ボリビア

2014/01/30

ボリビア:先住民族組織は6月のG77に向けて、対抗サミットを計画

 TIPNIS先住民族テリトリーの保全を目指す先住民族リーダーたちは、今年の6月にボリビアのサンタクルス市で予定されているG77+中国に際し、対抗サミットを開催することを宣言。TIPNISを縦断し、ビジャ・トゥナリとサン・イグナシオ・モホスをつなぐ道路計画についての懸念を国際社会に示す必要を表明。(1)

 記事によると、ブラジル開発銀行がTIPNIS紛争の後に融資から手を引いたものの、現在、中国の銀行が代わりに融資を計画しているとのことである。

 一方、アルバロ・ガルシア副大統領は、昨年6月にアルゼンチンで行われた講演会において、TIPNISの紛争について政府の間違いを認め、事前協議が事後に行われたこと、今後道路が建設されるとしても20年あるいは100年後に実現する話しであろうと語っているとのことである。(2)

 先住民族組織のリーダーであるアドルフォ・チャベスは、各国首脳に対し、ボリビアのチャコ・東部・アマゾン地域またエクアドルやコロンビアの先住民族が暮らす現実を示す必要があること、また中国が事前協議の問題を考慮しないままに、再度道路計画に資金を供与しようとしていることに懸念を表明している。

 更にネリ・ロメロは、G77諸国に対して、まず人権を尊重すべきことを提起していたいと語っている。(3) 

  G77+中国は6月14日、15日に計画されており、政府はその準備を着々と進めている。

(1)Indígenas anuncian realizar cumbre paralela de CAOI al G 77 + China

http://www.eldiario.net/noticias/2014/2014_01/nt140122/politica.php?n=58&-indigenas-anuncian-realizar-cumbre-paralela-de-caoi-al-g-77-china

(2)El Vicepresidente descarta carretera por el TIPNIS

http://www.paginasiete.bo/nacional/2014/1/4/vicepresidente-descarta-carretera-tipnis-10441.html

(ボリビア国内では2014年1月に報道されている)

(3)Anuncian Cumbre Indígena de la COICA paralela a la G77 en Santa Cruz

http://www.erbol.com.bo/noticia/indigenas/27012014/anuncian_cumbre_indigena_de_la_coica_paralela_la_g77_en_santa_cruz#sthash.Fndyvr8y.dpuf

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2014/01/29

ボリビア:TIPNISの動きの確認

記事としてまとまっているものではないのですが、とりあえず現状を把握し直すために整理した情報です。ガルシア・リネラ副大統領が、TIPNISの道路建設の戦略的な意味について何度も発言しているのが気になりました。

主目的は国家統合、多民族国家である多様性より、国家の地理的・経済的統合が必要だと強く思っていることがわかります。

イシボロ・セクレ先住民族テリトリー自然保護区(Territorio Indigena y Parque Nacional Isiboro Secure, TIPNIS)を分断する道路建設とそれに対する反対運動について、2012年初頭までこのブログでも取り上げてきました。
http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2012/02/tipnis-35e1.html

それ以後の動きを整理しておきたいと思います。

2012年2月7日:ガルシア・リネラ副大統領:「TIPNISで動員されていたのは他の地区のリーダーたちであり、環境NGOやUSAIDの支援を受けていたのだ・・・アマゾンと高地を直接結ぶことで、サンタクルスのオルガルキーの支配を抜け出して、直接高地と低地の資源を結びつけることができる。」

El pueblo boliviano vive la mayor revolución social
http://www.jornada.unam.mx/2012/02/07/politica/002e1pol

-2012年4月:道路建設を受注していたブラジル企業OASとの契約破棄についてモラレス大統領言及

http://www.bolpress.com/art.php?Cod=2012041008

-2012年7月29日:ボリビア政府による協議プロセスの開始。12月6日まで実施。

-2012年11月29日~2012年12月14日:カトリック教会、ボリビア人権会議(APDHB)、国際人権連盟(FIDH)による協議プロセスの検証のための調査。36コミュニティの報告。30コミュニティが道路建設に反対。
http://www.cedib.org/documentos/consulta-tipnis-compendio-de-informes/

Verificación de la consulta en el TIPNIS (APDHB, Caritas, FIDH)
http://www.territoriosenresistencia.org/noticias/verificacion-de-la-consulta-en-el-tipnis-apdhb-caritas-fidh

-2012年12月27日:ガルシア・リネラ副大統領、海外からの融資を得るまで道路建設を再開することはないと表明
http://www.eldeber.com.bo/gobierno-descarta-carretera-por-el-tipnis-hasta-conseguir-financiamiento/121227163533

-2013年1月6日:選挙管理委員会が協議の報告書公開
http://www.oep.org.bo/oep/tipnis_consulta.aspx

選挙管理委員会は協議の実施プロセス支援と監視の役割を担っていた。

-2013年1月:契約破棄に関連するボリビア政府のブラジル企業OASへの補償金額が確定。この契約はブラジル社会開発銀行が融資を行う予定であった。
http://www.la-razon.com/nacional/Bolivia-OAS-indemnizacion-cancelacion-TIPNIS_0_1765023553.html

-2013年3月15日:米州人権機構での公聴会(Video)

http://www.youtube.com/watch?v=mapm_YD3RRc 
RD5 - Situation of Human Rights of the Indigenous Peoples Inhabiting Indigenous Territory in the National Park Isiboro Sécure (TIPNIS) in Bolivia

Indígenas del TIPNIS denunciaron ante la CIDH que el Estado actúa de mala fe, con presiones y desinformando
http://otramerica.com/radar/indigenas-tipnis-denunciaron-ante-la-cidh-estado-actua-mala-fe-presiones-desinformando/2868

-2013年4月2日:公共事業・サービス・住居省、議会に最終報告書提出

※http://www.oopp.gob.bo/index.php/informacion_institucional/INFORME-FINAL-TIPNIS,851.html

協議を受けたコミュニティの80%が道路建設を受け入れ、82%が法180号で定められた「触れてはいけない」という定義を拒否

-2013年6月27日:ガルシア・リネラ副大統領:「今後、20年、50年100年間はTIPNISに道路を作ることはない」と表明(しかしそうとは聞こえない。積極的に動いていくのではないだろうか。既に「事前協議」を手に入れている。)参考3)

-2013年9月21日:ガルシア・リネラ副大統領:TIPNISの道路は分離主義に終止符を打ち、国家統合をすすめるもの

Álvaro García Linera: Carretera por el TIPNIS pondrá fin a pretensiones separatistas y consolidará la unidad
http://www.fmbolivia.tv/alvaro-garcia-linera-carretera-por-el-tipnis-pondra-fin-a-pretensiones-separatistas-y-consolidara-la-unidad/

-2013年9月25日:2年前の先住民族行進弾圧における責任者の処罰は行われていない。
http://www.somossur.net/bolivia/economia/no-a-la-carretera-por-el-tipnis/1273-chaparina-a-dos-anos-730-dias-de-impunidad.html

-2013年1月:先住民族組織は、TIPNISの道路建設に中国の資金が入るのではないかと懸念を表明

<参考>

(1)道路建設に反対する先住民族運動などの情報

Somos Sur
http://www.somossur.net/bolivia/economia/no-a-la-carretera-por-el-tipnis.html

Territorio y Resitencia
http://www.territoriosenresistencia.org/

Fundacion Tierraのニュース集約サイト
http://www.ftierra.org/index.php?option=com_content&view=category&id=174:tipnis&Itemid=242&layout=default

(2)先住民族組織による「事前協議」の問題点

1.「事前」協議ではなかった

2.自由ではなかった。協議の前に、贈り物があったり、プロジェクトの提供話があったりした。道路建設を拒否したケースでは引き渡した贈り物を取り上げたり、学校建設を中止した。

3.良心に基づいたものではなかった。「intangubilidad」の説明において、狩猟も漁猟も、薪を捕ることも許されなくなると説明

4.情報提供がなかった: 道路建設に関する社会・環境影響評価を提示されることもなく、単に「エコロジカルな道路」の写真として、森の下のトンネルや樹上を通る道路のモンタージュ写真が見せられた

5. 適切な手続きでは行われていない。コミュニティの正統な評議会が開催されない、伝統的権威が参加していない

La “CONSULTA PREVIA” en opinión de los pueblos indígenas (2013/12)
http://www.somossur.net/bolivia/economia/no-a-la-carretera-por-el-tipnis/1317-la-consulta-previa-en-opinion-de-los-pueblos-indigenas.html

(3)アルバロ・ガルシア・リネラ副大統領の発言関連

・El pueblo boliviano vive la mayor revolución social
http://www.jornada.unam.mx/2012/02/07/politica/002e1pol

