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2011/09/16

ペルー:先住民族の事前協議への権利法

9月6日に公布された「先住民族が事前協議を受ける権利に関する法律」の全訳(仮訳)です。非常に興味深い法律ですので、全文訳しました。
今後、この法律がどのように実施されていくのか、この協議が本当に真摯に行われていくならば、社会は変わっていくと思います。

日本でどのように原発が推進されてきたのかも振り返りつつ読むと、また異なる味わい方があるかと思います。

訳については、適宜見直しをしたいと思いますが、修正意見などありましたら是非教えてください。

青西

 第1章:全般的見解

第1条 法律の目的
この法律は、先住民族に直接影響を与える法的・行政的措置に関する、先住民族の協議への権利の内容、原則、手続きについて定めたものである。これはペルー国家の法令26253によって批准されたILO169号条約に定められた義務に従って解釈されるものである。

第2条 協議への権利
 生存、文化的アイデンティティー、生活の質あるいは開発に関する集団的権利に直接影響を及ぼすような、法的あるいは行政的措置について、先住民族は事前に協議をうける権利を有する。またこれらの権利に影響を及ぼすような国家的、地域的な開発計画・プログラム・プロジェクトに関しても協議が実施されるものである。

 この法で言及する協議は、国家によってのみ、義務として行われるものである。

第3条 協議の目的
 協議は、国家の決定プロセスへの参加と先住民族の集団的権利を尊重した手段を保障する通文化的対話を通じて、国家と先住民族が、先住民族に直接影響を与えうる法的・行政的措置に関して合意もしくは同意に達する目的で行うものである。

第4条 原則
協議への権利に関する中心的な原則は次ぎのものである
a) 機会:協議のプロセスは、国家機関によって法的・行政的措置が採択される前に実施されるものである。
b) 通文化:協議のプロセスは、文化間に存在する差違を認め、尊重し、適応しながら、展開されるものであり、またそれはそれぞれの文化の承認と評価に貢献するものである。
c) 誠実:協議のプロセスにおいて、国家機関は、信頼を醸成し、協力し、相互の尊重の上で、先住民族の立場を分析し、その価値を認めるものである。国家と先住民族組織・機関の代表者は、誠実に振る舞うという義務を有し、すべての党派的な勧誘や非民主主義的な行為は禁止されるものである。
d)柔軟性:協議は、採択を求める法的・行政的措置のタイプにふさわしい手続きを通じて行われなければならず、また当該先住民族の特別の状況や特徴を考慮するものである。
e)正当な期間:協議プロセスは、先住民族の機関や組織が、協議の対象となっている法的・行政的措置について、知り、検討し、具体的な提案を行うために、十分な期間を考慮して行われるものである。
f)強要しない、条件をつけない:協議プロセスにおける先住民族の参加には、いかなる強要や条件付けもあってはならない。
g)適切な情報:先住民族は、国家機関から、協議の対象となる法的・行政的措置について、十分な情報を受けた上で、その見解を表明するために必要となる、すべての情報を受け取る権利を有する。国家は協議プロセスの開始から、十分前もって、こうした情報を提供する義務を有する。

 第2章:協議を受ける先住民族
第5条 協議を受ける権利主体
協議を受ける権利の有資格者は、その集団的権利が法的・行政的措置によって直接影響を受ける先住民族である。

第6条 先住民族の参加形式
協議を受ける先住民族は、その伝統的様式や慣習に基づいて選ばれた先住民族の制度や組織を通じて、協議のプロセスに参加する。

第7条 先住民族としての確認基準
集団的主体としての先住民族としての確認のために、次の客観的・主観的基準を考慮する
客観的基準は以下のものである。
a) 国土内の先住民族の直接の子孫
b) 生活様式と、伝統的に利用し、占有してきた領域との精神的、歴史的結びつき
c) 独自の社会制度と慣習
d) 国内の他のセクターの人々と異なる文化様式と生活様式

主観的基準は、先住民族としてのアイデンティティーを有する集団としての意識と関わるものである。

Las comunidad campesinas o andinas y las comunidades nativas o pueblos amazonicos はこの条項に示された基準に基づき、先住民族として認めるものである。
先住民族としての呼称は、その本質や集団的権利を変質させるものではない。


第3章 協議プロセスの段階

第8条 協議プロセスの段階
法的・行政的措置を進める国家機関は協議プロセスにおいて少なくとも次の段階を遂行しなければならない。
a) 協議の対象となる法的・行政的措置の確認
b) 協議を受けるべき先住民族の確認
c) 法的・行政的措置に関する広報
d) 法的・行政的措置に関する情報
e) 法的・行政的措置によって直接影響を受ける先住民族組織による内部的な評価
f) 国家及び先住民族の代表間による対話プロセス
g) 決定

第9条 協議対象となる措置の確認
国家機関は、その責任において、先住民族の集団的権利に対して直接関係する法的・行政的措置の提案を確認しなければならず、集団的権利に直接影響すると判断された際には、その措置に関する事前協議を実施するものである。

先住民族の制度、組織の代表は、直接影響すると考えられる特定の措置に対して、協議プロセスの適用を求めることができる。その場合には、それらの法的・行政的措置の推進機関であり協議の実施責任機関に相応する要請書を提出しなければならず、その国家機関は要請の根拠を評価しなければならない。

