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2011/09/27

ボリビア:(更新)TIPNIS 開発と先住民族

<道路建設停止>
9/27 (10:13)現地26日夜、モラレス大統領は、問題となっていたビジャ・トゥナリとサン・イグナシオ・モホス間の道路建設の停止を宣言。ベニ県とコチャバンバ県を中心とした国民的な議論を待つこととなった。
 またモラレス大統領は先住民族行進に対して弾圧を命じたことはないと弁明、日曜日の弾圧またチョケワンカ外務大臣の一時拘束も含め、国際機関や人権組織などによるハイレベル調査委員会を設置するとのことである。
<防衛大臣辞任>
9/27 内務大臣は介入は、先住民族行進のグループと行進に反対していたヤクモの住民との衝突を避けるためであったと弁明。(ABI)
 一方、日曜日に拘束された行進参加者はルレナバケで住民によって解放される。またベニ県でストライキが行われるということであり、サンタ・クルス県でもデモが行われたようである。(amazonia boliviana, La Razon)
チャコン防衛大臣は今回の事件に反発して辞任。「対話の枠組みの中で、人権を尊重し、非暴力的に、母なる大地を守るためのオータナティブがあったにもかかわらず、今回政府がとった行進への介入という方法は支持できないし、それを守ることも正当化することもできない。今回のやり方は、ボリビアの人々が取り組んできた変革プロセスを攻撃しようとする右派を孤立させるどころか、この第8回行進の中での右派の画策を強化するものでしかない」(Erbol)

<先住民族行進を弾圧>

9/26 25日日曜日午後、先住民族行進に対して、500人あまりの警察隊が突如介入。催涙ガスなどを使用し、多数を逮捕。サン・ボルハを経由して、出身地に移送する予定であったとのことであるが、サン・ボルハの住民が警察の介入に抗議して、道路を封鎖して、サン・ボルハには入れない状況とのこと。けが人など詳細は不明(Erbol, Amazonia boliviana,La Razonなど)
 エボ・モラレス大統領は日曜日、夜にラパスの大統領官邸にて、先住民族行進のリーダーとの会談を呼びかけたばかりであった。
 また同日、TIPNISの16名ほどのリーダーと集まり、ベニ県とコチャバンバ県で、道路建設に関する住民投票の実施を表明。モラレス大統領は、TIPNISのいくつかの地域における違法入植者の排除についての法律を定めること、二つの県で、道路建設の是非を問う住民投票を行い、「賛成となれば、より実現的で、より短く、確実な道路のための調査をしなければならない」と語っている。TIPNISのリーダーは道路建設を認めるかわりに、入植を避けるための法律を求めていたという。
 この集まりにおいてモラレス大統領は「孤立した二つの県を結びつけることが必要であり、道路建設で、開発や教育、保健をTIPNISの人々にもたらさなければならない」、「道路建設に反対する行進は政治的なものであり、先住民族に経済的・社会的な改善など必要ないと思っている人々に影響されているのだ」と語っている。(ABI) 
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 状況は非常に混沌としてきた。ボリビア国内で、先住民族による権利要求の正統的な社会闘争と見なされてきた「先住民族行進」を警察力で弾圧したことに強い反発が広がることは間違いないであろう。
 更に、先住民族の求める「協議」に対して、2県における道路建設の是非を問う住民投票の実施を呼びかけるというのも、先住民族が「協議」を求めてきた運動の成果を踏みにじるものでしかない。
 協議よりも更に先を、先住民族自治に向けて前進してきていたと思われたボリビアで、先住民族運動は厳しい状況に置かれている。
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<チョケワンカ外務大臣「拘束」>
9/25 24日土曜日、交渉に臨んだチョケワンカ外務大臣他が、意志に反して数時間行進に同行させられ、その間に警察の封鎖を超えて前進するという事件が起きた。一部では「誘拐」「人質」といった報道もなされたようであるが、とりあえず解放され、ラパスに帰還。チョケワンカ外務大臣は改めて対話を継続する意向を表明。すべての当事者が対話を妨げるような動きをやめること、先住民族行進側にも交渉の意志を示すことを求めた。(ABI他)
 デモに合流したAlejandro Almaraz元副土地大臣などが、平和的なデモをゆがめ、政治的に利用しているというチャベス内閣調整副大臣の批判も存在している。注:http://www.laprensa.com.bo/diario/actualidad/bolivia/20110924/las-naciones-unidas-expreso-su-preocupacion-por-la-ausencia-de-acuerdos_7386_12554.html

