« 2010年9月 | トップページ | 2010年11月 »

2010/10/27

COP10先住民族 ニュースレター(更新中)

 COP10における先住民族関連のニュースレターです。
http://indigenousnet.blog75.fc2.com/のサイトにアップロードできないのでとりあえずここに
1号(18日)
「cop10n1.pdf」をダウンロード
2号(19日)
「cop10n2.pdf」をダウンロード
3号(20日)
「cop10n3.pdf」をダウンロード
どうにか4号がでました。(21日)
「cop10n4.pdf」をダウンロード
5号(22日)すみません。アップロード忘れていました。
「cop10n5.pdf」をダウンロード
6号(25日)
「co10.pdf」をダウンロード
7号(26日)
「COP10N7.pdf」をダウンロード
8号(27日)またまた遅くなりました。
「COP10NL8.pdf」をダウンロード
9号(28日)
「COP10NL9.pdf」をダウンロード
10号(29日) 遅くなりましたが11月1日発行です。これが最終号かと思います。
「COP10NL10.pdf」をダウンロード


詳細、最新情報はこちらへ
http://indigenousnet.blog75.fc2.com/


| | コメント (0) | トラックバック (0)

11/13,14 「いらない!APEC」横浜民衆フォーラム

「いらない!APEC」横浜民衆フォーラム実行委員会のブログで詳細確認ください。
http://susquehanna.edoblog.net/
案内文を貼り付ける時間がありません。
開発と権利のための行動センターも賛同しています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

11/14 シネミンガ コロンビアの先住民族のビデオ上映

案内の転載です。
コミュニティビデオ上映会 + オンラインによる作家とのQ&A
in 東京・パリ・ニューヨーク・ポパヤン

開催日:11月14日(日曜日)

時間 :14時~16時
会場 : 神保町ひまわり館 (神保町区民館)
東京都千代田区神田神保町2-40 (http://www.jimbocho.com/S91276.html)

参加費: 500円
  
南米コロンビアのナサ民族と恊働制作したドキュメンタリーや、ワユ民族の女性グループが制作したビデオを、東京・パリ・ニューヨーク・ポパヤン(南米コロンビア)で時差を利用して、同日上映します。インターネットを通じて、各地とコロンビアをライブで結び、制作者との質疑応答も行います。
地球の裏側で暮らす先住民族の市民フィルムメーカーと直接話してみませんか?

<上映作品>
●「小川のように続け」約19分
先住民族リーダーの殺害事件に関するドキュメンタリー
●「キンティン・ラメ - その智慧のルーツ」約35分
20世紀の先住民族運動の指導者、マニュエル・キンティン・ラメの精神性を描いた作品
● 「先住民女性が賢明に生きる為に」約15分
土地問題に直面するワユ民族の女性団体が制作。ILO(国際労働機関)条約169号の重要性を学び、活用する為にコミュニティをリードする女性たちの現状を伝えます。

<問い合わせ先>
Our Planet TV(共催・協力):03-03-3296-2720
シネミンガ・溝口尚美(主催者): naomi@cineminga.org

詳細はシネミンガのサイトにて確認ください。
http://blog.canpan.info/cineminga/

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「協議」そしてそれに基づく合意

 COP10のサイドイベントなどで「自由で事前の情報に基づく合意(FPIC)」がしばしばテーマになっています。
 自分たちの権利を守るための防衛のメカニズムとして重要だった、という話がありました。そして現在においても、とりあえず大規模開発に対抗していくための抵抗手段の一つだと思います。
 しかしその反面、FPICに関する法制度化がなされても、コミュニティ側のエンパワーというか、自己決定権の拡大につながっていないという問題点も多々指摘されました。ボリビアですら!難しいという声には少々うつむいてしまいます・・・

 やはり問題は、「協議」というものが国家によって行われるべきものである、という位置づけにあるようです。多くの先住民族運動も依拠しているILO169号条約が定めているのも国家による「協議」です。この段階で、制度が外部から押しつけられるものとなってしまうのです。

 協議に関する時間が制約されていること、定められたガイドラインに従うことを強いられ、自分たちの慣習法に基づいた手続きで行えないこと、更には政府の担当機関が、開発業者のブローカーのような存在になっているなど・・・先住民族コミュニティがこうした外部の仕組みに対応しきれず、分断を引き起こされていく一方で、政府や企業は学習を続け、より狡猾になっていく。こうして自分たちの決定のあり方とは異なる手法で「協議」が実施され、「YES」を言わせるためのメカニズムとなっていることがフィリピンの事例でも報告されました。
 
 フィリピンからの参加者は、「本来、自己決定の権利を行使し、自分たちの開発計画、そして政策を定めていくことができれば、FPICはいらないのだ」と語っていましたが、本当にその通りだと思いました。そして外部者は、コミュニティの集まりに参加して、遠慮がちに、提案させていただく、という姿勢を取るべきなのでしょう。

 グアテマラではコミュニティの総会で、鉱山開発に対するNOの声が表明されていますが、こういうあり方をさらに深化させていくことが重要だと思いました。グアテマラでは協議に関する法律に関しても、コミュニティごとに異なる仕組みを詳細に定めた法律を作るのは無理だという声を聞いたことがあります。グアテマラでどのように協議の仕組みを定めていくか、あらためて関心を持って見つめていきたいと思いました。
 開発と権利のための行動センター
 青西靖夫


参考:先住民族の権利に関する国際連合宣言
第3 条 【自己決定権】
先住民族は、自己決定の権利を有する。この権利に基づき、先住民族は、自らの政治的地位を自由に決定し、ならびにその経済的、社会的および文化的発展を自由に追求する。

