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2010/08/20

コロンビア:オイル・パーム農園との土地紛争

 コロンビアのボリーバル県北部、ラス・パバス(Las Pavas)における、オイル・パーム農園と小農民との間での土地紛争に関する調査報告書が公表された。[1]オイル・パーム農園拡大による小農民の土地からの排除は至る所で起きている。しかしこのラス・パバスのケースは、世界的な企業であり、企業の社会的責任を重視する「ボディショップ」の取引先の一つであるダーボン社の子会社が関与していたこともあり、英国のオブザーバー紙などで大きく報道され、国際的なNGOなども抗議キャンペーンを展開したものである。[2]

 ボディショップは、この紛争が起きている農園の生産物を購入していないことを表明すると同時に、この紛争の当事者でもあるダーボン社との取引を停止することは、「農民をより無防備な状態に置き、現地企業もコミュニティの状況にさらに無関心になるであろう」(報告書 P19)という考えから、クリスチャン・エイドとともに現地調査を行うこととした。クリスチャン・エイドはこの地域で既に活動しており、ラス・パバスの農民排除に関しても農民組織側を支援していた。調査はクリスチャン・エイドとボディショップが4名の専門家を雇用し、独立調査委員会を設置する形で行われた。
 
 この調査報告書では、土地紛争の経緯、不明瞭な土地所有権や行政機関の不在、武力紛争の影響、大規模なオイル・パーム・プランテーションの出現による地域社会の急激な変化など、複雑な地域状況を描き出すとともに、パーム・プランテーションが地域の生態系に引き起こす影響についても分析を行っている。
 同時に、土地紛争とパーム農園の拡大が、人々の人権を損ない、生計手段、食料安全を脆弱な状況においていると明確に指摘している。
 「人々は土地や地域の生態系からの資源に依存してきた。こうした資源へのアクセスを尊重し、また保証することは人権面での義務である。現状では住民の自然資源への権利は侵害されている。生物多様性を利用する権利、生存の権利、選択の自由、食料安全、土地への権利、共有地の利用権、自然災害を避ける権利が侵害されている。農民から賃金労働者への転換に基づく雇用の創出と賃金の支払いによって、こうした権利が回復されるわけではない」(P60)
 「土地へのアクセスが制約されていることは、農民の生活改善、またコンソーシアムといかなる交渉を行う上でも大きな障害となっている。」(P61)

 クリスチャン・エイドは委員会の報告書はクリスチャン・エイドの分析を裏付けるものであるとし、次のような声明を発表している[3]
-ASOCABの123家族は問題となっているテリトリーで数十年にわたって生活してきた。これはダーボン社の主張と異なるものである。
-コンソルシオ・エル・ラブラドールはこの状況を知らなかったことについて弁明しておらず、政府機関も状況を明確にすることに貢献してこなかった。
-コロンビア政府はラス・パバスの農民家族の権利を保障していない。
-ASOCABの家族は平和的であり、ダーボン社の指摘するところとは異なる。
-パーム生産の拡大は地域の環境に大きな影響を引き起こしてきた。
-政府が憲法に定められた責務を果たしてこなかったことによる社会的問題を根幹に抱えており、また関係アクターの力の不均衡や武力紛争、国家による過剰な軍事行使などが問題を深刻化してきた。
 以上のような状況が明らかにされた上で、百以上の家族の生活と子どもたちの機会がパーム生産企業によって損なわれていることが確認される。外部のオブザーバーは、倫理的にかつ最もふさわしい解決策について一致を得ることができるであろう。それは早急に家族に土地を返還することである。これによって外部からの食料援助への依存を脱し、土地からの排除によってずたずたにされた生活を再建できるのである。


 またボディショップは報告書を受けて、次のような声明を公表している。
-2007年以来ダーボン社と取引はしているものの、ラス・パバスの土地紛争に直接関係し、ダーボン社も参加しているコンソルシオ・ラブラドールとは直接取引もなく、当該地域から原材料を仕入れたことはない。
-コンソルシオは土地取引に問題がなかったという態度を維持しているが、報告書によると、農民がそれらの土地の一部を利用していた
-ボディショップとしてはコミュニティの将来が最も重要な関心事であり、ダーボン社に対して報告書の結論に基づいて、建設的な対話を開始することを要請する[4]


 報告書は、これまでの農地分配のモデルも、単一作物モノカルチャーも限界があると見なし、行政、地域住民、企業などが、地域の生態系に見合った持続的な地域開発に取り組んでいくための中・長期的な方策を提案している。
 しかし地域住民ができる限り対等な力を持って対話に参加するためには、まず土地を回復する必要がある。自分たちの足場を固め、食料を確保することが、地域のあり方について対話をするための第一歩であろう。

 また報告書では 企業に対して「土地所有のようなセンシティブな問題に関しては、法的な空隙があったとしても、責任を持って注意深い対応をするためのガイドラインを定めて、適用すること」を求めているが、企業が法律を都合よく利用するのではなく、耕作者の権利、占有者の権利を保証することができるかどうかは社会的責任のあり方として今後も注視していくべき課題であろう。

[1]Independent Evaluation of the Land Conflict in Las Pavas (Bolivar, Colombia).
http://www.christianaid.org.uk/images/laspavasreport.pdf
The Body Shop:How do we make sure that our products are responsibly sourced?
http://www.thebodyshop.com/_en/_ww/values-campaigns/community-trade.aspx?
[2]「パームオイルでつながっているコロンビアでの農民排除と日本」のリンクを参照のこと
http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2009/11/post-bf59.html
[3]Christian Aid pide la devolución total de las tierras en el caso “Las Pavas” y la
reparación de los daños sufridos por la comunidad
http://www.censat.org/noticias/2010/8/12/Christian-Aid-pide-devolucion-de-las-tierras-en-Las-Pavas-y-reparacion-de-danos-sufridos-por-la-comunidad/
[4] Statement on Las Pavas
http://www.thebodyshop.com/_en/_ww/values-campaigns/community-trade.aspx?

補足:土地紛争の経緯(報告書より)
1)ダーボン・グループのCIテケンダマ社が参画しているコンソーシアム・エル・ラブラドールはラス・パバスの農地をエスコバル・フェルナンデスより2007年に購入。しかし出所の明らかではない土地が含まれている。
2)1993年以降放棄されていたエスコバル・フェルナンデスの土地を農民アソシエーション(ASOCAB)のメンバーは1994-1995頃から耕作していた。その後2003年以降、右派の民間武装グループに脅されて何度も土地から排除された。
3)2005年にASOCABのメンバーは放棄地における耕作実績に基づく土地入手手続きを開始。2006年に農村開発庁(INCODER)による現地調査が行われ、耕作実態が認められる。
4)その後2006年11月に民兵を引き連れた地主による排除、農民による土地再占拠、警察による排除といった事態が続くこととなった。
5)2010年にINCODERによる再調査が行われ、既に農地から排除されていた農民は、耕作実態を示すことをできるわけもなく、権利を喪失。

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