・Conferencia de Álvaro García Linera en el Centro Cultural
http://www.youtube.com/watch?v=JmpPmrwc4ys
http://www.youtube.com/watch?v=bhn91kXI4To

・García dijo que vía por el TIPNIS no va más, si se hace será en 20 ó 100 años
http://erbol.com.bo/noticia/politica/03012014/garcia_dijo_que_por_el_tipnis_no_va_mas_si_se_hace_sera_en_20_o_100_anos#sthash.ZlFitFuc.dpuf

・El Vicepresidente descarta carretera por el TIPNIS
http://www.paginasiete.bo/nacional/2014/1/4/vicepresidente-descarta-carretera-tipnis-10441.html

・Para García Linera, la integración es el proceso revolucionario de hoy (2013/7/01)
http://www.diputados.bo/index.php/prensa/ejecutivo/item/517-para-garcia-linera-la-integracion-es-el-proceso-revolucionario-de-hoy

・Álvaro García Linera: Carretera por el TIPNIS pondrá fin a pretensiones separatistas y consolidará la unidad(2013/9/21)

http://www.fmbolivia.tv/alvaro-garcia-linera-carretera-por-el-tipnis-pondra-fin-a-pretensiones-separatistas-y-consolidara-la-unidad/

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2012/02/19

「協議法はTIPNISの先住民族への恐喝だ」

 フンダシオン・ティエラの代表へのインタビュー記事の部分訳 (2012/02/12)

-この「協議法」はどのような危険を意味するのですか?

 この法律は適切なものではなく、憲法が定める事前の情報に基づく、誠実なる協議を履行するものではありません。
 この法律はTIPNISの一部の中間組織(CONISUR)の要請によるもので、地域のコミュニティの意志を飛び越えたものであり、TIPNISの領域により大きな紛争を引き起こすでしょう。たとえば、コカ農民の連合体は、TIPNIS内に耕作地を広げつつあり、今回のCONISURの構成員が居住する第7区は10万ヘクタールほどの面積を有し、いまだ国立公園の中ではありますが、先住民族テリトリー(TCO)を構成してはいません。
 つまり、この法律はコカ農民のために道路建設を進めるための国家的支援であり、それは(TIPNISに)深く浸透するための道路となります。

-協議はどのように、誰と行われるべきですか?


 国家が対話し、協議プロセスを進めるべき相手は、昨年の行進に参加し、(道路建設に反対している)TIPNISの先住民族コミュニティ(地区連合Subcentral)の代表であるフェルナンド・バルガスです。
 この法は、誰と協議を行うかについて曖昧な部分があり、第7区にも(法に記されている)チマネ、モヘーニョ-トリニタリオス、ユラカレ民族が住んでいますが、多くはコカ農民組織に所属しており、誰に協議を受ける権利があるのか、というのが判然としません。そこで紛争が起きる可能性もあり、それを政府は承知していることでしょう。

-法律は憲法の枠内にあるのですか?
 2011年に法第180号として結実したTIPNISのコミュニティの意志を無視するものであり、またその組織の意向を聞かずに中間組織の要請で協議を定めるという点で違憲であり、169号条約にも違反しています。

-道路建設についてのフンダシオン・ティエラの見解は?
 
 建設に対してフンダシオンとしての見解はありません。政府に対する疑念は、先住民族の権利を尊重するための手続きの履行に関するものです。

 もう一つの深刻な問題は「Intangibilidad/触れることはできない」という用語の利用にあります。昨年10月に先住民族出身の議員によって提起された用語ですが、その後議会で削除され、そして改めて政府によって取り込まれた制約です。外部からTIPNISを守るための楯として使われたこの用語が、先住民族を抑圧する剣になっているのです。これは先住民族に対する恐喝です。「触れてはいけない」という定義のままでいくのか、そうではないのか協議にかけようと。

-どこが恐喝なのですか?

 現在、(法180号のもとで、「触れてはいけない」とされ)先住民族が自然資源を利用していくことが制約され、一方で道路建設が禁止されています。そこで政府は先住民族に対して、この「触れてはいけない」という条項を続けるのか、あるいはやめるのか、つまり、人々の自然資源の利用を認めるとに道路建設を進めようというのです。

 政府の戦略は、「触れてはいけない」という用語を利用して、道路建設を認めるように先住民族を屈服させようとしているのです。議員たちはこの点についてわかっていないようですが、これは悪意に基づく協議であり、わながかけられています。「食べたければ道路も一緒に受け入れろ」ということなのです。

 協議は「事前に」そして「誠実に」行われなければいけませんが、既に法律によって道路建設の資金が認められており、事前とは言えませんし、中立性や透明性という点からも政府が「誠実に」振る舞ってきたとは言えません。

-政府の環境政策に対する意見は?

 政府は母なる大地の擁護者としてのラディカルな姿勢をあっという間に投げ出してきたように思われます。ラパスに到着したデモ行進において、人々は大統領に対して「母なる大地の擁護者でもなければ、先住民族の権利の擁護者でもない」と言い放ちました。今や政府もこうした言説は使いもしません。
 実際に政府はCSUTCBの要請を受け入れ、TCOの設置プロセスを停止しました。それどころか、農民や入植農民の提案を受け入れ、TCO内の所有権を見直し、土地を分配しようとしています。

-協議に関する全般法はどのようなものであるべきなのでしょうか?


 それは共同体的民主主義とリベラルな民主主義を求めるニーズに応えるものでなくてはなりません。先住民族の住む国々において、共同体的民主主義とリベラルな民主主義の共存を目指す取り組みなのです。

“La ley de consulta es un chantaje a los pueblos indígenas del TIPNIS”
Domingo, 12 de Febrero de 2012 10:39 | Escrito por Pagina Siete |
http://www.ftierra.org/ft/index.php?option=com_content&view=article&id=8626:rair&catid=164:fundacion-tierra-en-los-medios&Itemid=242

2)モラレス大統領は誤った約束を認めるべき

 ボリビア元国連大使は、「モラレス大統領はコカ農民と、誤った約束をしてしまったことを認めるべき」と発言。道路建設をあくまで推し進めるのは、国際的な背景も、企業の利害でもなく、選挙キャンペーン時の約束に原因があると指摘。

 もしTIPNISの先住民族コミュニティが受益する道路を造るというのであれば、それは今の計画とは異なるはずだと言う。

Solón: Evo debe reconocer que hizo una promesa equivocada a cocaleros

http://www.erbol.com.bo/noticia.php?identificador=2147483955311

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2012/02/12

協議-TIPNIS-モラレス政権

 ボリビアの状況を整理しようと思っているのですが、なかなか進みません。
 昨年秋以降の動きもお伝えしていなかったことに気づき、そのへんも含め書いていたのですが、今日は時間切れということで
 
 ここまで
 
 青西


 イシボロ・セクレ先住民族テリトリー自然保護区(Territorio Indigena y Parque Nacional Isiboro Secure, TIPNIS)を分断する道路建設に反対し、首都ラ・パスを目指して昨年8月15日に開始された第八回先住民族行進は、9月25日、警察による弾圧を受ける。この先住民族グループと警官隊の衝突の後、モラレス大統領は道路計画の停止と、国民的対話の呼びかけを行う。その後10月1日になり、ラ・パスを目指す先住民族行進は再開され、10月19日、様々な社会組織の歓迎の中、ラパスに到着した。

 先住民族グループはモラレス大統領との直接対話を望み、22日に実現。一方、議会では既に TIPNISの道路建設を中止する法案の審議が進んでおり、10月11日に法案が議会で採択されている。ここには道路計画を停止し、事前協議を行うこと、代替の道路案の調査を行うことなどが盛り込まれていた。しかしモラレス大統領は当初案を拒否し、21日に法案に対する意見書を送り、24日に法180号が議会で採択され、大統領によって公布された。法第180号には、ビジャ・トゥナリとサン・イグナッシオ・モホスまたその他の道路が、TIPNISを通過することはない、と定めるとともに、TIPNISを「触れることのできない“INTANGIBLE”」ものと定められた。
 モラレス大統領は、当初案を拒否した際に、先住民族組織の提案にあったこの言葉を入れるように指示したとする記事もあるが、先住民族出身の議員の提案との報道もありはっきりはしない。しかし与党の議員また、交渉にあたっていた先住民族リーダーもこの言葉には懸念を持っていたようであるが、細則において、定義を定めればいいという議論になっていたようである。
 
 ところがモラレス政権は法に盛り込まれた Intangibleを利用して、TIPNISの先住民族を締め上げにかかっていた。地域の住民が行っていたエコツーリズムの免許を取り消しという事態も発生していた。地域に居住する先住民族がその資源を利用する権利を制約し始めたのである。
 
 それとは平行してモラレス大統領は道路建設に前向きな姿勢を示し続け、「道路建設を実現できるどうかは、地域住民の手にゆだねられている」とサン・イグナシオで語り、建設推進のための運動を鼓舞しているのである。