第18 条 【意思決定への参加権と制度の維持】
先住民族は、自らの権利に影響を及ぼす事柄における意思決定に、自身の手続きに従い自ら選んだ代表を通じて参加し、先住民族固有の意思決定制度を維持しかつ発展させる権利を有する。
第19 条 【影響する立法・行政措置に対する合意】
国家は、先住民族に影響を及ぼし得る立法的または行政的措置を採択し実施する前に、彼/女らの自由で事前の情報に基づく合意を得るため、その代表機関を通じて、当該の先住民族と誠実に協議し協力する。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010/10/20

自然保護区と先住民族-COP10から

自然保護区(保護地域)の設定におけるカテゴリー化(国立公園などと並び、「コミュニティ管理保護区」などのカテゴリーを定めること)について、先住民族としてはどのように考えていくべきか、生物多様性に関する先住民族国際フォーラム(IIFB)の準備会議の中で、パナマのクナ民族の代表であるオネル・マサルドゥレ(Onel Masardule)さんから次のような発言がありました。

(自然保護区について)カテゴリー化については十分に検討しなくてはなりません。カテゴリー化を受け入れるということは必然的に「国家保護区システム」(注)を受け入れることとなります。しかしこのシステムは、私たち先住民族の考え方とは異なるものです。そこで2年前の締結国会議以来、私たちは保護区の新しいあり方について議論を進めてきています。先住民族は独自の保護区システムの設立、「ビオ・文化テリトリー」を進めていくべきだという声があります。単に保護という視点ではなく、統合的な視点から、生命の持続的な利用を進めていこうというものです。私たちはこの課題には取り組んでいかなくてはなりません。私たちは自分たち独自のシステムを構築していくべきなのです。
 
 大規模環境NGOは、もし彼らが私たちと一緒に活動を行いたいというのであれば、私たちのビジョンを尊重すべきです。彼らは、資金を持ち、人材を抱え、ロビーイングを進めています。またIUCN(国際自然保護連合)の総会は保護区に関して、「コミュニティ管理保護区」というカテゴリーを定めることを採択しています。しかしこれは私たちにとっての出口ではなく、私たちの期待を裏切るものでしかありません。
 私たちが、彼らが管理するカテゴリーの枠組みに入るのではなく、彼らが私たち先住民族の独自システムを尊重し、支援すべきなのです。NGOに求められているのは、私たちの取り組みに付き添っていくことであり、彼らの概念を私たちに押しつけることではないのです。
 共同管理についても議論が進められています。その地の先住民族が法的に承認されたテリトリーを有していない場合には、共同管理は、伝統的なテリトリーへの権利を回復する手段として利用できるかもしれません。

 また私たちクナ民族からみれば、「コミュニティ管理保護区」を受け入れるということは、私たちがこれまで獲得してきた成果に逆行するものです。クナ民族は、パナマ国の自然保護区国家システムの外に、私たち独自の政府によって定められた保護区を有しています。ここからみれば、「コミュニティ管理保護区」という外から定められたカテゴリーを受け入れるということは、後退でしかありません。

 自然保護区に関する議論はどうも中途半端に終わっています。しかし自然保護区の問題は今後に向けて重要な点をいくつも抱えています。気候変動会議もREDDの問題も、自然保護区、森林と深く関係しています。今後どのように取り組んでいくのか、十分に議論を深めていく必要があります。

 2010年10月15日の発言から整理したものです。16日、17日にはワーキング・グループに分かれて議論がなされていくこととなります。

注:中南米諸国では自然保護区は、国内全体をカバーする「国家保護区システム」の一部として位置づけられている。

COP10 先住民族ニュース取材班
(文責:青西靖夫)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010/10/13

なぜ我々は「責任ある農業投資原則」に反対するか

なぜ我々は「責任ある農業投資原則」に反対するか
農地改革のための世界キャンペーン
  土地調査アクション・ネットワーク
FIAN International 、Focus on the Global South 、La Via Campesina、Social Network for Justice and Human Rights (REDE SOCIAL)

Why We Oppose the Principles for Responsible Agricultural Investment (RAI)
http://viacampesina.org/en/index.php?option=com_content&view=article&id=953:why-we-oppose-the-principles-for-responsible-agricultural-investment-rai-&catid=23:agrarian-reform&Itemid=36
http://www.fian.org/resources/documents/others/why-we-oppose-the-principles-for-responsible-agricultural-investment/pdf


why%20we%20oppose%20RAI%20inJapanese.pdfwhy we oppose RAI inJapanese.pdf


 近年、新しい開発が生まれつつある、それは"地球規模での農地争奪”として知られている。この新しい開発に伴い、農地に対する大規模な投資が人権や社会的つながり、持続的な食料供給、世帯における食料確保、そして環境に対して悪影響を引き起こすことが明らかになりつつある。こうした投資の悪影響を緩和するためと言って、世界銀行と国際食糧政策研究所を筆頭として、様々な国際的な機関や諸政府は、こうした投資に対するガイドライン、行動規範、あるいは原則を提起している。2010年1月以来進められている世界銀行や国際農業開発基金(IFAD)、UNCTAD、FAOなどによる「人権と生計、資源の尊重のための責任ある農業投資原則(RAI)」は、こうした試みの最も進んだものとなっている。
 La Via Campesina, FIAN International, the Land Research and Action Network, GRAIN などによる2010年4月の共同声明文において、我々は強くRAIを拒否する姿勢を示した。なぜなら農民の土地を長期にわたって企業が簒奪を正当化しようとするものであり、これを認めることは断じてできない。