9/24 深刻な衝突が懸念される中で、ボリビア国内では、先住民族行進を支持する動きが広がっている。政府はチョケワンカ外務大臣を筆頭とする委員会を立ち上げ、再交渉を始める方向である。 また先住民族行進を支持する人々がラパスからユクモに向かった。モラレス政権下の元副土地大臣や元大使の他、コチャバンバの「水戦争」における中心的なリーダーなども参加している。ボリビア労働者センター(COB)も先住民族行進を支持することを打ち出した。

政府は計画の見直しを含めた真摯な対話を行うことが求められている。


9/22 ベニ県とコチャバンバ県の間に位置するイシボロ・セクレ先住民族テリトリー自然保護区(Territorio Indígena y Parque Nacional Isiboro Secure, TIPNIS)を分断する道路建設に反対して、首都ラ・パスを目指して8月15日に開始された第八回先住民族行進は、政府との交渉で一時滞留していたものの、行進を再開。
 21日現在、行進を踏みとどまらせようとする警官隊と対峙しているとのこと
 その先に、道路建設に前向きで、モラレス大統領支持派と考えられる入植農民のグループがこの行進に反対しているということで、衝突を避けるために警察が行進を留まらせているという状況のようである。
 La marcha indígena fue frenada por la Policía
  http://www.cejis.org/node/359

だいぶ遅くなってしまったのですが、これから少しずつ、背景情報などを書き込んでいきます。
 青西

 1990年に繰り広げられた東部低地の先住民族による「テリトリーと尊厳のための行進」の成果の一つが、このTIPNISの先住民族テリトリーとしての法的認可であった。1965年から既に自然保護区として指定されていた地域であったが、そこが先住民族テリトリーとして認められたのである。
 
コチャバンバ県とベニ県の間に位置するTIPNISは、ベニ県の低湿地からユンガスと呼ばれる、高地に向かう傾斜地も含む変化に富んだ生態系を含む土地であり、モホ、ユラカレ、チマンといった先住民族が居住している。またこのTIPNISの南部には高地からの移民が居住する地域も存在している。
 そのテリトリーを分断する道路が建設されようとしているのである。

 国連総会に参加のために不在のモラレス大統領に代わり、大統領代理を務めるアルバロ・ガルシア・リネラはTIPNISの道路計画について「孤立しているために憲法で定められている権利を十全に享受できていないTIPNISを開発に取り込むこと」がこの計画の社会的な理由であると語っている。「TIPNISには一年の6ヶ月しか航行可能な河川がなく、それ以外の期間は徒歩の移動しかできず、未来の世代の教育にも困難を引き起こす」、更に「30%のアマゾン地域は高地やバジェ地方と切り離されており、それらを結びつけるのは国家の責務である」、「(アマゾン地域の)ベニ県は国内総生産の2.5%を占めるに過ぎず、パンド県は1%のみである・・・道路によってコチャバンバとベニ、ラパスを結びつけることができれば、ベニ県ヤパンド県はその開発の可能性が開けるであろうし、地域の格差がなくなり、開発に寄与することであろう」と言う。(2011/9/20)[1]
[1] Vinculación vial tiene fines estratégicos que integrarán y promoverán desarrollo http://www.presidencia.gob.bo/noticia2.php?cod=674