 こうした中でConsejo Indigena del Sur (Conisur)のメンバーによって、道路建設を求める行進が行われた。12月20日に出発したCONISURは1月30日にラパスに到着。同日モラレス大統領と対談。その後、議員との会議などを踏まえ、CONISURは「協議」を求めるという方向を打ち出し、議会も「協議」法の制定に踏み込み、2月10日にはモラレス大統領によって「イシボロ・セクレ先住民族テリトリー自然保護区の先住民族への協議法/法第222号」が公布されたのである。

 協議を行い、地域の先住民族が道路建設の是非を決めればいい、と聞けば正統な判断であるかに思える。しかしここでモラレス政権が定める道路計画は既に定まったものであり、事前の協議ではなく、代替案を検討するものでもない。この「協議」法は「TIPNISを、INTANGIBLEな地域とするのか、あるいはそうではなく、開発事業やビジャ・トゥナリとサン・イグナッシオ・モホス間の道路建設の実現を可能とするのか 」という二者択一を強いるものとなっているのである。
 これは「協議」の名を借りた脅迫にすぎない。放置されることを選ぶのか、鉱山開発を選ぶのか、と迫ったある国の大統領の発言を思い出させるものである。

 未定稿。もう少し時間をとって、加筆修正する予定


開発と権利のための行動センター

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2012/02/11

TIPNISを巡って迷走を続けるモラレス政権

 昨年の先住民族行進の後、TIPNISを横断する道路計画は中止され、先住民族テリトリーは守られていく方向が定められたはずであった。しかしその決定の直後からモラレス大統領は、自らの決定を覆すような発言を繰り返していた。

 その後、政権の支持を受ける先住民族グループConsejo Indígena del Sur (Conisur)のメンバーが再度行進を行い、今度は道路建設を要請。

12月20日に出発したのメンバーが1月30日にラパスに到着したことを受けて、ビジャ・トゥナリとサン・イグナッシオ・モホスを結ぶ(既存の)道路を認めるか、法180を維持するかの協議を行うべきという話しが浮上した。モラレス政権は協議の実施、そして道路建設に前向きである。

低地の先住民族組織の連合体であるCIDOBはこの法案に反対の姿勢を示すとともに。この動きに警戒を強めている。CIDOBは、昨年の行進を実施する前に、協議の実施などを求めていた経緯も踏まえ、それを無視しておいて、国民の広範な支援を受けて、道路建設が中止となった後に協議を行うのかと反発している。

 モラレス大統領は「協議」を行うことを拒否することはできないであろうと考えているようであるが、この「事後協議」を政権の介入を含めて実施するならば、地域の先住民族組織の代表性などを含め、地域内に深刻な対立を持ち込むことは間違いないであろう。

 

 先住民族テリトリーにおける自治を進めるという方針のもと、既存の道路計画を白紙に戻した上で、地域のコミュニティの手で、開発の方向性を定めていく道筋を作るべきであろう。

未定稿。もう少し時間をとって、加筆修正する予定

開発と権利のための行動センター

青西

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2011/09/27

ボリビア:(更新)TIPNIS 開発と先住民族

<道路建設停止>
9/27 (10:13)現地26日夜、モラレス大統領は、問題となっていたビジャ・トゥナリとサン・イグナシオ・モホス間の道路建設の停止を宣言。ベニ県とコチャバンバ県を中心とした国民的な議論を待つこととなった。
 またモラレス大統領は先住民族行進に対して弾圧を命じたことはないと弁明、日曜日の弾圧またチョケワンカ外務大臣の一時拘束も含め、国際機関や人権組織などによるハイレベル調査委員会を設置するとのことである。
<防衛大臣辞任>
9/27 内務大臣は介入は、先住民族行進のグループと行進に反対していたヤクモの住民との衝突を避けるためであったと弁明。(ABI)
 一方、日曜日に拘束された行進参加者はルレナバケで住民によって解放される。またベニ県でストライキが行われるということであり、サンタ・クルス県でもデモが行われたようである。(amazonia boliviana, La Razon)
チャコン防衛大臣は今回の事件に反発して辞任。「対話の枠組みの中で、人権を尊重し、非暴力的に、母なる大地を守るためのオータナティブがあったにもかかわらず、今回政府がとった行進への介入という方法は支持できないし、それを守ることも正当化することもできない。今回のやり方は、ボリビアの人々が取り組んできた変革プロセスを攻撃しようとする右派を孤立させるどころか、この第8回行進の中での右派の画策を強化するものでしかない」(Erbol)

<先住民族行進を弾圧>

9/26 25日日曜日午後、先住民族行進に対して、500人あまりの警察隊が突如介入。催涙ガスなどを使用し、多数を逮捕。サン・ボルハを経由して、出身地に移送する予定であったとのことであるが、サン・ボルハの住民が警察の介入に抗議して、道路を封鎖して、サン・ボルハには入れない状況とのこと。けが人など詳細は不明(Erbol, Amazonia boliviana,La Razonなど)
 エボ・モラレス大統領は日曜日、夜にラパスの大統領官邸にて、先住民族行進のリーダーとの会談を呼びかけたばかりであった。
 また同日、TIPNISの16名ほどのリーダーと集まり、ベニ県とコチャバンバ県で、道路建設に関する住民投票の実施を表明。モラレス大統領は、TIPNISのいくつかの地域における違法入植者の排除についての法律を定めること、二つの県で、道路建設の是非を問う住民投票を行い、「賛成となれば、より実現的で、より短く、確実な道路のための調査をしなければならない」と語っている。TIPNISのリーダーは道路建設を認めるかわりに、入植を避けるための法律を求めていたという。
 この集まりにおいてモラレス大統領は「孤立した二つの県を結びつけることが必要であり、道路建設で、開発や教育、保健をTIPNISの人々にもたらさなければならない」、「道路建設に反対する行進は政治的なものであり、先住民族に経済的・社会的な改善など必要ないと思っている人々に影響されているのだ」と語っている。(ABI) 
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 状況は非常に混沌としてきた。ボリビア国内で、先住民族による権利要求の正統的な社会闘争と見なされてきた「先住民族行進」を警察力で弾圧したことに強い反発が広がることは間違いないであろう。
 更に、先住民族の求める「協議」に対して、2県における道路建設の是非を問う住民投票の実施を呼びかけるというのも、先住民族が「協議」を求めてきた運動の成果を踏みにじるものでしかない。
 協議よりも更に先を、先住民族自治に向けて前進してきていたと思われたボリビアで、先住民族運動は厳しい状況に置かれている。
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<チョケワンカ外務大臣「拘束」>
9/25 24日土曜日、交渉に臨んだチョケワンカ外務大臣他が、意志に反して数時間行進に同行させられ、その間に警察の封鎖を超えて前進するという事件が起きた。一部では「誘拐」「人質」といった報道もなされたようであるが、とりあえず解放され、ラパスに帰還。チョケワンカ外務大臣は改めて対話を継続する意向を表明。すべての当事者が対話を妨げるような動きをやめること、先住民族行進側にも交渉の意志を示すことを求めた。(ABI他)
 デモに合流したAlejandro Almaraz元副土地大臣などが、平和的なデモをゆがめ、政治的に利用しているというチャベス内閣調整副大臣の批判も存在している。注:http://www.laprensa.com.bo/diario/actualidad/bolivia/20110924/las-naciones-unidas-expreso-su-preocupacion-por-la-ausencia-de-acuerdos_7386_12554.html

9/24 深刻な衝突が懸念される中で、ボリビア国内では、先住民族行進を支持する動きが広がっている。政府はチョケワンカ外務大臣を筆頭とする委員会を立ち上げ、再交渉を始める方向である。 また先住民族行進を支持する人々がラパスからユクモに向かった。モラレス政権下の元副土地大臣や元大使の他、コチャバンバの「水戦争」における中心的なリーダーなども参加している。ボリビア労働者センター(COB)も先住民族行進を支持することを打ち出した。

政府は計画の見直しを含めた真摯な対話を行うことが求められている。


9/22 ベニ県とコチャバンバ県の間に位置するイシボロ・セクレ先住民族テリトリー自然保護区(Territorio Indígena y Parque Nacional Isiboro Secure, TIPNIS)を分断する道路建設に反対して、首都ラ・パスを目指して8月15日に開始された第八回先住民族行進は、政府との交渉で一時滞留していたものの、行進を再開。
 21日現在、行進を踏みとどまらせようとする警官隊と対峙しているとのこと
 その先に、道路建設に前向きで、モラレス大統領支持派と考えられる入植農民のグループがこの行進に反対しているということで、衝突を避けるために警察が行進を留まらせているという状況のようである。
 La marcha indígena fue frenada por la Policía
  http://www.cejis.org/node/359

