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2010/11/08

土地利用者の権利を守ること

 食料への権利に関する国連特別報告者、オリビエ・ド・シューテル氏(オリビエ・デ・シュッター)の国連総会に向けての報告書にて、土地への圧力が食料への権利を脅かしていることを伝えている。

 この報告書の重要な論点の一つは、土地所有のあり方に関するものである。個人的土地所有権の確立が土地への投資を促進し、生産性を高めるとされてきた考え方に疑問を呈し、セーフティ・ネットとしての土地の役割、慣習法に基づく土地保有を重視している。


 サマリー
 土地へのアクセス及びその土地保有の保障は食料への権利を享受するために極めて重要である。この報告では、高まる土地への需要を前に、三つのグループ、先住民族、小農民及び特別なグループとして牧畜民、遊牧民及び漁民に対して、どのような影響が出ているかを検討する。人権として、土地への権利の承認を進めることを通じて、諸国家や国際社会が食料への権利の行使をどのようにより尊重し、擁護し、履行できるかを検討する。
 この報告書では、土地保有の保障が非常に重要であることは間違いないものの、個人的土地所有地の確定及び市場での取引が、そのためにふさわしい方向であるとは考えてはいない。土地保有に関する慣習法的システムの強化、および土地保有に関する法律の強化によって、土地利用者をより効果的に保護することができるであろう。数十年にわたる農地改革の取り組みの中から、食料への権利の実現には土地の再配分が重要であることも強調している。また土地への権利を攪乱し、土地の集中を引き起こし、土地からの排除を引き起こすのではない、異なる開発モデルが優先されるべきである。


第3章 土地利用者の保護

B 土地を耕作する小農民 の部分の一部抜粋

16.土地保有への保障を高めることが、小農民の土地への投資意欲を促進するとされ、土地を担保として利用することで融資のコストを削減することができるとされてきた。また植林や、より責任ある土壌や水利用によって、より持続的な農業を促すとされてきた。しかし本来の問題は、土地保有への保障が改善されるべきかどうかではなく、どのように、という点にある。古典的なアプローチは、個人的土地所有権の確立と土地登記簿の整備に基づき、これによって土地に関する取引を容易かつ安全に行うことができようになるというものであった。このアプローチにおいては、土地保有の保障というのは、市場への統合を促進するための手段と見なされており、土地所有権が法的に認められることで、土地を譲渡することも抵当に入れることもできるようになり、そこで離農することもできれば、土地への必要な投資資金を得ることもできるようになる。1970年代後半から、80年代にかけて、また近年ではエルナンド・デ・ソトの著作の影響を受けて、国際的な金融機関は、構造調整政策の一環として土地登記の整備と土地所有権の確定手続きを進めてきた。これによって良好な土地市場が、土地の有効な配分を実現し、経済成長が促進されると期待していたのである。更にこのことは、農村における貧困と食料安全保障の不備に取り組むための鍵になると考えられていた。
 
17. しかしながら、土地所有権に関する西洋的な考え方を移転する取り組みは、数多くの問題を引き起こすこととなった。土地所有権確定手続きは、透明性を保ち、適切に監視されない限り、腐敗した官僚と共謀する、地域の有力者や海外の投資家の手に握りこまれてしまうのである。更に、こうした手続きは、土地利用者の権利ではなく、形式的な所有者の権利の承認に基づくことで、不平等な土地分配を固定化し、結果的に農地改革に逆行するものとなる。こうした状況は、特に植民地期の不平等な農業構造が残され、ごくわずかの土地エリートが大半の可耕地を所有するような国で顕著である。またこうした手続きは男性だけを優遇する危険性もある。土地保有への保障を改善する目的を持ついかなるプロジェクトにおいても、現存の不均衡を正すことを探らなくてはならない。そうした例としてはカンボジアにおける土地管理プロジェクトが知られている。

18. 個人による土地所有権確定は、コミュニティによる土地所有のような土地保有に関する慣習的な権利と対立するような場合には、紛争の火種となり、法的な不確実性を高めることとなる。土地の市場取引と結びついた個人的土地所有権は、コミュニティの土地やコミュニティが所有する資源に関する慣習的な保有形態の承認とは矛盾し、特に土地を集約的に利用しないグループや継続的に利用しないグループを不利な立場に置くこととなる。