 この行進にはTIPNISの先住民族の他に、低地の先住民族組織の連合体であるCIDOBやグアラニ民族組織また高地の先住民族を中心とする CONAMAQなども参加している。先住民族諸組織は、協議への権利、テリトリーへの権利、自治の権利を求めているが、今回の行進に際して、その要求を16点に整理されている。[2]
1. TIPNISに影響する Villa Tunari-San Ignacio de Moxos間の道路建設の即時中止、関係する調査の中止。
2. Aguarbe自然保護区における炭化水素関連事業の中止(注:グアラニ民族居住地区)
3. 新しい農業法制における先住民族テリトリーの尊重
4. 先住民族テリトリーにおける温室効果ガス削減に対する代償を先住民族が受け取る権利を保障すること。
5. 先住民族に関連する法案については、先住民族に事前に協議し、同意を持って制定すること。
6. 東部地域の生産開発関連機関の分権化と先住民族の視点を開発計画に取り入れていくこと。
7. 先住民族自治を進めるための、資金を供給すること
8. 森林法制定に関する先住民族の参加
9. 先住民族の要求を取り入れた、自然保護区に関する特別法の制定
10. ボリビア先住民族大学の低地校のための資金供与
11. 皆保険制度に先住民族を的確に包合すること。
12. 先住民族テリトリーを、ムニシピオから区分した形での、人口・住居センサスを早急に実施すること
13. 先住民族に対する住居政策の実施
14. ピルコマヤ川の保全と利用に関する政策の実施
15. 先住民族に対する情報へのアクセスの保障と、コミュニティ手段の確保
16. 2010年5月のグアラニ先住民族会議との合意の履行

[2]Respuesta indigena al gobierno.pdf(要求、政府の回答、先住民族側の回答を含む)
http://plataformaenergetica.org/system/files/respuesta%20indigena%20al%20gobierno.pdf
Indígenas del Tipnis presentan demanda de 16 puntos al gobierno
http://www.hoybolivia.com/Noticia.php?IdNoticia=52007

しかしこの要請書に対して、モラレス大統領は「これはリーダーだけで書かれたもので、組織を構成する人々(BASE)は知りもしないだろう、NGOやMASへの恨みを持つものや反対派が書いたのだ」、「(この道路建設と)関係のない要求がいくつも含まれていると」反発していた。(2011/9/12)[3]

[3]Cuando hay marchas con demandas que beneficien a Bolivia siempre hay soluciones
http://www.presidencia.gob.bo/noticia2.php?cod=665

 政府はTIPNISにおける道路開発に関して、「協議を行う」と回答してきているが、先住民族組織は、これまでの計画をすべて取り消して、「事前」協議を行うことを求めている。またベニ県とコチャバンバ県を結ぶ道路に反対しているわけでもなく、TIPNISに影響しない形での道路を計画するように政府に要求している。[2]


  背景
<石油開発>
エクアドルの元制憲議会議長 アルベルト・アコスタ氏は、今回のTIPNISの動きについて、モラレス大統領に憂慮の念を伝える文書を公開している。[4]その中で「この地域に隣接するチスパニやリオ・オンドにおける炭化水素開発のコンセッションが多国籍企業に与えられている中で、この命のよりどころを横切る道路ができることを、そしてそれが先住民族のテリトリーにおける石油開発を始めるための道となるであろう」という懸念を伝えている。 
[4]Carta a Evo Morales por lo que está sucediendo en el Territorio Indígena y Parque Isiboro Sécure http://rebelion.org/noticia.php?id=135444

8月11日のラ・ラソン紙はTIPNISにおける石油の存在についてのグティエレス大臣の記者会見の記事を掲載している。これによると、TIPNISにおいては、既に飛行機を利用しての探査が行われているとのことである。TIPNISの先住民族リーダーは今回の道路建設が石油開発に道を開くものだという懸念を表明している。[5]
 



図は[5」の記事より
[5]El Gobierno dice que en el TIPNIS habría petróleo(2011/8/11)
http://www.la-razon.com/version.php?ArticleId=135455&EditionId=2618
Audio: Habla el Ministro Guitierrez sobre las áreas petroleras en el TIPNIS (2011/8/10)
http://www.hidrocarburosbolivia.com/nuestro-contenido/audio-y-video/44748-audio-habla-el-ministro-guitierrez-sobre-las-areas-petroleras-en-el-tipnis.html 