だいぶ遅くなってしまったのですが、これから少しずつ、背景情報などを書き込んでいきます。
 青西

 1990年に繰り広げられた東部低地の先住民族による「テリトリーと尊厳のための行進」の成果の一つが、このTIPNISの先住民族テリトリーとしての法的認可であった。1965年から既に自然保護区として指定されていた地域であったが、そこが先住民族テリトリーとして認められたのである。
 
コチャバンバ県とベニ県の間に位置するTIPNISは、ベニ県の低湿地からユンガスと呼ばれる、高地に向かう傾斜地も含む変化に富んだ生態系を含む土地であり、モホ、ユラカレ、チマンといった先住民族が居住している。またこのTIPNISの南部には高地からの移民が居住する地域も存在している。
 そのテリトリーを分断する道路が建設されようとしているのである。

 国連総会に参加のために不在のモラレス大統領に代わり、大統領代理を務めるアルバロ・ガルシア・リネラはTIPNISの道路計画について「孤立しているために憲法で定められている権利を十全に享受できていないTIPNISを開発に取り込むこと」がこの計画の社会的な理由であると語っている。「TIPNISには一年の6ヶ月しか航行可能な河川がなく、それ以外の期間は徒歩の移動しかできず、未来の世代の教育にも困難を引き起こす」、更に「30%のアマゾン地域は高地やバジェ地方と切り離されており、それらを結びつけるのは国家の責務である」、「(アマゾン地域の)ベニ県は国内総生産の2.5%を占めるに過ぎず、パンド県は1%のみである・・・道路によってコチャバンバとベニ、ラパスを結びつけることができれば、ベニ県ヤパンド県はその開発の可能性が開けるであろうし、地域の格差がなくなり、開発に寄与することであろう」と言う。(2011/9/20)[1]
[1] Vinculación vial tiene fines estratégicos que integrarán y promoverán desarrollo http://www.presidencia.gob.bo/noticia2.php?cod=674

 この行進にはTIPNISの先住民族の他に、低地の先住民族組織の連合体であるCIDOBやグアラニ民族組織また高地の先住民族を中心とする CONAMAQなども参加している。先住民族諸組織は、協議への権利、テリトリーへの権利、自治の権利を求めているが、今回の行進に際して、その要求を16点に整理されている。[2]
1. TIPNISに影響する Villa Tunari-San Ignacio de Moxos間の道路建設の即時中止、関係する調査の中止。
2. Aguarbe自然保護区における炭化水素関連事業の中止(注:グアラニ民族居住地区)
3. 新しい農業法制における先住民族テリトリーの尊重
4. 先住民族テリトリーにおける温室効果ガス削減に対する代償を先住民族が受け取る権利を保障すること。
5. 先住民族に関連する法案については、先住民族に事前に協議し、同意を持って制定すること。
6. 東部地域の生産開発関連機関の分権化と先住民族の視点を開発計画に取り入れていくこと。
7. 先住民族自治を進めるための、資金を供給すること
8. 森林法制定に関する先住民族の参加
9. 先住民族の要求を取り入れた、自然保護区に関する特別法の制定
10. ボリビア先住民族大学の低地校のための資金供与
11. 皆保険制度に先住民族を的確に包合すること。
12. 先住民族テリトリーを、ムニシピオから区分した形での、人口・住居センサスを早急に実施すること
13. 先住民族に対する住居政策の実施
14. ピルコマヤ川の保全と利用に関する政策の実施
15. 先住民族に対する情報へのアクセスの保障と、コミュニティ手段の確保
16. 2010年5月のグアラニ先住民族会議との合意の履行

[2]Respuesta indigena al gobierno.pdf(要求、政府の回答、先住民族側の回答を含む)
http://plataformaenergetica.org/system/files/respuesta%20indigena%20al%20gobierno.pdf
Indígenas del Tipnis presentan demanda de 16 puntos al gobierno
http://www.hoybolivia.com/Noticia.php?IdNoticia=52007

しかしこの要請書に対して、モラレス大統領は「これはリーダーだけで書かれたもので、組織を構成する人々(BASE)は知りもしないだろう、NGOやMASへの恨みを持つものや反対派が書いたのだ」、「(この道路建設と)関係のない要求がいくつも含まれていると」反発していた。(2011/9/12)[3]

[3]Cuando hay marchas con demandas que beneficien a Bolivia siempre hay soluciones
http://www.presidencia.gob.bo/noticia2.php?cod=665

 政府はTIPNISにおける道路開発に関して、「協議を行う」と回答してきているが、先住民族組織は、これまでの計画をすべて取り消して、「事前」協議を行うことを求めている。またベニ県とコチャバンバ県を結ぶ道路に反対しているわけでもなく、TIPNISに影響しない形での道路を計画するように政府に要求している。[2]


  背景
<石油開発>
エクアドルの元制憲議会議長 アルベルト・アコスタ氏は、今回のTIPNISの動きについて、モラレス大統領に憂慮の念を伝える文書を公開している。[4]その中で「この地域に隣接するチスパニやリオ・オンドにおける炭化水素開発のコンセッションが多国籍企業に与えられている中で、この命のよりどころを横切る道路ができることを、そしてそれが先住民族のテリトリーにおける石油開発を始めるための道となるであろう」という懸念を伝えている。 
[4]Carta a Evo Morales por lo que está sucediendo en el Territorio Indígena y Parque Isiboro Sécure http://rebelion.org/noticia.php?id=135444

8月11日のラ・ラソン紙はTIPNISにおける石油の存在についてのグティエレス大臣の記者会見の記事を掲載している。これによると、TIPNISにおいては、既に飛行機を利用しての探査が行われているとのことである。TIPNISの先住民族リーダーは今回の道路建設が石油開発に道を開くものだという懸念を表明している。[5]
 



図は[5」の記事より
[5]El Gobierno dice que en el TIPNIS habría petróleo(2011/8/11)
http://www.la-razon.com/version.php?ArticleId=135455&EditionId=2618
Audio: Habla el Ministro Guitierrez sobre las áreas petroleras en el TIPNIS (2011/8/10)
http://www.hidrocarburosbolivia.com/nuestro-contenido/audio-y-video/44748-audio-habla-el-ministro-guitierrez-sobre-las-areas-petroleras-en-el-tipnis.html 

<移民>
 ビジャ・トゥナリとサンイグナシオ・モホ間の道路建設に関わる社会的・環境的コストという報告[6]はこの地域に対する高地からの移民の問題について言及している。この地域には70年代から移民が増加するとともに、麻薬密売人、石油開発業者、森林伐採業者、密猟者なども流入してきたという。
 入植者による農地開発を前に、1992年にはTIPNISの代表と、入植者の代表としてエボ・モラレスが領域決定の交渉を行ったという経緯もある。その後も入植地とTIPNISの土地の境界を巡る紛争と協議は続き、2008年に先住民族と入植者の間で境界画定が合意されたという。そして同じ年、モラレス大統領によって、TIPNISを分断する道路建設が決定された。
 このような動きの中で1990年に123万ヘクタールあるとされたTIPNISは2009年には109万ヘクタールのテリトリーへと縮小したのである。TIPNISの先住民族の代表は、道路が建設されたら自分たちの領域が守られるのか、という懸念を有している。

今回の低地先住民族によるテリトリーを守ろうとする動きの背景には、先住民族の中での、開発のあり方や土地利用に対する考え方の違いも存在しているようである。また要求項目3に関連する農地分配プロセスにおける先住民族テリトリーの保全もこうした点と関連していると思われる。

[6]Costos sociales y ambientales de la Carretera Villa Tunari - San Igna­cio de Moxos
http://www.fobomade.org.bo/art-1166

地図上のピンクの部分が入植者の居住時地域である。
Atlas Territorios Indigenas en Bolivia(2000)より

<IIRSA>
 南米地域のインフラ統合を目指すイニシアティブ:IIRSAは南米諸国を結びつけるための投資を積極的に進めている。ボリビアではアマゾン地域における道路建設などを通じて、ブラジルそしてペルーへのアクセスの改善を進めようとしている。[3]


http://www.geosur.info/geosur/iirsa/pdf/es/grup_pbb.pdf
今回問題となっているサン・イグナシオからビジャ・トゥナリを結ぶ道路計画は(オレンジの枠内のSan Borjasの東側より、南のCochabambaへ向かう道路となる)、IIRSAのサイトでは見つけられず、厳密にはIIRSAの一環であるとは言えないようであるが、インフラ統合を進め、経済開発を進めようという方向では一致したものである。この道路計画は90年代より存在し、モラレス政権下でも、国内的な優先事業と位置づけてきたのである。そして2008年にブラジル系企業のOASが落札。資金の8割はブラジル国立経済社会開発銀行(BNDSES)が貸し付けている。しかし上記 [5]の報告によるとOAS社は、モラレス政権下で行われた入札で重要な道路建設プロジェクトを落札してきているという。しかし同時に契約に対してはいくつもの疑念も投げかけられているとのことである。
 
