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2011/09/27

ボリビア:(更新)TIPNIS 開発と先住民族

<道路建設停止>
9/27 (10:13)現地26日夜、モラレス大統領は、問題となっていたビジャ・トゥナリとサン・イグナシオ・モホス間の道路建設の停止を宣言。ベニ県とコチャバンバ県を中心とした国民的な議論を待つこととなった。
 またモラレス大統領は先住民族行進に対して弾圧を命じたことはないと弁明、日曜日の弾圧またチョケワンカ外務大臣の一時拘束も含め、国際機関や人権組織などによるハイレベル調査委員会を設置するとのことである。
<防衛大臣辞任>
9/27 内務大臣は介入は、先住民族行進のグループと行進に反対していたヤクモの住民との衝突を避けるためであったと弁明。(ABI)
 一方、日曜日に拘束された行進参加者はルレナバケで住民によって解放される。またベニ県でストライキが行われるということであり、サンタ・クルス県でもデモが行われたようである。(amazonia boliviana, La Razon)
チャコン防衛大臣は今回の事件に反発して辞任。「対話の枠組みの中で、人権を尊重し、非暴力的に、母なる大地を守るためのオータナティブがあったにもかかわらず、今回政府がとった行進への介入という方法は支持できないし、それを守ることも正当化することもできない。今回のやり方は、ボリビアの人々が取り組んできた変革プロセスを攻撃しようとする右派を孤立させるどころか、この第8回行進の中での右派の画策を強化するものでしかない」(Erbol)

<先住民族行進を弾圧>

9/26 25日日曜日午後、先住民族行進に対して、500人あまりの警察隊が突如介入。催涙ガスなどを使用し、多数を逮捕。サン・ボルハを経由して、出身地に移送する予定であったとのことであるが、サン・ボルハの住民が警察の介入に抗議して、道路を封鎖して、サン・ボルハには入れない状況とのこと。けが人など詳細は不明(Erbol, Amazonia boliviana,La Razonなど)
 エボ・モラレス大統領は日曜日、夜にラパスの大統領官邸にて、先住民族行進のリーダーとの会談を呼びかけたばかりであった。
 また同日、TIPNISの16名ほどのリーダーと集まり、ベニ県とコチャバンバ県で、道路建設に関する住民投票の実施を表明。モラレス大統領は、TIPNISのいくつかの地域における違法入植者の排除についての法律を定めること、二つの県で、道路建設の是非を問う住民投票を行い、「賛成となれば、より実現的で、より短く、確実な道路のための調査をしなければならない」と語っている。TIPNISのリーダーは道路建設を認めるかわりに、入植を避けるための法律を求めていたという。
 この集まりにおいてモラレス大統領は「孤立した二つの県を結びつけることが必要であり、道路建設で、開発や教育、保健をTIPNISの人々にもたらさなければならない」、「道路建設に反対する行進は政治的なものであり、先住民族に経済的・社会的な改善など必要ないと思っている人々に影響されているのだ」と語っている。(ABI) 
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 状況は非常に混沌としてきた。ボリビア国内で、先住民族による権利要求の正統的な社会闘争と見なされてきた「先住民族行進」を警察力で弾圧したことに強い反発が広がることは間違いないであろう。
 更に、先住民族の求める「協議」に対して、2県における道路建設の是非を問う住民投票の実施を呼びかけるというのも、先住民族が「協議」を求めてきた運動の成果を踏みにじるものでしかない。
 協議よりも更に先を、先住民族自治に向けて前進してきていたと思われたボリビアで、先住民族運動は厳しい状況に置かれている。
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<チョケワンカ外務大臣「拘束」>
9/25 24日土曜日、交渉に臨んだチョケワンカ外務大臣他が、意志に反して数時間行進に同行させられ、その間に警察の封鎖を超えて前進するという事件が起きた。一部では「誘拐」「人質」といった報道もなされたようであるが、とりあえず解放され、ラパスに帰還。チョケワンカ外務大臣は改めて対話を継続する意向を表明。すべての当事者が対話を妨げるような動きをやめること、先住民族行進側にも交渉の意志を示すことを求めた。(ABI他)
 デモに合流したAlejandro Almaraz元副土地大臣などが、平和的なデモをゆがめ、政治的に利用しているというチャベス内閣調整副大臣の批判も存在している。注:http://www.laprensa.com.bo/diario/actualidad/bolivia/20110924/las-naciones-unidas-expreso-su-preocupacion-por-la-ausencia-de-acuerdos_7386_12554.html

9/24 深刻な衝突が懸念される中で、ボリビア国内では、先住民族行進を支持する動きが広がっている。政府はチョケワンカ外務大臣を筆頭とする委員会を立ち上げ、再交渉を始める方向である。 また先住民族行進を支持する人々がラパスからユクモに向かった。モラレス政権下の元副土地大臣や元大使の他、コチャバンバの「水戦争」における中心的なリーダーなども参加している。ボリビア労働者センター(COB)も先住民族行進を支持することを打ち出した。

