos humanos y las libertades fundamentales de los indígenas, Sr. James Anaya, sobre su visita a Guatemala  (13 a 18 de junio de 2010)

http://www.ohchr.org/en/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=10173&LangID=S

まとめ、訳 

開発と権利のための行動センター
青西

特別報告者からの報告書、プレスリリースなどが公表された時点で、加筆修正します。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ペルー:バグアの教訓

 バグアの教訓(2010/06/06)
 ミゲル・パラシン・キスペ(CAOI代表)
 
 既にバグアの虐殺から一年が経ちましたが、この事件はいまだ私たちにとって、評価と検証の中心課題となっています。なぜなら、そこで私たち先住民族は、自分たちで決定するということの価値を示すことができたからです。それは真の団結を築くための唯一の方法なのです。またバグアの虐殺は、政府が生命と権利を全く尊重せず、私たちのテリトリーへの侵略と多国籍企業による自然の富の略奪のためには殺すことをいとわないということを暴き出しました
 
 またバグアは、ペルーのアンデスそしてアマゾン地域の先住民族運動の政治的な力とその有効性を示すことともなりました。今日、私たちは目に見える存在になっただけではなく、私たちの提案と要求が、政治的議題を形作るようになったのです。
 
 バグアのもう一つの教訓は、権利は求めるものではなく、行使するものだということです。私たち先住民族には自己決定の権利があります。それは、私たちには、母なる大地や私たちのテリトリーとの伝統的な関係を維持し、また私たちの独自の政治様式を守っていく権利、自分たちの代表を選び、権限を行使する権利があることを意味しています。これが最初に述べた自分たちで決定することの価値なのです。コミュニティにおいて、合意を持って決定し、そうして村人から与えられた使命を、私たちの代表が遂行していくのです。
 もしこうした形に基づいていなければ、アマゾン地域における運動は、あれほどまでも長く続くことはなかったでしょう。成員による決定であり、闘争であり、そこにリーダーの傾倒と明晰さを伴っていたからこそ、国内外を揺さぶることができたのです。

そのことは同時に国家による暴力的な弾圧を引き起こすことともなりました。政府はアマゾン地域の運動に対する国内、そして世界的な連帯運動の広がりを前に恐れおののいたのです。先住民族に理があり、支配のシステムと略奪モデルが揺らいでいることに気づかされたのです。
 そのモデルとは、アンデスやアマゾンにおいて、鉱業や林業、石油開発のためのコンセッションを拡大し、先住民族から生計の糧を奪いさり、国際条約にも定められている私たちの権利を踏みにじるようなものであり、また国にとって明らかに望ましくない自由貿易協定に署名することで国家主権を弱体化させるものであり、バグアで一年前に軍と警察に対して私たちの殺害を許可したように、私たちの抗議行動を犯罪と見なし、迫害し、処罰し、監獄に放り込もうとする、そういうものなのです。

 アラン・ガルシア政権は、抗議行動を犯罪とするような法令を公布することで、私たちの権利を侵害することを正当化し、米国との自由貿易協定のための一連の法整備への道を開きました。102もの憲法に反する法令を揃えたのですが、それに対し先住民族は憤慨し、闘争への決意と団結そして尊厳を持って立ち上がったのです。

 私たちの闘争は3つの法令の廃止を勝ち取りましたが、そのために34人の命が失われ、世界は心を動かされ、これまでに見たことのない連帯の輪が国内外に広がりました。ペルーでは2009年6月11日の国民抗議行動が、ここ30年あまり見たこともないような歴史的な高まりをみせ、国際的には、国連機関から人権団体、社会運動組織など、地球上の様々な所からバグアにおける虐殺を非難し、私たち先住民族の正当な要求に連帯する声が届けられました。

 ペルーにおいて先住民族が主役として立ち現れたことは、孤立した出来事ではなく、アビヤ・ヤラのすべての先住民族が立ち上がり、連携してきたプロセスにつながっています。私たちの多様性の中で、生命への敬愛、パチャママとの一体感、伝統的なアイデンティティーへの誇りを共有しつつ、私たちの権利の全的な行使と「善き生き方」と共同体的多民族国家という私たちの中心的な提案を協同で築きあげるために団結してきたのです。

