アルゼンチン

2014/02/01

チャコ地域での森林減少続く

パラグアイとアルゼンチンを中心にグラン・チャコ地域の森林減少が進む。グラン・チャコ地域は、パラグアイ、アルゼンチン、ボリビアそしてブラジルにかかる南米大陸南部内陸の乾燥・半乾燥地域であるが、この地域での森林減少が進みつつあるとEcoportal Netは伝えている。

 2013年には農業開発や牧畜業の広がりで539,233ヘクタールの森林が失われたという。これはグランチャコ地域の0.5%の森林が一年間に失われたことに相当する。このうち268,000haがグランチャコ地域の25.4%を含むパラグアイで、235, 061haが62%を含むアルゼンチンで喪失したとのことである。

Más pérdida de bosques por actividad agrícola

http://www.ecoportal.net/Eco-Noticias/Mas_perdida_de_bosques_por_actividad_agricola

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2011/05/12

アルゼンチン:テリトリーの回復を求める先住民族コム

 土地の回復を求めて5ヶ月近くにわたって首都の7月9日通りで座りこみをおこなっていたコム民族のリーダーと政府の交渉がついに行われ、合意が結ばれた。

 2010年11月23日、アルゼンチン北部のフォルモサ州のラ・プリマベーラ村において、伝統的な土地回復を求めて道路封鎖を行っていたコム民族のグループに対して、暴力的な弾圧が加えられた。警察が強制排除を行うとともに、地域で先住民族と土地紛争を抱える有力者が同行し、先住民族のリーダーに銃撃を加えたのである。[1]
 この衝突でコム民族の62歳のロベルト・ペレスが殺害されたが真相はいまだ明らかにされていない。

 その後、コム民族のリーダーであるフェリックス・ディアス他は2010年12月23日から土地の回復、11月23日の弾圧の真相究明などを求めて7月9日通りでの座り込みを開始したのである。
 憲法そして国内法で認められている先住民族の土地への権利の履行を求める先住民族の声に応えようとしない政府に対して、コム民族のメンバーは4月末からハンガーストライキを行うとともに、道路封鎖も行い、政府に対して交渉を求めてきた。更に米州人権委員会もコム民族のリーダーの生命と身体の安全を確保するための予防措置をアルゼンチンに要請した[2]
 こうしてついに5月2日、政府との交渉が実現し、内務大臣とコム民族のリーダーとの間で対話テーブルを設置することに合意、5月6日に座り込みを解除したのである。

 また5月9日の一回目の交渉において次のような点について内務大臣などと合意が成立している。[3]
1)コミュニティの総会において合意ある手法に基づきラ・プリマベーラ村の代表を定めること
2)実効法に基づき、コミュニティの土地の貸借が禁じられていることを改めて確認すること。
3)コミュニティによって要求されている土地と国立公園の重複について技術的調査を行うこと
4)フォルモサ州において法26.160に基づいて先住民族テリトリーの領域確認を行うこと。[4]

まとめ:青西

[1] Argentina: Indígenas de Formosa sufrieron disparos y sus casas fueron incendiadas
http://amnistia.org.ar/actua-firma-acciones/argentina-indigenas-de-formosa-sufrieron-disparos-y-sus-casas-fueron-incendiadas
Violencia contra la comunidad toba qom en Formosa
http://cantonuevo.perrerac.org/?p=3705
[2]“El levantamiento fue voluntario”
http://www.pagina12.com.ar/diario/elpais/1-167785-2011-05-08.html
Los qom levantan el acampe de la 9 de Julio
http://www.pagina12.com.ar/diario/ultimas/20-167689-2011-05-06.html
[3]Carta acuerdo del 9 de mayo de 2011 entre la Comunidad QOM Navogoh y representantes del Gobierno Nacional y Provincial
http://qoomih-qom.blogspot.com/
[4]Ley 26.160
アルゼンチンは1992年にILO169号条約に批准し、その後、1994年の憲法改正において、先住民族の存在を認め、コミュニティの法人格、伝統的に占有してきたコミュニティの所有権、占有権を認めるとともに、それらの土地が譲渡や移転の対象とならないことを定めている。
 更に2006年の法26.160によって、先住民族の土地の領域確定のための調査を2013年まで(当初は施行後3年)に行うように定めている。
http://www.desarrollosocial.gob.ar/Uploads/i1/Institucional/Ley_26160.PDF
http://infoleg.mecon.gov.ar/infolegInternet/anexos/120000-124999/122499/norma.htm

*土地紛争の発端はコムのテリトリー内に大学建設が計画されたからともされているが、2600haという面積が要求されていると言う話もあり、背景は定かではない。コム民族には1940年にテリトリーが認められている。
*ラ・プリマベーラ村とその闘争を紹介した動画です。
Comunidad qom La Primavera
http://vimeo.com/21388391

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アルゼンチン:大豆と先住民族

 5月1日にブログに掲載されたダリオ・アランダの記事を紹介する。これはアルゼンチンにおける外国人による農地取得の問題と大豆生産の拡大、コム民族の土地要求を平行しながら検討した記事である。
 長文かつ背景情報を持たないとわからない部分もあり、適切ではないかもしれないが、抄訳かつ整理して紹介する。
Soja sí, indígenas no
http://darioaranda.wordpress.com/2011/05/01/soja-si-indigenas-no/

 クリスティーナ・フェルナンデス政権は、4月27日、外国人への土地売却を規制する法案を議会に提出。一方、首都の(目抜き通りである)7月9日通りではコム民族のラ・プリマベーラ村の人々が4ヶ月にわたって座り込みを続け、先住民族の権利を認めたILO169号条約の履行や憲法第75条の履行、そして老人や女性を含め負傷し、62歳のロベルト・ペレスが死亡した2010年11月23日の弾圧に対する正当な裁判を求めて、48時間のハンガーストを決行中である。

 土地の外国人所有 
 
 アルゼンチンの土地がどの程度、外国人の手に渡っているのかを把握するデータは現在存在しておらず、今回の法案の中心はこの所有者台帳を作るというところにある。
 しかし、これは大規模な大豆生産に代表されるような現在の農業モデルを否定するものではなく、土地集中という農村部における不公正の核心に触れるものではない。
 アルゼンチン農業技術局のデータによると、2%の農園が国土の半分をコントロールする一方で、57%を占める小農民などが有する小農園は3%の土地を有するだけである。また1988年に42万2000存在したこうした小農園は2002年までに24.6%減少して。31万8000となってしまった。それ以降も土地集中が進んでいるが、政府と大農園主の紛争のさなかに行われた2008年のセンサスのデータは信頼できるものではない。
  
