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2010/07/15

パナマ:バナナ労働者のストライキに対する弾圧

 パナマ西部、ボカス・デル・トロ県のチャンギノーラで4000人以上のバナナ農園労働者によって、7月2日から大規模なストライキが行われた。これは労働法の改悪等を含む、法第30号の廃止と未払い給与の支払いを求めたものであった。しかし警察による弾圧によって、少なくとも2人の死者、150人以上の負傷者及び100人あまりの逮捕者がでる事態となった。また首都では労働組合幹部がゼネスト実施に関する会議を開催していたホテルが警察に囲まれ、300人以上がホテルに閉じ込められるという事件も起きていた。

 政府による弾圧を前に、国連の人権高等弁務官事務所の中米代表は11日、パナマ政府による過剰な銃器の使用を非難し、対話を行うように求めていた。
 11日中に、副大統領を含む政府の委員会が労働組合等と法律の見直しや逮捕者の釈放などを含む協定を結び、とりあえず衝突は終結した。しかしマルティネリ大統領は法を破棄することは拒否しているという。

 そもそも発端は6月16日に公布された法第30号にある。「商業航空の持続的な発展の促進」のための法律が、「国益のためのプロジェクト実施を可能にするための労働法、刑法の改定」と環境法などの改定を含んでいたのである。議会の運輸委員会だけで討議した法案で、労働法、刑法、環境法など9つの法律を改定するという暴挙を行ったのである。 この改定には、スト権の侵害、資産の保全名目でのスト中の会社への警察の導入などに加えて、環境影響評価を「環境に対する規範的取り組み」で代替させる規定などが含まれており、「国益のために」水力発電など開発プロジェクトの積極的な推進をもくろんでいるものと考えられる。
  
 また今回の紛争の中で政府関係者の人種差別発言も繰り返されている。ノベ民族出身の農園労働者を中心とするストライキに対し、内務・法務大臣であるラウル・モリーノは「抗議行動をしている多くは、農薬中毒かなんかのインディヘナ」と発言し、警察長官はデモ参加者を「酔っぱらいのインディオ」と中傷していたという。

 マルティネリ政権の強圧的な政治や人種差別的な態度には反発が強まっており、今後も注視していく必要がある。

 またパナマは現在、韓国との経済協力関係を強化しようとしつつあり、韓国資本による鉱山開発などの動きも見られる。韓国政府はAPEC加入へ道を開くことも検討しているようである。

 今回の法30号も、こうした動きの中で見ていく必要がある。

開発と権利のための行動センター
青西

<注>
*法30号は次のサイト
http://www.gacetaoficial.gob.pa/pdfTemp/26556_A/28058.pdf

*改定には職務中の警察官による過剰な暴力行為に対する特別措置も含まれている。そこには警官が職務中に過剰な暴力の行使によって殺人事件を犯したとしても、その刑罰は警察施設にて課せされるという条項まで含まれているが、現行法でも類似の規定があることに驚かされた。(法1997-18号 第129条)

*パナマの状況については複数のサイトを参考にした。いくつか下にあげる。
http://www.frenadesonoticias.org/
http://codetiaguas.blogspot.com/
http://www.ciampanama.org/

*また日本語でも次のサイトで紹介されていた。
パナマ:マルティネリ政権、労働組合弾圧、2人が死亡
http://ameblo.jp/guevaristajapones/entry-10588417324.html