 バグアの虐殺の後、国連の先住民族の権利に関する特別報告者であるジェームズ・アナヤ氏や人種差別撤廃委員会は政府に対して数々の提案を行ってきました。その中で特に重要な3点は、先住民族の参加の上で、独立した中立調査委員会の設置すること、先住民族法と事前協議に関する法律を審議し、承認することです。

 この最初の点についてはまだ道半ばです。議会の委員会は既に3つの報告書を公表し、もう一つの委員会は、国家の責任に言及せず、先住民族に責任を押しつけるような曖昧な報告書を出してきました。しかし2名の委員が署名を拒否し、独自の報告書を公表することとなっています。
 
 協議に関する法は議会で審議され、承認されました。ペルーは15年以上前に、ILO169号条約に批准しており、この法律は先住民族組織が長年要求してきたものなのです。しかしバグアの虐殺がなければ、先送りにされ続けたに違いありません。この法律は完全なものではありません。だからこそ、先住民族がその可能性を広げ、また法律を履行させていかなければなりません。既に私たちはそれができることを示してきたのです。

 先住民族法については、CAOI(アンデス先住民族組織調整体)はボリビアや他の国、また先住民族の権利に関する国連宣言などを参考にしながら独自の提案を作っています。

 バグアの虐殺から一年を経て、私たち先住民族はその団結のあり方を考え、強化しています。国家を押し戻しつつ、私たちの存在を無視し続けることはもうできないということを、私たちを抑圧して黙らせることはもうできないことを理解させ、通文化的な公共政策を開発していく道しか残されていないことを理解させるために、決意と団結を持って取り組んでいます。国家に対して、先住民族は私たちの多様性を承認し、評価し、通文化的な公共政策の開発を求めているのです。

下記サイトの記事からの翻訳です。
(訳:青西)
Las lecciones de Bagua
- Miguel Palacín Quispe es Coordinador General CAOI (Coordinadora Andina de Organizaciones Indígenas)
http://alainet.org/active/38693〈=es

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010/06/18

ペルー:バグアにおける先住民族弾圧から日本は何を学ぶか

 2009年6月5日のバグアにおける虐殺から一年が経った。米国との自由貿易協定との関連で強引に制定が進められた諸法律が、先住民族の権利を侵害し、自分たちのテリトリーと資源を略奪するものだとして、アマゾン地域を中心とする先住民族が立ち上がったのである。
 4月から道路封鎖などの抵抗運動が続けられたが、6月5日のバグアにおける衝突は弾圧した警察と一般市民双方で34人の死者と200人もの負傷者を生み出す結果となった。
 
 それから一年、ペルーにおいて先住民族の権利は尊重されるようになったのであろうか。議会における最も重要な成果は「先住民族への協議の権利に関する法」の採択であろう。5月19日に採択されたこの法案は、先住民族の集団的権利に影響しうる法的措置や行政措置、また開発計画やプロジェクトに先立って、合意を得るために、協議を受ける権利を先住民族に認めるものである。[1]

 しかし法案の採択後、アラン・ガルシア大統領の署名そして公布が行われないまま、期限の18日(注)が迫っている。更にガルシア大統領は、法律の公布を待たずに、水力発電所建設を含む、エネルギー協定をブラジルと締結するという暴挙にでている。[2]

 そして今、日本とペルーは「日本・ペルー経済連携協定」、自由貿易協定を締結しようとしているのである。今年11月に横浜で開催されるAPEC(アジア太平洋経済協力)の首脳会議における締結が目指されている。

 私たちは、ここであらためてバグアにおける弾圧について思い返さなくてはならない。ペルーの先住民族の声にもう一度耳を傾けなければならない。

 私たちは、ペルーに生きる先住民族の状況を知ることもなく、その声に耳を傾けることもないままに、その声を聞くこともできないままに、何かの決定をしていけるほど「自由」な存在なのであろうか。

[1]http://www.servindi.org/pdf/Peru_LeyConsulta_aprobada.pdf
[2]Perú: García y Lula firman acuerdo energético en medio de protestas
http://www.servindi.org/actualidad/27014
(注 期限は21日であった。21日夜に意見書をつけて議会に差し戻した。)

 開発と権利のための行動センター
 青西靖夫

 写真は2010年6月4日、5日バグアにて開催された追悼集会の様子
(撮影:柴田大輔)




平和がほしい! 二度と暴力が繰り返されないように!