 3月1日、議会における大統領の演説は「ブラジルモデルや家族農業」に言及し、期待を抱かせるものであった。ブラジルの法律では、土地の社会的機能にも言及しており、土地の商品化ではなく、食料生産、食料主権を確立するための土地、という方向が打ち出されるのではないか、と期待されたのである。
 しかしながら議会に提出された法案には、土地の社会的機能という言葉も家族農業と言う言葉も含まれてはいなかった。

 外国企業も外国政府も別に土地を買う必要はないのである。


 2010年10月に、リオ・ネグロ州政府は中国と24万ヘクタールの作付けに関する契約を締結。州政府は「歴史に残る重要な一歩である」と賞賛する一方で、各界がパタゴニア地方の「大豆化」につながり、環境問題、社会問題を引き起こすという懸念を表明している。
 またチャコ州政府は2月にサウジアラビアのAlkhorayefグループと「投資基金」について合意を締結。歴史的に先住民族が居住しているものの、近年の大豆生産拡大の中で伐採が進められてきた20万ヘクタールの土地が狙われているのである。州政府は土地を売らなくても、大豆を耕作することはできるのだと主張している。
 こうした取引が進めば、元来の正当な土地利用者である先住民族や小農民の土地へのアクセスが制約されるだけなく、不可逆な森林破壊、土壌流出、農薬や化学肥料による土地の汚染が進行することになる、と「チャコの土地に関する合同フォーラム」は告発している。

 小農民や先住民族にとって重要な問題は「外国人への土地売却」ではなく、近年の農業モデルである。

 アルゼンチンでは2001年における大豆の播種面積は1000万ヘクタールであった。しかし2003年には1200万ヘクタールとなり、その後のキルチネル主義の7年間(ネストル・キルチネル政権2003-2007と2007~のクリスティーナ・フェルナンデス政権)に1900万ヘクタールまで大豆のモノカルチャーはふくれあがったのである。これはアルゼンチンの耕地面積の56%にも達する。これほどまでに大豆生産が広がったことはかってなかったことである。
 そしてその背後で大規模で暴力的な土地からの排除が広がっている。農民先住民族運動(MNCI)は大豆生産地の拡大で20万家族が農村を追われたと推測している。しかし中央政府も地方政府もこうしたアグリビジネスの拡大によってどれだけの紛争が引き起こされているか正確な数字を押さえてはいない。
 
 NGOや社会運動グループ、学者などが参加しているREDAF(アルゼンチン・チャコ地方アグロフォレストリーネットワーク)は2010年に「チャコ地方の土地・環境紛争」[1]について報告書を刊行したが、そこでは800万ヘクタールの土地を巡って164の土地紛争が存在することが明らかにされた。しかしこれはアルゼンチン北部の6州の話に過ぎない。
「土地紛争は、異なる文化を押しつけられたことによる領域空間の利用と管理を巡って引き起こされている」とREDAFの報告書は告発する。89%の紛争は2000年以降に始まっており、この地域の農業フロンティアの拡大を引き起こした大豆輸出モデルの広がりと一致している。
 4月19日、多数の農民組織が一握りの議員とともに、農村部における土地からの排除を止めるための法案を提出した。しかし政権内にこれの法案に向けた政治的意志は見られない。

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 法令125

(2008年に大豆、小麦、ヒマワリ、トウモロコシの4つの産品に対して、国際市場の変動に連動して徴税率が変動することを定めた法令。その後農企業家の連合体による反対運動が続き、撤回される[2])

 大豆輸出の83%はCargill, Noble Argentina, ADM, Bunge, LDC-Dreyfus, AC Toepfer、 Nideraに握られ、大豆油の82%は次の5社、Bunge, LDC-Dreyfus, Cargill, ADG、Molinos Río de la Plataによって占められている。また大豆関連商品の90%は次の6社、Cargill, Bunge, Dreyfus, AGD, Vicentín y Molinos Río de la Plataの手にある。
 しかし法令125、そしてその後の紛争を通じて、これらの企業の利益が危機にさらされたこともなければ、大豆輸出モデルに疑念が呈されたわけでもない。政府にとっても、税収と貿易黒字をもたらす大豆輸出モデルは好都合なのである。

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 共犯関係にある国家

 REDAFは、紛争の解決のための取り組み、あるいはその無策の中心には国家の責任があると指摘する。問題を解決しようという政治的決定の欠如そして免責が存在している。人々の要求を無視し、聞いたかと思えば、それはコミュニティや組織を分断するために利用するだけである。

 すべての紛争は非対称な条件の中にある。企業や経済的資源を有する個人そして国家が先住民族や農民の家族と土地を巡る紛争にあるが、前者は情報をコントロールし、マス・メディアへの影響力を有し、多くの資源と権力との結びつきを有している。しかし国家は先住民族や農民に対してほとんど支援をせず、直接的にせよ、間接的にせよ、紛争の網一方の側についているのである。口先では疑問を投げかけたりするものの、実際には略奪的な生産モデルを支持し、先住民族や農民の生命を危機にさらしているのである。

 環境政治研究グループによって2010年に発行された「アルゼンチン農村におけるアグリビジネスによる暴力」[3]では、農民や先住民族に対する暴力の増加を確認するとともに、犯罪化、軍事化、身体的強要の問題を取り上げている。
「アルゼンチンの農村部において増え続けている暴力は地球規模の農業戦略と国家政策の履行の条件と考えることができる。テリトリーにおいて自然の富を略奪し、消尽していくのである・・・アグリビジネスと、先住民族や農民コミュニティとのテリトリーを巡る紛争、そして暴力は、アグリビジネスが後者に対して展開するものであり、土地集中のプロセスの現れである」と報告書の作成に関わった研究グループの社会科学者は説明する。
「農村部での暴力は土地と先住民族の権利に関する制度の欠如を明らかにするだけではなく、それは国家の対応そのもののようである」という。

 2009年の10月12日にはトゥクマンでハビエル・チョコバルが殺害され、2010年3月13日には、長年生活してきた土地に侵入しようとするブルドーザーに立ち向かった33歳のサンドラ・エリ・フアレスが死亡している。11月23日には、伝統的な土地への権利を求めて道路封鎖をしていたフォルモサのラ・プリマベーラ村においてコム民族のロベルト・ロペスが警察の弾圧で死亡している。これらの殺害事件の責任者は処罰されてもいない。

 社会運動を犯罪化しようという動きも増加している。先住民族人権モニター(ODHPI)はネウケンだけで、マプチェ民族に対して40の刑事訴訟があり、世代を超えて生活してきたテリトリーを擁護したことで犯罪とされて、200人が犯罪者とされている。
 こうした抑圧や犯罪化は、外国人によって引き起こされるのではない。暴力、銃弾、処罰、収監、これらは同国人によって、州政府や司法当局、そしてすべてのアルゼンチン人の協力によって進められているのである。  