19. 最後に、土地所有権に関する市場の設置も、望まない結果を引き起こすこととなる。こうした市場は、より効率的な利用者に土地を割り当てることになるとされているが、これは農業から十分な利益をあげることができない農村居住者に、農業から退出する道を与えるものとなる。世界銀行によると「確実で、揺らぎのない土地所有権は、市場において、より生産性の高い利用や利用者への土地移転を可能とする」と記している。しかし、生産者に対して適切な支援策が講じられない場合に、土地所有権確定が農業生産性に引き起こす影響についてははっきりしない点もある。土地取引で、土地がより有効な土地利用者に渡るのではなく、単に資本へのアクセスがあり、土地購買力が大きな者の手に渡ることも多いのである。事実、土地所有権市場の設置によって、土地が投機的な資本の手に渡り、生産から除外され、生産性が低下し、農村貧困層に土地なし農民が増加するということも引き起こされている。特に貧しい農民たちは、土地を売るように強いられ、その後手の届かない価格によって市場からは排除されてしまう。特に、不作などの影響で債務を負った場合には顕著である。つまりその他の政策と切り離されてしまうと、土地所有権確定手続きは、非生産的な効果を持ち、貧困層の脆弱性を増すこととなる。実際に、個人に対する土地所有権確定によって、土地が資本に転換することで、貧困削減に貢献することができるという考えは、いくつかの仮定に基づいている。土地所有権が担保となり、担保によって、融資が得られ、それが収入をもたらすという仮定である。しかし貧困層、土地が重要かつ唯一の社会的セーフティ・ネットとなっている人々は、融資を得るために自分の土地を担保に入れることを躊躇するものである。また土地所有権を確定することが、民間金融機関からの融資機会を大きく増加させるというのも約束された話ではない。

20. 貧困層にとって、個人的な土地所有権確定よりも、土地保有が保障されることの方が重要である。収入が低く、社会保障制度が欠如しているような場合には、農村部の貧困層にとって、土地が社会的なセーフティ・ネットとしての役割を果たし、基本的な生計手段を提供しているのである。言い換えるならば、いくつかの国での経験が明らかにしているように、土地保有の保障と土地権の承認が大きな要求に合致しているのに、同じことを個人への土地所有権確定と土地譲渡性についていうことはできないのである。反対に、土地売却を制限することで、土地を売るようにという圧力から農民を守ることができるのであり、共有地に関する利用権や、土地管理における共同体的な形式を保護することができるのである。完全な所有権のかわりに、使用権を承認する形で土地保有を保障するために、地方の土地権の記録、あるいは少なくとも土地取引を記録するための、安価でアクセスしやすい手法の利用についての経験が増えつつある。ベニンでは「 Plan foncier rural」が実施され、ブルキナ・ファソでも試されている。エチオピアでは一ドルの登録料で証明書が発給されている。マダカスカルでも法2005-19によって分権化された土地権管理が進められている。

21. 土地保有の保障に関して二つの相異なる考え方が存在している。一つは土地所有権確定に基づく土地市場の促進であり、もう一つは、生計手段を安定させるために、関係するグループの権利を拡大しようという方向である。

22-23 略

24 貧困層の法的なエンパワーメントには次の点を含めなければならない。
(a)土地からの排除に対する保護(b)公的に承認されている権利を有効に守るための手段の提供(法的支援、基本的な法的研修、弁護士補助員)(c)土地利用に関して、土地利用者の支援(d) 汚職撲滅を通じて、土地管理機関の能力強化。個人的土地所有権確定計画は、慣習に基づく利用者の権利が成文化された上で組み合わされ、また土地市場が土地集中に結びつかないようにする条件が定められている時のみ勧められるべきであること。慣習的な土地保有権を認めること。但し、これらのシステムについては詳細に分析し、必要な場合には、女性の権利、共有地の依存する利用者の利用の権利、コミュニティの最も脆弱なグループの権利に配慮するように改編されるべきである。



報告書は次のサイトからダウンロードできます。
http://www.srfood.org/index.php/en/component/content/article/1-latest-news/984-access-to-land-and-the-right-to-food

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