亡命先のニカラグアより帰国したAIDESEPのアルベルト・ピサンゴ氏


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010/06/17

グアテマラ:自然保護区の管理を先住民族の手で

 グアテマラのイサバル県、シエラ・サンタ・クルス自然保護区計画地区では、現在、地域の住民アソシエーションによって、「自分たちの手で、自分たちのテリトリーを守っていこう」という動きが進んでいます。
 国内外の環境保護団体に任せるのではなく、この地域に住む先住民族の手で、自分たちの組織を通じて、この地域の自然を守り、テリトリーを守っていこうとしています。

これまでの経緯などは当会のパンフレットをご覧ください
http://homepage3.nifty.com/CADE/201004leafCADE.pdf
これまでのプロジェクトの流れについては次のサイトにも情報をまとめてあります。
http://homepage3.nifty.com/CADE/guatemala/Guatemala%20indigena%20y%20medio%20ambiente.htm

<森の守り人>アソシエーションがさらにつながって地域連携体を組織

 開発と権利のための行動センターでは、これまでアソシアシオン・イロル・キチェ(Asociacion Ilol K'iche':AIK <森の守り人>の意)の組織強化を支援してきましたが、現在このAIKが中心となって、更に地域の住民アソシエーションをつないでいこうという動きが進んでいます。
 
 最も重要な動きは、シエラ・サンタ・クルス地域の4つの住民組織の連携が動き始めていることです。この動きは2008年2月に地域内の2つの住民組織の連携準備のための会合を開催したことから始まります。ここで2つの住民組織AIKとAj Awinel の連携の動きが始まります。2009年11月からは2組織ではなく、Cerro1019とAPIDHの4つの組織の連携会議を開催してきました。この中でそれぞれの組織は自然保護区の問題にとどまらず、土地問題や地域開発の問題についての取り組みを共有し、地域開発に協同して取り組んでいく方向性を固めつつあります。更に、会議を通じてシエラ・デ・サンタ・クルス先住民族組織コーディネーターを設置し、継続的に連携のための会議を開催しています。

 全体で100コミュニティもが参加する地域住民組織の協力関係は、地域開発に重要な役割を持つこととなるでしょう。重要なことはこうした動きが「地域住民のイニシアティブ」によって生まれていることです。

 行動センターではプロジェクトの一環として、会議の開催を支援してきていますが、その実施はAIKが調整し、会議の内容はAIKやその他の住民組織が考えながら進めています。既に連携の動きは独自の歩みを進めており、会議を設定し、行動センターでお願いしてきたアドバイザーにも直接連絡を取り、会議への参加を要請し、必要であれば謝礼も自分たちで支払っています。また4組織の代表が集まって、首都で議員と交渉するという取り組みも行われています。

 今後、地域住民の組織が十分に力を持っていることを示し、首都のNGOを介在してプロジェクトが実施されるのではなく、地域にむけられるべき資金が直接、地域の住民組織に向けられ、また地域開発についての議論を進める際にも、住民の声をしっかりと取り入れるように要求していこうという方向で活動が続けられています。

 こうした中で、地域のコミュニティや住民組織が集まって、声明文を作成しています。環境NGOなどが主導で「管理」を進めるのではなく、自分たちが主体としてやっていけるのだ、という意思表明です。
 
 開発と権利のための行動センター
 青西靖夫   

以下、声明文

   シエラ・サンタ・クルスの
   ケクチ民族コミュニティの声明

私たちの果実を奪い、枝を打ち払い、幹を焼き払っても、
私たちの根っこを殺すことはできなかった。 (Chilán Balam)

 1854年、私たちの兄弟である「赤い肌」の先住民族の土地を買い上げたいという米国の大統領に対して、彼らはNOと答えた。「この大地のすべてのものは、私たちにとって聖なるものなのです。荘厳な松の木や、羽音とともに生まれた小さな虫たちまで、私たちにとって聖なるものなのです。私たちの死者たちは、このすばらしい大地を忘れることはないでしょう。それは赤い肌の母なのです。私たちは大地の一部であり、また大地は私たちの一部なのです。花々は私たちの姉妹であり、シカやウマやワシは私たちの兄弟なのです。岩肌を見せる頂、草地の匂い、子馬の身体から立ち上る熱気、そして人々、みな同じ家族なのです。」
 