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 真摯な国

 外国人の土地取得を規制する法案について説明した際、クリスティーナ大統領は次のように述べている。「既得の権利になんら影響を与えるものではありません。ここは明らかにしておきたいのです。これまでのゲームのルールを変えようというのではありませんし、これまでに正当であった規制に誠実に従って入手したものに損害を与えようというのでもありません。」法律を尊重しない国はまともな国とは言えない、と考えているというのだ。

 しかし、先住民族や農民は彼らの土地への権利を守るための法律を有している。憲法第75条であり、ILO169号条約であり、法26160であり、民法で定められた20年にわたる占有による権利である。REDAFによると99%の土地紛争は、国家や司法当局が、先住民族や農民に対して現行法で定められている土地権を認めないところに起きているという。また93%の紛争は土地の所有権に関連してコミュニティの伝統的な権利を侵害することによって引き起こされているのだ。

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 通告

 2010年5月、国内の先住民族による大規模なデモが繰り広げられた。これは200年の歴史で初めてのことであり、多数の先住民族が5月広場に到着し、行政府の者と対話を行った。
 20数名の先住民族リーダーは大統領と対話を行い、その必要性、特にテリトリーの擁護と大豆や植林モノカルチャー、鉱山、石油開発などの略奪型のモデルを拒否することについて訴えた。しかし大統領は、もし先住民族コミュニティに石油が発見されたなら、移転はできる限り心痛の少ないやり方で行うと応えたのである。
 多くの者が政権を支持していたにも関わらず、先住民族リーダーはこの回答に驚きと失望の入り交じった思いをさせられた。果たして大統領は先住民族の要求を理解したのだろうか、あるいは最初から決定はなされていたのか

 しかし、ラ・プリマベーラ村で起こった事件は、矛盾とはいえないものであった。それは人の命がかかった決定であった。また政府による「2010-2016年の農業・食料戦略」は大豆生産を拡大するものであり、それは農業フロンティアを広げ、それによる社会的・環境的な影響を増加させるものでしかなかった。
 中央政府の決定は、農民や先住民族の土地に更に深く侵入しようとするものなのである。
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 決定

 フォルモサにおけるコム民族への弾圧から5ヶ月、中央政府が州知事と結託していることを否定することはもうできない。
 体系的な人権侵害にも関わらず、クリスティーナ大統領は州知事と固い結束を維持しており、また官房長官は、政府機関で唯一ラ・プリマベ-ラ村の支援を行っていた反差別庁長官の活動を制約した。
 国家先住民族局も、州知事の意向通りに活動しており、多数の有能な職員を抱えるにもかかわらず、コミュニティは何の期待をすることもできず、先住民族の要求を届ける障害となっているに過ぎなかった。
 しかし、最も明確で、そして悲しむべき証拠は、大統領の沈黙である。一度たりともこのテーマについて公式に言及することはなく、殺害されたロベルト・ロペスの家族との面会を受け入れることもなく、7月9日通りにおける長いピケにも、ハンガーストライキにも何ら動きを見せることはなかった。
「先住民族に対する現在のジェノサイドには、もう武器を使うことはない。見えない存在として、無視し、死にゆくに任せるのである。無視によるジェノサイドである」と2008年に最高裁判所の裁判官であったラウル・エウヘニオ・サファロニは語っている。
 「(先住民族)が声を持っていないのではなく、それが聞き届けられることがないのだ」とエドゥアルド・ガレアーノも言う。[4]

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 人権

 誘拐、幼児略奪、拷問、強制収容所、失踪。
アルゼンチンの先住民族は、ナチズムそして軍事独裁政権の被害者と同じ被害を受けてきた。しかし彼らに対するジェノサイドは否定され続けている。
「19世紀末から20世紀初頭にかけて、国民国家の強化のため、先住民族の自治を破壊する軍事活動を展開した統治体制はいまだ倒されてはいない。それは現在まで続いているのである」と歴史家であり、アルゼンチンにおける先住民族政策におけるジェノサイドについての研究ネットワークの共同代表であるバルテル・デルリオは語る。 研究ネットワークは今日においてもジェノサイドの実践プロセスは先住民族を圧迫し続けていると断言している。かっては銃弾、殺害、奴隷化が行われたが、今日はコミュニティ領域への侵入、土地からの排除、抑圧、生存手段の剥奪、飢餓、差別そして忘却によって進められているのである。

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 1976年の軍事クーデターから28年後、秘密の拘置施設として使われた軍工科学校は人権組織の手に引き渡され、「二度と繰り返さない」という記憶のためのスペースとなった。
 しかし砂漠作戦(Campaña del Desierto:アルゼンチン南部の先住民族制圧のために行われた軍事作戦[6])から130年が経とうとしているが、先住民族の歴史的記憶を保つための空間は存在していない。その一方この作戦を指示したフリオ・アルヘンティーノ・ロカ大佐の名前は、いくつもの道路や学校に冠され、記念碑は乱立し、侵略を受けたマプチェ民族のテリトリーの中心に位置するバリローチェの中央公園でも挑発的な姿を見せ続けているのである。(1976年のクーデターを引き起こし多数の人権侵害事件の責任者である)ホルヘ・ラファエル・ビデラの彫像が、(ブエノスアイレスの)5月広場に据えられていることなど想像できるであろうか。

 1994年、24.411法が制定され、国家テロによる被害者への補償が定められた。しかし先住民族への虐殺の被害者に対してはどのような補償も検討すらされていない。

 現在においても、先住民族に対する体系的な人権侵害が世論を揺るがすスキャンダルとなることはなく、知識人や政治家、ジャーナリストによって否定されることすらある。先住民族に対する虐殺の被害者は、都市住民でも中間層でもないからである。

 こうした事実を拒絶する背景には民族的要因、社会階層、そして経済的な要因が存在している。ここ1世紀半の開発モデル、農産物輸出、石油、森林資源、鉱物資源などの開発は、すべて先住民族の伝統的テリトリーの上で行われてきたのである。

 先住民族にとって「二度と繰り返さない」ということはなかったのである。

(まとめ、抄訳 青西 ()は青西付記)

Argentina: soja sí, indígenas no, Darío Aranda
http://darioaranda.wordpress.com/2011/05/01/soja-si-indigenas-no/

付記 (青西作成)
[1]Conflictos sobre tenencia de tierra y ambientales en la región del Chaco Argentino http://redaf.org.ar/observatorio/wp-content/uploads/2009/04/Conflictos-de-Tierra-y-Ambientales-datos-relevados-hasta-Agosto-2010.pdf
[2] Paro agropecuario patronal en Argentina de 2008
http://es.wikipedia.org/wiki/Paro_agropecuario_patronal_en_Argentina_de_2008
[3]La violencia rural en la Argentina de los agronegocios
http://www.iigg.fsoc.uba.ar/sitiosdegrupos/rural/violencia_gepcyd_2010.pdf
[4]Félix Díaz junto a Eduardo Galeano en el acampe de lucha y resistencia QOM.flv
http://www.youtube.com/watch?v=DIWmD5kLLhI
スペイン語で発言内容も記載されています。
[6]Argentina: Estudio sobre “Campaña del Desierto” confirma genocidio contra mapuches
http://servindi.org/actualidad/39484?utm_source=feedburner&utm_medium=email&utm