9/24  追記
道路建設プロセス及びTIPNISの歴史・現状についてはCronología del proyecto carretero Villa Tunari San Ignacio de Moxos
http://marcha.ftierra.org/index.php?option=com_content&view=article&id=59:rair&catid=37:doc

及びこのサイトよりダウンロードできるEstudio de caso Nº 2
tIPNIS, la coca y una carretera acechan a la Loma Santa:territorio indigena en Cochabamba y Beniが参考になる

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2011/07/13

ボリビア:新農業法について

 6月26日、農牧・共同体的生産革命法(Ley 144)が布告された。この新農業法の原文に目を通したので、その概要について報告する。[1]

 この法律は、先住民族等のコミュニティを中核に据えた自国内での食料生産強化という特徴を持つのと同時に、輸出向け戦略作物を定めて取り組んできた過去の農業振興策の継続性を有する、はっきりしない法律となっている。現実的にはどのように「参加」が実現されていくかによってこの法律の持つ可能性は変わってくるのであろう。

<遺伝子組み換え>
 この法律で大きな議論を巻き起こしていたのが、遺伝子組み換え作物及び遺伝子組み換え種子に関する規定である。先住民族組織であるCONAMAQや環境団体などは第15条、第19条の規定に強く反発していた。[2]
 しかし最終的に定められた法144号は遺伝子組み換え作物の導入に道を開くものとなっている。第15条第2項は「遺伝子資産や生物多様性を脅かすもの、また生命システムの健康や人々の健康に害を及ぼすようなもの、あるいはボリビアが起源あるいは多様性の中心となっているような種に対する遺伝的改変を行った種子を含む農業技術パッケージを導入しない。」と定めている。
「健康や生命システムへの影響」をどのように評価するかにもよるが、東部低地の大規模農業地帯を中心に生産される米、サトウキビ、トウモロコシなどの遺伝子組み換え作物導入に対して道を開いていると理解することは可能である。
 第15条3項では、遺伝子組み換え食品等における表示義務を定め、また第19条第2項2では遺伝子組み換え作物の生産・輸入・流通を管理する規定の制定を定めている。しかしボリビア憲法の第255条は国際条約を批准する時の原則としてではあるが、8項で「遺伝子組み換え作物・食品や健康や環境に害のある物質の輸入・生産・流通を禁止する」と定めており、憲法との整合性に疑問がある。[3]
 また憲法との整合性はさておき、この法律の規定及び今後定められる規定を持って、厳密に遺伝子組み換え作物や食品を管理することができるのかどうか。ボリビア政府がどこまで大規模な食品産業に対抗していけるのかも注目される点ではある。[4] 

<戦略的作物>
 この法律のあちこちに顔をだす「戦略的作物」という用語が、これまでの農業振興政策との継続性を感じさせるものとなっている。これは第7条8項で定義されているが、必ずしも国内消費用の作物だけではなく、輸出向けの作物も含む規定となっている。
 この「戦略的作物」の高品質種子生産を振興し(第13条3項3.(a))、大学等は「国の定めた優先度の枠内で」研究を進めなければならない(第21条3項)とされている。
 また参加の上で定められるはずの食料生産5カ年においても「国が定めた優先的戦略作物」を含まなければならないという、本末転倒とも言える規定が含まれている。(第46条2項1)
 この「戦略的作物」というのがどのように定められ、どのように利用されていくのか、慎重に見ていく必要があるだろう。「母なる大地の恵みに基づく調和と均衡の上での有機的(農業)生産を優先する」(第2条)とされる「農牧・共同体的生産革命」において、農業は地域コミュニティを主体とする多様な農業生態系の確立として実現されるのではないかと思われるのだが、果たしてこれは国レベルで定める「戦略的作物」と両立するのであろうか。

<在来種と改良品種>
 高品質とは何を意味するのか、この法律では「高品質種子の生産・利用・保全・交換」を促進するとする一方で、「先住民族コミュニティ等が維持してきた在来種子の回復、保全、改良、生産、普及の促進」を定めている。(第13条3項)また第39条では独立採算の公的法人として「戦略的種子生産支援企業」を創設し、戦略的産品を優先しつつ、高品質の種子を生産するとしている。
 しかし種子銀行を設立して遺伝子資源を保全していこうという方針は示されているものの、多様な在来種の利用促進はあまり重視されていないようである。

<生産地域保全>
 興味深い点として、第14条では都市化に対して生産適地を保全していこう規定が含まれている。但しこの第14条においても、先住民族等のコミュニティによる領域管理の一貫としての土地利用の決定が、「国の方針に基づく」とされていることに違和感を覚える。先住民族の自治権が先にあるのではないだろうか。

<国内消費/地産地消促進>
 第20条では国内消費促進について定められている。学校給食に先住民族等のコミュニティによる生産物を取り入れていくこと、学校カリキュラムに栄養的・文化的に適切な国内産食品の消費についての教育を取り入れること、地元産や地域の労働者を雇用している生産物に「社会認証(Sello Social)」を行うこと、地元の生産物消費を振興するために、「ボリビア産を買って食べる」キャンペーンを推進するなど、積極的な方向が示されている。

<共同体的経済組織と参加>
 先住民族コミュニティ、通文化的コミュニティ(混在地域と考えられるのか?)アフロ・ボリビア系コミュニティを共同体的経済組織OECOMとして承認し、この組織の参加や融資へのアクセスを保障している。このOECOMが参加の基盤となっていくことが想定されている。しかしその一方で、既存の小規模生産者組織などが排除されるのではないかという懸念が表明されている。[5]

<包括的農業保険>
 第30条から第35条において定められている包括的農業保険はこの法律の最も注目されている内容の一つであり、自然災害等による収穫物の損害を補償しようというものである。

<肥料生産企業>
 第40条では肥料生産のための公営企業の設立も定められている。有機質肥料の生産、廃棄有機物のリサイクルの優先などを定めており、興味深い反面、鉱業・や石油産業から派生して生み出される原料利用も明記されており、どのような企業になるかは現時点では定かではない。

<融資>
第51条から第54条にかけて、共同体的経済組織に対する融資のための基金の設置が定められているが、NGOなどによるマイクロクレジットなどもあるなかでなぜこのような仕組みを今更作らなければならないのかという指摘もある。農民組織等が傘下組織への資金供給の仕組みを作りたかったのかもしれないが、組織的には大きな問題を抱えることになると思われる。第54条で、これらの農民組織などが「社会的管理」を担い、資金回収を支援するというのである。コミュニティや組織の中での分裂・対立につながる危険性が高い。


終わりに
 法律の文面を見るだけでは、どのような方向に向かっていくのか、正直測りかねるところがある。モラレス大統領が語っているように「しっかりとした組織を通じて、あなた方が中心となって、食料主権を確立していく責任があるのです。投資を無駄にしないために、生産者である農民組織は、それぞれの自治体で、何のために、どれだけの金額を生産に振り向けるべきかを決めなくてはなりません」ということなのであろう。[6]

 しかしこの参加が一部の組織だけの利権確保に終わるのか、幅広い参加を実現するものになるのか、ここが問われているように思われる。

 開発と権利のための行動センター
 青西靖夫


[1]LEY DE LA REVOLUCIÓN PRODUCTIVA COMUNITARIA AGROPECUARIA
http://bolivia.infoleyes.com/shownorm.php?id=3120
[2]Pronuciamiento de CONAMAQ(20110617)
http://www.conamaq.org/index.php?option=com_content&view=category&layout=blog&id=3&Itemid=11 
[3]ボリビア多民族国憲法
http://www.vicepresidencia.gob.bo/Portals/0/documentos/NUEVA_CONSTITUCION_POLITICA_DEL_ESTADO.pdf
[4]遺伝子組み換えに関する規定については参考資料として次の記事がある。
¿A qué cultivos transgénicos apunta la Ley de Revolución Productiva Comunitaria?
http://www.bolpress.com/art.php?Cod=2011062707
[5]Ley de Revolución Productiva no garantiza seguridad alimentaria
http://www.aopeb.org/index.php?option=com_content&view=article&id=279:ley-de-revolucion-productiva-no-garantiza-seguridad-alimentaria-&catid=52:noticias-aopeb&Itemid=26
[6] ボリビア:食料主権の確立と小農による有機農業振興を目指して(20110628)
http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2011/06/post-cc11.html
[7] その他参考記事として
Ley de Revolución Productiva Agropecuaria para el agronegocio y la banca
http://www.bolpress.com/art.php?Cod=2011070502
Los transgénicos y la modificación genética de la política agraria en Bolivia
http://www.cedib.org/index.php?/transgenicos/los-transgenicos-y-la-modificacion-genetica-de-la-politica-agraria-en-bolivia.html