 マヤのケクチ民族のコミュニティの私たちは、私たちの先住民族テリトリーで様々な環境保護団体、国内外の企業や組織が活動し、自然資源、私たちの母なる自然の要素に対して目を光らせていることを知っている。それは経済的な利益を求めるものであり、私たちが長年被ってきた脆弱な状況をさらに悪化させるものである。
 
 国内外の諸組織はこれまで様々な言辞を弄してきた。民主的な参加の強化、決定への参加、共有する力、持続的開発、司法や教育、保健などのサービスへのアクセスなどなど。そして更に、コミュニティを自然資源を破壊した責任者として名指しし、経済的資源の確保を正当化しようとしてきたのである。

 私たちが現在住んでいるマヤ・ケクチ民族のテリトリー、イサバル県リビングストンに位置するシエラ・サンタ・クルス地域を自然保護区として制定しようとする強い意向が存在することを知っている。
 
 そこで、2010年3月20日、リビングストンのルベル・ホ村に集まった27コミュニティの代表は次のように宣言する。

1. グアテマラ国憲法第33条に基づく組織する自由と第35条の思想の自由の保障に基づき
2.世界人権宣言の第19条に定められている「すべて人は、意見及び表現の自由に対する権利を有する。この権利は、干渉を受けることなく自己の意見をもつ自由並びにあらゆる手段により、また、国境を越えると否とにかかわりなく、情報及び思想を求め、受け、及び伝える自由を含む」権利に基づき、
3. 現在私たちが生活するこの土地を自然保護区として宣言することに反対の意思を表明する。
4. 国内外の諸組織が、私たちの自然の構成要素を保護し、利用し、管理するためとして、輸入してきたモデルを実験しようとすることや、文脈を無視した指導や指示を行おうとすることを拒否する。それらは私たちの経験や伝統的な生活を排除し、無視している。
5. 私たちの伝来の原則や価値観は、母なる自然の尊重を促進するものであり、自然資源、母なる自然の構成要素の合理的な利用と保護を進めるものである。
6. 国内外の諸組織に対して、私たち自身に、現在私たちが住んでいるんでいる私たち先住民族のテリトリーを「管理する」能力があることを断言する。
7. 私たちは、金儲けのためではなく、母なる大地への尊重を進めようという考え方でつながっている。

 政府に対して次のように要求する。
a. 私たちが現在住んでいるシエラ・サンタ・クルス地域のコミュニティの土地を自然保護区とする法制化を拒否すること
b. コミュニティの土地の土地登記を進めること
c. シエラ・サンタ・クルスのケクチ民族コミュニティが自然保護区を管理する能力があることを認めること。それはコアゾーン、多目的利用ゾーンや特別な配慮地区を含むものである
d. 法制度化を通じて、コアゾーン他の管理・利用・保全を私たちに委ねること

 国内外の諸機関に対して
a. 裏で利権を探りつつ、自然資源の保護や先住民族の権利の擁護をちらつかせてた情報をもってコミュニティを欺き、操ろうとしないこと
b. 私たちは母なる自然の擁護と共通の富のために同意に基づく戦略を築くためであれば、対話に開かれていることを宣言する。

母なる自然のために
シエラ・サンタ・クルスのコミュニティと住民組織から
リオ・デュルセ、リビングストン、イサバル、2010年3月

| | コメント (0) | トラックバック (0)

エクアドル:債務返済の鎖を裁ち切り 新しい持続的な社会へ向けて

3月に来日されたデルファ・マンティージャさんの報告会からのまとめです。
(日本ラテンアメリカ協力ネットワーク のニュースレターに掲載した記事の一部です)

債務返済の鎖を裁ち切り
新しい持続的な社会へ向けて

        
2010年3月、おおさか社会フォーラムに参加するため、エクアドルで債務問題などに取り組むジュビリー・エクアドルからデルファ・マンティージャさんが来日されました。ここではデルファさんの報告から抜粋してお伝えします。