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2011/03/08

アルゼンチンでの農園労働者搾取と日本商社

 2月に「農地は誰のものか」のサイトに掲載した情報の転載です。


 日本の豊田通商と昨年11月に包括提携を結んだアルゼンチンの穀物商社ニデラの農場において、未成年、児童を含めた農村労働者を劣悪な条件で働かせていたとして、アルゼンチン当局が強制捜査を行い、労働者を解放、現在告発に向けて調査を続けている。

アルゼンチンのパヒナ12紙に2011年1月2日他に掲載された記事は次のように伝えている。

脱税の疑いでも調査されている穀物輸出業者であるニデラ社のエル・アルガロボ農園において、北部より連れて来られた子どもを含む労働者が奴隷状態で搾取されていた。労働者はコンテナでぎゅうぎゅう詰めで寝起こし、クリスマスも含め1日10時間の労働に従事していた。明かりもなく、飲料水はバケツで与えられるだけであった。農園の敷地から出ることは許されず、労賃も知らされていなかった。賃金は非公式な契約の最終日に支払われるが、消費したもののは法外な価格で天引きされた。中には社会開発省の記名がなされた非売品のパスタも含まれていた。強制調査までの3週間で支払われたのは、菓子パンを買うための12ペソ(240円ほど)だけであった。

宿舎には子どもと未成年30人ほどを含めて130人が滞在していたが、司法当局はサンペドロ周辺に1000近くのこうした宿舎があるのだろうと推測しているという。

このような労働者はトウモロコシの収穫期に合わせて、北部のサンティアゴ・エステーロより、契約仲介人を通して連れてこられ、直接農園に連れてこられた労働者は自分たちがどこにいるかすらわからない状況であったという。(3/8追記:F1種子生産のための雄花除去作業のようである)

この農園と契約していたニデラはアルゼンチン随一の穀物輸出商社であり、アルゼンチンの農産品輸出の10%を占めており、大豆やひまわりの種子市場でもトップを走っている。またニデラは労働者の搾取だけではなく、脱税でも調査を受けている。

このような劣悪な条件での労働者雇用はニデラだけではなく、デュポン社、Satus Ager S.A. y Suthern Seeds Production社などでも摘発されており、既にデュポン社に対しては、奴隷的な労働者搾取に対して、経済特権剥奪などの処分が下されている。

>>>>> 
ニデラ社は一連の報道を否定しているが、アルゼンチン政府の担当機関の調査によるものであり、違法な条件での雇用が行われていたことは間違いないであろう。
アルゼンチンのニデラ社への投資、包括提携は、日本政府の行動指針に照らし合わせ、下記の二点で問題を抱えている。この点について、豊田通商と担当省庁に再度質問状を送付したいと考える。
また今回のアルゼンチンにおける報道について、農林水産省、外務省また豊田通商のサイトにおいては一言も言及されていない。このような状況で、市民社会側の労力を持って、行動指針をモニタリングしていくことは正当なあり方とは言えないであろう。どのようにモニタリングの仕組みを作るのかも同時に検討されなければならない。

開発と権利のための行動センター
青西

③ 被投資国における法令の遵守
(例:投資側は、土地取引、契約等被投資国における投資活動において、被投資国の法令を遵守する。)
④ 被投資国の農業者や地域住民への適正な配慮
(例:(イ)投資側は、投資対象の農地の農民及び所有者に対し、その農地の取得及びリースに関し、適切な対価を提供する。(ロ)投資側は、現地における雇用について、適切な労働条件の下、農民等従業員の雇用を行う。)

参考資料
以下の記事をもとに、整理したものである。

Una vida nueva
http://www.pagina12.com.ar/diario/elpais/1-159715-2011-01-02.html
Tecnología agropecuaria
http://www.pagina12.com.ar/diario/elpais/1-160113-2011-01-09.html
Trabajo rural digno o esclavo: un debate ideológico
http://www.pagina12.com.ar/diario/elpais/1-160137-2011-01-09.html
FUERTES SANCIONES A DUPONT POR SOMETER A 140 TRABAJADORES
Un corte a los beneficios
http://www.pagina12.com.ar/diario/sociedad/3-161602-2011-02-02.html
NIDERA S.A., Argentina informs
http://www.nidera.com/default.aspx?partId=33&CID=434
南米に強みを持つ穀物メジャーと包括提携を締結
~ 食料資源確保のため供給ソースの多角化へ
http://www.toyota-tsusho.com/press/2010/11/20101119-3580.html

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2010/12/26

サイト紹介:大豆栽培が引き起こす悲劇

開発と権利のための行動センターのサイトでも以前紹介したことがある、Killing Fieldsが日本語字幕付きで紹介されています。

大豆栽培が引き起こす悲劇(Killing Fields)
http://www.japangreen.tv/journal/#/000856(第一章)
http://www.japangreen.tv/journal/#/000859 (第二章)

「人間の食料としてだけでなく、家畜の餌としても大量に消費されている大豆。近年、これらの多くが南米の大規模農場で栽培されています。では、このような農場の周辺地域では、どのようなことが起こっているのでしょうか?」
「 大豆を栽培する大規模農場の急速な広がりにより、ブラジル・ウルグアイ・パラグアイ・アルゼンチンといった南米諸国では広大な森林が破壊され、カイオワ族など、先住民たちは先祖代々の地を追われています」

日本における遺伝子組み換え農作物使用承認状況
http://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/carta/c_list/pdf/01q.pdf
遺伝子組み換え大豆に関して、現在募集中のパブリックコメント
http://www.bch.biodic.go.jp/bch_3_1.html

上記サイトを紹介してくれた印鑰さんもブラジルにおける遺伝子組み換え大豆の広がりに危機感を覚え、ツイッターで情報発信をしています。
「ここ数年、南米でアグリビジネス・遺伝子組み換え企業が主権国家の主権をまったく無視する形で非合法に遺伝子組み換え大豆を持ち込み、強力なロビーイングで合法化させました。その結果は数十万人単位の小農民、先住民族の難民化という事態です。ブラジル南部、パラグアイ、アルゼンチンの事態がかなりひどくなっています。 日本ではほとんど報道されていないと思いますが、その動きをこの1年ほど追ってきました。」
「 アグリビジネス、大土地所有者による先住民族、小農民の迫害の上、除草剤の被害が拡大する一方なのですが、その動きを止めるにはその大豆を買い付ける消費国を止めなければなりません。」
「日本政府が諸手をあげて歓迎すれば市場が大きいので、遺伝子組み換え産業を助けてしまうことになりかねない。遺伝子組み換え企業は米国が一番強いので、米国とのTPP協議では当然、遺伝子組み換えの受け入れが要求されてくるでしょう。」

http://twilog.org/tweets.cgi?id=tomo_nada&word=%E9%81%BA%E4%BC%9D%E5%AD%90%E7%B5%84%E3%81%BF%E6%8F%9B%E3%81%88