 農牧・共同体的生産革命法(法144) 部分訳/概要まとめ/仮訳
 LEY DE LA REVOLUCIÓN PRODUCTIVA COMUNITARIA AGROPECUARIA
第1節
第1章
第1条(憲法における位置づけ)
第2条(目標)
食料主権のための農牧・共同体的生産革命のプロセスを規定することを目的とする...母なる大地の恵みに基づく調和と均衡の上での有機生産を優先する。
第3条(目標)
多元的経済に基づく、農牧・共同体的生産革命を通じて、ボリビア人の「善き生き方」のために健全かつ質のよい条件での食料主権の確立を目指すことを目標とする。
第4条(適用範囲) 略
第5条(法の射程)
1. 食料主権の確立のための政策
2. 共同体的経済組織(Organización Económica Comunitaria – OECOM)としての先住民族コミュニティ、多文化コミュニティ、アフロ系コミュニティの承認
3. 食料の十分な生産、加工、流通を保障するために、適切に技術的支援を行えるように、公的機関の構造を見直す
4. 統合的・持続的な農牧生産・開発プログラム及び計画、及び生産戦略の決定のための、コミュニティ及び多元的経済主体の参加に基づく食料戦略計画の策定
5. 適切な研究、革新、技術、情報システム
6. 食料生産、加工、流通における規制システム
7. 投入材、生産インフラ、技術支援、普及へのアクセスの改善
8. 生産プロセスを保障するための水及び遺伝子資源の適切かつ持続的な利用
9. 先住民族等のコミュニティにおける領域的な管理プロセスの促進
10. 伝統的な知見、実践、知識を回復するような通文化的な視点に基づく、先住民族コミュニティ等の生産・加工・流通・金融及び組織的能力の強化
11. 普遍的農業保険
12. 先住民族等のコミュニティに対する資金移転
13. 融資システム

第2章 原則及び定義
第6条(原則)
1. 母なる大地との調和と均衡。必要な食料を充足するための母なる大地の恵みの利用とアクセスは、自然との調和、尊重、その擁護の枠組みで行われるものである。
2. 補完。食料主権は、国家や先住民族等、他の多元的経済主体、住民一般の、政策、原則、イニシアティブの協力によって支えられるものである。(一部略)
3. 共同責任。食料主権は、すべてのレベルにおける政府やすべてのボリビア国民に依拠する国家の義務であり、責任である。
4. 透明性。 (略)
5. 「善き生き方」。多文化的なこの国における一般的な利益の公正さに貢献するような集団的利益に基づくものであり、物質的な財へのアクセスと享受、住民の有効かつ主体的・通文化的・精神的な実現に基づき、また母なる大地との調和及び人類の一致するところの基本的必要性の充足を保障するものである。
6. 互恵性及び連帯。農牧・共同体的生産革命は、すべての住民、特により脆弱で必要性を有する人々の食料と農牧生産を充足させるために、一致、相互尊重、協力、交換、相互かつ等価の報酬といった先住民族等における伝統的価値観の実践を取り入れたものである。
7. 適切な食料。健康的で十分な食料への永続的なアクセスであり、いかなる社会階層や宗教、政治的選択や性別、世代によって差別されないものである。
8. 食料主権。多民族国家を通じてボリビア国民が、生産や流通、消費等について政策や戦略を定めかつ実施するものである。(一部略)
第7条(定義)
1. 技術支援(略)
2.生産基盤(略)
3.コミュニティ(略)
4.共同体的経済。母なる大地との調和と均衡に基づく独自の組織形態を有し、その領域と資源を管理するような先住民族等のコミュニティにおける世界観に基づき、集団の福祉のために、計画し、組織し、生産し、余剰を生みだし、分配するシステムに基づく開発モデル。
5.多元的経済。国内に存在する、共同体的あるいは、国家、民間、社会的協同組合などの様々な経済組織
6.先住民族コミュニティによる領域管理(一部訳)
7.Pirwa (様々な資材で作られている伝統的な貯蔵施設)
8.戦略的生産物。直接あるいは間接的にボリビア国民の食料を構成し、また輸出のための機会や備蓄を構成するものであり、ボリビア国家は、食料主権を実現するために、それを認定し、優先するものである。(一部訳)
9. リスク(略)

第3章
共同体的経済組織

第8条
先住民族コミュニティ、通文化的コミュニティおよびアフロ・ボリビア人コミュニティを共同体的経済組織(Organizaciones Económicas Comunitarias – OECOM)として承認する。これは「善き生き方」のための組織的、生産的、社会的、文化的な中核を構成するものである。
第9条(領域的管理能力)
食料主権と余剰生産のための農牧・林業活動における生産・加工・流通・金融分野における先住民族等のコミュニティの領域管理の能力の承認
第10条(参加の保障)
先住民族等のコミュニティの農牧・共同体的生産革命プロセス、水の持続的利用・管理、森林利用、テリトリー確立、計画における参加の保障
第11条(公的政策の策定)
先住民族等のコミュニティの政策策定への参加の保障とその執行における社会的管理

第二節
農牧・共同体的生産革命法の政策、制度的構造、計画
第1章
農牧・共同体的生産革命のプロセスのために、統合的かつ持続的な農村開発と食料主権に基づく安全保障のために国家が定める政策

第12条(農牧・共同体的生産革命に関する政策)
1. 生産基盤強化に関する政策
2. 生産地域の保全
3. 自然の遺伝子資源の保護
4. 生産振興
5. 集荷、備蓄、加工、産業化
6. 公平な交換及び流通
7. 国内消費の促進
8. 調査研究、革新及び伝統的知識
9. 農牧衛生サービス及び食品衛生管理
10. リスク管理
11. 緊急食料対策
12. 住民への食糧供給の保障
13. 適切な食料・栄養状態の保障
14. 先住民族コミュニティの領域管理
15. 包括的農業保険
16. 移転
第13条(生産基盤強化に関する政策)
-在来・伝来の実践を重視
-灌漑水の流域管理
-植生回復、有機肥料、在来種子の回復、生物多様性の保全
1-土壌
-在来種あるいは導入後適応した種を用いての植生回復
-自然放牧地に対する放牧圧の減少
-自然草地の改善
-有機肥料の利用(有機残渣の利用、斬新的な農薬・化学肥料の代替、排除)
-伝統的な土壌保全技術の利用
-森林と生物多様性の維持
-非木材森林資源の合理的利用、アグロフォレストリー
-共同体レベルでの適切な土壌適正に基づく利用そのための組織強化
2-生産のための水利用
 優先度、潜在力に基づく食料生産のための持続的水利用
a) 知識や技術を回復しつつ、効率的な水利用技術と土壌保全を行い、また最善の集水システムを明らかにしつつ、灌漑設備を改善及び建設
b) 乾期の水確保のために貯水池、ダムによる水確保
c) コミュニティにより伝統的実践などによる水の独自管理システムの強化
d) 生命と土壌を守ることができる適切な水利用についての流域単位での調査
3-種子
 生産のための供給を保障できるように、高品質の種子の生産、利用、保全、交換を促進し、また擁護する。
a) 戦略的作物を優先して、種子生産を振興する
b) 先住民族コミュニティ等が維持してきた在来種子の回復、保全、改良、生産、普及の促進
c) 種子の生産、設備、認証、販促、流通に対する管理
d) 市場を促進しつつ、種子の戦略的な備蓄を生みだし、また保全しうるような種子銀行、種子基金、集荷施設の設置
e) 種子の生産及び集荷に従事する民間セクターとの戦略的連携
4-遺伝子資源
a) 国家農業・森林技術革新局(INIAF)が農業生物多様性や近縁野生種、国内諸環境地域における微生物の遺伝子資源を、野外もしくはその他の土地において保全及び管理を担うものである。これは遺伝子資源の喪失を避け、遺伝的多様性の利用可能に保つことを確実にする目的がある。
b) 国内の遺伝子資源の保護という政策に合致する範囲において、国の食料主権と食料安全保障を強化するために、国は生産あるいは研究目的での遺伝子資源へのアクセスを支援する。
第14条(生産地域の保全)
食料生産を保障するために、中央国家は地方の領域自治組織と調整の上で、生産適地への都市化の進行を避け、農牧業の生産に適した地域を保全するために土地の利用を管理する。
1-農村開発・土地省は、地方の領域自治組織と調整の上で、農牧森林生産のための土地利用計画を策定し、生産適地を把握し、戦略的生産地域を定め、また地方領域組織は国の方針に基づきつつ、その領域計画を策定しなければならない。
2-生産適地を保全するために都市化の境界を定め、居住区域を計画する
3-都市化周辺地域における生産適地を把握し、生産活動を阻害しないように生産地域と新しい居住地域を混在させていくこと。
4-水平的な都市化の広がりに対して、都市部における垂直的な成長を促進する
5-モノカルチャーの拡大を避けるために、代替的な計画・プログラム・プロジェクトの実施を通じて、多様化された農牧・林業生産を促進する
6-先住民族等のコミュニティは、母なる大地との調和ある共存の原則と文化的規範に基づき、食料安全保障ための生産地域に対して予防措置を取りつつ、その領域管理の権利とその行使の枠内で、国の方針に基づき、その空間の利用・占有計画を定めるものである。
第15条(自然の遺伝子資源の保護)
憲法第342条、346条、母なる大地の権利法(Ley Nº 071, de 21 de diciembre de 2010)に基づき、ボリビア多民族国は、食料主権と人々の健康を保障しつつ、生命システムと自然プロセスの維持として生物多様性を保全するものもであり、そのために
1-遺伝子資源に関する担当機関を通じて、野生の近隣種を含め、国の遺伝的資産の保全のために施策を講じるものであり、伝統的な知識や知見の保全のために、派生する利益の公正かつ公平な分配に留意しつつ、新品種や栽培可能な品種の利用を把握しまた促進しつつ、生産を支援するものである。
2-遺伝子資産や生物多様性を脅かすもの、また生命システムの健康や人々の健康に害を及ぼすようなもの、あるいはボリビアが起源あるいは多様性の中心となっているような種に対して遺伝的改変を行った種子を含む農業技術パッケージを導入しない。
3-直接的あるいは間接的に人の消費に向けられるすべての生産物において、遺伝的改変を受けた有機物含む物あるいはその派生物は、そのことを明確に表記しなければならない。