<移民>
 ビジャ・トゥナリとサンイグナシオ・モホ間の道路建設に関わる社会的・環境的コストという報告[6]はこの地域に対する高地からの移民の問題について言及している。この地域には70年代から移民が増加するとともに、麻薬密売人、石油開発業者、森林伐採業者、密猟者なども流入してきたという。
 入植者による農地開発を前に、1992年にはTIPNISの代表と、入植者の代表としてエボ・モラレスが領域決定の交渉を行ったという経緯もある。その後も入植地とTIPNISの土地の境界を巡る紛争と協議は続き、2008年に先住民族と入植者の間で境界画定が合意されたという。そして同じ年、モラレス大統領によって、TIPNISを分断する道路建設が決定された。
 このような動きの中で1990年に123万ヘクタールあるとされたTIPNISは2009年には109万ヘクタールのテリトリーへと縮小したのである。TIPNISの先住民族の代表は、道路が建設されたら自分たちの領域が守られるのか、という懸念を有している。

今回の低地先住民族によるテリトリーを守ろうとする動きの背景には、先住民族の中での、開発のあり方や土地利用に対する考え方の違いも存在しているようである。また要求項目3に関連する農地分配プロセスにおける先住民族テリトリーの保全もこうした点と関連していると思われる。

[6]Costos sociales y ambientales de la Carretera Villa Tunari - San Igna­cio de Moxos
http://www.fobomade.org.bo/art-1166

地図上のピンクの部分が入植者の居住時地域である。
Atlas Territorios Indigenas en Bolivia(2000)より

<IIRSA>
 南米地域のインフラ統合を目指すイニシアティブ:IIRSAは南米諸国を結びつけるための投資を積極的に進めている。ボリビアではアマゾン地域における道路建設などを通じて、ブラジルそしてペルーへのアクセスの改善を進めようとしている。[3]


http://www.geosur.info/geosur/iirsa/pdf/es/grup_pbb.pdf
今回問題となっているサン・イグナシオからビジャ・トゥナリを結ぶ道路計画は(オレンジの枠内のSan Borjasの東側より、南のCochabambaへ向かう道路となる)、IIRSAのサイトでは見つけられず、厳密にはIIRSAの一環であるとは言えないようであるが、インフラ統合を進め、経済開発を進めようという方向では一致したものである。この道路計画は90年代より存在し、モラレス政権下でも、国内的な優先事業と位置づけてきたのである。そして2008年にブラジル系企業のOASが落札。資金の8割はブラジル国立経済社会開発銀行(BNDSES)が貸し付けている。しかし上記 [5]の報告によるとOAS社は、モラレス政権下で行われた入札で重要な道路建設プロジェクトを落札してきているという。しかし同時に契約に対してはいくつもの疑念も投げかけられているとのことである。
 
9/24  追記
道路建設プロセス及びTIPNISの歴史・現状についてはCronología del proyecto carretero Villa Tunari San Ignacio de Moxos
http://marcha.ftierra.org/index.php?option=com_content&view=article&id=59:rair&catid=37:doc

及びこのサイトよりダウンロードできるEstudio de caso Nº 2
tIPNIS, la coca y una carretera acechan a la Loma Santa:territorio indigena en Cochabamba y Beniが参考になる

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2011/09/25

土地収奪に反対するダカール宣言への署名が求められています。(10月7日 締め切り)

10月に開催される世界食料安全保障委員会の会議を前に、今年2月に公表され
たダカール宣言への支持が求められています。

これは日本政府などが進める「責任ある農業投資原則:RAI原則」が不十分で
あり、これを拒否すること、また現在べっこに進められている、「土地に関す
る権利及び漁業、森林の責任あるガバナンスのための自発的ガイドライン」の
制定を進めようとする動きの一環です。
http://www.dakarappeal.org

ダカール宣言の訳はこちら
http://landgrab-japan.blogspot.com/2011/03/blog-post_4646.html

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2011/09/16

ペルー:先住民族の事前協議への権利法

9月6日に公布された「先住民族が事前協議を受ける権利に関する法律」の全訳(仮訳)です。非常に興味深い法律ですので、全文訳しました。
今後、この法律がどのように実施されていくのか、この協議が本当に真摯に行われていくならば、社会は変わっていくと思います。

日本でどのように原発が推進されてきたのかも振り返りつつ読むと、また異なる味わい方があるかと思います。

訳については、適宜見直しをしたいと思いますが、修正意見などありましたら是非教えてください。

青西

 第1章:全般的見解

第1条 法律の目的
この法律は、先住民族に直接影響を与える法的・行政的措置に関する、先住民族の協議への権利の内容、原則、手続きについて定めたものである。これはペルー国家の法令26253によって批准されたILO169号条約に定められた義務に従って解釈されるものである。