政府は計画の見直しを含めた真摯な対話を行うことが求められている。


9/22 ベニ県とコチャバンバ県の間に位置するイシボロ・セクレ先住民族テリトリー自然保護区(Territorio Indígena y Parque Nacional Isiboro Secure, TIPNIS)を分断する道路建設に反対して、首都ラ・パスを目指して8月15日に開始された第八回先住民族行進は、政府との交渉で一時滞留していたものの、行進を再開。
 21日現在、行進を踏みとどまらせようとする警官隊と対峙しているとのこと
 その先に、道路建設に前向きで、モラレス大統領支持派と考えられる入植農民のグループがこの行進に反対しているということで、衝突を避けるために警察が行進を留まらせているという状況のようである。
 La marcha indígena fue frenada por la Policía
  http://www.cejis.org/node/359

だいぶ遅くなってしまったのですが、これから少しずつ、背景情報などを書き込んでいきます。
 青西

 1990年に繰り広げられた東部低地の先住民族による「テリトリーと尊厳のための行進」の成果の一つが、このTIPNISの先住民族テリトリーとしての法的認可であった。1965年から既に自然保護区として指定されていた地域であったが、そこが先住民族テリトリーとして認められたのである。
 
コチャバンバ県とベニ県の間に位置するTIPNISは、ベニ県の低湿地からユンガスと呼ばれる、高地に向かう傾斜地も含む変化に富んだ生態系を含む土地であり、モホ、ユラカレ、チマンといった先住民族が居住している。またこのTIPNISの南部には高地からの移民が居住する地域も存在している。
 そのテリトリーを分断する道路が建設されようとしているのである。

 国連総会に参加のために不在のモラレス大統領に代わり、大統領代理を務めるアルバロ・ガルシア・リネラはTIPNISの道路計画について「孤立しているために憲法で定められている権利を十全に享受できていないTIPNISを開発に取り込むこと」がこの計画の社会的な理由であると語っている。「TIPNISには一年の6ヶ月しか航行可能な河川がなく、それ以外の期間は徒歩の移動しかできず、未来の世代の教育にも困難を引き起こす」、更に「30%のアマゾン地域は高地やバジェ地方と切り離されており、それらを結びつけるのは国家の責務である」、「(アマゾン地域の)ベニ県は国内総生産の2.5%を占めるに過ぎず、パンド県は1%のみである・・・道路によってコチャバンバとベニ、ラパスを結びつけることができれば、ベニ県ヤパンド県はその開発の可能性が開けるであろうし、地域の格差がなくなり、開発に寄与することであろう」と言う。(2011/9/20)[1]
[1] Vinculación vial tiene fines estratégicos que integrarán y promoverán desarrollo http://www.presidencia.gob.bo/noticia2.php?cod=674

 この行進にはTIPNISの先住民族の他に、低地の先住民族組織の連合体であるCIDOBやグアラニ民族組織また高地の先住民族を中心とする CONAMAQなども参加している。先住民族諸組織は、協議への権利、テリトリーへの権利、自治の権利を求めているが、今回の行進に際して、その要求を16点に整理されている。[2]
1. TIPNISに影響する Villa Tunari-San Ignacio de Moxos間の道路建設の即時中止、関係する調査の中止。
2. Aguarbe自然保護区における炭化水素関連事業の中止(注:グアラニ民族居住地区)
3. 新しい農業法制における先住民族テリトリーの尊重
4. 先住民族テリトリーにおける温室効果ガス削減に対する代償を先住民族が受け取る権利を保障すること。
5. 先住民族に関連する法案については、先住民族に事前に協議し、同意を持って制定すること。
6. 東部地域の生産開発関連機関の分権化と先住民族の視点を開発計画に取り入れていくこと。
7. 先住民族自治を進めるための、資金を供給すること
8. 森林法制定に関する先住民族の参加
9. 先住民族の要求を取り入れた、自然保護区に関する特別法の制定
10. ボリビア先住民族大学の低地校のための資金供与
11. 皆保険制度に先住民族を的確に包合すること。
12. 先住民族テリトリーを、ムニシピオから区分した形での、人口・住居センサスを早急に実施すること
13. 先住民族に対する住居政策の実施
14. ピルコマヤ川の保全と利用に関する政策の実施
15. 先住民族に対する情報へのアクセスの保障と、コミュニティ手段の確保
16. 2010年5月のグアラニ先住民族会議との合意の履行

[2]Respuesta indigena al gobierno.pdf(要求、政府の回答、先住民族側の回答を含む)
http://plataformaenergetica.org/system/files/respuesta%20indigena%20al%20gobierno.pdf
Indígenas del Tipnis presentan demanda de 16 puntos al gobierno
http://www.hoybolivia.com/Noticia.php?IdNoticia=52007

しかしこの要請書に対して、モラレス大統領は「これはリーダーだけで書かれたもので、組織を構成する人々(BASE)は知りもしないだろう、NGOやMASへの恨みを持つものや反対派が書いたのだ」、「(この道路建設と)関係のない要求がいくつも含まれていると」反発していた。(2011/9/12)[3]

[3]Cuando hay marchas con demandas que beneficien a Bolivia siempre hay soluciones
http://www.presidencia.gob.bo/noticia2.php?cod=665