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2010/07/02

ホンジュラス:土地紛争・人権侵害・RSPO

WWFが土地紛争と人権侵害で揺れるホンジュラスのパームオイル企業と提携

 WWF(世界自然保護基金)が、人権侵害の責任者としても名指しされている企業家のミゲル・ファクセ(Miguel Facussé)に率いられるディナント社とRSPO(持続可能なパームオイルに関する円卓会議)の認証取得のために協力していくという協定を結んだことに対して疑問の声があげられている。
 ミゲル・ファクセが率いるディナント社は1990年代よりホンジュラス北部のアグアン川とレアン川の流域でオイル・パーム生産を開始し、現在グループで、パームオイル生産から輸出まで行っている巨大な企業体である。このディナント社とWWFは、環境に配慮した経営に移行するために協力して取り組んでいくための覚え書きに5月25日署名した。
5年間にわたる協力関係を通じて、ディナント社はRSPOの認証を取得することを目指している。[1]
これに対して、ホンジュラスのガリフナ系組織であるOFRANEH(Organización Fraternal Negra Hondureña )はホンジュラス北部のバホ・アグアン地域で社会紛争が深刻化している時にこうした協定に署名を行うWWFに疑念を呈し、またオイル・パーム・プランテーションでは大量の農薬を使用し、沿岸の生態系に被害を出しているのは周知の事実であると非難している。
 また協定が「善意に基づくものであろうと」、RSPOが果たしている役割には深い疑問があると述べている。パプア・ニューギニアにおいても、RSPOは企業のイメージを良くするために利用されているが、法的な枠組みを持たず、報告も曖昧で、パプア・ニューギニアではRSPOに登録されている12のうち11の企業が規定を遵守していないという。WWFはサンゴを守る意識はあっても、この国の社会紛争を無視している。またファクセは、この国をすべてオイル・パーム・プランテーションに変える夢をもっているのだと告発している。[2]

 このミゲル・ファクセはホンジュラス有数の企業家であり、その資金力を使って強い政治的影響力を持つといい、エンビオ誌は「ホンジュラスのマス・メディアもファクセに対する批判を一日以上続ける力は持たない」と記している。またファクセに対する告発は山ほどありながらも、すべて葬り去られるか、無実で結審する一方、ファクセが告発する小農民や労働者はそのほとんどが有罪とされてしまうと伝えている。[3]
 このファクセが大規模なオイル・パーム・プランテーションを有するのがアグアン川流域であるが、この地域は現在、深刻な土地紛争の中に置かれている。 セラヤ大統領時代に土地交渉を行っていたMUCA(アグアン農民統一運動)が、セラヤ政権の転覆によって、それまでになされていた合意が履行されないのではないかと考え、2009年12月にファクセのオイル・パーム・プランテーションの土地占拠に入ったのである。[4] 

 1990年代のファクセによる土地集積のプロセスや土地所有の正当性については把握できないが、この土地紛争を巡って、地域では武装組織による暴力が頻発しており、今年1月から4月までで10人が殺害されたとFIANの報告書は伝えている。またファクセによる告発で100人以上に対して土地横領の疑いでの逮捕状が出されているという。
 更に4月17日にMUCAと政府との間で合意に達したにも関わらず[5]、バホ・アグアン地域では紛争が続いており、6月5日の報道では衝突の中で警官に死者が出る事件が起きている。また20日にはMUCAを構成するコミュニティが警察と軍によって襲撃され、16才のオスカル・ジョバンニ・ラミレスが殺害され、他5名が拘束されたという。記事では、このような事件が発生しても訴えるところすらないと伝えている。[6]
 またジャーナリストへの抑圧も頻発しており、3月14日にはアグアンの土地問題の調査を取材していたテレビ・ディレクターであるナウム・パラシオスが暗殺された他にもジャーナリストに対する脅迫も続いている。[7]

 OFRANEHが指摘するように、社会紛争が広がり、人権侵害が広がる中で、WWFはディナント社と、環境面だけに焦点を当てた協定を結んだのである。

 ファクセが現時点においてなにがしかの法的な処罰の対象になっているわけではない。将来的にディナント社が自然環境に配慮した経営を行い、RSPOの認証を受けることもありえる話である。しかし認証の付いたパーム・オイルが、生産地のややこしい社会問題も含めて伝えてくれるわけではなく、認証は逆にその可能性に封をするものになるかもしれない。