第16条(生産振興政策)
-家族、共同体、アソシエーション、協同組合などによる生産形態に依拠しつつ、伝統的・有機・エコロジカルな生産におけるより高い生産性に向けて振興する。
第17条 (集荷及び貯蔵)
-コミュニティレベルでのPirwanoモデルを促進する
-食糧供給に影響を及ぼしうる事件に備えて、戦略的な食料を確保するために備蓄を促進する
-インフラ整備への支援
第18条 (加工・産業化政策)
-地域ごとの多様化した生産戦略に従う、加工・産業化プログラムの推進
第19条 (交換及び流通)
-流通プロセス及び公正な交換プロセスは互恵性、補完性、生産物の再配分の原則に基づくものであり、人類に奉仕するためのものであり、市場のためではない。
-生産セクターと生産量、輸出量目標について合意を締結する
-国内産農業・食料生産を保護し、輸出入を規制する
-国内生産者への補助金を優先する
-認可された国営企業を通じて、地方の生産者からの正当な価格での購入し、消費者に直接、アクセス可能な価格で提供するための特別な規定を定める
-遺伝子組み換え生産物の生産・輸入・流通を管理する規定を定める
-食品衛生に関する認可システムを教戒する
-国際貿易における不当な扱いに対して、国内生産者を守るための、政策の財政的コントロールや仲裁のための規定を定める
-中央国家の執行府と地方自治体機関は、農業セクターの機関と調整の上で、交換のためのスペース、卸売市場、民衆スーパーなどを設置し、生産者と消費者の結びつきを支援し、正当な価格を保証する
第20条 (国内消費促進).
-ボリビア国民の参加に基づき、生産・加工・流通・責任ある消費の範囲において、独自の食料システムを定める。それは食料主権を実現するための、母なる大地の恵みの適切な利用と整合する自給レベルを定めるものである。
-食料・栄養教育、栄養的にも文化的にも適切な国内産食品の消費の重要性を学校カリキュラムに取り入れる
-学校給食プログラムの拡大
-学校給食や母子補助プログラムへの食料供給者として先住民族等のコミュニティを取り込んでいく
-国内産原料や労働者の利用を認証するための「社会認証(Sello Social)」を行う。
-地元の生産物消費を振興するために、「コンプロ イ コモ ボリビアノ(ボリビア産を買って食べる」を推進する。
第21条 (農牧・林業技術革新政策)
-INIAFを強化しつつ農牧・林業の技術革新を促進する
-技術革新は参加型の視点とモデルのもとで進められ、コミュニティやその他のアクターの参加の上で技術革新の民主化を進める
-大学やその他の技術的機関、コミュニティによる生産技術革新は、国家農牧林業技術システムの方針に沿って行われなければならない。
第22条(機械化・技術利用政策)
-参加型計画の枠組みで、母なる大地の権利を尊重しつつ、またアクセス可能で持続的な形で、国家は適切な機械化を促進、振興する
-機械化された技術へのアクセスを支援し、またその利用へのインセンティブ
-在来、伝統的知識、知見を回復しつつ、農業機械・技術の研究・設計・生産を振興する
-農業機械化を進めるために、国家開発のための軍企業(COFADENA)を強化する。
第23条 (農牧衛生・食品衛生政策)
第24条(予防及びリクス管理政策)
-食料生産に影響する事象のモニタリングと早期警戒
-食糧危機の予防、緩和、及び生産能力の復興、再建
-自然災害に対するコミュニティの対応力強化
第25条(緊急食料対策)
第26条(食料供給の保証)
正当な価格での生産と供給を保証するために、国家は必要な施策を講じる。
第27条(食料・栄養政策)
ボリビアの住民が適切な栄養状態にあること、必要な栄養をカバーする多様な食品の消費を保証すること、そのために文化的に適切な栄養や食品に関するプログラムを定め、また情報提供や教育を行う。
第28条(先住民族等のコミュニティの領域管理への支援政策)
第29条(農牧技術庁の創設)

第二章 
包括的農業保険
第30条(包括的農業保険”パチャママ”)
天候要因や自然災害によって引き起こされた農作物の損害を補償するためのもの
第31条(受益者)
-集団的生産をおこなっている先住民族等のコミュニティ
-個人的生産を行っている先住民族等のコミュニティ
-自然人あるいは集団として農業を行っている者
-”パチャママ”は細則で定める要件を満たしている者のみ対象とする。
第32条(農業保険のための制度)
-農業保険庁(INSA)の創設
-国庫からの支出
第33条(INSAの権限及び機能)
第34条(農業保険の管理会社)
第35条(保険料への補助金)
-貧困層への保険料の補助金


第三章 制度構造
第36条(共同体経済組織)
農牧・共同体的生産革命のための組織基盤は、先住民族等のコミュニティであり、それはこの法を持って共同体経済組織(OECOM's)と定められる。これらは独自の組織構造に基づき、独自の手続きで意志決定、紛争解決、領域管理、そして自然資源の利用を行うものである。
第37条(経済生産審議会)
-多民族国経済生産審議会(COPEP)
農牧・共同体的生産革命に関する政策策定、計画、モニタリング、評価のための参加と調整を行う。ここには大統領、生産関連の大臣、先住民族等の組織代表、国家農牧連盟代表が参加。必要に応じて次のものを招集(略)
-県経済生産審議会(CODEP)
-地域経済生産審議会(COREP)
-ムニシパル経済生産審議会(COMEP)
第38条(農牧・共同体的生産革命のための公的制度)
1.生命のための統合的水管理
2.生命のための統合的土壌管理
3.有機質肥料生産
4.在来種子・改良種子生産、種子生産地域の開発
5.技術支援、農業機械、資材供給
6.集荷・貯蔵
7.加工・産業化
8.共同体的流通。市場の改善
-参加と社会的管理は、既存及び新規の組織において保証されなければならない。
第39条(戦略的種子生産支援企業の創設)
-独立採算の公的法人として戦略的種子生産支援企業の創設
-INIAFと調整の上で種子銀行を設立
-戦略的産品を優先しつつ、高品質の種子を生産する
-中小あるいはコミュニティによる種子生産を支援する
第40条(肥料生産企業の創設)
-独立採算の公的法人としての肥料企業の創設
-有機肥料の生産と廃棄有機物の利用・リサイクルの優先
-廃棄物再利用の取り組みを支援
-鉱業・石油採掘他、国営事業によって生み出される資材の利用
第41条(食料生産支援企業)
-大統領令Nº 29230 (2007/0815)に基づいて設立された食料生産支援企業(EMAPA)を強化
-EMAPAの元に、食料生産グラン・ナショナル社を、混合経済会社として設立し、戦略的な食料生産を強化する。
第42条(農牧統計情報)
-国家統計局(INE)のもとに、農牧情報局を設置し、必要な情報を整備する
第43条(農業環境・生産監視)
-農村開発・土地省のもとに、農業環境・生産の監視機関を設置し、モニタリングを行う。
第44条(農業環境・生産監視の機能)
第45条(農村社会組織への技術支援)