このほかにもこのGreen TVのサイトでは次のような動画が掲載されています。
森林最前線-ボリビア共和国

http://www.japangreen.tv/journal/#/000073

(ベニ県における森林破壊、土地紛争)



自然と文化への尊敬の念-南米ペルーより

http://www.japangreen.tv/journal/#/000095

(COP10にもきていたアレハンドロ・アグメドの活動)

「住民が自分達の土地を守るため、地域が一体となってお金を投資する。観光地を保護地区の公園として、その入場料を地域住民に還元出来る仕組みを南米ペルーのティンキ村では仕組みをうまく活用し、ジャガイモ公園として、人々の暮らしも活性化しています。」

サーモン養殖の裏側に迫る
(サーモン養殖とペルーにおけるアンチョビー漁)
http://www.japangreen.tv/journal/#/000535

メッセージ・フロム・アマゾン

http://www.japangreen.tv/journal/#/000073

私たち日本人にとって、地球の裏側の遠い国で起こっていることという認識から、身近な食生活に密接した問題として捉え、アマゾンの森林伐採の実態をご覧下さい。われる森林と地球温暖化の加速

森林関係

「森の慟哭」(サワラクにおける森林破壊 イントロ版)
http://www.japangreen.tv/journal/#/000831
(監督:中井信介、22分)を制作しました。映像では先住民族の森の利用や開発の状況などをデータとともに紹介しています。

失われる森林と地球温暖化の加速
http://www.japangreen.tv/journal/#/000682

開発と権利のための行動センター
青西


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2010/05/27

アルゼンチン:多民族国家を求め行進

 5月20日、先住民族の大規模な行進は8日間かけて、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスに到着した。アルゼンチンの30以上の先住民族が国内各地から参集したのである。25日のアルゼンチンの独立200年祭の直前に、あらためて先住民族の存在とその声を国内外に強く伝えることとなった。
 
 12日に開始されたこの行進は、ネウケン・マプーチェ連盟やディアギータ民族連合、フォルモサ先住民族審議会、コヤマルカなどに組織されたものであり、「多民族国家を目指し、真実の道を」を合い言葉に首都を目指して行進を続けてきた。[1]

「200年祭を祝おうとしているが、この日は、アルゼンチン国の成立の前から存在する私たち民族にとって生命、文化、テリトリーに対する抑圧を意味するものである。通りに出て、私たちの存在を、国家に対して目に見えるものとして示さなければならない。国家は、この国が単一文化で民主的な国であるかのような幻想を維持し続けているのだ。」
「私たちはこの歴史的な行進を通じて、私たちの団結と連携を築く取り組みを、私たちの共通の敵に示していこう。私たちのテリトリーに石油や鉱物資源、森林、水を求めて侵略し、大豆の生産地を犯罪的に拡大してくる経済界に対して。」
「諦めや受動的な態度から訣別しなくてはならない。私たちは何千年という歴史と権利に支えられているのである。現在のシステムは、それ自体の矛盾から、不平等と不正義から生まれる暴力によって崩れつつある。私たちの母なる大地、パチャママ、ワフマプは、もうこれ以上の濫用と傷には耐えられない」[2]

「アルゼンチンは多民族・多文化であり、30以上の先住民族が存在し、その豊かな文化は、20以上の言語が存在や、何千年と続く自然との相互依存に基づく世界観などに現れている...私たちの知識・実践は、私たちの健康や生産、教育システムを維持し、倫理的、道徳的な原則に基づくアイデンティティを保持してきたのである。これは現在の暴力や消費、母なる大地の搾取に基づく社会に対するオータナティブになるものである。」
「しかし共和国としての200年間の間、私たちの文化的多様性は軽蔑され、見えないものとして、また恥ずべきものとして隠蔽されてきたのである。しかしこうした中でもアルゼンチンの先住民族は歴史的な記憶を守り、世界観を守るために努力してきた。」
「私たち先住民族は排除され、フォルクローレの祭りの時か、悲惨な病気の被害者としてしか公で伝えられることはなかった。しかし私たちはテリトリー、土地、自然資源に対する主権を持つ先住民族なのである。」[3]

先住民族は首都に結集した後、大統領府において、クリスティーナ・フェルナンデス大統領と会談を行い、多民族国家の創設を求める文書を手渡した。[2]
先住民族は、テリトリーの回復、テリトリーと生活を保全するための協議と同意の権利を定めた法律の整備、先住民族コミュニティのテリトリーの登記手続き、先住民族言語の公用語としての承認、通文化教育、先住民族の自治的な教育機関の設置、10月12日の祝日廃止、大豆生産の拡大やそれによる森林破壊の停止、鉱業法の廃止などを求めている。

[1] 写真はこのサイトに多く含まれています。
  http://confederacionmapuce.com.ar/index.php?option=com_content&view=article&id=186:fotogaleria-marcha-nacional-de-los-pueblos-originarios
[2]
MARCHA DE LAS NACIONES ORIGINARIAS A PLAZA DE MAYO
http://uniondiaguita.blogspot.com/2010/05/marcha-de-las-naciones-originarias.html
[3] "Caminando por la Verdad, hacia un Estado Plurinacional"
Pacto del Estado con los Pueblos Originarios para la creación de un Estado Plurinacional
http://www.azkintuwe.org/may147.htm


アルゼンチンの先住民族は現在でも土地から追われ続けている。大豆生産の拡大やインフラ整備など様々な形で土地を追われ、権利を侵害されているのである。


 最近の報告書では次のようなものがある。
New report launched on soy expansion in Northwest Argentina
"Soy and Agribusiness Expansion in Northwest Argentina"
http://lasojamata.iskra.net/en/node/398 (英語)
Expansión de los agronegocios en el Noroeste argentino(スペイン語)
http://www.chayar.com.ar/index.php?option=com_content&view=article&id=82:expansion-de-los-agronegocios-en-el-noroeste-argentino&catid=59:investigaciones-periodisticas&Itemid=112

Amnistía Internacional presentó su informe sobre las violaciones a los derechos humanos de pueblos indígenas en la Argentina
http://www.amnesty.org.ar/destacamos/amnistia-internacional-presentara-su-informe-sobre-las-violaciones-los-ddhh2