国家機関が行政府に所属し、先住民族の制度や組織が提出した要請書を却下した場合には、行政府の先住民族に関する専門的技術的機関に対して異議申し立てを行うことができる。この機関への行政的対応で解決されない場合は、相応する司法当局に訴えることができる。

第10条 協議を受けるべき先住民族の確認
協議を受けるべき先住民族の確認は、提案されている措置の内容、先住民族への影響レベル、その措置の関係する範囲に基づき、法的・行政的措置を推進する機関によって行われなければならない。

第11条 法的・行政的措置の広報
法的・行政的措置を推進する国家機関は、協議を受けるであろう先住民族の代表的組織に対して、居住する地理条件や環境などを考慮の上で、文化的に適切な方法と手続きをもって法的・行政的措置について知らせなければならない。

第12条 法的・行政的措置についての情報
国家機関は、先住民族とその代表に対して、協議プロセスの当初より、十分前もって、法的・行政的措置の動機、関わり、影響、結果について情報を提供しなければならない。

第13条 先住民族組織内部での評価
先住民族組織は、その法的・行政的措置による影響とその広がり、その内容と集団的権利に及ぼす影響について分析する、十分な時間を持たなければならない。

第14条 通文化的対話
法的・行政的措置の理由、先住民族の集団的権利の行使に関して引き起こしうる結果、またそれに対する助言や勧告について、通文化的対話が行われ、それらはこの協議プロセスを進める責任を有する官僚や公的機関に知らされなければならない。

この対話プロセスで表明された意見は、協議プロセスの実施におけるすべての行為と出来事を含む、協議の議事録に残されなければならない。

第15条 決定
法的・行政的措置の採択に関する最終決定は、相応する国家機関の役割である。この決定は、対話プロセスにおける先住民族の見方や助言や勧告を十分に評価し、またその措置の採択が、ペルー国が批准する条約に基づいて憲法において認められている先住民族組織の集団的権利に関して引き起こす影響の分析に基づく、十分な理由を持つものでなければならない。

協議プロセスの結果としての、国家と先住民族の合意は双方に義務的な性格を有するものである。合意に至ることができない場合には、国家機関は、先住民族の集団的権利を保障するために必要とされるすべての手段を講じる責任がある。

協議プロセスの結果としての合意は、行政機関、司法機関の本庁で要求することができる。

第16条 言語
協議の実施に際して、先住民族の言語の多様性、特に先住民族の大半が公用語を話さない地域においては、それを考慮するものである。そのために、協議プロセスにおいては、協議の対象となるテーマについて十分な研修を受けた通訳の支援を受けなければならない。こうした通訳は、先住民族に関する専門的技術機関に登録されていなければならない。

第4章 協議プロセスにおける国家機関の義務

第17条 構成する機関
先住民族の権利に直接影響する法的・行政的措置を執る国家機関が、当法に示される段階に沿って、事前協議プロセスの実施を構成する機関となる。

第18条 協議のための資源
先住民族の有効な参加を保証するために協議プロセスにおいて必要とされる資源を国家機関は保障しなければならない。

第19条 先住民族に関する専門的技術機関の機能
協議プロセスに関する、行政府に所属する先住民族に関する専門的技術機関の役割は以下のものである。
a) 協議への権利の履行に関する国家政策を、具体化し、結びつけ、また調整すること
b) 国家機関及び先住民族に対して技術的支援や事前の研修を行い、またそれぞれのプロセスで生じる疑問に対応すること
c) 先住民族の制度や組織の登録を維持し、ある法的・行政的措置に関して協議の対象なるべきものを確認すること。
d) その責任にある機関による法的・行政的措置の計画への評価、協議の範囲、協議を受けるべき先住民族の決定について、職務上の見解、あるいは協議を要請する機関の要請に対して見解を表明すること。
e) 協議を実施する責任機関及び、協議の範囲や性格について協議される先住民族に対して助言を与えること。
f)先住民族、またその代表する組織に関するデータベースの作成、強化、また更新すること。
g)実施された協議結果を記録すること。
h)先住民族言語に卓越するファシリテーターや通訳の記録を維持し、また更新すること。
i)当法あるいは、その他の法、法令に定められている事項

第20条 先住民族に関する公的データベースの整備
先住民族及びその制度や組織に関する公的なデータベースの整備すること。これは行政府の技術的専門機関の職務である。

このデータベースは次の情報を含むものである。
a) 先住民族が自己を認識する、公的な命名、あるいは自己による名称
b) 地理的情報とアクセス
c) 文化・民族的情報
d) 先住民族が占有あるいは、なにがしかの形で利用する居住地域の確定に基づく、民族・言語地図
e) システム、組織の規範や承認されている規約
f) 代表する組織とその範囲、リーダーあるいは代表の確認、その任期及び権限


補足条項
第1 -この法律の履行のために、INDEPAを「先住民族に関する専門的技術機関」とする。
第2 -この法は、市民参加の権利に関する規則を廃止するものでも、改編するものでもない。またこれまでにとられた法的措置を改編するものでも、廃止するものでもなく、また行政措置を無効とするものでもない。

移行規定
-協議プロセスを行う責任を有する政府機関が必要な予算と組織を確保するように、この法律は政府公報紙、El Peruano に掲載されて90日で発効するものである。
(訳 開発と権利のための行動センター 青西)

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