 開発と権利のための行動センター
 青西靖夫

追記1:この報告は、Radio Mundo Real の記事「Maquillaje verde:Denuncian acuerdo entre la WWF y cuestionado empresario en Honduras」をきっかけに、インターネットの情報を利用して整理したものです。
 http://www.radiomundoreal.fm/Maquillaje-verde?lang=es
 この記事ではミゲル・ファクセとの土地問題を抱えるホンジュラス南部のサカテ・グランデにおけるファクセのガードマンや警察による人権侵害、コミュニティ・ラジオへの弾圧についても触れていますが、ここでは割愛しました。
 サカテグランデの関連記事はこちら
http://www.defensoresenlinea.com/cms/index.php?option=com_content&view=article&id=819:pobladores-de-zacate-grande-denuncian-nueva-estrategia-de-miguel-facusse-para-quitarles-la-tierra&catid=54:den&Itemid=171

追記2:これらの社会紛争とも関連して、農民組織が武装している、コロンビアのゲリラ組織であるFARCと関係しているといった中傷記事も流されている。一方、ホンジュラス軍は麻薬対策という名目でコロンビア軍との連携を強めつつあり、既に北部大西洋岸でもコロンビア軍がホンジュラス軍と行動をともにしているようである。またクーデター期にコロンビアのパラミリタリーがホンジュラスに動員されたという話もある。
クーデター以降、ホンジュラス北部は、地元有力者と結びついた軍、警察、民兵などによる無法地帯になりつつある。

参考資料
[1]GRUPO DINANT Y WWF FIRMAN ALIANZA PARA CULTIVO SOSTENBLE DE LA PALMA(20105/5/27)
http://www.dinant.com/noticias.php?noti_id=85&start=0&categoria_id=&prede_id=0&arcyear=&arcmonth=
Palma africana ecológica: Honduras compite con grandes productores mundiales responsables con el ambiente
http://www.dinant.com/noticias.php?noti_id=86&start=0&categoria_id=&prede_id=&arcyear=&arcmonth=
[2] WWF blanquea imagen del palmero de la muerte, Miguel Facusse.(2010/5/26)
http://www.albatv.org/WWF-blanquea-imagen-del-palmero-de.html
更にWWFはサンゴを守るという善意はあるのだろうが、この国の社会紛争を無視していると、コチーノス島嶼帯における観光開発の問題にも言及し、飛行機などによる温室効果ガスの排出を忘れているのだとしている。
  参考記事はこちら
http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2007/04/post_0fa2.html
パプアニューギニアの話は次の記事が背景情報にあるようである。
PNG: Greenwashing the palm oil industry
http://pacific.scoop.co.nz/2010/03/png-greenwashing-the-palm-oil-industry/
[3] Miguel Facussé avanza por la isla del paraíso(2005/05)
http://www.envio.org.ni/articulo/2889
[4] 土地紛争の詳細はFIANの報告書を参考のこと
Situación de los Derechos Humanos en el Bajo Aguán, Honduras(2010/05)
http://hondurashumanrights.files.wordpress.com/2010/06/situacion-de-los-derechos-humanos-en-el-aguan-informe-a-31-mayo.pdf
[5]政府がファクセの所有するオイル・パーム農地を3000ha購入し、他3000ヘクタールを耕作地として提供するという合意であったようだが、価格で折り合わない中で農地改革庁長官が土地所有に関する証書の提示を求め、また収用の可能性にも言及する中で、大農園主と対立の兆しがある。
[6]Policías y militares asesinan otro campesino en el Aguán y detienen a cinco más
http://www.defensoresenlinea.com/cms/index.php?option=com_content&view=article&id=807:policias-y-militares-asesinan-otro-campesino-en-el-aguan-y-detienen-a-cinco-mas&catid=42:seg-y-jus&Itemid=159
[7]Honduras: Further information: New threats against journalists in Honduras
http://www.amnesty.org/en/library/asset/AMR37/008/2010/en/1348038c-ce1f-4f7e-88a5-deab04c97d36/amr370082010en.html
Ricardo Emilio Oviedo, presidente de la Asociación de Comunicadores de Colón objeto de persecución y amenazas permanentes
http://hondurasenlucha.blogspot.com/2010/04/ricardo-emilio-oviedo-presidente-de-la.html

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