 政府はTIPNISにおける道路開発に関して、「協議を行う」と回答してきているが、先住民族組織は、これまでの計画をすべて取り消して、「事前」協議を行うことを求めている。またベニ県とコチャバンバ県を結ぶ道路に反対しているわけでもなく、TIPNISに影響しない形での道路を計画するように政府に要求している。[2]


  背景
<石油開発>
エクアドルの元制憲議会議長 アルベルト・アコスタ氏は、今回のTIPNISの動きについて、モラレス大統領に憂慮の念を伝える文書を公開している。[4]その中で「この地域に隣接するチスパニやリオ・オンドにおける炭化水素開発のコンセッションが多国籍企業に与えられている中で、この命のよりどころを横切る道路ができることを、そしてそれが先住民族のテリトリーにおける石油開発を始めるための道となるであろう」という懸念を伝えている。 
[4]Carta a Evo Morales por lo que está sucediendo en el Territorio Indígena y Parque Isiboro Sécure http://rebelion.org/noticia.php?id=135444

8月11日のラ・ラソン紙はTIPNISにおける石油の存在についてのグティエレス大臣の記者会見の記事を掲載している。これによると、TIPNISにおいては、既に飛行機を利用しての探査が行われているとのことである。TIPNISの先住民族リーダーは今回の道路建設が石油開発に道を開くものだという懸念を表明している。[5]
 



図は[5」の記事より
[5]El Gobierno dice que en el TIPNIS habría petróleo(2011/8/11)
http://www.la-razon.com/version.php?ArticleId=135455&EditionId=2618
Audio: Habla el Ministro Guitierrez sobre las áreas petroleras en el TIPNIS (2011/8/10)
http://www.hidrocarburosbolivia.com/nuestro-contenido/audio-y-video/44748-audio-habla-el-ministro-guitierrez-sobre-las-areas-petroleras-en-el-tipnis.html 

<移民>
 ビジャ・トゥナリとサンイグナシオ・モホ間の道路建設に関わる社会的・環境的コストという報告[6]はこの地域に対する高地からの移民の問題について言及している。この地域には70年代から移民が増加するとともに、麻薬密売人、石油開発業者、森林伐採業者、密猟者なども流入してきたという。
 入植者による農地開発を前に、1992年にはTIPNISの代表と、入植者の代表としてエボ・モラレスが領域決定の交渉を行ったという経緯もある。その後も入植地とTIPNISの土地の境界を巡る紛争と協議は続き、2008年に先住民族と入植者の間で境界画定が合意されたという。そして同じ年、モラレス大統領によって、TIPNISを分断する道路建設が決定された。
 このような動きの中で1990年に123万ヘクタールあるとされたTIPNISは2009年には109万ヘクタールのテリトリーへと縮小したのである。TIPNISの先住民族の代表は、道路が建設されたら自分たちの領域が守られるのか、という懸念を有している。

今回の低地先住民族によるテリトリーを守ろうとする動きの背景には、先住民族の中での、開発のあり方や土地利用に対する考え方の違いも存在しているようである。また要求項目3に関連する農地分配プロセスにおける先住民族テリトリーの保全もこうした点と関連していると思われる。

[6]Costos sociales y ambientales de la Carretera Villa Tunari - San Igna­cio de Moxos
http://www.fobomade.org.bo/art-1166

地図上のピンクの部分が入植者の居住時地域である。
Atlas Territorios Indigenas en Bolivia(2000)より

<IIRSA>
 南米地域のインフラ統合を目指すイニシアティブ:IIRSAは南米諸国を結びつけるための投資を積極的に進めている。ボリビアではアマゾン地域における道路建設などを通じて、ブラジルそしてペルーへのアクセスの改善を進めようとしている。[3]


http://www.geosur.info/geosur/iirsa/pdf/es/grup_pbb.pdf
今回問題となっているサン・イグナシオからビジャ・トゥナリを結ぶ道路計画は(オレンジの枠内のSan Borjasの東側より、南のCochabambaへ向かう道路となる)、IIRSAのサイトでは見つけられず、厳密にはIIRSAの一環であるとは言えないようであるが、インフラ統合を進め、経済開発を進めようという方向では一致したものである。この道路計画は90年代より存在し、モラレス政権下でも、国内的な優先事業と位置づけてきたのである。そして2008年にブラジル系企業のOASが落札。資金の8割はブラジル国立経済社会開発銀行(BNDSES)が貸し付けている。しかし上記 [5]の報告によるとOAS社は、モラレス政権下で行われた入札で重要な道路建設プロジェクトを落札してきているという。しかし同時に契約に対してはいくつもの疑念も投げかけられているとのことである。
 
9/24  追記
道路建設プロセス及びTIPNISの歴史・現状についてはCronología del proyecto carretero Villa Tunari San Ignacio de Moxos
http://marcha.ftierra.org/index.php?option=com_content&view=article&id=59:rair&catid=37:doc

及びこのサイトよりダウンロードできるEstudio de caso Nº 2
tIPNIS, la coca y una carretera acechan a la Loma Santa:territorio indigena en Cochabamba y Beniが参考になる

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