開発のための融資は本当に役に立ったのか

 長年、開発のために先進諸国から借金をするという戦略が使われてきました。市民社会としては融資を利用するということを一概に悪いと言うつもりはありません。しかし私たちの資源は債務の支払いのために奪われ続けてきました。そうした中で、エクアドルだけではなく、南米各国の市民社会は、先進国からのこうした融資が本当に私たちの開発に役立ってきたのか、あるいは私たちの希望を埋葬してきたのかを明らかにするための監査を要求してきました。こうした市民社会からの声に呼応して、エクアドルのコレア大統領は2007年に「公的債務監査委員会」を設置しました。
そこで明らかになったことは債務は貧困の原因であり、私たちの資源は、債務の支払いのために奪われてきたということです。ワシントン・コンセンサスやIMFによる構造調整政策に基づき、国家予算の多くが債務の返済に振り向けられ、保健や教育、住宅など基本サービスへの予算は削られてきました。国家予算(1996-2006年)のうち、65%が債務支払いに向けられ、教育に12%、保健には4%しか使われませんでした。
 またここ30年間にエクアドルが受け取ってきた債務は債務の返済を維持するために使われてきたのです。海外からの融資の4%のみが国内投資に使われ、30年間にわたって受け取ってきた融資の96%は債務の支払いを維持するために使われてきたのです。
 こうして私たちは借りたお金以上の金額を返済することを強いられてきました。これは資金が私たちから先進国に流出していることを意味しています。こうしたことを監査を通じて明らかにすることができたのです。エクアドルだけではなく、ラテンアメリカ諸国はこうした対外債務を既に支払っているということです。

●債務支払いのための石油開発から
 持続的開発のためのヤスニ提案へ


 石油はエクアドルの国家収入の重要な部分を占めています。この石油からの収入は対外債務を返済するために使われてきました。しかし石油開発は、私たちの国民の生活を脅かし、自然を破壊してきました。石油開発によってアマゾン地域の熱帯雨林も破壊されてきました。川や土壌を汚染し、生物多様性を損ない、先住民族の文化も失われてきました。
 アマゾン地域で石油開発を行うことは、地球を殺すようなものなのです。そこで人口たった1200万人の小国であるエクアドルは、世界にむけて新しい提案をしています。アマゾン地域にあるヤスニ保護区における石油開発を放棄することを提案しているのです。生物多様性の宝庫であるヤスニ保護区はユネスコの生物圏保存地域としても登録されていますし、タガエリ、タロメナニ、ニャノメナニという三つの非接触先住民族も居住しています。
エクアドル政府は、先進国が支援してくれれば、このヤスニ保護区における8億5千万バレルの石油採掘を放棄しようと提案しています。これは4億トンの二酸化炭素の放出を放棄することになり、気候変動の緩和にも貢献することができるのです。しかしこれは様々な国々の連帯があってはじめて実現できるものです。
 そこでこれまで大気を汚染してきた先進諸国に共同責任をお願いしたいのです。85%の温室効果ガスは豊かな国から生み出され、ラテンアメリカ諸国は3%を排出したに過ぎません。しかし気候変動はより貧しい人に被害をもたらしています。干魃や洪水の被害も出ています。
 そこでともに地球を守るために、人類を守り、未来の世代を守るために協力していくことをお願いしたいのです。

(まとめ:開発と権利のための行動センター 青西)

・「公的債務監査委員会」の報告書要約
 債務問題や国際金融取引の問題に取り組んできたATTAC-JAPANが翻訳版を作成して販売しています。

・ヤスニでの石油開発をやめようという取り組みについては、ニューインターナショナリストが取り上げています。
 2008 年7月号、NI No.413 & NIジャパン No.101「石油依存社会への提言 ─ エクアドルの新たな試み」 http://www.ni-japan.com/

| | コメント (0) | トラックバック (0)

行動センターの活動紹介パンフ

 皆様へ
開発と権利のための行動センターの活動を紹介したパンフレットを作成し、Webサイトに掲載しています。
ここ1年ほどのブログ掲載記事の一覧もついています。
http://homepage3.nifty.com/CADE/201004leafCADE.pdf

また次のリンクから、これまでの活動報告書・会計報告書なども見ることができます。
http://homepage3.nifty.com/CADE/index4.htm

開発と権利のための行動センター
代表理事 青西靖夫

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010/06/08

「責任を持って小農を破壊しようとする『責任ある農業投資原則』」

食料の権利に関する国連特別報告者、オリビエ・ド・シュ-テル氏(オリビエ・デ・シュッター)は、現在日本政府も積極的に推し進める「責任ある農業投資に関する原則」を強く非難している。
 6月4日にProject Syndicateのサイトに掲載された記事「 Responsibly Destroying the World’s Peasantry/責任を持って小農を破壊」は、投資家とコミュニティの双方に利益をもたらすと謳っている「責任ある農業投資に関する原則」は不適当なものであると告発している。[1](下に全訳)