 このペーパーでは、拒否の姿勢について説明を行っていく。この7つの原則は合理的そしてまた説得力があるように見えるかもしれない。しかしそうではない。特にこれらの原則は人権侵害や国際法に反する政策に対する規制としては全く不十分である。原則は特定の政策を進めていくものだと思われるかもしれないが、そうでもない。

 諸国家は国際法を履行する責任がある。特に国連の社会権規約委員会の一般的意見書12に示されている、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」の11条、またFAOの「食料への権利のガイドライン」を履行する責任がある。そこでは人々の土地へのアクセスを保証するために農地改革を実施すること、人々が尊厳を持って生活し食料を得ることができるように、生産のために適切な手段をとることを求めている。また農村の未来の世代が必要とする土地を考慮しなければならない。(アフリカにおいては、2010年から2050年において人口は倍増すると見込まれている)こうした人々に対して土地の留保を保証することは不可欠なことなのである。

 農地争奪は、農民や遊牧民などが使ってきた土地から、今生きている人々、そして将来の人々までもを排除するものである。これは上記の国際法に定められた義務にも違反する。この事実は単なる「原則」によって救済されるものではない。また農地争奪は他にも様々な国際法への違反に結びついている。生計手段の剥奪、地域の自然資源を破壊する被持続的な農業の導入、適切な補償や再定住策を欠く土地からの強制排除、情報提供の拒否、生活に関わる政治的決定に対する参加の阻止などが引き起こされている。

 このペーパーではまずRAIイニシアティブとそしてまたRAI原則そのものの問題を、原則の一つずつについて検討していく。次に、このイニシアティブが出てきたプロセスを見直し、制度的また手続き的な問題点を検証する。

(1) 土地と資源に対する権利に関するRAI原則:既存の土地と自然資源に対する権利を認め、また尊重されること

 すべての権利保有者が明確化されるとともに、すべての形の土地権が法的に認められるということが必要な条件であろう。しかしこのことで、これらの権利が有効に保障されるということではないし、ローカルコミュニティの土地への権利が保護され、促進されるということでもない。
 第一に、そもそもこの原則は既存の土地権を、投資家に対して円滑に移行する目的でつくられたものであり、農民やコミュニティの手に、将来にわたって土地をとどめておくことを目指しているわけではない。
 第二に、「既存の土地権」という概念は、土地を持たない住民が土地にアクセスする、あるいはアクセスを回復するという権利を視野にいれていない。最も良好な農地が民間投資家に奪われつつあるという現実の中で、土地を持たない、あるいは土地をわずかしか持たない人々が土地を得て、「既存」の土地権を本質的に改善するということが妨げられてしまう。このことはRAIイニシアティブの根本的な矛盾である。土地の再配分を含んだ農地改革というのは、食料への権利を保障するための義務的な方策であるにも関わらず、こうした配分可能な土地資源を減少させ、農地改革に逆行する農地政策を促進するということは、食料への権利という人権の侵害であり、社会権規約に違反するものである。
 第三点は、急速な人口増加の中で、未来の世代に対して追加的な土地資源を確保するという予防的方策が必要とされていることである。このことは「既存の土地権」ではカバーしきれない。

 実際には、誰が土地への権利を持っているかというのは、様々な利害関係と権力関係が立ち現れる非常に政治的な問題であり、単なる技術的、行政的な問題ではない。意思決定の際に、土地権と「開発」に対してどのような解釈をとるかということは、権力的なバランスによるものである。歴史を振り返っても、常に土地権に対して、万人受けする技術的なアプローチが優先されてきたが、これは資本の利益にかなうものであり、金持ちを優遇するものであり、農民と労働者の更なる貧困化を引き起こしてきた。農民は土地を奪われ、排除され、移住を強いられてきたのである。RAIイニシアティブにおいて土地と資源への権利は技術的な課題として捉えられており、政治的な、階級的な問題には目が向けられていない。このことは女性や農民、放牧民、先住民族の権利を促進するどころか、切り崩していくこととなろう。

(2)食料安全保障に関するRAI原則:投資によって食料安全保障が危機に瀕することなく、むしろ強化されること

 食料安全保障のアセスメントは通常、国レベルの需要と供給の集計データに頼っている。こうした集計データでは、誰が食料を生産し、それがどこから来て、どのように生産されたものか、また現在誰が食料に事欠くのかは考慮されることはない。
 この結果、国内外で国際貿易向けの食料やバイオ燃料を生産する国が、海外から食料を輸入するという事態が起きるのである。食料安全保障を公的な、国レベルの集計データーで定義するということは、優越する生産・分配・消費パターンの中で社会的・環境的な問題を見過ごすこととなってしまう。大規模投資に基づく工業的農業によって純食料生産量が増加したとしても、ローカル・コミュニティの土地喪失、農民や放牧民の生活の破壊、土壌や水の破壊的使用といった受け入れがたいコストが発生するのである。食料安全保障は極めて狭い概念であり、RAIイニシアティブのように、この言葉を根本的な原則に使用するということは、地球上の在来農村、漁村、牧民のコミュニティに破滅的な結果を引き起こすことであろう。そこで我々は、適切な食料のための権利と食料主権、という言葉を用いるのである。

(3) 透明性、良好なガバナンス及び投資しやすい適切な環境に関するRAI原則:適切なガバナンスと土地へのアクセスと関連投資の過程に透明性があり、モニタリングが行われ、アカウンタビリティが確保されること。