第四章 社会的参加に基づく国家計画
第46条(計画のための制度)
1 すべてのレベルにおいて、経済生産審議会が農牧・共同体的生産革命のための戦略計画を策定する
2 農牧・共同体的生産革命のための戦略計画の枠組みにおいて、執行府は多元的経済審議会と調整の上、食料生産5年計画を策定する。

第三節 
経済・金融環境
第一章 県生産共同基金と条件付き資金供与
第47条(県生産共同基金)
第48条(県生産共同基金に関する規定)
第49条(県生産共同基金の条件付き資金供与)
第50条(条件付き資金供与の方向性)

第二章 融資システム
第51条(共同体融資基金の創設)
OECOMや小規模生産者に対して融資をおこなうための基金を設置する
そのための執行委員会には二名の政府代表(経済省及び農村開発省)多元的経済生産審議会代表、及び二名の農民・先住民族組織の代表が参加する。
第52条(利子)
利子は管理コスト及び財務費用のみを考慮すべきものとする。
第53条(担保形式と代位弁済)
-担保は機械、投入財、現在あるいは未来の収穫物、家畜、あるいはその他の資産によるもの、また保証基金や人的な保証、コミュニティによる保証も含まれる。
第54条(支払いを確実化する仕組み)
農民・先住民族組織であるCSUTCB, CIDOB, CSCIB, CNMCIOB-BS y CONAMAQの傘下にある地域組織による社会的管理を、支払いを確実にする仕組みとして定め、融資の回収を支援するものとする。

第55条(技術支援)
第56条(生産開発銀行:BANCO DE DESARROLLO PRODUCTIVO S.A.M.).
第57条(農業向け融資拡大)

最終規定
移行に関する規定

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2011/06/28

ボリビア:食料主権の確立と小農による有機農業振興を目指して

 6月26日、農牧・共同体的生産革命法(Ley 144)が布告された。食料主権と小農民による農業振興を目指したこの法律は、審議過程において、遺伝子組み換え作物をどのように扱うかで先住民族組織や農民組織の間で大きな議論を巻き起こしていた。最終的に当初法案に反発していた先住民族組織なども含めた「統一協定」に参加した諸組織の立ち会いのもと、エボ・モラレス大統領によって布告されたものである

 大統領は「この先、我々はこの新しい法を履行していく責任があります。それぞれの村から、しっかりとした組織を通じて、あなた方が中心となって、食料主権を確立していく責任があるのです。投資を無駄にしないために、生産者である農民組織は、それぞれの自治体で、何のために、どれだけの金額を生産に振り向けるべきかを決めなくてはなりません」と語ったという。
 
 また大統領官房であるカルロス・ロメロは、この法律が遺伝子組み換え作物を推進すものではなく、ボリビアに存在する伝統的な遺伝子資産の価値を認めていくものであり、先住民族の持つ遺伝子資源の開発を通じて、バイオ・テクノロジーの開発を進めるものである」と語っている。
 この法律の15条は、遺伝子組み換え種子の国内持ち込みを禁止しており、また輸入食料は遺伝子組み換え作物を含むかどうか明記しなければならないとのことである。[1]
 
 しかしながら、6月27日にBolpressのサイトに掲載された記事によると、この法律では、遺伝子組み換え作物を全面的に禁止しているのではなく、ボリビアが起源であるか多様性の中心である、あるいは遺伝子資産や生物多様性、健康を脅かしうるような遺伝子組み換え種子を含む技術パッケージを導入しない、と定めているだけであり、近い将来に遺伝子組み換え稲などが導入されてくるであろうと指摘している。[2]


 このように遺伝子組み換え作物を巡っての対立は解消されていないようである。このほか、この法律では、国家による肥料生産、種子生産、農業保険などについても定めているとのことであるが、まだ制定された法律原文を入手できていないので、今後報告したい。

開発と権利のための行動センター
青西 靖夫
 
[1] EVO MORALES PROMULGA LEY DE REVOLUCIÓN PRODUCTIVA QUE GARANTIZA SEGURIDAD ALIMENTARIA EN EL PAÍS SIN TRANSGÉNICOS http://www.vicepresidencia.gob.bo/Inicio/tabid/36/ctl/noticia/mid/471/code/201106261/Default.aspx
[2]¿A qué cultivos transgénicos apunta la Ley de Revolución Productiva Comunitaria?
http://www.bolpress.com/art.php?Cod=2011062707

注:「統一協定」に参加するCONAMAQは22日の段階でも、遺伝子組み換えに関わる法案の15条などに反発する声明を出しており、そこではCONAMAQとして法案に賛成する署名をした覚えはないと語っている。それ以降どこまで歩み寄りがあったのかは定かではなく、火種は残ったままのようである。

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2011/04/26

ボリビア:原発のない南米に


 エボ・モラレス大統領は「気候変動と母なる大地の権利に関する世界民衆会議」から一周年の集いにおいて、原子力発電に関心を持っていたことを認めるともに、原子力発電を受け入れない方針を明らかにした。[1]

「原子力に関連して日本で起きた事態は非常に深刻であり、残念なことであり、また深い憂慮を引き起こすものです。この機会を利用して、また間違いを犯さないために・・・私はボリビアに原子力があればという願いを持っていました。もちろん核兵器ではなく、原子力発電です。しかしそれはたぶん間違っていたのだということに気がつきました。日本の状況を前に、考えなければなりませんし、それを拒絶しなければならないでしょう。」

母なる大地のために大統領はその信念を大陸レベルに広げる必要性があるとして、
「ボリビア人の生命を守るため、南米の人々の命を守るために、原子力のない南米にしなければなりません」と断言した。

「この新しい1000年の中で、国連は母なる大地の権利を認めなければなりません。そのために社会運動の参加と社会的な力が不可欠です」

ボリビアは昨年10月イランとの原子力エネルギー協定を結び、電力輸出に関心を示していたが、[2]その方針の転換と、原子力発電所のない南米に向けての方向性を明らかにしたものである。

また太田昌国氏は既に1月にこの問題について次のように指摘していた。
「モラレス政権は、イランの協力を得て原子力発電所建設を検討している。ボリビアとイランに共通する「抗米」の意思表示としての意味はともかく、電力不足解消の名目があるにしても「母なる大地」は原発に耐えられるかという問い直しが、近代主義的マルクス主義の超克をめざしていると思われるモラレスだけに、ほしい。(1月7日記)」[3]

 まとめ
 青西

[1]Presidente Morales descarta uso de energía nuclear en Bolivia
http://www.presidencia.gob.bo/noticia2.php?cod=414
[2]Morales “sueña” que Bolivia cuente con energía nuclear, porque “hay materia prima”
http://www.noticias24.com/actualidad/noticia/178511/morales-suena-que-bolivia-cuente-la-energia-nuclear-porque-hay-materia-prima/
BOLIVIA E IRÁN BUSCAN DESARROLAR ENERGÍA NUCLEAR
http://www.la-razon.com/version.php?ArticleId=120376&EditionId=2330
[3]太田昌国の夢は夜ひらく⑪ 遠くアンデスの塩湖に眠るリチウム資源をめぐって
http://www.jca.apc.org/gendai_blog/wordpress/?cat=13

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2011/02/03

母なる大地と携帯電話

国際青年環境NGO A SEED JAPAN / FLAT SPACE / 国際環境NGO FoE Japan / アムネスティ・インターナショナル日本が現在、「エシカルケータイキャンペーン」を行っています。

普段、多くの人が使っている携帯電話の背後に、先住民族の土地からの排除、環境破壊、児童労働、地域紛争の助長など様々な問題が隠れていることに目を向けていこうというキャンペーンです。http://www.ethical-keitai.net/top

ちょうど、ボリビアの「母なる大地の権利法」を訳していて、人間活動を「母なる大地」と調和的なものにしていく必要性を改めて考えていたところでした。

この法律を作ったから、ボリビア社会が一気に変わるというのではなく、「変わっていくための意志」を明確に示したものだと思います。これから新しい生き方をみんなで築いていこうという。

その中で、国の義務として
2. 母なる大地の生命としての循環やプロセス、均衡の統合性と再生産能力を守りつつ、「善き生き方」のためのボリビア国民の必要性を充足するために、均衡の取れた生産と消費のあり方を開発しすること
また一人一人の務めとして
c)母なる大地の権利の擁護あるいは尊重に向けた提案を生み出すために、個人としてあるいは集団として活発に参加すること
d)母なる大地の権利と調和的な生産活動や消費習慣を取り入れること
e)母なる大地の構成物の持続的な利用を確実に行うこと
http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2010/12/post-ad79.html
といったことが定められています。

 法律にならなくても、きっと多くの人が実践していることではあるでしょう。それをもっとみんなで共有して、新しいモデルを築いていくことが求められているように思います。
 そういう中で、資源を膨大に使って生きている私たちが担っている責任がより重いのは明らかです。

 青西

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