 開発と権利のための行動センター
 青西
 

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2010/04/20

アルゼンチン:新しい「エルドラード」-大豆共和国

スペインのエル・パイス紙に4月4日に掲載された記事 REPORTAJE: EL NUEVO "EL DORADO" La República de la Soja[1]を翻訳していたのですが、7千字近くとあまりに長くなったので、一部要点のみお伝えします。アルゼンチンの大豆生産による農薬散布や土地問題などを考える背景情報としてお読みください。
[1] http://www.elpais.com/articulo/reportajes/Republica/Soja/elpepusocdmg/20100404elpdmgrep_2/Tes
 
アルゼンチンのパンパ地域で大豆生産が拡大している
-「2003年に700万ヘクタールだった大豆は、今では2000万ヘクタールに達している」
-「2009年の1750万ヘクタールから、2010年には2000万ヘクタールになってしまった」
-アルゼンチン全体では、3100万ヘクタールの農地があるが、そのうちの64%が大豆になってしまった。

すべてを食べ尽くす大豆
-大豆はすべてを、牛や村々、森、伝統、そして農村労働者をも食べ尽くしてきた。農地の集中を背景とする大豆生産はわずかな労働力しか必要としていなかった。
-2009年のデータによると、全国で276581人の農業者が存在しているが、その数は大豆が初めて生産された1969年の半分でしかない。何千という農村の家々が消滅し、所有者たちは、近隣の町や都市に移住していった。サンタ・フェ州の352の自治体のうち、60以上が消滅の危機にあるという。

何千という農業生産者の生活と労働スタイルそして何百という農村コミュニティに変化を引き起こした
-「単に土地を貸して、それ相応の金額を受け取っている。50ヘクタールを貸すと、年間9万ペソの収入になる」という。1万8千ユーロ相当の金額である。この金額はアルゼンチンでは少ないものではない。首都で働く若い専門職、医師や大学の教員、新聞記者の年間の所得は7千から7千5百ユーロぐらいのものである。しかしこの農村部に住む農業者たちは、ほとんど何もすることなしにその倍の収入を得ているのである。

投資家グループ
-「裕福な大地主たちは牛を持ち続ける一方で、保有する資金を大豆投資グループや、中小の大豆生産者の土地を借り入れている投資信託基金に投入している」
-大きな投資グループの一つがグスタボ・グロボコパテルに率いられるものであり、エンジニアでもあるグロボコパテルは農業企業家の新しいモデルを自認し、25万ヘクタールをコントロールしていることを認めている。しかし何人かの環境活動家は、実際には、彼はブラジルやパラグアイにも借地を有し、倍以上の面積をコントロールしていると明らかにしている。
(ちなみに日本の耕地面積は約400万ヘクタール)

政治との結びつき
-「(大豆生産の)問題が大きな政治的な議論を引き起こすことはない。例えばサンタ・フェ州の19人の上院議員のうち14人が大豆で生きているのです」

河川運輸
 大豆はパラナ川の景観も大きく変えていった。10年もしないうちに、(パラナ川沿いの)ロサリオ市の周辺には穀物・製粉・油脂などの輸出基地が成長し、アルゼンチンの穀物生産の80%が、川縁に隣接する15の港湾から搬出されるようになったのである。

直播とグリフォサート(ラウンドアップ)
「直播とグリフォサートなしにはアルゼンチン大豆の奇跡はない。大豆の直播が、収穫残渣を残したままの無耕起栽培を可能とし、高収量を実現した。これに対し環境活動家は、土壌の呼吸を妨げ、養分を吸い尽くしていると見なし、一方、無耕起栽培の擁護者は土壌の劣化を防ぎ、雨水の有効利用を可能にしていると評価する。アルゼンチンではモンサント社の商品名であるラウンドアップとして知られるグリフォサートは、遺伝子組み換え大豆の畑で散布され、この強力な大豆を除いたすべての植物を枯らしてしまう。専門家はヘクタール当たり10リットルあまりのグリフォサート、つまり2009年に1億7500万リットルが散布されたと指摘している。ラウンドアップを利用しているのはアルゼンチンだけではない。サンタ・フェ州の農畜産衛生会議所は、FAOにも承認されている毒性の低い農薬だと主張する。」

大豆は万能薬か?
-大豆が農村の貧困を終わらせる万能薬ではないことを統計は明らかにしている。それどころか、新しいフロンティアでは、農村の貧困は増加し、農民には問題が広がっている。北東のチャコ地域では、大豆生産の拡大により農民の生活を支えていた森林や放牧地が失われている。大豆はすべてを食い尽くし、時に何も残さない。

農薬散布(ペラルタ家の話-農薬散布によって子どもが病気に)
-「私たちの村では、大豆が道のすぐそばまで植えられ、モスキートと呼ばれる農薬散布機が庭先で働いているというのが当たり前の姿になっていました」
-サンタ・フェ州の民事法廷で、農村部の居住地域から800メートル以内でのグリフォサートの散布を禁止する判決が初めて下された。また州政府とリトラル国立大学に対して6ヶ月以内に、この除草剤が人の健康に影響がないことを示すように要求した。環境活動家はこの判決を高く評価している。裁判官は立証責任を、貧しい被害者に対してではなく、巨大な農薬会社に対して要求したのである。[2]
-「重要なことは、裁判官が行政機関に対して、本当に安全なのかどうか、証明することを命じたことです。それこそが私たちが求めていることなのです」。

[2]この判決は2010年3月に下されたようである。
 関連記事はこちら
Un freno a los agroquímicos
http://www.pagina12.com.ar/diario/elpais/1-142032-2010-03-15.html
Confirman prohibición de uso de agroquímicos en Santa Fe
http://www.cij.gov.ar/nota-3604-Confirman-prohibicion-de-uso-de-agroquimicos-en-Santa-Fe.html  