 土地へのアクセスと関連投資のプロセスにおける透明性とモニタリングは望まれる政策である。しかしそれだけで、貧困層にとって望ましい結果が保障されるわけではない。そこで我々は常に、透明性という考え方を貧困層にとってのアカウンタビリティの原則と結びつけることを提唱している。この点がRAIイニシアティブに完全に欠けている点である。
 実際に、RAIイニシアティブ策定は、インフォーマルな土地取引や投資の不安定性や不確実性を避けるために、透明な土地入手プロセスや、良好で安定な投資環境を求める、様々な多国籍企業や国内企業の要求に応える形で進められたものである。しかし土地取引が透明になったとしても(果たして企業がセンシティブな情報を公表したいと実際に望むかどうかは非常に怪しいところであるが)、このことが即座に農民の利益につながるというわけではない。これは地球上の様々な歴史や経験が何度となく明らかにしてきたことである。透明かつ「合法的に」、幾度となく農民・漁民・牧民、そして森の民のコミュニティは土地を奪われ、自然環境と脆弱な生態系が破壊されてきたのである。

(4) 協議と参加に関するRAI原則:実質的に影響を受けるすべての人と協議し、協議から得た合意を記録し、実施すること。

 RAIイニシアティブは、協議の結果が常に投資プロジェクトの受け入れになると想定して
いるようである。これでは協議は、結果がより正統化されて見えるようにするための単なる見せかけに過ぎない。
 しかしプロジェクトによって影響を受ける人々に対する協議の権利を真摯に取り上げ、人々がプロジェクトの社会的・経済的・環境的影響について、事前に公正なアセスメントを行い、代替案についても検討する機会を持つならば、こうしたプロジェクトを実施しない方がいいという結論に達するかもしれない。しかしこの原則、そして「協議」に関する主流の理解はこうした可能性を考慮してもいないし、こうした結果を本当に受け入れることもないであろう。この点が大きな問題である。実際に、近年の大規模な農地取得に際して、モザンビークのガサ県や、ケニアなど様々な国で「協議」が行われてきた。しかしその結果として引き起こされたのは土地の簒奪であり、敵対的な編入であった。多くの国で、国内企業や多国籍企業、国内エリート、政府は、土地を狙う自分たちのために「協議」を操り、農民や漁民、牧民のコミュニティの利益と人権を損なう方向に向かわせてきたのである。
 より広範な視点から考えるならば、土地の利用可能性や生態系保全の役割、農業のあり方、土地利用の構造について、政府は未来の世代に対して法的な義務を負っていることを忘れてはならない。影響を受ける人に対する協議が行われた後であっても、こうした義務を逃れることはできないのである。

(5)責任ある農業企業投資と経済的実行可能性に関するRAI原則:プロジェクトはすべての点において実現可能であり、法を尊重し、産業のベスト・プラクティスを反映し、永続性のある共通の価値観を持てるものであること。

「経済的実行可能性」とは何なのか?世界市場において競争力を持つために、受け入れ国におけるすべての政策と戦略を外国資本に適したものとすることではないのか?この原則は、受け入れ国における政治経済に関して土地争奪が持っている意味を暗に示している。女性や小農民、牧民などすべての小規模な食料生産者が中核をなし、農業生態系に基づく耕作や牧畜が支援され、地域市場と経済が活性化されるような農業生産モデルを優先するかわりに、RAI原則は、国内外の大規模な投資家に奉仕するように政府と国家を導くための政策を正当化するものであり、破壊的な工業的農業モデルを促進するものである。しかし農業科学技術国際評価(IAASTD)はこうしたモデルは可能な選択肢ではないと明確に指摘している。食料及び気候危機の中で、こうした投資を促進することは無責任である。人権面からは、この原則は差別的であり、適切な食料への権利を実現するという国家の義務を果たすものでないと言える。

 いかに法律を守り、ベスト・プラクティスを踏襲したとしても、アグロ・インダストリーの経済的実行可能性というものが、そのプロセスにおいても、また結果的にも、プロジェクトに影響を受ける人々やコミュニティが利益の増進につながるという保障はない。事実、経済的にも成立し、それなりに法律も守っている農企業体が、貧困層やコミュニティの土地喪失を引き起こしたり、アグリ・ビジネスの中に無理矢理巻き込んでいくというケースは多々存在しているのである。経済的に成り立ちうるビジネスというのは、働く貧困層にとっての福祉を実現するということと同じではないし、そうした人々の経済的・社会的・文化的権利の実現を意味するものでもない。

(6) 社会的持続性に関する原則:投資は社会と分配に望ましいインパクトをもたらし、脆弱性を増大させないものであること。

 社会的持続性に関するアセスメントはしばしば、非常に狭い観点から、また非歴史的な観点から行われてきた。例えば、コミュニティが排除された事例で、土地取得が行われる以前、またその間の状況が調査されないままに、農業投資プロジェクトの社会的便益へのインパクトが、単に直接雇用、間接雇用によってのみ調査されるといったケースである。こうした調査は、人々が資源を奪われ、土地を追われることによって、未来の選択肢も奪われたのだ、という点についても見落としている。
 モザンビークのProcanaのようなプロジェクトの推進者たちも、プロジェクトにおける雇用の創出と、所得向上をもって、「社会的持続性」を示してきた。しかし長年の伝統であった放牧の終焉に関連しては「社会的持続性」という点からは全く議論がなされていない。また人々の資源管理と生活を尊重した上での生計の改善という可能性については調査すらなされていない。農村の貧困層の視点からは、主たる問題は彼らの権利を実現するためにどのような投資が必要かということであって、大規模な投資プロジェクトの影響を緩和するためにどうすればいいかという話ではない。