第2条 協議への権利
 生存、文化的アイデンティティー、生活の質あるいは開発に関する集団的権利に直接影響を及ぼすような、法的あるいは行政的措置について、先住民族は事前に協議をうける権利を有する。またこれらの権利に影響を及ぼすような国家的、地域的な開発計画・プログラム・プロジェクトに関しても協議が実施されるものである。

 この法で言及する協議は、国家によってのみ、義務として行われるものである。

第3条 協議の目的
 協議は、国家の決定プロセスへの参加と先住民族の集団的権利を尊重した手段を保障する通文化的対話を通じて、国家と先住民族が、先住民族に直接影響を与えうる法的・行政的措置に関して合意もしくは同意に達する目的で行うものである。

第4条 原則
協議への権利に関する中心的な原則は次ぎのものである
a) 機会:協議のプロセスは、国家機関によって法的・行政的措置が採択される前に実施されるものである。
b) 通文化:協議のプロセスは、文化間に存在する差違を認め、尊重し、適応しながら、展開されるものであり、またそれはそれぞれの文化の承認と評価に貢献するものである。
c) 誠実:協議のプロセスにおいて、国家機関は、信頼を醸成し、協力し、相互の尊重の上で、先住民族の立場を分析し、その価値を認めるものである。国家と先住民族組織・機関の代表者は、誠実に振る舞うという義務を有し、すべての党派的な勧誘や非民主主義的な行為は禁止されるものである。
d)柔軟性:協議は、採択を求める法的・行政的措置のタイプにふさわしい手続きを通じて行われなければならず、また当該先住民族の特別の状況や特徴を考慮するものである。
e)正当な期間:協議プロセスは、先住民族の機関や組織が、協議の対象となっている法的・行政的措置について、知り、検討し、具体的な提案を行うために、十分な期間を考慮して行われるものである。
f)強要しない、条件をつけない:協議プロセスにおける先住民族の参加には、いかなる強要や条件付けもあってはならない。
g)適切な情報:先住民族は、国家機関から、協議の対象となる法的・行政的措置について、十分な情報を受けた上で、その見解を表明するために必要となる、すべての情報を受け取る権利を有する。国家は協議プロセスの開始から、十分前もって、こうした情報を提供する義務を有する。

 第2章:協議を受ける先住民族
第5条 協議を受ける権利主体
協議を受ける権利の有資格者は、その集団的権利が法的・行政的措置によって直接影響を受ける先住民族である。

第6条 先住民族の参加形式
協議を受ける先住民族は、その伝統的様式や慣習に基づいて選ばれた先住民族の制度や組織を通じて、協議のプロセスに参加する。

第7条 先住民族としての確認基準
集団的主体としての先住民族としての確認のために、次の客観的・主観的基準を考慮する
客観的基準は以下のものである。
a) 国土内の先住民族の直接の子孫
b) 生活様式と、伝統的に利用し、占有してきた領域との精神的、歴史的結びつき
c) 独自の社会制度と慣習
d) 国内の他のセクターの人々と異なる文化様式と生活様式

主観的基準は、先住民族としてのアイデンティティーを有する集団としての意識と関わるものである。

Las comunidad campesinas o andinas y las comunidades nativas o pueblos amazonicos はこの条項に示された基準に基づき、先住民族として認めるものである。
先住民族としての呼称は、その本質や集団的権利を変質させるものではない。


第3章 協議プロセスの段階

第8条 協議プロセスの段階
法的・行政的措置を進める国家機関は協議プロセスにおいて少なくとも次の段階を遂行しなければならない。
a) 協議の対象となる法的・行政的措置の確認
b) 協議を受けるべき先住民族の確認
c) 法的・行政的措置に関する広報
d) 法的・行政的措置に関する情報
e) 法的・行政的措置によって直接影響を受ける先住民族組織による内部的な評価
f) 国家及び先住民族の代表間による対話プロセス
g) 決定

第9条 協議対象となる措置の確認
国家機関は、その責任において、先住民族の集団的権利に対して直接関係する法的・行政的措置の提案を確認しなければならず、集団的権利に直接影響すると判断された際には、その措置に関する事前協議を実施するものである。