責任ある農業投資に関する原則は、日本政府が、世界銀行などとともに積極的にその策定を目指している自発的なガイドラインであり、次のような7つの原則(案)を含んでいる。[2]
(1)土地及び資源に関する権利の尊重
(2)食料安全保障の確保
(3)透明性、グッド・ガバナンス及び投資を促進する環境の確保
(4)協議と参加
(5)責任ある農業企業投資
(6)社会的持続可能性
(7)環境持続可能性

 しかしながら、上記の記事において、国連の特別報告者は「自発的な原則ではなく、食料への権利や、生存の糧を奪われないようにする権利など、人々の権利を保障し、政府にその履行を要求できるような原則こそが必要であること」を指摘している。また飢餓対策、貧困対策として、大規模農業、機械化農業を推し進めることは本末転倒しており、「飢餓や栄養不良は食料生産の不足によるものではなく、貧困と不平等によるものなのである。このことは世界の75%の貧困人口が居住する、農村部において特に顕著である」と述べている。
 特別報告者は、小生産者の農業の多様性、生物多様性の維持に貢献や、農村コミュニティに価格変動や気候変動への抵抗力を評価する一方で、温室効果ガスの3分の1を生み出しているような工業的な農業モデルを推進することに疑念を呈し、今回の「責任ある農業投資に関する原則」は、「社会的・環境的により持続的な農業開発に取り組んでいくのではなく、世界中の小農民を責任を持って破壊していこうとしている」と見なしている。

 補足
国連の食料への権利に関する特別報告者はその報告書において、大規模な農地取引において適用されるべき、11の人権原則を提起している。[3] この原則内容は既に、農業情報研究所のサイトで紹介されているものと同じようである。[4]

 開発と権利のための行動センター
 青西


[1]"Responsibly Destroying the World’s Peasantry" Olivier De Schutter,
http://www.project-syndicate.org/commentary/deschutter1/English
[2] 外務省: 責任ある農業投資に関するラウンドテーブル(概要)(2010/4/27)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/food_security/100430_gaiyo.html
[3] Report of the Special Rapporteur on the right to food,
-Large-scale land acquisitions and leases: A set of minimum principles and measures to address the human rights challenge-
Olivier De Schutter (2009/12/28)
http://www.srfood.org/images/stories/pdf/officialreports/20100305_a-hrc-13-33-add2_land-principles_en.pdf
[4]国連専門家 外国農地取得に関する人権法に基づく原則を提案 G8サミットで採択を(2009/06/12)
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/agrifood/overseainvest/09061201.htm 



Responsibly Destroying the World’s Peasantry
Olivier De Schutter
Published: 6 June 2010

Olivier De Schutter

世界銀行、国際連合食料農業機関(FAO)、国際農業開発基金(IFAD)、国際連合貿易開発会議(UNCTAD)が最近提示した七つの「責任ある農業投資の原則」は、大規模な土地投資を進め、投資家とコミュニティ双方に利益をもたらすという。しかし原則は、善意に基づくものかもしれないが、実際にはあまりに不適切なものである。

 自国の食料供給や原材料、バイオ燃料の確保、あるいは植林を通じた炭素貯留をはかる補助金を得るという目的で、民間投資家や国家が世界中で数百万ヘクタールという土地の購入や借地を開始してから数年が経過する。ウォール街の銀行やヘッジ・ファンドを含め、西洋の投資家が、土地への直接投資を、不安定な金融環境の中での安全な避難所と見なしているのである。

 この現象は大きな問題を引き起こしている。2006年以降、1500万~2000万ヘクタールの農地、フランスの可耕地面積と同様の面積が、海外の投資家の取引対象となっている。
 これは大きなリスクを伴っている。長年の慣習的な権利に基づいて、生計を支えるために利用されてきた土地が、しばしば「遊休地」、あるいは「農業向けの留保地」と呼ばれ、こうした取引の対象とされることが多いのである。「公共の利益」の名のもとに退去命令が出され、正当な補償と影響を受ける住民に対する協議などというのは、遵守されるより履行されないことの方が遙かに多い。
  