(7) 環境持続性に関するRAI原則:環境への影響を定量化し、資源の持続的利用を奨励する措置をとり、マイナスの影響は最小限に止めるか軽減する。

 「定量化」や「計量」といわれる場合に、金銭的や経済的な計算を意味することが多い。例えば、森林を伐採したり、焼き払ったりした際の環境コストというのは比較的簡単に計量されるのかもしれない。しかし農業投資プロジェクトを含むような食料・エネルギーモデル総体の環境コストを定量化しようと政策決定者が考えるか、そもそもそれが可能かどうかは定かではない。鉱業、単一作物農業、多様性の喪失、化学物質による土壌と水の汚染、長距離の食糧輸送と貯蔵、廃棄物処理など、このようなすべての環境コストを定量化しようとするだろうか。簡単に言うならば、経済及び生態系に対する政治的な観点からは、RAIの想定する土地取引は本来的に環境面からは持続不可能なものなのである。資源の持続的な利用を奨励するためには、全く異なるタイプの投資プロジェクトが検討されなければならない。


RAIの制度的問題

 このイニシアティブの手続き的また制度的な問題を検討する。

 RAIイニシアティブは大規模投資家が農業生産に対する関心を高めたことに対応したものである。RAI原則は農業投資における公共政策と受け取ることはできないし、民間農業投資に対する国家規制と見なすこともできない。それは大規模な農地取得が引き起こすネガティブな影響を緩和するための、自己規制のための政策アドバイスに過ぎない。
 民間セクターに対する自己規制という枠組みの中で、RAI原則は国内法規制、国際的人権法など、法的な拘束力に関しては言及していない。これはEITI(採掘産業の透明性イニシアティブ)やエクエーター原則、サンティアゴ原則、OECDの多国籍企業ガイドライン、また多々ある産品別や特定の取り組みにおける、企業の社会的責任という枠組みの中で検討されてきたものである。

 しかしながら、金融危機、規制緩和による様々な危機、また最近のメキシコ湾での危機など、民間セクターの自己規制が失敗してきたのは明らかであるにも関わらず、国際機関のいくつかや複数の政府は、いまだにこれだけが団体的/民間規制のあり方だと考えているのである。これは無責任な態度である。地域的にも地球的にも、我々は早急に食料品に対する金融的投機をやめさせなければならないし、実体経済一般の”金融化”にも歯止めをかけなければならない。世界の食料システムをコントロールしようとする力を押さえ込まなければならないのだ。度重なる食料危機や農業持続性、気候変動を乗り越えるためには、金融市場、食料、農業、水などの重要なセクターに関して、投資そして投資家に対する厳格な命令と執行可能な法的規制を実現しなくてはならない。

 RAIは貧困国政府の参加なしに、またこうした投資によって影響を受ける人々、女性や小農民、先住民族、漁民、牧民、農業労働者などの参加なしに、諸機関の間で進められてきたものである。RAIは多国籍機関の中で、手続きや決定、責任の所在などに関して明確なルールをもって作られたものではない。民間セクターと強い結びつきのあるテクノクラートが、ビジネスの動きにあわせつつ、イデオロギー的な信念のもとで、世界のそして人々の資源がどのように使われるべきかと決定した、市場志向の「グルーバル・ガバナンス」の賜物に過ぎないのである。
訳:開発と権利のための行動センター(青西)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010/10/08

COP10にあわせた先住民族関連のイベントの紹介です

COP10にあわせた先住民族関連のイベントの紹介です。

http://indigenousnet.blog75.fc2.com/ にも掲載されています。
上のサイトには、COP10にあわせた先住民族関連の情報がどんどんアップデートされる予定です。

1.国際先住民族フォーラム(IIFB)主催夕食会

日時:10月19日(火) 午後7時から9時
場所:朝日新聞名古屋本社1階 ダンスホール・ウィンターガーデン
(名古屋市中区栄1-3-3)
主催:国際先住民族フォーラム(International Indigenous Forum on Biodiversity)

IIFB主催で開催するレセプション(夕食会)です。
当日は、先住民族による踊りや歌の披露もある予定です。
入場料は設けない予定ですが、寄付を呼び掛けるかもしれません。

2.国際先住民族フォーラム(IIFB)サイド・イベント

サイド・イベント1「先住民族に関連する指標(INDICATORS RELEVANT FOR INDIGENOUS PEOPLES)」
日時:2010年10月20日(水) 18:15 - 19:45 
場所:名古屋国際会議場 Room 236 - Bldg 2 - 3rd Floor
主催:TEBTEBBA、国際先住民族フォーラム・指標に関する作業部会(THE IIFB WORKING GROUP ON INDICATORS)

サイド・イベント2「農業生物多様性と食の安全保障に関する先住民族の知恵(INDIGENOUS WISDOM FOR AGROBIODIVERSITY AND FOOD SECURITY」
日時:2010年10月21日(木)
場所:CENTURY HALL - Bldg 1 - 1st Floor
主催:国際先住民族フォーラム(INTERNATIONAL INDIGENOUS FORUM ON BIODIVERSITY)
*両方とも本会議場(名古屋国際会議場)での開催ですので、COP10本会議への参加登録が必要となります。


3.「先住民族・地域共同体の日」
日時:2010年10月20日(水) 9:30-21:00
会場:名古屋国際会議場 エコシステムと気候変動パビリオン
主催:国連開発計画(UNDP)、生物多様性条約会議事務局(SCBD)
*9時半のオープニングで、アイヌ民族によるお祈りの儀礼あり

5.先住民族サミットin あいち 2010
 詳細は次のサイトで。グアテマラのロサリーナ・トゥユクさんも参加される予定とのこと。
http://www.for.aichi-pu.ac.jp/tabunka/sekainosato/minzoku/
主催:愛知県立大学、WIN-AINU(世界先住民族ネットワーク=アイヌ)、朝日新聞社)