先住民族の制度、組織の代表は、直接影響すると考えられる特定の措置に対して、協議プロセスの適用を求めることができる。その場合には、それらの法的・行政的措置の推進機関であり協議の実施責任機関に相応する要請書を提出しなければならず、その国家機関は要請の根拠を評価しなければならない。

国家機関が行政府に所属し、先住民族の制度や組織が提出した要請書を却下した場合には、行政府の先住民族に関する専門的技術的機関に対して異議申し立てを行うことができる。この機関への行政的対応で解決されない場合は、相応する司法当局に訴えることができる。

第10条 協議を受けるべき先住民族の確認
協議を受けるべき先住民族の確認は、提案されている措置の内容、先住民族への影響レベル、その措置の関係する範囲に基づき、法的・行政的措置を推進する機関によって行われなければならない。

第11条 法的・行政的措置の広報
法的・行政的措置を推進する国家機関は、協議を受けるであろう先住民族の代表的組織に対して、居住する地理条件や環境などを考慮の上で、文化的に適切な方法と手続きをもって法的・行政的措置について知らせなければならない。

第12条 法的・行政的措置についての情報
国家機関は、先住民族とその代表に対して、協議プロセスの当初より、十分前もって、法的・行政的措置の動機、関わり、影響、結果について情報を提供しなければならない。

第13条 先住民族組織内部での評価
先住民族組織は、その法的・行政的措置による影響とその広がり、その内容と集団的権利に及ぼす影響について分析する、十分な時間を持たなければならない。

第14条 通文化的対話
法的・行政的措置の理由、先住民族の集団的権利の行使に関して引き起こしうる結果、またそれに対する助言や勧告について、通文化的対話が行われ、それらはこの協議プロセスを進める責任を有する官僚や公的機関に知らされなければならない。

この対話プロセスで表明された意見は、協議プロセスの実施におけるすべての行為と出来事を含む、協議の議事録に残されなければならない。

第15条 決定
法的・行政的措置の採択に関する最終決定は、相応する国家機関の役割である。この決定は、対話プロセスにおける先住民族の見方や助言や勧告を十分に評価し、またその措置の採択が、ペルー国が批准する条約に基づいて憲法において認められている先住民族組織の集団的権利に関して引き起こす影響の分析に基づく、十分な理由を持つものでなければならない。

協議プロセスの結果としての、国家と先住民族の合意は双方に義務的な性格を有するものである。合意に至ることができない場合には、国家機関は、先住民族の集団的権利を保障するために必要とされるすべての手段を講じる責任がある。

協議プロセスの結果としての合意は、行政機関、司法機関の本庁で要求することができる。

第16条 言語
協議の実施に際して、先住民族の言語の多様性、特に先住民族の大半が公用語を話さない地域においては、それを考慮するものである。そのために、協議プロセスにおいては、協議の対象となるテーマについて十分な研修を受けた通訳の支援を受けなければならない。こうした通訳は、先住民族に関する専門的技術機関に登録されていなければならない。

第4章 協議プロセスにおける国家機関の義務

第17条 構成する機関
先住民族の権利に直接影響する法的・行政的措置を執る国家機関が、当法に示される段階に沿って、事前協議プロセスの実施を構成する機関となる。

第18条 協議のための資源
先住民族の有効な参加を保証するために協議プロセスにおいて必要とされる資源を国家機関は保障しなければならない。

第19条 先住民族に関する専門的技術機関の機能
協議プロセスに関する、行政府に所属する先住民族に関する専門的技術機関の役割は以下のものである。
a) 協議への権利の履行に関する国家政策を、具体化し、結びつけ、また調整すること
b) 国家機関及び先住民族に対して技術的支援や事前の研修を行い、またそれぞれのプロセスで生じる疑問に対応すること
c) 先住民族の制度や組織の登録を維持し、ある法的・行政的措置に関して協議の対象なるべきものを確認すること。
d) その責任にある機関による法的・行政的措置の計画への評価、協議の範囲、協議を受けるべき先住民族の決定について、職務上の見解、あるいは協議を要請する機関の要請に対して見解を表明すること。
e) 協議を実施する責任機関及び、協議の範囲や性格について協議される先住民族に対して助言を与えること。
f)先住民族、またその代表する組織に関するデータベースの作成、強化、また更新すること。
g)実施された協議結果を記録すること。
h)先住民族言語に卓越するファシリテーターや通訳の記録を維持し、また更新すること。
i)当法あるいは、その他の法、法令に定められている事項

