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2010/09/30

自然も森林も先住民族も売り物ではない:モラレス大統領の手紙

Carta de Evo Morales:
La naturaleza, los bosques y los pueblos indígenas no estamos en venta
http://www.servindi.org/actualidad/32804#more-32804
自然も森林も先住民族も売り物ではない。
世界の先住民族に向けて

私はREDD(*注)、あるいはREDD+.REDD++というメカニズムの設立を通じて、自然、特に森林を商品としようとする動きを深く憂慮しています。
世界中で毎日サッカースタジアムにして3万6千個分の森林が消滅しているのです。毎年1300万ヘクタールの森林が失われているのです。このペースでは今世紀の終わりには森林は消滅してしまいます。

森林は生物多様性の最も重要な源であります。もし森林破壊を続けるなら、何千という動植物が永久に失われてしまうでしょう。アクセス可能な淡水の4分の3も森林地帯から生み出されているのです。ですから森林が劣化すれば、水質も悪化してしまうのです。森林は洪水、エロージョン、自然災害を防ぐ役割も果たしています。材木やその他の林産物も生み出しています。森林はいまだ発見されていない治療薬の成分や生薬の源でもあります。森林は大気の肺でもあります。温室効果ガスの18%は森林破壊から生み出されているのです。

 我々の母なる大地における森林破壊を止めることは最も重要なことなのです。

 現在、気候変動についての交渉が続いていますが、森林の破壊と劣化を防ぐことが不可欠であることは、すべての人々が認識していることです。しかしそのために、森林を商品にしようという提案がなされています。そうした意見を進める人々は、価格と所有権を有するものだけが保護され、世話をされるという間違った議論に基づいています。
 
 そうした人たちは、森林が持つ機能、つまり二酸化炭素を吸収する能力だけに注目し、炭素市場で取引できる証書やクレジット、炭素権を発行しようというのです。これによって「北」の企業は、二酸化炭素の排出をその国での削減するか、「南」の国で生み出されたREDDクレジットの購入をするかを、経済的な利点から選ぶことができるというのです。例えば、一つの企業が一トンの二酸化炭素を削減するのに、「開発された国」では40ドルから50ドルを投資しなければならないので、「開発途上国」で10ドルから20ドルでREDD証書を購入することを選ぶだろうというのです。これでの二酸化炭素の排出を削減したと言うためにです。

 このメカニズムを通じて、先進国は二酸化炭素の排出を削減するという義務を、開発途上国に、「南」の国に移転することができるというのです。再び、「南」の国々は、「北」の国々に資金を供与することになります。「北」の企業は、「南」の森林による炭素クレジットを購入することで、膨大な資金を節減することができるのです。

 これは排出削減という約束に対する罠であるだけではなく、森林からはじまる自然の商品化に道を開くものでもあります。森林がその二酸化炭素吸収能力から価格をつけられ、クレジットや炭素権という名称で、他の商品と同様に世界中で売り買いされることになるのです。更にREDDクレジットの購入者の所有権に影響がでないことを確実にするために、様々な規制が定められ、最後は国の主権も、森林に対する先住民族の権利も奪われていくのです。 こうしてこれまではなかった自然の私有財産化という新しい時代が始まっていこうとしています。これは水に、生物多様性に広がっていくことでしょう。これらを推進者は「環境サービス」だと言っています。

 一方、私たちにとって資本主義が地球温暖化の原因であり、森林破壊、母なる大地の破壊の原因であることは明らかです。推進者たちは、「グリーンな経済」だと名付けて、自然を商品とすることで資本主義を拡大しようとしているのです。
 こうした自然の商品化の提案への支援を得るために、金融機関や政府、NGO、財団や「専門家」たち、仲介企業などは、森に生きてきた先住民族やコミュニティに対して、自然の商品化による利益の一部をちらつかせています。
 