4:COP10サイドイベントから
  先住民族関連、ABS関連、ラテンアメリカ関連を抜き出しました。
  漏れもあるかもしれませんが、参考資料としてご利用ください(英語、一部西語)COP10SideIndigena%20ABS%20LA.pdfCOP10SideIndigena ABS LA.pdf

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010/10/07

グアテマラ:止められない金鉱山開発

 米州人権委員会が予防措置としてカナダのゴールド・コープ社の子会社が操業するマルリン鉱山の操業停止を求めたのは5月20日であった。しかしいまだマルリン鉱山の操業は止まってはいない。
 6月23日になってグアテマラ政府は重い腰を上げて、操業停止の手続きに入ることを宣言。しかしそこから一ヶ月以上が過ぎた8月10日になってはじめて、エネルギー・鉱業省からゴールド・コープの子会社であるモンタナ社に対して、操業停止手続きに入る旨の通告が出されているのである。[1]
 しかしマルリン鉱山の操業はいまだ停止していない。モンタナ社は通告に対して、抗告し、モンタナ社の提出した書類を検討しているということらしい。

 一方、環境省は9月23日、モンタナ社がマルリン鉱山において、鉱業廃水池から違法な排水作業を行ったとして検察に告発。この廃水作業は、省の認可なく行われたものであり、環境省はどのような廃水作業が行われたか認識していないと、環境省の環境管理局は通告。[2]
 更に、外務省を通じて、メキシコ政府に廃水が流入することを通知したという。
 この告発に対してモンタナ社は「廃水は当局のモニタリングと監視のもとで適切に行われている」と新聞広告で対抗しているとのことである。またラ・オラ紙の記事によるとモンタナ社は「環境省の告発は、技術的な調査に裏付けられていない」と反発しているという。[3]
環境団体であるCALASは、このことは虚偽の申告に当たるとして、検察の調査範囲を広げること、更に既に憲法裁判所の裁定で、完全に汚染がないことが確認されない限り廃水地からの廃水作業は認められないとされていると告発。[2]

 グアテマラの人々は5年以上にわたってマルリン鉱山の問題を告発し、抵抗してきた。地道なコミュニティでの取り組みに加え、米州人権委員会を利用し、憲法裁判所を利用し、その結果を利用しながら、一つずつ、一つずつ、マルリン鉱山の動きを封じ込めようとしている。操業停止まであと一歩である。


 この事件の教訓は、グアテマラの人々にとっては明らかであろう。鉱業開発が一度開始されれば、止めることは非常に難しいということである。どのような廃水が垂れ流されているかもわからないままに、汚染ごと鉱業開発を受け入れることを強いられるということである。コミュニティの人々にとって、鉱業開発が動き出す前に止めること、これが現時点では自分たちの生命を守る一番の道である。

国際法に基づく操業停止も実現できず、違法な廃水作業が行われても環境省が操業停止を要求できない、この状況は、少なくとも鉱業セクターに対しては、国際社会からの責任ある投資は不可能だと理解すべきであろう。今後、少なくとも日本企業が投資を行う際には、国際法に対する認識、協議の権利を含む先住民族の権利に対する認識、環境法の執行能力への認識などについて、日本及びグアテマラ国、その国民に対して明らかにするとともに、具体的な対応策を明記して、幅広い議論をまず行うことが不可欠であろう。

[1] Inició proceso administrativo de suspension de operaciones de la mina Marlin
http://pluriculturalidadjuridica.blogspot.com/2010/09/inicio-proceso-administrativo-de.html
[2]Ministro presenta acción legal contra Montana
http://www.prensalibre.com/noticias/justicia/Ministro-presenta-accion-legal-Montana_0_347365300.html
[3]Alertan a México por supuesta contaminación de mina Marlin
http://www.lahora.com.gt/notas.php?key=74282&fch=2010-10-04

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010/10/06

ペルーの117鉱区開発に対する反対の声

 既にお伝えしている、国際石油開発帝石株式会社が権益を有する、ペルーの117鉱区開発に対する反対の声です。
 今後、対応を検討していきたいと考えています。
 
1年前の声明となりますが、ペルーのORPIO(東部先住民族地域組織)、FIKAPIR(アルト・プトゥマヨ・インティ・ルナ・キチュワ先住民族連盟)、ORISPE(ペルー・セコヤ地区先住民族組織)は昨年11月7日に記者会見を開き、117鉱区における石油開発は、ILO169号条約に定められた先住民族に対する協議の権利を侵害しているとして告発。(一部抜粋整理)

 この記者会見において次のような点についての声明を発表している。
1. グエピ保護区の国立公園へのカテゴリー化と2つのコミュニティ保護区の設定を早急に進めること。
2. 自然保護区管理事務所(SERNAP)が私たちの決定よりも、保護区設定の見直しを求めるペルー・ペトロの意見を優先するすることを認めることはできない。
3. SERNAPは先住民族コミュニティの決定より、ペルー・ペトロの言い分を強硬に優先しようとしている。
4. この石油コンセッションとグエピ保護区が重複していることが明らかであるにも関わらず、自然保護区管理事務所(SERNAP)は自然保護区法の細則第115条4項に定めれた予防原則を適用していない。
5.ペルー国とペトロブラの間で2006年に結ばれた契約は私たちのコミュニティに協議の上で行われたものではなく、ILO169号条約及び2007年に採択された先住民族の権利に関する国連宣言に定められた権利を侵害するものである。

6.ペルー・ペトロとペトロブラスは不可解な態度を持って、私たちの意見を踏みにじっている。
7:エネルギー・鉱業省の環境局は、2009年8月に、ペトロブラスは委託事項説明書、環境影響評価、市民参加計画の不備により活動の実施を認められないと結論している。