第20条 先住民族に関する公的データベースの整備
先住民族及びその制度や組織に関する公的なデータベースの整備すること。これは行政府の技術的専門機関の職務である。

このデータベースは次の情報を含むものである。
a) 先住民族が自己を認識する、公的な命名、あるいは自己による名称
b) 地理的情報とアクセス
c) 文化・民族的情報
d) 先住民族が占有あるいは、なにがしかの形で利用する居住地域の確定に基づく、民族・言語地図
e) システム、組織の規範や承認されている規約
f) 代表する組織とその範囲、リーダーあるいは代表の確認、その任期及び権限


補足条項
第1 -この法律の履行のために、INDEPAを「先住民族に関する専門的技術機関」とする。
第2 -この法は、市民参加の権利に関する規則を廃止するものでも、改編するものでもない。またこれまでにとられた法的措置を改編するものでも、廃止するものでもなく、また行政措置を無効とするものでもない。

移行規定
-協議プロセスを行う責任を有する政府機関が必要な予算と組織を確保するように、この法律は政府公報紙、El Peruano に掲載されて90日で発効するものである。
(訳 開発と権利のための行動センター 青西)

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2011/09/01

ペルー:先住民族との事前協議に関する法を公布

 追記:9月6日、ウマラ大統領はこの法律を公布。2009年の衝突の舞台となったバグアで、正式に公布したとのことである。
 Perú: ¡Presidente cumple su promesa y promulga Ley de Consulta Previa a pueblos indígenas!
http://servindi.org/actualidad/50733(動画付き)

 日本のメディアでは赤旗が「南米ペルー・ウマラ政権 資源乱開発ストップ」という記事で紹介している。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-09-08/2011090807_01_1.html
 
2009年に発生したバグアにおける先住民族弾圧以来、制定が求められてきた先住民族との協議に関する法律がついに議会で承認された。

 8月23日、ペルーの国会は先住民族との事前協議に関する法を満場一致で承認。先住民族組織は、この法律はペルーの先住民族の権利を認める歴史的な一歩であり、アラン・ガルシア政権が進めていた、先住民族テリトリーにおける民間投資推進政策はこの法律の成立によって終わりを迎えることになると歓迎している。
 アマゾン地域の先住民族組織AIDESEPの代表であるアルベルト・ピサンゴ氏は「先住民族は尊厳ある生活のために権利の尊重を求めてきた。この法律の承認は、この国が必要としている大きな変化に向けて、政治的な意志を示したものであり、ペルーにおける調和的な開発を、敬意を持って進めていくための正しいあり方である」と述べている。[1]

 また先住民族の権利に関する国連特別報告者であるジェームズ・アナヤ氏はこの法律について「先住民族の権利という点で、ペルーだけではなく、ラテンアメリカの他の地域とっても大きな前進である」と述べている。[2]

「ILO第169号条約に認められた先住民族への事前協議の権利に関する法律」は、169号条約に基づいて、先住民族の集団的権利に影響を及ぼしうる法的・行政的措置、また開発計画や開発プロジェクトに先立って、先住民族が事前に協議を受ける権利を有することを認め、国家と先住民族の間で同意もしくは合意を形成するために協議を行うものと定めている。また協議のプロセスについても定めている。

開発と権利のための行動センター
青西


[1]Resumen Perú, 26 de agosto, 2011
http://servindi.org/actualidad/50204?utm_source=feedburner&utm_medium=email&utm_campaign=Feed%3A+Servindi+%28Servicio+de+Informaci%C3%B3n+Indigena%29
[2]Perú: Ley de consulta previa es un logro clave para ese país
http://unsr.jamesanaya.org/esp/notes/peru-ley-de-consulta-previa-es-un-logro-clave-para-el-pais
[3]次のサイトよりダウンロード可能
Ley de Derecho a la Consulta Previa a los Pueblos Indígenas u Originarios
http://alainet.org/active/48942&lang=es