 アフリカにおいては、農村部の土地は国有と見なされることが多く、政府はまるでその土地が自分たちのものであるかのように扱っている。ラテンアメリカにおいては、大土地所有者と小農民の格差は広がりつつある。南アジアでは長年生活してきた土地を追われ、パームオイル農園や特別経済区、あるいは植林プロジェクト地などに移り住む住民が増えている。

 こうした現象に対峙するためとして提起されている諸原則であるが、これは単に自発的な履行が求められているに過ぎない。しかし、食料への権利や、自然資源からの利便を享受する権利、その生存の糧を奪われないようにする権利など、人々の権利を保障するように政府に要求することが必要なのである。この原則は人権を無視していることからして、説明責任を果たし得ないのである。

 また大農園を形成するために投資家に土地を譲渡するということと、より公平な土地へのアクセスを保証するために土地を分配するということの間での対立がある。諸政府は何度となく土地分配という目的を追求していくと約束しており、近年では2006年に開催された「農地改革と農村開発に関する国際会議」の場でその約束は繰り返されている。
 
 どのような原則が策定されるかということよりも更に根幹に関わる問題が存在している。大規模な農業投資を進めようという根拠には、飢餓対策のためには、食料生産の推進が急務であるが、農業投資の欠如がその障害となっているという考え方がある。そこで、農業への投資を促進すべきであり、科せられる規則は、投資を進めるものであっても、抑制するものであってはならないというのである。

 しかしこの分析も、また対策もどちらも間違ったものである。飢餓や栄養不良は食料生産の不足によるものではなく、貧困と不平等によるものなのである。このことは世界の75%の貧困人口が居住する、農村部において特に顕著である。

 過去において、農業開発は大規模化、資本投入型の農業を推進し、地方のコミュニティに食料を供給してきた小規模生産者への対応をおざなりにしてきた。また日増しに競争的になる環境の中で、政府は農業労働者を搾取から保護することに失敗してきた。だからこそ、今日、十分に食べることのできない人たちの70%が、こうした小農民や農業労働者だという現実がある。
 
 大規模農業、機械化された農業への移行を推し進めることでは問題は解決できないどころか、悪化するばかりであろう。大規模化され、資機材の整備された農業生産者は、競争力を持ち、市場に対して安価な生産物を供給できるであろう。しかし同時に市場価格には反映されない高い社会的な費用を生み出すのである。
 
一方で,小生産者の生産費は高くつくが、単位面積当たりの生産性は高いことが多い。土地を最大限に活用し、作目や家畜を補完的に組み合わせることに成功している。その農業は外部の投入財への依存が少なく、機械化も進んでいないが、高い労働集約性を要求するものである。
 
 もし、小生産者が市場において、大規模生産者と競合したならば負けてしまうであろう。しかし小生産者は評価されてはいないものの、高いサービスを提供しているのである。農業の多様性、生物多様性の維持に貢献し、農村コミュニティに価格変動や気候変動への抵抗力を与え、環境保全にも役立っている。
 
 大規模な農業投資は、こうした農業世界の関係性を破壊してしまうのである。明らかに不均衡な競争を深化させ、農村社会の瓦解を引き起こしかねない。
 
 農業投資が責任をもって行われなければならないのはもちろんである。多くの者が、近年の食料価格の高騰によって引き起こされた懸念を投資の機会と捉えたようであるが、機会と解決策とを混同してはならない。
 開発途上国における農業生産を再興するためには、少なくとも年間300億ドルが必要だとされている。これは世界中の国内総生産の0.05%に相当する。しかし、金額ではなく、どのような農業を支援するかということの方が重要である。力を持つ少数の経済的アクターによる大規模なモノカルチャーを促進することは、小生産者や家族経営との格差を更に拡大するものであり、また既に温暖化ガスの3分の1を排出している工業的な農業モデルを促進するということなのである。

 社会的・環境的により持続的な農業開発に取り組んでいくのではなく、世界中の小農民を責任を持って破壊していこうとしているのは残念でならない。
 
http://farmlandgrab.org/13528より 翻訳

元のサイトはProject Syndicate

続きを読む "「責任を持って小農を破壊しようとする『責任ある農業投資原則』」"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2010年5月 | トップページ | 2010年7月 »