 このようなことから、グエピ保護区の国立公園化とウイメキ・コミュニティ保護区、アイロパイ・コミュニティ保護区の設定を早急に要求するとともに、2006年の合意文書にあるように、予防原則の適用と、ペトロブラスとの契約取り消しを要求する。

 最後にあらためて関係当局が法律を履行し、先住民族の権利を尊重することを要求する。

PRONUNCIAMIENTO DE FIKAPIR Y OISPE CONTRA LA EMPRESA PETROLERA PETROBRAS
http://orpio-aidesep.blogspot.com/2009/12/pronunciamiento-de-fikapir-y-oispe.html

Los expositores fueron:
Edwin Vásquez Campo - ORPIO
Demesio Tangoa Guerra – FIKAPIR
Guido Sandoval Estrella – OISPE

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010/10/04

エクアドル:今回の事件に対する先住民族組織などの声

エクアドルの今回の事件に対する先住民族組織などの声

<先住民族組織の声>
 エクアドルの先住民族組織であるCONAIE、ECUARUNARI、CONFENIAE 、CONAICEの代表は次のような声明を発表している。(抜粋、整理)

1.政府は先住民族運動や労働組合など組織化されたセクターを不当なものだとして攻撃してきたが、その一方で、右派の勢力が全く弱体化していないことが明らかにされた。
2. 今日の社会的な危機は、権威主義的な性格、法律の制定において対話に向けて開かないことからも引き起こされたものである。コンセンサスをもって作られた法案が大統領によって拒否され、合意の可能性が閉ざされたケースも見てきた。
3. 鉱業開発、石油開発、アグリ・ビジネスなどの多国籍企業の活動に反対するコミュニティの動きを前に、政府は対話を進めるかわりに、サモラ・チンチペでの事件のように暴力的な弾圧で応えてきた。
4. こうした状況は保守派を利することとなっている。旧来の右派セクターや人物は、政府打倒を呼びかけ、軍・民の独裁政権を打ち立てようとするだろう。一方で、新興の右派勢力は、政権の内外から、最も反動的なセクターや新興企業家との連携をこの状況を利用して正当化するであろう。

 エクアドルの先住民族組織は、エクアドル社会、国際社会に対して、政府の社会・経済政策への拒否を表明するとともに、同じく、右派によるクーデターの試みを拒否するものである。反対に、我々は真の民主主義に基づく多民族国家の建設のために闘っていくものである。

 その上で次のように呼びかける
1. 右派の動きに対して、真の多民族国家民主主義を擁護するためにいつでも動けるように。
2. 搾取的なモデル、大規模鉱業開発、水の民営化と集権化への反対運動を深化させること。
3. 労働者の権利を擁護するために組織化されたセクターの動きに参加すること。
4. 政府に対して、右派への譲歩をやめることを要求するとともに、民衆セクターに対する権威主義的な態度を放棄し、社会的抗議を犯罪化し、リーダーを迫害することをやめることを要求する。こうした政策は右派のスペースを拡大し、不安定化を引き起こすだけである。
Llamamos a la unidad de las organizaciones sociales por una democracia plurinacional de los pueblos (2010/9/30)
http://www.conaie.org/component/content/article/21-noticas-portal/249-llamamos-a-la-unidad-de-las-organizaciones-sociales-por-una-democracia-plurinacional-de-los-pueblos


<元閣僚>

 コレア政権下の元内務大臣であり、現与党 Alianza PAISの創設者の一人でもあったグスタボ・ラレアのインタビュー記事においても、コレア大統領の対話へ向けた態度の必要性を語っています。
 更に法律が関係する社会的アクターの参加なしに、一部の専門家だけで作られるべきではないと語っています。単に、「Congreso」から「Asamblea」と名前を変えたのではなく、「Asamblea」はより開かれた民主的なフォーラムとして、すべてのセクターの討議のスペースとして考えられたものであること、この憲法の精神に立ち返らなければならない、と語っています。
 http://www.hoy.com.ec/noticias-ecuador/exceso-en-el-uso-del-veto-crea-tension-hay-que-aprender-a-dialogar-433320.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

民主主義的変革にむけたエクアドルの人々とともに

 日本の市民社会からの声明文
民主主義的変革にむけたエクアドルの人々とともに
~ 9・30キト事件を憂慮する ~

9月30日、エクアドルの首都キトで、政府の給与改革案に反対する警察官らのデモによって、高速道路や国際空港が閉鎖され、キト市内の商店や学校が閉鎖を余儀なくされました。デモ隊の一部が警察本部ビルに立てこもり、説得に訪れたコレア大統領に向けて催涙ガス弾を撃ち込みました。コレア大統領は、催涙ガスを吸うなどして警察病院で治療を受けていましたが、デモ隊が病院を包囲し、一時軟禁状態に陥りました。

大統領は現在は大統領府に復帰して対応に当たっていますが緊張は続いています。政府は非常事態を宣言し、軍に対して治安維持出動を命令しました。閣僚および国会議長、軍部などもコレア大統領支持を打ち出しています。各国政府も今回の事態に対して事件を引き起こした側を非難する声明を出し、南米12カ国で構成される南米諸国連合(UNASUR)や南北アメリカおよびカリブ海35カ国で構成される米州機構(OAS)も緊急会合を開いて対応を協議しています。

先月、日本を公式訪問したばかりのコレア大統領は、来日の際に石油開発を中止しアマゾンの生物多様性を保全するヤスニITTイニチアチブへの参加を政府関係者およびNGO関係者に呼びかけました(1)。また鉱山開発に揺れるインタグ・フニン鉱山の開発の中止を訴えるNGOに対して「心配ない。私はインタグへの鉱山開発を許可しない。」と明言しました(2)。東京の国連大学で講演した際には、「ネオリベラルの『ワシントン合意』に合意した覚えはない」と明言し、エクアドルおよび南米各地で進む変革の先頭に立つ姿勢を示しました(3)。