まとめ 青西

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2010/03/01

大豆生産や鉱業に土地を奪われるアルゼンチンの農民や先住民族

 1990年代後半から、輸出向けのモノカルチャー農業の拡大や鉱業の広がりによって、アルゼンチン北東部では、土地紛争や土地を追われる農民が増えているとのことである。[1] 
 それに対抗する形で農村部への企業の展開に抵抗する小農民やコミュニティの組織も増加しつつある。アルゼンチン北部の6州におけるテリトリーを巡る紛争や環境紛争の数はこの状況の深刻さを浮き彫りにするものである。現在およそ500万ヘクタールの土地が係争中で、60万人が巻き込まれているという。この中で民間セクターや国家が農民や先住民族と対峙している。これが主要な農企業による連合体であるMesa de Enlaceの対極にある農村部の影である。
 カタルーニャ大学他の調査[2]は、大半の紛争は90年代に開始され、これはアルゼンチン北部への大豆の拡大に平行すると述べている。
 また<アルゼンチン・チャコ地方アグロフォレストリーネットワーク:REDAF>の報告書は120の紛争を確認しており、これまでに52のケースを調査してきた結果として、北部6州(サルタ、フォルモサ、サンティアゴ・デル・エステーロ、チャコ、コロドバ、及びサンタ・フェ北部)においておよそ60万人が土地あるいは環境紛争に巻き込まれているという。[3]
 「フフイ州の面積と人口に相応する人たちと面積が、このチャコ地方で土地紛争や環境紛争に巻き込まれているのである。」更にこれらの紛争の63%が2000年以降、北部への農業フロンティアの拡大と軌を一にして進んできた。
 アルゼンチン北部から、パラグアイ、ボリビアと広がるチャコ地域はアマゾンの次に生物多様性に富む地域である一方で、貧困指数も最も高い地域である。
 紛争に巻き込まれている家族やコミュニティの70%はその責任が国にあると考えている。特に土地登記の欠如が問題となっているが、この問題に対する政治的な意志の欠如、怠慢が問題とされている。また司法も偏っており、登記書を持つものを、それが怪しいものでも優遇し、占有してきた者の権利を軽視している。

「近年、北東部、北西部において油糧作物、特に大豆生産が拡大しているが、それと同時に、何千ヘクタールという森林が破壊され、伝統的な耕作物は失われ、放牧に使われてきた土地は改変され、土地所有構造も変化した」。そして「<近代的農業>が生態系の劣化と生活条件の悪化を引き起こし、小農民の移民に拍車をかけてきた」と報告書は指摘している。
 またREDAFの調査は農民や先住民族コミュニティの開発を妨げてきた政策として、土地所有権の脆弱さと農業フロンティアの拡大にともなう環境問題の二つをあげている。またアルゼンチンの人口の8割が人口10万人以上の都市に居住していることから、農村人口がその土地に居住し続けることを考慮するような政治的な意志、あるいは公共政策が欠如していると見なしている。
 
 また「土地簒奪」の記事は2008年9月5日に発生した暴力事件から始まっている。[4]
 ゴンサレス家は、突然20人もの警官と多数のガードマンに囲まれ、サントス・ラモン・ゴンサレスは殴る蹴るの暴行を受け、髪を捕まれて20メートルあまり引きずられ、お金や農具を奪われたという。更に、キミリの警察署に連れて行かれ、二日間にわたって拷問を受け・・・最後に村を離れるようにという脅しを受けて解放されたという。
 [2]の報告書は、20万家族以上が、90年代に始まる新自由主義の熱病の中で土地を奪われ、大都市の周縁に追いやられた、ここ25年間で土地集中は深化し、農村部の社会的不平等は拡大したと述べている。
 コルドバの農民組織によると、州北部では、60%の農家が正式な土地書類を有していないという。その土地を20年以上占拠してきたことから、国内法において保護されているはずであるにもかかわらず、農業フロンティアの拡大と政策が欠如から問題が深刻化している。更に司法も放置あるいは敵意すら持っている。こうして農村に住む家族は、土地から追われた後、全く保護のない状況に、政府による保護策のない状況に置かれている。

 サンティアゴ・デル・エステーロでは300人以上の農民が、何十年も生活してきた土地からの排除に抵抗している。警察や司法は私的所有地の横領だ、執行命令への不服従だ、森林を破壊しているなどといった<罪状>をつけてくるが、それは全て、人々が以前から生活してきた自分たちの土地の上での話なのである。
「農業エリートは、とても先進的な農業モデルだと言って振興してくるが、環境を汚染し、土地を劣化させ、外部からの投入財に深く依存したモデルであり、大きな社会的な負荷を背負っている... このモデルは、この国の食糧不足の主要な原因であり、未来を担保にかけているのである。森も、地下水も、土壌も失われつつある」

 この記事以外にもアルゼンチンにおける先住民族の土地からの排除については、昨年アムネスティ・インターナショナルも2度にわたって声明を発表している。またここで取り上げられているREDAFのサイトでも大豆生産の拡大が引き起こす土地問題などのニュースや映像を伝えている。[5]

 開発と権利のための行動センター
 青西 

[1] CINCO MILLONES DE HECTAREAS EN DISPUTA Y 600 MIL PERSONAS AFECTADAS EN EL NOROESTE DEL PAIS : Los desplazados por la soja y la mineri'a(pagina / 12, 2010/02/22) http://www.pagina12.com.ar/diario/elpais/index-2010-02-22.html
このブログ記事は、このPagina 12の記事を抄訳に、記事が引用している報告書などを参照しつつまとめたものである。
[2] 1o INFORME RESUMEN EJECUTIVO "Conflictos de Tierra y Medioambiente en la region del Chaco Argentino"
http://redaf.org.ar/noticias/wp-content/uploads/2010/02/resumen-ejecutivo_completo_final_091209.pdf
...[2]報告書によると、この地域では近代的な農業の拡大の中で、土地の集中、小農民や先住民族の土地からの排除、生態系の劣化が進んでいるという。特に北東部、北西部において、大豆生産が拡大し、森林伐採が進んでいる。不在地主が関心を持ってもいなかった土地があらためて価値を持ち、そこの土地利用者も森林も全て踏みにじって<きれいに>しつつある。このことが農村からの移民の増加を引き起こしている。こうした土地紛争というのは決して新しいものではないが、この調査で扱っているケースのの63%は2000年以降に始まったものである。
 先住民族の土地に関しては、6割が登記されていないことから、不安定な状況に置かれている。特に土地紛争の影響を受けている人の76%は先住民族である。
[3] INFORME Situación de los derechos humanos en el Noroeste argentino en 2008
<Cátedra UNESCO de Sostenibilidad de la Universidad Politécnica de Cataluña,Asociación Catalana de Ingeniería Sin Fronteras (ISF Cataluña), Educación para la Acción Crítica (EdPAC) y el Grupo de Cooperación del Campus de Terrassa (GCCT)>
http://investigaccionddhh.wordpress.com/articulos-y-documentos/
...[3]報告書によるとアルゼンチンでは大豆生産が拡大し、耕作面積の5割に達しているが、その一方で100ヘクタール以下の農家の減少が続き、逆に1000ヘクタール以上の農業者(農業経営体)への土地集中が進んでいる。
 こうした中で長年にわたって土地を占有してきた農民たちと新しい企業的な農業者との土地を巡る対立が深まり、農民が排除されるケースが相次いでいる。また農薬散布による健康被害もでている。北東部のこれまで見向きもされなかった土地で、小農民は、正式な土地登記書類を持ってはいないものの、長年にわたって土地を占有し耕作してきた。しかしこうした土地が買い集められ、農民が追い出されるという事件が相次いでる。アルゼンチンにおいては、20年間継続して占有することで、所有権が発生すると法律で定められているが、実際には所有権を確定する手続きのコストが高く、小農民にとってその権利が十分に保証されていない。
「紙の上で大面積の土地が取引されていくものの、政府の誰もそれをコントロールしていない。誰が土地を売ったのかも、実際に土地引きされた面積も確認されず、また買われた土地の中に何があるのか、小学校なのか、病院なのか、川なのか、湖なのか、それもわからないままに、ただ書類が売り買いされていく」
 更に、トラクターが来て、私財もろとも、家を踏み倒していくという暴力的な排除のケースも報告されている。
 この報告書では、農地問題だけではなく、鉱山開発による環境破壊、コミュニティとの紛争、またそれぞれの事例なども報告されている。
[4]Usrpación de Tierra (pagina / 12, 2010/02/22)
http://www.pagina12.com.ar/diario/elpais/index-2010-02-22.html
[5] アムネスティ・インターナショナル
Argentina: nueva amenaza de desalojo de una comunidad indígena ...(26 November 2009)AMNISTIA INTERNACIONAL.
DECLARACION PÚBLICA. Índice AI: AMR 13/002/2009. 26 de noviembre de 2009. Document AMR 13/002/2009
Argentina: COMUNIDAD INDÍGENA BAJO AMENAZA DE DESALOJO ILEGAL (16 October 2009)
AU: 282/09, Índice AI: AMR 13/001/2009 Argentina Fecha: 16 de octubre de 2009. Urgent Action AMR 13/001/2009
http://www.amnesty.org/es/region/argentina