*SERVINDIのサイトに関連記事が数多く掲載されている。
法律の内容については、後日より詳細にお伝えしたいと考えている。

*アムネスティ・インターナショナルのサイトにおいても記事が掲載されている。
Peruvian Congress unanimously passes Indigenous consultation law
http://www.amnesty.org/en/news-and-updates/peruvian-congress-unanimously-passes-indigenous-consultation-law-2011-08-25
El Congreso de Perú aprueba por unanimidad la ley de consulta indígena
http://www.amnesty.org/es/news-and-updates/congreso-peru-aprueba-ley-consulta-indigena-2011-08-25
またSacrificing rights in the name of development: Indigenous peoples under threat in the Americas (Report, 5 August 2011)というレポートも発表されている。
http://www.amnesty.org/en/library/info/AMR01/001/2011/en

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パナマ:ナソ民族が新しい王を選出

 7月10日に開催されたナソ民族の総会での決定に基づき、8月28日、パナマの西部に居住するナソ民族の代表を選ぶ選挙が行われました。これまで政府と関係が深く、ボンジック・ダムなどの開発計画に協力してきたティト・サンタナ支持者と、それに抵抗してきたバレンティン・サンタナ支持者との間で、正統性が問われてきたナソ民族の代表を、改めて選出しようという選挙でした。[1]
 この選挙がどのような仕組みで行われたのかわからないところも多いのですが、先住民族の代表を選ぶ選挙が、政府機関の調整のもとで行われたようで、先住民族独自の代表選出が、一般の選挙と同じような秘密投票と選挙人登録に基づいて行われ、一方、投票可能な年齢は15歳に引き下げられたということです。[2]
 また代表として立候補しているのはすべてサンタナ家の家系のものということです。[3]

 この選挙の結果、誰が勝ったのか、はっきりしない状況でしたが、(注)現地報道及び現地先住民族組織リーダーの代表からのメールなどによると、ダム建設反対などを進める住民組織が支持したReynaldo Alexis Santanaの勝利となったようです。[4]
現地からは「これからの困難な岐路に立つことができたこと、そして私たち聖なる先住民族の新しい歴史を書き記していくことになることを心からうれしく思っています」というメールが届けられています。
 また9月11日には新しい代表、王の就任式が行われるということです。

 今回の選挙は今後のナソ民族のコマルカ制定やダム開発問題の方向に大きく関わる選挙でもあり、また先住民族の代表の選出の一つのあり方としても重要なケースであると思います。

開発と権利のための行動センター
青西

[1]総会プロセスはこちら
Los Naso elegirán rey el 28 de agosto
http://otramerica.com/radar/los-naso-eligiran-rey-el-28-de-agosto/420
[2]投票所の様子などはパナマの内務省のサイトのニュースで見ることができます。
CONCURRIDA ELECCIÓN DEL PUEBLO NASO TERIBE
http://www.mingob.gob.pa/mingob/inside.php?artID=1157
[3]La familia Santana mantendrá su monarquía en pueblo naso
http://www.prensa.com/uhora/la-familia-santana-mantendra-su-monarquia-en-pueblo-naso/20804
[4]Hay nuevo rey Naso Teribe
http://www.diaadia.com.pa/edicion/actual/ultimas-interna.php?story_id=8660&edition_id=20110829

注:選挙結果についてはっきりしない記事が流れていたそのリスト
Eligen a nuevo rey teribe  
http://www.critica.com.pa/hoy/nacional-interna.php?edition_id=20110829&external_link=eligen_a_nuevo_rey_teribe
Reynaldo gana elecciones
http://www.elsiglo.com/mensual/2011/08/29/contenido/410539.asp
Excandidato a rey naso impugna resultados electorales
http://www.prensa.com/impreso/excandidato-rey-naso-impugna-resultados-electorales/21403
Analizan impugnar elecciones en pueblo naso
http://www.prensa.com/uhora/analizan-impugnar-elecciones-en-pueblo-naso/21009
Nasos escogieron al nuevo rey de su pueblo
http://www.diaadia.com.pa/edicion/actual/regional-interna.php?story_id=8646&edition_id=20110829

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