 しかし自然も、森林も先住民族も売りに出てはいないのです。

 何世紀にもわたって、先住民族は森を守ってきました。私たちにとって、森林は物ではないのです。誰かが値段をつけたり、私物化したりできるものではないのです。私たちは森林を、炭素という物差しで測定可能なものに貶めることを受け入れることはできません。また自然林を、単一樹種のプランテーションと混同することもできません。森林は私たちの住まいなのです。植物も動物も、水も、大地も、澄んだ空気も、人間も、みなが生きている大きな家なのです。

 世界中のすべての人々が、森林破壊を防ぐために共に働くことが最も重要なことであり、これは先進国の義務でもあり、森林破壊を防ぐために経済的に貢献するということは気候債務、環境債務の返済の一部でもあります。しかし、商品化を通じてではありません。森林の保全に貢献している先住民族や地域のコミュニティ、開発途上国を支援し、資金を提供する方策はいくらでも存在するのです。

 先進国は、気候変動に取り組むよりも何十倍もの公的資金を、防衛や戦争につぎ込んでいます。金融危機の時期ですら、軍事費を維持、増大させてきたのです。コミュニティのニーズや幾人かの先住民族出身のリーダーや「専門家」の野心を利用して、先住民族を自然の商品化に巻き込もうという動きを受け入れることはできません。

 すべての森林保全のメカニズムは、先住民族の参加と権利を保障するものでなければなりません。しかしREDDにおいて先住民族の参加があったからといって、森林に値段を付け、炭素市場で売り買いすることを受け入れることはできません。

 先住民族の兄弟たちよ、私たちを混乱させないように願いたい。REDDの炭素市場メカニズムは自発的なものだと言う者がいます。売りたい人が売ればいいので、望まない人は外れていればいいと。しかし私たちは、私たちの同意に基づいて、母なる大地を売りたい人は売り、他の者は手を組んで見ているという仕組みを作り上げることを認めることはできません。

 森林を矮小化し、商品化しようというこうした見方に対して、私たち先住民族は、世界の社会運動や農民たちとともに、「母なる大地の権利と気候変動に対する民衆会議」の提案を携え闘って行かなくてはなりません。

1) 二酸化炭素吸収源としてだけではなく、森林のすべての機能と可能性を取り入れた 森林の総合的管理。また森林をプランテーションと混同しないこと。
2) 森林に対する総合的な施策における開発途上国の主権の尊重
3) 先住民族の権利に関する国連宣言、ILO169号条約他国際法に定められた先住民族の権利の全的な履行、テリトリーの権利の承認と尊重、森林保全における先住民族の知見の適用と再評価、森林利用における先住民族の参加
4) 先進諸国による開発途上国や先住民族への、森林の総合的管理のための資金供与。これは環境債務、気候債務の支払いの一部である。森林の商品化に結びつく、いかなるインセンティブや炭素市場メカニズムを設置しないこと。
5) 森やその他のものによって構成される母なる大地の権利を認めること。母なる大地との調和を再び取り戻すためには、自然に値段をつけるのではなく、人間だけが生命と再生産の権利を有するのではなく、自然そのものが生命と再生の権利を有することを認めることにある。母なる大地の存在なくしては人類は生きてはいけないのです。

 先住民族の兄弟たちよ、世界中の農民や社会運動の仲間とともに、コチャバンバの結論がカンクンで取り入れられるように活動していきましょう。私たちの先祖が何世紀にもわたって守り、伝えてきた母なる大地を尊重と先住民族の団結を維持しつつ、上記の5つの原則に基づく森林に関する活動メカニズムを進めていきましょう。


Evo Morales Ayma
Presidente del Estado Plurinacional de Bolivia

注:REDD Reducción de Emisiones por Deforestación y Degradación/Reduced Emissions from Deforestation and forest Degradation

開発途上国における森林の破壊や劣化を回避することで温室効果ガス(二酸化炭素)の排出を削減しようとすること、またはそのプロジェクト。

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コメント

掲載されてずいぶん経つのに、すぐに読まなかったことを後悔しています。もっと声を大にして、このことを叫ばなければならないですね。でも具体的な第一歩はどのようになされ得るのでしょうか。

投稿: | 2010/10/27 10:17

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