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2010/02/25

アルゼンチンにてバイオ燃料混合の義務化が始まる

 供給問題から遅れていた、バイオ燃料混合政策がアルゼンチンで今年から始まった。現在5%で始まっている混合比率は2015年までに20%を達成することが目指されている。
 アルゼンチンではガソリンよりもディーゼルが中心に利用されており、車両燃料の66%を占めている。そこで米国やブラジルのようなエタノールではなく、バイオ・ディーゼルが必要とされている。特に大豆を燃料としたバイオ・ディーゼル生産が目指されている。
バイオ燃料法(26.093)では生産者と結びついた中小企業から供給することを要求しているが、実際にはそれでは供給が間に合わず、7割近くが大企業から供給されることとなる。
 Reportajes:Arrancan los agrocombustibles argentinos(Tierraamerica 2010/02/15)
 http://www.tierramerica.info/nota.php?lang=esp&idnews=3539

 アルゼンチンはバイオ・ディーゼルの海外への輸出量を増やしつつあり、2007年には16万トンであったのが、2009年には150万トンとなり、輸出の2%を占めるに至っている。この背景には米国やヨーロッパにおける混合政策がある。
 El biodiesel despega en Argentina (BBC-Mundo 2010/02/23)
http://www.bbc.co.uk/mundo/america_latina/2010/02/100223_0130_biodiesel_economia_argentina_jaw.shtml

 バイオ・ディーゼルの利用拡大によって、大豆油の輸出が減少する可能性がある。
 Biodiésel limitaría ventas de aceite soja de Argentina (2010/02/11)
http://www.biodieselspain.com/2010/02/11/biodiesel-limitaria-ventas-de-aceite-soja-de-argentina/

 一方で、アルゼンチンにおける土地問題、農民の土地からの排除、大農園による囲い込みといった問題も指摘されている。
LINK TV (映像)
Argentina's Food Farmers Trumped by Soy (Sep 1, 2009)
http://www.linktv.org/latinpulse/20090901/argentinas-food-farmers-trumped-by-soy

Change on the Pampas: Industrialized Farming Comes to Argentina
(Aug 27 2009)

https://nacla.org/node/6079
ARGENTINA:Expansion of Agricultural Frontier Endangers Native Communities
BUENOS AIRES, Aug 30 (IPS) - Encroached upon by the expanding agricultural frontier and facing the indifference of the state, indigenous communities in the northeastern Argentine province of Chaco have problems of access to water, food and their natural medicines, and are heading towards extinction.
http://ipsnews.net/news.asp?idnews=39087

CINCO MILLONES DE HECTAREAS EN DISPUTA Y 600 MIL PERSONAS AFECTADAS EN EL NOROESTE DEL PAIS : Los desplazados por la soja y la minería(pagina / 12, 2010/02/22)
http://www.pagina12.com.ar/diario/elpais/index-2010-02-22.html
こちらの続きはまた今度

 開発と権利のための行動センター
 青西

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2009/05/12

アルゼンチンにおける農薬被害について:続報&コスタリカ

 4月に公表された、除草剤グリフォサートの毒性に関する調査結果に続いて、アルゼンチンの環境問題弁護士協会は最高裁判所に対して、違憲審査を請求し、グリフォサートの毒性について調査が行われるまで、販売・利用を停止することを求めている。更に、防衛省が、貸している土地におけるグリフォサートの利用を禁止したことで、農薬関連企業などの危機感が高まっている。
 こうした中で当該研究を行ったブエノスアイレス大学の研究者、アンドレス・カラスコに対して厳しい圧力が加えられている。農薬関連企業や企業家団体、また一部の公務員などからも研究者としての評判を傷つけるような攻撃が相次ぎ、更には匿名の脅迫もなされているとのことである。
El glifosato llegó a la Corte Suprema
http://www.pagina12.com.ar/diario/sociedad/3-123304-2009-04-16.html
“Lo que sucede en Argentina es casi un experimento masivo”
http://www.pagina12.com.ar/diario/elpais/1-124288-2009-05-03.html
Un apoyo a la libertad de investigación
 http://www.pagina12.com.ar/diario/sociedad/3-124689-2009-05-11.html
Argentine herbicide lawsuit alarms soy farmers
 http://www.reuters.com/articlePrint?articleId=USTRE5464Q820090507
NOVEDADES SOBRE LA ACCIÓN DE AMPARO ANTE LA CORTE SUPREMA POR AGROTÓXICOS
http://www.aadeaa.org.ar/novedades.htm
アルゼンチン:グリフォサートの毒性について調査結果が公表される
http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2009/04/post-9249.html

2:コスタリカの先住民族女性と農薬被害
 バナナ・プランテーションで働き、農薬にさらされている先住民族女性に高い割合で呼吸器系の疾患が見られるとのことである。
Pesticidas afectan a mujeres indígenas en Costa Rica
http://www.scidev.net/en/news/costa-rica-pesticide-exposure-affects-indigenous-w.html
Pesticide Exposure and Respiratory Health of Indigenous Women in Costa Rica
http://aje.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/kwp060v1

 開発と権利のための行動センター
青西

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