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2010/06/19

グアテマラ:先住民族の権利に関する特別報告者、新たな鉱業ライセンスの認可停止を求める

 14日から18日にかけてのグアテマラ訪問を終えるに当たって、先住民族の権利に関する特別報告者であるジェームズ・アナヤ氏は、先住民族との協議について定めた国内法が制定されていないことから、先住民族の権利が侵害されていることを指摘し、国内法が整備されるまで、新しい鉱業開発・探査ライセンスを認可しないように要請。
 アナヤ氏は協議に関する国内法が整備されていないことが混乱を引き起こし、社会紛争の原因となっていることを指摘している。
 また先日出された米州人権委員会の勧告に従い、マルリン鉱山の操業を停止するように要請した。[1]

<6/27 追記 グアテマラ訪問に関する暫定報告書からまとめ>

国連の先住民族の権利に関する特別報告者、ジェームズ・アナヤ氏の暫定報告書のまとめです。[2]

1.自然資源の開発と投資プロジェクトの影響
 グアテマラの先住民族の伝統的テリトリーにおける企業の経済活動に関連して、非常に不安定な状況と社会紛争が存在する。これは先住民族だけではなく、政府そして企業自体にも共有されている認識であり、早急にかつ確固たる対応をしなければ、政府による統治すら危機に陥りかねない。
 問題の背景には次の二点がある
1)プロジェクトを実施するにあたっての協議の有効性の問題
協議に関する法制度の欠如
協議が行われてこなかったことは、先住民族コミュニティにとって、世代を超えた侵略、排除、剥奪の経験と結びついている。
2)先住民族の土地やテリトリー、自然資源に対する権利の承認と保護の問題
  先住民族の土地所有権、特に集団的な所有権の不安定さ

-資源開発プロジェクトは、川や井戸の汚染、リーダーへの脅迫、殺害、土地からの排除、家屋の破壊、性的暴力などを引き起こしている。更にプロジェクトは社会的な平和を破壊し、コミュニティの内部、果ては家族内で深刻な対立を引き起こしている。
-抗議行動などに対して、先住民族コミュニティの成員に対する告発が行われている。しかしコミュニティからの訴えに対して回答がないことから引き起こされたものである。
-(開発)プロジェクトは、ネガティブな影響だけではなく、利益をもたらすものでなければならないはずだ・・・特別報告者としての職務の限界もあるが・・・問題があること、非常に深刻な問題があることは断言できる。
-伝統的なテリトリーにおけるプロジェクトの影響について、人権に関して国際法に定められた義務に基づくだけではなく、人道的な見地から見ても、先住民族の正当な要求を否定することはできない。

-多数の人々が参加して行われた集会で、数多くの横断幕が掲げられていた。「鉱山はいらない、平和がほしい」、「すべての鉱山は汚染するだけだ」。参加していた男性や女性が動員されていたとは思わない。ネガティブな影響だけをもたらし、生きてきた土地を脅かし、自分のコミュニティに紛争を引き起こし、その一方でなんら生活を改善しないような資源開発プロジェクトを前にしたら、私だって「鉱業には反対だ」と言うであろう。

2.協議を行う義務
-「国家は、先住民族に影響を及ぼす可能性がある法的・行政的措置、またそのテリトリーにおける自然資源の開発やインフラ等の投資プロジェクトに関して先住民族への協議を行う義務がある」
-協議は、国家と先住民族の間で誠意を持って行う対話のプロセスであり、国家は合意を得るために最大限の努力をしなければならない。
 協議は単に情報を提供するとか、サインを集めるものではない。また単に、賛成か反対かを表明する投票でもない。
-協議は、関係する当事者のそれぞれが立場を譲り、また正当な利益を擁護する意図で行う交渉である。必要性や均衡、民主的な社会における正当な目的の追求といった観点から、国家には相異なる権利や利害を、バランスさせる責任がある。国家にとっての正当な目的には、先住民族の権利の擁護、特に伝統的なテリトリーと自然資源への権利の擁護、不可分な文化を構成するテリトリーや土地との先住民族の関係の擁護、また多民族社会の促進が含まれなければならない。
-現時点において、グアテマラの法制度の中に、協議手続きを定めた法律は存在しない。
-企業はこうした協議プロセスを実施することもできなければ、実施すべきでもない
-コミュニティによって行われている協議は、国内法に基づいて拘束力を持つかどうか、という議論にとどめられるべきではない。こうした(コミュニティで協議を行う)イニシアティブは正当なものであり、かれらのテリトリーにおいて影響を引き起こしうるプロジェクトについて、先住民族の声を聞くべきであるという正当な願いの反映である。こうした協議が行われたほとんどのコミュニティで表明された否定的な意思表示は、同意の欠如と適切な協議プロセスの欠如を映し出している。
-しかしこうした協議の存在が、(今後)国際法に基づく適切な手続きによる協議の実施を妨げるものではないと考える。
-早急に協議に関する法の承認を求める。
-これまでにコミュニティによる協議で拒否の意思を表明した自治体において新しい鉱業開発ライセンスを認可しないという政府の方針に満足している。協議に関する法律が整備されるまで、モラトリアムを続けるという方針を公的なものにしてもらいたい。

3.マルリン鉱山について
-米州人権委員会の勧告に従い、マルリン鉱山の操業を一時中断し、環境汚染を防ぐための対策を取ること。
-数週間以内に行われるであろう米州人権委員会の調査団の現地調査の結果に従うこと
-鉱山開発に影響を受けているコミュニティにおいて同意が存在していないことは明らかであり、それどころか、シパカパとサン・ミゲル・イシュタウアカンにおいては、鉱業開発によって分断と紛争が引き起こされている。
-マルリン鉱山のように先住民族の権利に大きな影響を引き起こすプロジェクトは、先住民族の同意なしに実施すべきではない。
-合意なきプロジェクトはこのケースのように紛争を引き起こし、コミュニティだけではなく、プロジェクトの実施自体にもネガティブな影響を引き起こす。
-新たに協議を行った上で、合意に基づいて操業すべき。
-当面、先住民族が客観的かつ完全な情報を手に入れることができる、制度化された対話スペースを創設すること。政府はこのスペースにおいて、コミュニティの声に対して誠実に対応し、プロジェクトによる被害に対して補償し、緩和策を実施すること。

* * *
 グアテマラは国連の先住民族宣言の起草および採択に重要な役割を果たした。先住民族の人権の履行に関しても、揺らぐことなく歩みを進めてもらいたい。


[1] Relator de ONU recomienda moratoria a nuevas minas en Guatemala
http://www.prensalibre.com/noticias/Relator-ONU-Guatemala-consultas-indigenas_0_282571984.html?print=1
Relator de ONU exhorta a Gobierno a acatar resolución de la CIDH
http://www.lahora.com.gt/notas.php?key=68808&fch=2010-06-18

[2] 

Observaciones preliminares del Relator Especial de Naciones Unidas sobre la situación de los derechos humanos y las libertades fundamentales de los indígenas, Sr. James Anaya, sobre su visita a Guatemala  (13 a 18 de junio de 2010)

http://www.ohchr.org/en/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=10173&LangID=S

まとめ、訳 

開発と権利のための行動センター
青西

特別報告者からの報告書、プレスリリースなどが公表された時点で、加筆修正します。

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