今回の事件で負傷したという報道のあったリカルド・パティーニョ外務大臣は、来日時に日本の平和NGOとの会合に出席し、両国間のNGOレベルでの交流に賛意を示しました(●)。訪日の最終日に広島を訪れたコレア大統領は、国家元首としてはじめて国立広島原爆死没者追悼平和祈念館を訪れ、被爆被害者の証言に耳を傾け「核兵器廃絶に向け私たちは行動を起こしている。過去から学ぶことができ、広島、長崎の悲劇を二度と経験しないよう努力する」ことを約束しました。(4)

エクアドルの人々は、これまで新自由主義、「ワシントン合意」に従ってきた政権により、石油依存社会のなかで貧困と債務に苦しめられてきました。2007年、エクアドルの人々の変革への熱意はコレア大統領を押し上げましたが、これまで不安定な情勢を余儀なくされてきたエクアドルにおいて変革を進めるには、民主的議論や社会的対立は避けられません。先住民族や地域社会の頭ごしに政策を進めようとするリーダーシップに対しては、憲法や民主的議論というブレーキも必要でしょう。(5)

しかし、今回のような事態によってエクアドル民衆の挑戦が挫折させられてはなりません。今回の事件の背景には、それまで依存してきた石油収入の減少に伴う財政逼迫があるとも伝えられています。ヤスニITTをはじめとするエクアドルの挑戦に、各国政府・NGOが答える必要性をあためて明らかにしました。

コレア大統領による不当な債務の帳消しの実施を民間レベルでサポートし、おおさか社会フォーラムに参加するために今年3月に来日した現地NGO「Jubileo 2000Red Guayaquil」のエグゼクティブコーディネーターのデルファ・マンティージャさんは、今回の事態を次のように語っています。

「人々が望む変革の動きを進めようとしていた国家の栄誉を汚すために、警察を利用しようとする政治的なクーデター勢力の歩みを止めるよう呼びかけます。変革は平和になされなければなりません。それが私たちが引き継いできたものなのです。かつての闘士であるエロイ・アルファーロが生まれたモンテクリスティではじまった変革のプロセスを止めることはできません。人々に、若者たちに、女性に、農民に、そして同胞の国々に、この変革のプロセスを妨げることしか考えていない動きを注視していくことを求めます。民主主義を連帯と勇気で織り上げていきましょう。私たちの願う民主主義のために歩みを続けましょう。」(6)

わたしたちは、エクアドル民衆の民主主義にむけた変革のプロセスをサポートするという立場から、今回の衝突を憂慮するとともに、日本社会がコレア政権による進歩的諸政策を支持することを訴えます。今後、民主主義の強化のために、コレア政権が市民社会と引き続き対話を深めることを願います。

訪日したコレア大統領と会談した菅首相は、安定的な投資環境の整備を要請するとともに、「10月に名古屋市で開催されるCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)に向けてエクアドルと緊密に協力していきたい」と述べ、コレア大統領も「COP10の成功のために協力していきたい」と返答しています。日本政府は一刻も早く今回の事件への関心を示し、コレア政権および進歩的諸政策への支持を明らかにする必要があると考えます。(7)

2010年10月1日


賛同:10月8日現在

【13団体】
NPO法人エクアドルの子どものための友人の会(SANE)
開発と権利のための行動センター
ジュビリー関西ネットワーク
ニュー・インターナショナリスト・ジャパン(NIジャパン)
ATTAC Japan(首都圏)
バイオダイバーシティ・インフォメーション・ボックス
アジア太平洋資料センター(PARC)
地球の子ども新聞
ナマケモノ倶楽部
ピースボート
ATTAC京都
ATTAC関西グループ
NGO人権・正義と平和連帯フォーラム福岡

他個人47名


(1)http://www.youtube.com/user/jnpc#p/u/0/FD1W0w-kmrg(9/6日本記者クラブ)
ヤスニITTイニチアチブの解説および市民集会のようすはこちら
http://www.newint.org/blog/japan/2010/09/24/yasuni01/(9/6NIジャパン)
(2)http://www.sloth.gr.jp/ecua/ecua_top.html(9/7ナマケモノ倶楽部)
(3)http://videoportal.unu.edu/579(9/7国連大学)
(4)http://www.peaceboat.org/english/nwps/cn/arc/100923/index.html(9/6ピースボート[英文])
(5)http://mainichi.jp/area/hiroshima/news/20100908ddlk34040628000c.html
(6)http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2010/10/post-77ad.html
コレア政権の対話姿勢に関する問題点は、今回の事件に関してインタビューに答えているアルベルト・アコスタ(元国会議長、ヤスニITT提案の考案者の一人)も指摘している。
http://www.mediacoop.ca/story/arrogance-regime-starting-fracture-all-coup-attempts-must-be-rejected/4757(英語)
http://www.publico.es/internacional/339549/-mi-pais-sufre-una-deriva-autoritaria(スペイン語)
(7)http://www.jubileo2000.ec/latest/a-respaldar-la-democracia-a-defender-la-paz.html (9/30  Jubileo 2000 Red Guayaquil)
(8)http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/s_kan/ecuador_1009.html(9/6総理官邸) 日本政府は外務報道官談話を10月1日に発表したが、呼びかけ文は1日現在のままとした。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/22/dga_1001.html(10/1外務省)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2010年9月 | トップページ | 2010年11月 »